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養子縁組に関する民法改正

2026-05-11

2026年4月施行のポイントをわかりやすく解説

2024年(令和6年)5月に成立し、2026年(令和8年)4月1日に施行された民法等の改正法は、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、親権や養育費、親子交流などのルールを大きく見直しました。

今回は、その中でも「養子縁組」に関する重要な改正点を取り上げ、一般の方にもわかりやすく解説します。

養子縁組後の親権者が明確化された

旧民法では、「子が養子であるときは養親の親権に服する」という抽象的な規定しかなく、誰が親権者となるのかが明確ではありませんでした。今回の改正では、養子縁組後の親権者が次のように整理されました。

  • ①養親(複数の縁組がある場合は最後の養親)
  • ②養親の配偶者である実親

つまり、未成年のこどもが養子になった場合、原則として養親が親権者となり、実親は親権を失います。複数回の養子縁組が行われた場合には、最後に縁組をした養親のみが親権者となります。

特に注意が必要なのが、いわゆる「連れ子養子」のケースです。離婚した実父母の一方が再婚し、その再婚相手を養親とする場合、親権者は 養親(再婚相手)と、その配偶者である実親の2名 となります。この場合、離婚後に実父母の間で共同親権を定めていたとしても、もう一方の実親は親権を失うことになります。

代諾縁組に関する新しい手続

養子となるこどもが15歳未満の場合、法定代理人が代わって縁組の承諾をする「代諾縁組」が認められています。しかし旧法では、父母双方が親権者で意見が対立した場合、調整する仕組みがなく、縁組が進められないという問題がありました。今回の改正では、こどもの利益を守るため、家庭裁判所が父母の意見対立を調整できる制度が新設されました。

家庭裁判所が「同意に代わる許可」を出せる

次のような場合、家庭裁判所は法定代理人の請求により、父母の同意に代わる許可を出すことができます。

  • 養子縁組がこどもの利益のため特に必要であるにもかかわらず、監護すべき父母が同意しないとき
  • 父母の一方が親権停止中で、その者が同意しないとき

これにより、父母の意見対立が理由で、こどもにとって望ましい養子縁組が妨げられる事態を防ぐことができます。

親権の行使者を一方に指定できる制度の創設

さらに、親権の行使方法について父母の協議が整わない場合、家庭裁判所は、特定の事項について父母の一方のみが単独で親権を行使できると定めることができるようになりました。

代諾縁組に関する親権の行使についても、家庭裁判所が「こどもの利益のため特に必要」と判断した場合に限り、父母の一方を親権行使者として指定できます。指定された親は、単独で養子縁組の手続を進めることが可能になります。

まとめ

今回の改正は、養子縁組に関する親権者の明確化や、父母の意見対立を調整する仕組みの導入など、こどもの利益を最優先に考えた内容となっています。特に連れ子養子や、父母の意見が一致しないケースでは、従来よりも柔軟に手続を進められるようになりました。

養子縁組はこどもの人生に大きな影響を与える重要な制度です。実務に関わる方だけでなく、一般の方にとっても、今回の改正内容を知っておくことは大切だといえます。

所有権登記名義人の符号の表示とは

2026-05-07

新制度をわかりやすく解説

令和8年4月1日から、不動産登記簿に新たに所有権登記名義人の死亡についての符号の表示という制度が導入されました。これは、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)の施行に伴い、不動産登記法、不動産登記規則等が改正されたことによって新設されたものです。

法務省は、この制度の運用上の留意点を全国の法務局に周知するため、令和8年3月27日付で通達(法務省民二第525号)を発出しました。通達はあくまで事務の取扱いを示すものであり、制度そのものは改正法、改正省令の施行によって生じたものです。

なぜ符号の表示が導入されるのか

現行制度では、所有者が亡くなっても相続登記等が申請されない限り、その死亡の事実は登記簿に反映されません。したがって、登記簿を見ても、名義人が生存しているのか、すでに死亡しているのかを確認することはできません。

しかし、所有者不明土地の増加は、公共事業や民間開発の妨げとなり、相続手続の遅れや放置を招く要因にもなっています。死亡情報が反映されないまま長期間放置されると、相続人の探索や交渉に多大なコストがかかり、土地の利活用が著しく阻害されます。

こうした問題を解消するため、登記官が公的機関から得た死亡等の情報をもとに、職権で「符号」を付記する制度が導入されました。符号の表示は、相続登記の申請を促し、所有者不明土地の発生を予防するための仕組みです。

符号の表示の対象

改正後の不動産登記法第76条の4により、登記官は、所有権の登記名義人(自然人)が「権利能力を有しないこととなった」と認められる場合、職権で符号を表示できます。
ここでいう「権利能力を有しない」とは、主に

  • 死亡した場合
  • 失踪宣告を受けた場合

を指します。

登記官が死亡等を把握する端緒は、住基ネット情報や戸籍情報、所有者不明土地法に基づく調査、地図作成事業、相続登記の審査過程など、公的機関から得られる確実な情報に限定されています。

符号の表示が不要となるケース

次のような場合には、符号の表示は行われません。

  • すでに符号が表示されている
  • 通知された名義人情報が登記と一致しない
  • 相続人申告登記がされている
  • 長期相続登記未了土地の付記がある
  • 相続財産法人への変更登記がされている
  • 一部遺贈による所有権移転登記がされている

つまり、死亡情報が別の形で登記に反映されている場合や、名義人情報に不一致がある場合には、誤表示や重複を避けるため符号は付されません。

登記記録への記録方法

符号の表示は、所有権の登記に「付記」する形で行われます。
記録される内容は次のとおりです。

  • 登記の目的
  • 名義人の氏名
  • 権利能力を有しないこととなった旨を示す記号(◇)
  • 登記年月日
Japanese property rights register table with sections for ranking number, registration purpose, receipt date and number, and rights holder details (甲区).

誤解してはならないポイント

符号の表示が付されていないからといって、名義人が生存していることを意味するわけではありません。

符号の表示は、登記官が把握した死亡等の情報を反映したにすぎず、死亡の有無を網羅的に確認する制度ではありません。あくまで、相続登記が長期間放置されている状況を改善し、相続手続や土地利用を促進するための仕組みです。

まとめ

符号の表示制度は、所有者不明土地問題の解消に向けた取り組みの一つです。登記官が把握した死亡情報を付記することで、相続登記の申請を促し、円滑な不動産取引や公共事業の推進に資することが期待されています。

令和8年4月1日から施行されたこの制度は、今後の不動産登記実務において大きな役割を果たすことになるでしょう。

財産分与に関する民法等の改正

2026-04-27

令和8年4月1日施行のポイント

令和8年4月1日、民法等の改正法が施行され、離婚時の「財産分与」に関するルールが大きく見直されました。

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持した財産を、離婚の際に公平に分け合う制度です。まずは夫婦の話し合い(協議)で決めますが、合意に至らない場合には、家庭裁判所に対して「協議に代わる処分」を請求することができます。

財産分与の請求期間が「離婚後5年」に延長

従来、財産分与を家庭裁判所に請求できる期間は「離婚後2年」とされていました。今回の改正により、離婚後5年を経過するまで請求できるようになりました。

もっとも、この期間は「除斥期間」と解されており、期間を過ぎると家庭裁判所に対する請求はできなくなりますが、当事者間で合意して財産分与を行うこと自体は可能です。

また、令和8年3月31日以前に離婚した場合は従来どおり2年が適用されるため、該当する方は注意が必要です。

財産分与の判断基準が法律に明記

これまで民法には、財産分与の額や方法を決める際に考慮すべき事情が明確に規定されていませんでした。実務では判例を参考に判断されてきましたが、一般の方には分かりにくい面がありました。

改正法では、家庭裁判所が考慮すべき事情として、

  • 婚姻中に取得・維持した財産の額
  • その取得・維持への各当事者の寄与の程度
  • 婚姻期間
  • 婚姻中の生活水準
  • 協力・扶助の状況
  • 年齢、心身の状況、職業・収入

などが明文化されました。

さらに、寄与の程度について「その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」と規定されました。これは、家事・育児などの無償労働も財産形成への貢献として評価されるという考え方を、法律上明確に位置づけたものです。「推定」という文言ではなく、条文上は「相等しいものとする」と定められています。

判例との関係

旧法下でも、裁判所は「当事者双方の一切の事情」を考慮して財産分与を定めるとされてきました。例えば、婚姻費用を一方が過大に負担していた場合、その清算を財産分与に含めることができるとした最高裁判例(昭和53年11月14日)があります。

また、離婚原因に有責性がある場合には財産分与とは別に慰謝料請求が認められ、両請求権は互いに密接な関係にあり財産分与の額及び方法を定めるには一切の事情を考慮することを要するのであるから、その事情のなかには慰謝料支払義務の発生原因たる事情も当然に斟酌されるべきものであることも示されています(最判昭和31年2月21日)。

今回の改正は、こうした実務の積み重ねを踏まえつつ、判断基準をより明確にしたものといえます。

手続の円滑化 ― 財産情報の開示命令

財産分与の手続では、対象となる財産の種類や金額を明らかにする必要があります。そこで、家事事件手続法も改正され、家庭裁判所は必要があると認めるとき、当事者に対し財産の状況に関する情報開示を命じることができるようになりました。

これにより、財産の全体像が把握しやすくなり、適正な分与が進めやすくなることが期待されます。

最後に

財産分与は、離婚後の生活設計に大きく影響する重要な制度です。今回の改正により、より公平で利用しやすい仕組みへと整備されました。離婚を検討している方や、財産分与について不安がある方は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

親の責務に関するルールが明確化されました

2026-04-20

2026年4月施行・民法第817条の12を中心に解説

2024(令和6)年に成立した民法等の改正法が、2026(令和8)年4月1日に施行されました。今回の改正では、親が子に対して負う責務を明確化するため、新たに民法第817条の12が設けられています。

これまで「親として当然」とされてきた考え方が、法律上のルールとして明文化された点に大きな特徴があります。本記事では、特にお問い合わせの多いポイントをQ&A形式で分かりやすく解説します。

親は常に子どもの意向に従わなければならないのか

条文では、父母は子の心身の健全な発達のために「その子の人格を尊重」し、「年齢及び発達の程度に配慮」して養育すべきとされています。しかし、これは子どもの希望を常に優先する義務を意味するものではありません。

子どもが自らの利益に反する行動を取ろうとする場合、親はその意向に反してでも制止すべき場面があります。例えば、危険な行動や学業・生活に重大な支障を及ぼす行為が挙げられます。ただし、その際には「なぜその判断に至ったのか」を丁寧に説明することが、子どもの人格を尊重するうえで望ましいとされています。

「自己と同程度の生活を維持できるよう扶養する義務」はいつまで続くのか

新設された条文は、生活保持義務の対象となる「子」を未成年に限定していません。そのため、義務の範囲は今後の解釈に委ねられる部分があります。

旧法下では、大学生である成年の子に対しても、未成年と同水準の養育費を認めた裁判例が存在しました。今回の改正は、こうした従前の解釈を直ちに変更するものではなく、今後も個別の事情に応じて判断されることになります。

どのような行為が「父母相互の人格尊重・協力義務」に反するのか

父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子の利益のために互いに人格を尊重し協力する義務を負います。一般論として、以下のような行為は、状況によっては義務違反と評価される可能性があります。

  • 暴行・脅迫・暴言、誹謗中傷、濫訴など相手の心身に悪影響を及ぼす行為
  • 一方の親による養育への不当な干渉
  • 正当な理由なく無断で子の居所を変更する行為
  • 親子交流の取り決めを正当な理由なく履行しない場合
  • 養育費や親子交流の協議を一方的に拒否する場合
  • 子の面前で他方の親を誹謗中傷する行為
  • 裁判所の監護に関する判断に正当な理由なく従わない場合

DVや虐待がある場合でも協力義務はあるのか

条文上は例外が設けられていませんが、DVや虐待を行う親は、そもそも人格尊重義務に反しています。そのため、加害行為を行った親との協力には当然限界があると考えられています。改正法が「できない協力を無理に強いる」趣旨ではない点が重要です。

子連れ別居は義務違反になるのか

無断で子を連れて別居する行為が義務違反に当たるかどうかは、以下のような事情を総合的に考慮して判断されます。

  • 別居の動機・経緯
  • 別居前後の協議の有無
  • 子の年齢・意向
  • 別居前の親子関係・父母関係

DVからの避難など急迫の事情がある場合には、義務違反とは評価されません。また、無断転居をした側に「DVを立証する責任がある」といったルールが新たに設けられたわけでもありません。

最後に

今回の改正は、親子関係における基本的な考え方を明文化し、子どもの利益をより確実に守るためのものです。具体的なケースで判断に迷われる場合には、専門家へ早めに相談することをおすすめします。

「NISA貧乏」になっていませんか?

2026-04-13

若い世代に考えてほしい投資との距離感

新NISAが始まり、20〜30代の間で投資への関心が一気に高まりました。将来への漠然とした不安、SNSで流れてくる「投資しないと取り残される」といった強いメッセージ。こうした空気感の中で、生活費や自己投資費用まで削って投資に回す、いわゆる「NISA貧乏」が静かに広がりつつあります。

確かに、資産形成は早く始めるほど有利です。しかし、必要以上に節約し、人付き合いや経験を削ってまで投資を優先することが、本当にあなたの人生にとってプラスなのか。ここは一度立ち止まって考えたいポイントです。

若年層を振り回すSNSの情報

SNSでは「年間360万円の満額投資が当たり前」「NISA枠を埋めないと将来詰む」といった極端な発信が目立ちます。しかし、これはあくまで発信者の価値観であり、あなたの人生にそのまま当てはめる必要はありません。また、投資額や運用益は他人と比較するものでもありません。

将来への不安から「とにかく投資しなきゃ」と焦る気持ちは自然です。でも、焦りから始めた投資は生活を圧迫し、心の余裕まで奪ってしまうことがあります。

そのような状態では、冷静な判断ができず、結果として投資がうまくいかないことも多いでしょう。株式投資の世界では、せっかちな人ほど狼狽売りをし、腰の重い人ほどホールドするため後者が有利だと言われます。焦りは投資の大敵なのです。

時間という最大の武器

20〜30代には、長い運用期間という大きなアドバンテージがあります。だからこそ、NISA枠を急いで埋める必要はまったくありません。毎月1万円でも、長期で積み立てれば十分に将来の備えになります。

大切なのは、無理なく継続できる金額で投資を続けること。積立額を増やすために生活を削る必要はありません。

身につけたい金融リテラシー

投資は「余剰資金」で行うのが大原則です。そのためには、

  • 生活防衛資金を確保する
  • リスク資産と現預金のバランスを保つ
  • 無理のない積立額を設定する

こうした基本的な知識が欠かせません。しかし日本では、義務教育で金融教育が十分に行われてきませんでした。だからこそ、自分で学ぶ姿勢が求められます。

SNSの断片的な情報ではなく、信頼できる情報源から知識を積み上げていくことが大切です。情報源については、過去の記事「アラカンがオルカン投資を始める理由」もご参照ください。

自分への問いかけ

投資に熱中するあまり、「資産形成が人生の中心になってしまう」そんな状態に陥っていないでしょうか。お金があることは、幸せな人生を送るための必要条件にはなるかもしれませんが、十分条件ではありません。

若いうちにしかできない経験、仲間との時間、自己投資によって広がる可能性。これらを犠牲にしてまで投資を優先することが、本当にあなたの人生を豊かにするのか。一度、自分に問いかけてみてほしいのです。

最後に

インフレ対策や老後資金の確保を目的とするなら、投資は非常に有効なツールです。でも、あなたの人生の主役は「お金」ではなく「あなた自身」です。

資産形成に成功しても、自己投資を怠った結果、やりがいや生き甲斐を見失ってしまっては本末転倒です。投資と上手に付き合いながら、今しかできない経験も大切にしてほしい。そんな思いを込めて、このテーマをお届けしました。

離婚後の「共同親権」が可能に

2026-04-06

令和8年4月1日施行の民法改正をわかりやすく解説

令和6年5月に成立した民法等の改正(令和6年法律第33号)により、令和8年4月1日から、離婚後も父母が「共同親権」を選択できる制度が始まりました。

日本では長らく、離婚後の親権は父母のどちらか一方に限られてきましたが、今回の改正は大きな転換点となります。背景には、離婚に直面する子どもの利益をより確実に守るという目的があります。

離婚後も「共同親権」が選べるように

これまでの民法では、離婚後は必ず父母の一方を親権者と定める必要がありました。しかし改正後は、

  • 共同親権を選ぶ
  • 単独親権を選ぶ

のいずれも可能になります(民法819条)。協議離婚の場合は、父母が話し合いによってどちらの形を選ぶかを決めます。

協議がまとまらない場合や裁判離婚の場合には、家庭裁判所が、父母と子の関係、父母間の状況などを総合的に考慮し、子の利益を最優先に判断します。この手続では、父母双方の意見を聴くことが義務づけられ、子どもの意思を把握する努力も求められています。

共同親権が認められないケース

子どもの安全を守るため、次のような場合には、家庭裁判所は必ず単独親権としなければなりません。

  • 虐待のおそれがあると認められるとき
  • DVのおそれその他の事情により、父母が共同で親権を行うことが困難なとき

つまり、共同親権は「父母が協力して子を育てられる状況」が前提となります。

出生前離婚・認知の場合の扱い

子の出生前に父母が離婚した場合、親権は母が行います。ただし出生後に父母が協議すれば、父母双方または父を親権者とすることができます。認知された子についても同様で、協議により父母双方または父を親権者とすることが可能です。

すでに単独親権の家庭はどうなるか

今回の改正が施行されても、自動的に共同親権へ変更されることはありません。ただし、施行後は、子ども本人や親族の申立てにより、家庭裁判所が必要と認めれば、単独親権から共同親権へ変更される場合があります。

もっとも、例えば養育費を長期間支払っていないなど、子の利益を損なう事情がある場合には、共同親権への変更は認められにくいと考えられます。また、虐待やDVのおそれがある場合は、当然ながら共同親権は認められません。

親権者変更の判断ポイント

家庭裁判所が親権者の変更を判断する際には、

  • 協議の経過
  • その後の事情の変化
  • 調停やADRの利用状況
  • 公正証書の有無

などが考慮されます。特に、離婚前に一方からの暴力があった場合など、対等な話し合いができなかったケースでは、子の利益を守るために親権者の定めが見直される可能性があります。

まとめ

今回の改正は、父母の離婚後も「子どもにとって最も良い形は何か」を柔軟に選べるようにするものです。一方で、共同親権は父母の協力が前提となるため、状況によっては単独親権の方が子どもの利益に適う場合もあります。

制度のポイントを理解し、適切な選択ができるよう、専門家への相談も有効です。

令和8年5月21日、民事裁判手続はいよいよ全面デジタル化へ

2026-03-30

フェーズ3始動と司法書士実務への影響

令和8年5月21日、改正民事訴訟法、民事訴訟費用等に関する法律が全面施行され、いわゆる「民事裁判手続のデジタル化・フェーズ3」が本格的に始動します。訴状や準備書面の提出、送達、記録管理など、これまで紙を前提としていた多くの手続が、オンラインを前提とした運用へと移行します。

背景には、事件処理の迅速化、裁判所へのアクセス向上、社会全体のデジタル化への対応といった課題があります。郵送や窓口提出に依存する従来の運用では、時間・コスト・負担が大きく、「裁判は遠い」という印象を強めていました。こうした状況を改善するために段階的なデジタル化が進められ、その最終段階がフェーズ3です。

フェーズ3で変わる主なポイント

1.電子申立ての原則化
裁判所の電子提出システム「mints」を用いた電子申立てが原則となり、一定の資格者については電子提出が義務付けられます。例えば、司法書士が簡易裁判所で訴訟代理人として手続に関与する場合がこれに該当します。

紙での提出は、例外的な場合(訴訟代理人の責めに帰することができない事由によりインターネットを利用できないとき)を除き、認められない運用が基本となります。

2.システム送達・記録の電子化
裁判所からの送達はシステム上で行われ、事件記録も電子データとして管理・閲覧されます。郵送のタイムラグや記録閲覧のための来庁負担が軽減され、手続のスピードと利便性が向上します。

司法書士法3条1項4号業務とmintsの関係

ここで重要となるのが、司法書士法3条1項4号業務とmintsの位置付けです。3条1項4号は「裁判所に提出する書類等の作成」を内容とする、いわゆる裁判書類作成関係業務であり、6号〜8号に規定される「簡裁訴訟代理等関係業務(認定司法書士)」とは明確に異なります。つまり、4号業務は認定司法書士でなくても受任可能な業務です。

そして、司法書士がこの4号業務として受任した場合には、本人または司法書士自身のアカウントを利用して、mintsにおいて電子提出を行うことが可能とされています。この場面で司法書士が行っているのは、あくまで「裁判所に提出する書類の作成と、その提出行為」であり、訴訟代理人としての活動ではありません。

  • 4号:裁判書類作成関係業務(非認定司法書士も可)
  • 6〜8号:簡裁訴訟代理等関係業務(認定司法書士のみ)

この区別を正確に理解したうえで、mints上の提出行為をどのように位置付けるかが、今後の実務上の重要なポイントとなります。

本人訴訟におけるサポートの位置付け

本人訴訟において当事者が自らmintsを利用するケースも想定されます。この場合、本人またはその支援者(以下「サポータ」といいます。)のアカウントを利用する際のサポートは、あくまで機器操作等にとどまる行為です。

  • パソコンやスマートフォンの基本操作
  • 画面の見方やボタン位置の説明
  • ファイルのアップロード方法の案内

といった支援は、司法書士・弁護士に限られたものではなく、資格の有無を問わず誰でも行うことができる一般的なサポートです。

したがって、この種の「操作支援」は、司法書士法3条に規定される司法書士業務とは明確に区別されるべき領域です。司法書士が行うべき業務は、あくまで法令に基づく書類作成や手続の代理・代行であり、単なる機器操作支援とは異なることを明確にしておく必要があります。

司法書士に求められる視点

フェーズ3の全面施行により、司法書士には次のような視点が求められます。

  • 4号業務としての電子提出の位置付けを正しく理解すること
  • 6〜8号の簡裁訴訟代理等関係業務との違いを、依頼者にも分かりやすく説明できること
  • 本人アカウントの操作支援・サポータアカウントによる作業代行支援と、司法書士業務としての書類作成・提出行為を明確に線引きすること

民事裁判手続のデジタル化は、司法書士にとって新しい負担であると同時に、業務の幅と価値を再定義する契機にもなります。自らの業務範囲と責任を意識しながら、mintsを含む新しい手続環境をどう使いこなしていくか――そこに、これからの司法書士実務の腕の見せどころがあると言えるでしょう。

住所変更登記が義務化へ

2026-03-23

令和8年4月1日から始まる新しいルールとは

令和8年4月1日から、住所や氏名(法人の場合は本店所在地や名称)に変更があった場合、不動産登記における「所有権登記名義人の住所・氏名(名称)変更登記」の申請が義務化されます。

会社が本店移転や商号変更を行った場合には、商業登記として「本店移転登記」や「商号変更登記」を申請する義務があります。しかし、それとは別に、不動産を所有している場合には、不動産登記簿上の名義人情報を最新のものに変更するための登記(原因:年月日本店移転/年月日商号変更による名義人変更登記)を申請する必要があります。

これまでは、所有者の住所や氏名が変わっても、その変更登記は任意でした。引っ越しのたびに登記手続きを行うのは手間も費用もかかるため、実務上は放置されるケースが多く、登記簿上の情報が古いままになっている不動産が少なくありません。

しかし、国の調査では、所有者不明土地が発生する原因の約3分の1が「住所変更登記がされていないこと」にあるとされています。相続登記の義務化に続き、今回の住所変更登記の義務化は、こうした社会問題の解消を目的とした重要な制度改革です。

義務化の内容と過料について

住所や氏名に変更があった場合、変更日から2年以内に変更登記を申請する義務が課されます。また、令和8年4月1日より前に住所や氏名に変更が生じていた場合は、令和10年3月31日までに変更登記を行う必要があります。

正当な理由なく義務に違反した場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。なお、次のような場合は「正当な理由」と認められることがあります。

  • 検索用情報の申出をしているにもかかわらず、登記官による職権登記がまだ行われていない場合
  • 会社法人等番号の登記がされているが、同じく職権による変更登記が未了である場合
  • 義務者本人が重病等により申請が困難な場合
  • 義務者がDV被害者等で、生命・身体に危険が及ぶおそれがあり避難を余儀なくされている場合 など

「検索用情報の申出」とは

住所変更登記を簡素化するため、所有者自身が法務局に対して「検索用情報の申出」を行うことができます。

  • すでに不動産を所有している方は、登記申請とは別に単独で申出が可能
  • ウェブブラウザ上で手続きできるため、来庁の必要なし
  • 登録免許税などの費用は不要

申出をしておくと、登記官が住民票等の情報をもとに職権で住所変更登記を行うことが期待できます。詳しくは、以前の記事「所有権移転登記申請に氏名ふりがな、メールアドレスが必要になります(令和7年4月21日以降)」もご参照ください。

売却や抵当権抹消の際は要注意

不動産を売却して所有権移転登記を行う場合や、住宅ローン完済後に抵当権抹消登記を申請する場合、登記簿上の住所が現在の住所と一致していないと手続きが進められません。この場合、職権による変更を待つことはできず、ご自身で住所変更登記を申請する必要があります。

まとめ

住所変更登記の義務化は、「所有者不明土地」という社会問題を解決するための、相続登記義務化に続く重要な改正です。引っ越しや結婚などで住所・氏名が変わった際には、早めに手続きを進めておくことで、将来の不動産取引や相続の場面で余計な負担を避けられます。

制度の詳細や手続き方法について不安がある場合は、司法書士にご相談いただくことで、状況に応じた最適なサポートを受けられます。

教育資金贈与信託の廃止と、これからの教育資金の渡し方

2026-03-16

2026年3月で制度終了へ

祖父母や父母が、子や孫の教育資金として最大1,500万円まで非課税で贈与できる「教育資金贈与信託」。

2013年の導入以来、多くの家庭で利用されてきましたが、2026年3月31日をもって制度が終了することが決まりました。最新の税制改正大綱では、適用期限を延長せず、そのまま廃止する方針が明記されています。

なぜ廃止されるのか

制度終了の背景には、主に次のような理由があります。

1.利用者の減少
制度開始当初は注目を集めましたが、近年は利用件数が伸び悩んでいました。教育費の支払い方法が多様化し、制度の使い勝手が必ずしも良くなかったことも影響しています。

2.富裕層に偏るとの指摘
一括で数百万円〜1,500万円を拠出する仕組みのため、どうしても利用者が富裕層に偏りがちでした。その結果、「格差の固定化につながるのではないか」という懸念が指摘されていました。

3.こどもNISAの創設
2027年開始予定の「こどもNISA」は、子どもの将来資金を非課税で育てられる新制度です。教育資金贈与信託と役割が重複する面もあり、政策として整理が進んだと考えられます。

今後利用できる制度

制度がなくなると「教育資金の援助ができなくなるのでは?」と心配される方もいますが、実はその必要はありません。以下の方法は、制度廃止後も引き続き利用できます。

  • 暦年贈与(年間110万円まで非課税)
    もっとも一般的な贈与方法です。毎年110万円以内であれば贈与税はかかりません。
  • 相続時精算課税制度
    2,500万円までの贈与が非課税となり、将来相続時に精算する制度です。早めに資産を移転したい場合に有効です。
  • 家族信託の活用
    教育資金に限らず、財産管理全般を柔軟に設計できます。認知症対策としても注目されています。活用例については、過去の記事「孫に教育資金を贈与するには」もご参照ください。
  • 必要な都度の教育費の支払いはもともと非課税
    意外と知られていませんが、直系血族などの扶養義務者相互間において、生活費や教育費として「通常必要と認められる範囲」で贈与された財産は、もともと贈与税の課税対象外です。

    「教育費」とは、被扶養者(子や孫)の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費などをいい、義務教育に限られません。つまり、入学金・授業料・塾代などを必要な都度支払う場合は、制度の有無にかかわらず非課税です。このルールは制度廃止後も変わりません。

まとめ

教育資金贈与信託は2026年3月で終了しますが、教育資金の援助そのものができなくなるわけではありません。むしろ、こどもNISAや家族信託など、より柔軟な選択肢が広がっています。

ご家庭の状況に応じて最適な方法は異なります。制度の特徴を理解し、無理のない形で将来の教育資金を準備していきましょう。

民法における「代理」と「使者」の違いをわかりやすく解説

2026-03-09

はじめに

契約の場面では、本人が直接手続きを行わず、別の人を介して取引が進むことがあります。このとき登場するのが「代理人」と「使者」です。どちらも本人以外の誰かが動くという点では似ていますが、民法上は明確に区別されており、理解しておくとトラブル防止にも役立ちます。

代理とは

民法上の代理とは、代理人が本人に代わって意思表示を行い、その法律効果が直接本人に帰属する制度です。代理人は自ら判断して意思表示を行う主体であり、契約の相手方から見れば、代理人の言動がそのまま本人の行為として扱われます。

代理制度が必要とされる理由は主に次の二つです。

  • 活動範囲の拡大:本人が直接動けない場面でも取引を進められる(任意代理)
  • 私的自治の補完:意思能力・行為能力のない者に代わり、法定代理人が契約等を行うことで取引の安全を確保する(法定代理)

代理には、本人が任意に権限を与える「任意代理」と、法律の規定で権限が発生する「法定代理」があります。

使者とは

これに対して使者は、本人がすでに決めた意思をそのまま相手に伝えるまたは表示するだけの存在です。意思表示の主体はあくまで本人であり、使者自身には判断権限がありません。

例えば、上司が部下に「この条件で契約してきて」と指示し、部下がそのまま伝えるだけなら部下は使者です。部下が自分の判断で条件を変更できるわけではありません。

項目ごとに比較

項目代理使者
意思表示の主体代理人本人
本人に要求される能力意思能力・行為能力ともに不要(代理人が主体となるため)意思能力・行為能力が必要(本人が主体)
代理人・使者に必要な能力意思能力は必要だが行為能力は不要(制限行為能力者でも代理人になれる)意思能力・行為能力ともに不要(伝達・表示行為にすぎないため)
意思表示の瑕疵の判断基準代理人の主観で判断本人の主観で判断
錯誤の有無代理人の意思と表示が食い違う場合に生じる本人の意思と使者の表示が食い違う場合に生じる
復任権任意代理は原則なし。法定代理は認められる(民法104・105条)権限が小さいため問題となる場面は少ないが、復任は認められる

有権代理と無権代理

代理人が権限の範囲内で行動すれば「有権代理」となり、契約の効果は当然に本人へ帰属します。一方、権限がないのに代理行為をした場合は「無権代理」となり、本人が追認しない限り契約は確定しません(不確定無効と呼ばれることもあります)。

無権代理は相手方に不利益を与える可能性があるため、民法は表見代理制度を設けて相手方を保護しています。これは代理制度の大きな特徴であり、使者には明文規定がありません。

まとめ

代理と使者の最大の違いは、判断して意思表示をする主体が誰かという点にあります。

  • 代理人:自ら判断して意思表示する → 効果は本人に帰属
  • 使者:本人の意思を伝える・表示するだけ → 主体は本人

実務では両者の区別が曖昧になる場面もありますが、法律効果の帰属やトラブル時の責任関係を考えるうえで、両者の違いを理解しておくことは非常に重要です。

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