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民法における「代理」と「使者」の違いをわかりやすく解説

2026-03-09

はじめに

契約の場面では、本人が直接手続きを行わず、別の人を介して取引が進むことがあります。このとき登場するのが「代理人」と「使者」です。どちらも本人以外の誰かが動くという点では似ていますが、民法上は明確に区別されており、理解しておくとトラブル防止にも役立ちます。

代理とは

民法上の代理とは、代理人が本人に代わって意思表示を行い、その法律効果が直接本人に帰属する制度です。代理人は自ら判断して意思表示を行う主体であり、契約の相手方から見れば、代理人の言動がそのまま本人の行為として扱われます。

代理制度が必要とされる理由は主に次の二つです。

  • 活動範囲の拡大:本人が直接動けない場面でも取引を進められる(任意代理)
  • 私的自治の補完:意思能力・行為能力のない者に代わり、法定代理人が契約等を行うことで取引の安全を確保する(法定代理)

代理には、本人が任意に権限を与える「任意代理」と、法律の規定で権限が発生する「法定代理」があります。

使者とは

これに対して使者は、本人がすでに決めた意思をそのまま相手に伝えるまたは表示するだけの存在です。意思表示の主体はあくまで本人であり、使者自身には判断権限がありません。

例えば、上司が部下に「この条件で契約してきて」と指示し、部下がそのまま伝えるだけなら部下は使者です。部下が自分の判断で条件を変更できるわけではありません。

項目ごとに比較

項目代理使者
意思表示の主体代理人本人
本人に要求される能力意思能力・行為能力ともに不要(代理人が主体となるため)意思能力・行為能力が必要(本人が主体)
代理人・使者に必要な能力意思能力は必要だが行為能力は不要(制限行為能力者でも代理人になれる)意思能力・行為能力ともに不要(伝達・表示行為にすぎないため)
意思表示の瑕疵の判断基準代理人の主観で判断本人の主観で判断
錯誤の有無代理人の意思と表示が食い違う場合に生じる本人の意思と使者の表示が食い違う場合に生じる
復任権任意代理は原則なし。法定代理は認められる(民法104・105条)権限が小さいため問題となる場面は少ないが、復任は認められる

有権代理と無権代理

代理人が権限の範囲内で行動すれば「有権代理」となり、契約の効果は当然に本人へ帰属します。一方、権限がないのに代理行為をした場合は「無権代理」となり、本人が追認しない限り契約は確定しません(不確定無効と呼ばれることもあります)。

無権代理は相手方に不利益を与える可能性があるため、民法は表見代理制度を設けて相手方を保護しています。これは代理制度の大きな特徴であり、使者には明文規定がありません。

まとめ

代理と使者の最大の違いは、判断して意思表示をする主体が誰かという点にあります。

  • 代理人:自ら判断して意思表示する → 効果は本人に帰属
  • 使者:本人の意思を伝える・表示するだけ → 主体は本人

実務では両者の区別が曖昧になる場面もありますが、法律効果の帰属やトラブル時の責任関係を考えるうえで、両者の違いを理解しておくことは非常に重要です。

遺言に反する任意後見人の法律行為に関する判例(東京地判平成30年11月27日)

2026-03-02

事実関係

被相続人Aは生前、公正証書遺言を作成し、特定の財産(以下「本件財産」といいます)を相続人Xに承継させる旨を定めていました。その後、AはBを任意後見受任者とする任意後見契約を締結し、判断能力が低下したため家庭裁判所の審判を経てBが任意後見人に就任しました。

Bは任意後見人として本件財産を売却しましたが、これに対し、Xの兄弟Yは「遺言では本件財産をXに相続させることとなっていたにもかかわらず、任意後見人による売却は遺言内容と抵触し、遺言は無効である」と主張しました。

これに対し、Xは「売却行為はA自身によるものではなく、遺言との抵触はない」として、本件財産の所有権確認を求めて訴えを提起しました。

判旨

東京地裁は、任意後見人Bによる売却行為は民法第1023条第2項にいう「生前処分その他の法律行為」には該当しないと判断しました。したがって、本件遺言は無効とはならないとしました。

遺言は相続開始時に効力を生じるものであり、生前の法律行為を直接制約するものではありません。後見人の行為が遺言内容と抵触していても、それ自体が直ちに無効となるわけではなく、後見人の権限行使の適法性は「本人の利益保護」という観点から判断されるべきです。

もっとも、後見人が本人の意思や利益を顧みず、遺言を無視して財産処分を行った場合には、信義則違反や権限濫用として無効となり得ると付言しました。

考察

この判決は、遺言と任意後見制度の交錯に関する実務上の重要な指針を示しています。遺言は将来効を有する制度であり、後見人の行為を直接拘束するものではありません。しかし、後見人は本人意思を尊重すべき立場にあり、遺言という「本人意思の最終的表明」を軽視することは許されないのです。

したがって、後見人の財産処分が遺言内容と矛盾する場合には、本人意思尊重義務との関係で適法性が厳しく問われることになります。

実務的には、

  • 任意後見契約締結時に遺言との整合性を確認すること
  • 後見人が財産処分を行う際には遺言の存在を考慮し、本人意思を最大限尊重すること

が求められます。

この東京地裁判決は、「遺言は後見人を直接拘束しないが、後見人は遺言を無視できない」というバランスを示した点で、後見制度と相続法の接点を理解する上で極めて有益です。司法書士や弁護士にとって、任意後見契約の設計や遺言作成の助言に際して必ず参照すべき判例といえます。

一般の方にとっても、遺言と任意後見制度の関係を理解することで、将来の財産管理や相続対策に役立つ知識となります。

三浦璃来・木原龍一組、逆転の金メダル

2026-02-24

金メダル獲得

ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート・ペアで、三浦璃来選手と木原龍一選手が日本史上初となる金メダルを獲得しました。ショートプログラム(SP)ではまさかのミスが重なり5位発進。しかし、フリーでは世界歴代最高得点を更新する圧巻の演技を披露し、一気に頂点へと駆け上がりました。

私はライブで観ることができなかったのですが、朝のニュースで結果を知り、表彰式の映像を見た瞬間に涙がこぼれました。自分でも驚くほど涙もろいのですが、この感動はきっと多くの人が共有したものだと思います。

2人の生い立ち

この逆転劇の背景には、2人が歩んできた長い道のりがあります。三浦選手は大阪府出身。幼い頃から明るく表現力豊かなスケーターとして知られ、ジュニア時代からペア競技に挑戦してきました。

一方の木原選手は愛知県出身で、もともとはシングル選手として活躍。その後ペアに転向し、海外選手とのペアを経験したのち、2019年に三浦選手と組むことになります。

主な戦績

ペア結成当初は、世界のトップと比べると技術面でも経験でも大きな差がありました。しかし、持ち前の粘り強さと努力で急成長。

  • 2022年:四大陸選手権優勝
  • 2023年:日本ペア史上初の世界選手権優勝
  • 2024年・2025年:世界の頂点を維持

こうした実績を積み重ね、五輪でも金メダル候補として注目される存在へと成長していきました。

五輪本番

それでも、五輪という特別な舞台では何が起こるか分かりません。SPでのミスは、2人にとって大きなショックだったはずです。演技直後、うなだれる木原選手の姿は、まるで五輪が終わってしまったかのような絶望感を漂わせていました。

しかし、フリーが始まるとその不安を一切感じさせない堂々とした演技を披露。スピード、ジャンプ、リフト、スロージャンプ──すべてが完璧にかみ合い、観客を魅了しました。得点が表示された瞬間、2人は顔を見合わせ、涙をこらえきれない様子で抱き合いました。

最後まで諦めない

今回の金メダルは、技術の高さだけでなく、「ミスをしても最後まで諦めない」という強い心が生んだ結果です。SPの失敗を引きずらず、むしろ力に変えてフリーで最高の演技をする──その姿は、多くの人に勇気を与えたはずです。

おめでとうございます!

三浦選手、木原選手、本当におめでとうございます。2人が見せてくれた挑戦し続ける姿勢は、スポーツの枠を超えて、私たちの日常にも大切なことを教えてくれました。これからのさらなる活躍も、心から楽しみにしています。

積極財政と物価高の時代におけるインデックス投資

2026-02-16

はじめに

2026年の衆議院選挙後、新政権が掲げる積極財政路線が注目を集めています。大規模な財政出動が続くことで、株式市場や為替市場は敏感に反応し、今後の経済環境についてさまざまな見方が語られています。

司法書士として相談を受ける中でも、「物価上昇が続く中で資産をどう守るべきか」「相続や贈与を見据えた資産形成はどう考えるべきか」といった声が増えています。本記事では、政治的評価ではなく制度理解を目的に、現在の経済環境とオルカン・S&P500などのインデックス投資の位置づけを整理します。

積極財政がもたらす市場環境

積極財政は一般に以下のような影響が議論されます。

  • 株価への影響
    財政支出が企業活動を後押しする可能性がある一方、金利上昇圧力が相場の変動を大きくする場面も想定されます。2026年2月現在、長期金利の上昇ピッチは速く、市場の不安定さが増しています。
  • 為替の変動
    金利差や市場心理の変化により、円安・円高のどちらにも振れやすい状況が続く可能性があります。実際、衆院選直後にはドル円が急落する場面もあり、為替の予測がいかに難しいかを改めて感じさせます。
  • インフレ加速の懸念
    既に物価上昇が続く中、財政拡大がさらなるインフレ圧力につながるとの指摘もあります。生活コストの上昇は家計に直接影響するため、資産形成の重要性はむしろ高まっています。

インフレと相続・贈与の関係

インフレ局面では、相続や贈与の計画にも影響が出ます。

  • 金融資産のみを保有している場合の懸念
    相続税の基礎控除額は法改正がない限り固定されています。そのため、インフレによって金融資産の評価額が増加すると、これまで課税対象でなかった家庭でも相続税が発生するケースが増える可能性があります。
  • 不動産への資産移転のメリット
    不動産は、実勢価格よりも低い水準で相続税評価額が算定されることが多く、金融資産を不動産に組み替えることで相続税評価額を圧縮できるという特徴があります。もちろん、管理コストや空室リスクなどの検討は必要ですが、インフレ局面では実物資産の価値が相対的に安定しやすい点も注目されます。
  • 遺言書や贈与との相性
    金融資産・不動産いずれも遺言書で指定しやすく、計画的な資産移転が可能です。ただし、名義預金と誤解されないよう、贈与契約書の作成や管理には注意が必要です。(詳細は以前の記事「NISA改正で未成年も利用可能に!?」をご参照ください。)

積立を続ける意義

株価、為替、物価が大きく動く局面では、「今は投資を控えるべきでは」と不安になる方もいます。しかし、インデックス投資の本質は 短期的な変動に振り回されないこと にあります。

  • 積立は価格変動を平準化する
    高値でも安値でも淡々と買い続けることで平均取得単価が安定し、長期的なリスクを抑えやすくなります。また、円高・円安のどちらの局面でも積立を継続することで、為替リスクの平準化にもつながります。
  • 市場全体の成長を取り込む仕組み
    個別企業ではなく市場全体に投資するため、経済成長の恩恵を広く受けられます。
  • インフレへの備えとしての成長資産
    現金だけを保有するより、成長資産を一定割合持つことで、物価上昇に対する防御力を高めることができます。もちろん、投資には元本割れのリスクがあり、商品ごとにコストやリスクは異なります。制度面でもNISAの非課税枠や課税口座との使い分けなど、理解しておくべき点は多くあります。

継続は力なり

積極財政、為替変動、インフレ加速といった要素が重なる現在、経済環境は不透明です。しかし、こうした不確実性こそが、長期・分散・低コストというインデックス投資の強みを際立たせます。

司法書士としての視点からも、相続・贈与の計画において金融資産と不動産のバランスを考える重要性が高まっています。そのうえで、短期的な相場変動に惑わされず、計画的に積立を継続することは依然として賢明な選択肢の一つと言えるでしょう。

退職代行モームリ代表者が逮捕

2026-02-09

報道記事

2026年2月、退職代行サービス「モームリ」を運営する会社の代表者らが、弁護士法違反(非弁行為・非弁提携)容疑で逮捕されました。報道によれば、退職希望者の案件のうち、未払い賃金など法律判断が必要なケースを特定の弁護士にあっせんし、その見返りとして「広告費」名目で金銭を受け取っていたとされています。

退職代行サービス自体は、本人の「退職の意思を伝える」だけであれば違法ではありません。しかし、金銭請求や交渉を伴う行為は「法律事務」に該当し、弁護士でなければ行えません。

弁護士法の規定

弁護士法第72条は、「弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事件に関する法律事務を取り扱うことまたはその周旋をすること」を禁止しています。

ここでいう「法律事件に関する法律事務」には、

  • 未払い賃金の請求
  • 損害賠償請求の交渉
  • 退職条件の交渉

など、法律判断や交渉を伴う行為が含まれます。

今回の事件では、退職代行会社が弁護士に案件を紹介し、その対価として金銭を受け取っていた点が「非弁提携」に該当すると判断されたとみられます。

司法書士に関する非司行為、不当誘致

司法書士法にも弁護士法と同様の規定があり、司法書士法第73条において非司行為を禁止する規定が置かれています。さらに、司法書士にはもう一つ重要な規制があります。

紹介料の授受などの「不当誘致」は司法書士行為規範(旧:司法書士倫理)において、

  • 事件の紹介料を支払う・受け取る
  • 業務獲得のために不当な誘致を行う

ことが明確に禁止されています。 つまり、弁護士法の非弁提携と同様、司法書士も「紹介料ビジネス」に関わることは許されません。

注意すべきポイント

退職代行サービスや法律トラブルの相談先を選ぶ際には、次の点に注意してください。

  • 「交渉します」とうたう退職代行は危険
    未払い賃金の請求や退職条件の交渉は、弁護士でなければ扱えません。
  • 法律判断が必要な場面は必ず弁護士へ
    退職トラブル、損害賠償、残業代請求などは弁護士の専門領域です。
  • 司法書士・行政書士でも「交渉」はできない
    司法書士業務は登記・供託・簡裁代理などに限定されており、退職交渉や金銭請求の代理はできません。

まとめ

今回のモームリ事件は、専門職以外が法律事務に踏み込む危険性を改めて示した事例です。 退職代行や法律トラブルの相談先を選ぶ際は、

  • その業者が法律事務に踏み込んでいないか
  • 紹介料ビジネスに関わっていないか

を確認することが大切です。そして、法律判断が必要な場面では、必ず弁護士に相談することが最も安全な選択だと考えます。

民事訴訟法における合意管轄の理解

2026-02-02

はじめに

以前の記事「民事訴訟における管轄について」では、管轄の基礎知識を解説しました。今回は、当事者間の合意によって生ずる、法定管轄とは異なる「合意管轄」について取り上げます。

意義

民事訴訟法上の「合意管轄」とは、当事者が契約等によって、どの裁判所に訴えを提起するかを事前に取り決める制度です。通常は法律で定められた管轄裁判所に訴えを起こしますが、当事者の合意によりその範囲を変更できる点に特徴があります。

法定管轄は当事者の便宜を考慮して定められていますが、当事者がそれとは異なる管轄を希望する場合には、これを認めても差し支えないと考えられています。合意管轄により、紛争解決の効率化や予測可能性の確保が期待されます。

性質

合意管轄は、当事者の意思に基づく「任意管轄」の一種です。法律で定められた強制的な管轄(専属管轄)とは異なり、柔軟に選択できる点が特徴です。ただし、専属管轄が定められている事件については合意管轄を設定できません。

すなわち、当事者の意思を尊重しつつも、司法制度の安定性を保つための制約が存在します。なお、管轄の合意は契約と同時に締結されることが多いですが、その効力は訴訟法上の規定に基づくため、私法上の契約が解除されても管轄合意には影響しません。

内容

合意管轄の典型的な内容は、特定の裁判所を指定することです。例えば「東京地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする」と契約書に明記するケースです。

指定できる裁判所は、第一審の管轄裁判所を定めるもの、一定の法律関係に基づく訴えに関するもの及び法定管轄と異なる定めをするものに限られます。つまり、当事者に合理的関連性のある裁判所でなければならず、全く無関係な裁判所を選ぶことは許されません。

方式・時期

合意管轄は、原則として書面による合意が必要です。契約書や覚書に条項として盛り込むのが一般的であり、口頭の合意は証明が困難なため実務上は認められません。

合意の時期については訴訟提起前が通常ですが、時期に制限はありません。もっとも、管轄は訴え提起時を基準として定まる点に留意が必要です。

効力

有効に成立した合意管轄は、当事者を拘束します。他の裁判所に訴えを提起した場合でも、裁判所は原則として直ちに却下せず、申立てや職権により管轄裁判所へ移送します。

裁判所は職権で管轄違いを判断するため、合意管轄が存在する場合にはその効力が尊重されます。

最後に

合意管轄は、民事訴訟法において当事者の意思を尊重しつつ、紛争解決の効率性を高める重要な制度です。

契約実務においては、特定の裁判所のみに管轄を認め、その他の裁判所の管轄を排除する「専属的合意管轄条項」を設けることで将来の紛争に備えることが可能です。ただし、その有効性や制約を十分に理解したうえで条項を設計することが不可欠です。

夫婦間の居住用不動産の贈与特例とは?わかりやすく解説

2026-01-26

はじめに

夫婦の間で自宅を贈与する場合、「贈与税が高くて難しそう」というイメージを持つ方は少なくありません。ところが、一定の要件を満たせば、最大2,000万円まで贈与税が非課税になる特例が用意されています。それが「夫婦間の居住用不動産の贈与特例」です。

この制度は、長年連れ添った夫婦の生活を安定させるために設けられたもので、相続対策としても有効です。特に、要件を満たしたうえで正しく申告を行えば、生前贈与加算の対象外となる点は大きなメリットです。

特例の内容

この特例を利用すると、配偶者から贈与された自宅、または自宅を取得するための資金について、2,000万円まで贈与税が非課税となります。さらに、通常の基礎控除110万円も併用できるため、合計2,110万円まで非課税となります。

評価額は、
・土地:相続税評価額(路線価)
・建物:固定資産税評価額
を用いて算定します。

主な適用要件

  • 婚姻期間が20年以上であること
    内縁関係などの事実婚は対象外で、戸籍上の婚姻期間が必要です。
  • 贈与の対象が「居住用不動産」またはその取得資金であること
    国内の自宅そのもの、または自宅購入のための資金が対象です。
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに実際に居住していること
    住む意思だけでなく、実際に居住し、その後も継続して住む見込みが求められます。

実際の使用例

老後の生活を見据えて、配偶者に自宅を確保しておきたいというニーズから利用されることが多い制度です。また、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の遺贈または贈与が行われた場合には、持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。

これは、遺産分割における配偶者の相続分を計算する際、自宅の価額を特別受益として控除しないというものです。老後の生活保障を厚くするために設けられた民法上の規定です(民法第903条第4項)。

注意点

  • 贈与税の申告が必要
    非課税であっても申告は必須です。申告期限は、贈与のあった年の翌年3月15日です。
  • 不動産取得税や登録免許税は別途かかる
    なお、相続によって自宅を取得した場合には不動産取得税はかかりませんし、登録免許税の税率も贈与の5分の1となります。
  • 将来売却する場合、取得費の扱いが変わることがある
    取得費は原則として贈与者の取得費を引き継ぎます。ただし、受贈者が贈与に伴い支払った登録免許税・不動産取得税などは取得費に加算できます。また、贈与後に受贈者が増改築費を負担した場合など、取得費が増えるケースもあります。

最後に

夫婦間の居住用不動産の贈与特例は、長年連れ添った夫婦の生活を守るための心強い制度です。要件を満たせば、2,000万円まで贈与税が非課税となり、相続対策としても大きな効果があります。

司法書士は、依頼者の代理人として贈与による所有権移転登記を行いますが、税務面については専門外です。制度を正しく活用するためにも、税理士など専門家の関与は欠かせません。必要に応じて、資産税に詳しい税理士をご紹介することも可能です。

所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日施行)について

2026-01-19

はじめに

以前の記事「相続した不動産がわからないときの対処法」において、相続した不動産を調べる方法について解説しましたが、そこで触れていない調査方法が新たに加わることになります。漏れなく完全に調べつくすことが可能になるわけではありませんが、相続登記を漏らさず申請することに資するのは間違いありませんので、知っておいて損はないと思います。

制度の概要

相続登記が必要な不動産を容易に把握することができるよう、登記官において、特定の被相続人が登記簿上の所有者として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する制度が新たに設けられました。

名寄帳は、市町村毎の課税台帳に基づいて作成されますが、所有不動産記録証明制度では、全国の登記記録から登記名義人の住所・氏名が一致するものがリスト化されます。つまり、市町村の数だけ名寄帳を取り寄せなくても、一度の請求で全国の不動産を把握することが可能となるわけです。

非課税不動産・未登記建物

固定資産税非課税の不動産については、納税通知書・課税明細書には記載されませんが、名寄帳には記載されます。未登記建物で課税されるものについては、両者とも記載されます。また、共有不動産については、納税通知書・課税明細書が送られてこないことがありますので、確認できない場合があります。

対して、所有不動産記録証明制度では、非課税不動産及び共有不動産のどちらも確認することはできますが、未登記建物については当然のことながら記載はされません。

被相続人の住所の把握

不動産登記においては、登記名義人が同姓同名であっても住所が違えば別人と扱われます。証明書交付請求書には、被相続人の住所・氏名を指定して検索条件を記入しなければなりません。

生まれてから亡くなるまで住所移転を一切していないこともあるかもしれませんが、稀なケースです。したがって、万全を期すには死亡時の住所だけでなく、移転前の全ての住所で検索する必要がでてくるのです。また、婚姻、養子縁組等によって改氏している場合には旧氏で検索する必要もあるでしょう。

住所を調べるためには、住民票・戸籍の附票を取得する必要がありますが、除票の保存期間が5年(令和元年以降は、150年。)であったことから古い住所の履歴が判明しないことも多いです。そのことから、上述したように漏れなく所有不動産を調べることが可能となるわけではないのです。

令和8年4月、住所変更登記の義務化、職権による住所変更登記制度が始まります。所有者不明土地問題解消のために法整備がされていますが、目的を達成するには多くの時間を要するでしょう。

最後に

所有不動産記録証明制度によって名寄帳が不要になるわけではありません。調査方法の選択肢が増えたに過ぎないと考えています。

権利証によって所有不動産が判明することもありますので、権利書全てを1箇所で保管するようにしておくことも相続人に負担をかけないための有効な手段になり得ます。

親御様に対して、所有不動産の有無、権利書の保管場所等を予め聞いておくのが理想ですが、なかなか難しいと思います。また、タダでも売れない負動産は生前に処分しておくことも終活の一つです。相続人からのご相談の増加傾向を鑑みると、お子様、お孫様から感謝されるのは間違いありません。

犯罪被害者等支援弁護士制度とは?(令和8年1月13日施行)

2026-01-13

総合法律支援法の改正

令和6年4月18日に成立し、同月24日に公布された総合法律支援法の一部を改正する法律(令和6年法律第19号。以下「改正法」という。)は、令和7年9月5日の政令によって施行日が定められ、令和8年1月13日に施行されます。

制度の概要

改正法では、新たに「犯罪被害者等支援弁護士制度」が創設されました。この制度は、殺人や重大な性犯罪など深刻な被害を受けた人やその家族が、事件直後の早期段階から弁護士による継続的かつ包括的な支援を受けられるようにすることを目的としています。

被害者は精神的ショックや身体的被害、さらには経済的困窮により、必要な手続を自力で行えないことが少なくありません。こうした現実を踏まえ、被害者が孤立せず適切な支援につながるための仕組みとして制度が設けられました。

特徴・対象

制度の大きな特徴は、原則として日本司法支援センター(法テラス)が費用を負担する点です。これにより、経済的理由で弁護士への相談や依頼をためらう被害者でも支援を受けやすくなります。

対象となるのは、

  • 殺人・強盗殺人など故意の犯罪行為による死亡事件
  • 不同意わいせつ、不同意性交等の性犯罪
  • 傷害・強盗傷人など故意の犯罪行為による負傷で、治療期間が3か月以上のもの
  • または治癒後に犯罪被害給付制度の障害給付金の対象となる障害が残る場合

といった、重大な結果を伴う犯罪被害です。

支援内容

支援内容は多岐にわたり、

  • 被害届・告訴状の作成や提出
  • 捜査機関・裁判所への同行
  • 加害者との示談交渉
  • 損害賠償請求訴訟の代理
  • 犯罪被害者等給付金の申請など行政手続のサポート
  • 報道・取材対応

など、被害者が直面する幅広い課題に対し、弁護士が一貫して寄り添う体制が整えられています。

課題

この制度は、長年にわたり被害者支援の充実を求めてきた日弁連も高く評価しています。一方で、対象犯罪の範囲や資力要件、費用負担の在り方など、今後の詳細設計には慎重な検討が必要です。

特に資力要件は「(事件後の対応に必要な費用負担により)生活の維持が困難となるおそれがある被害者等」と抽象的に規定されており、附帯決議でも制度利用を躊躇させるような負担が生じないよう配慮することが求められています。

最後に

犯罪被害は誰にでも起こり得る問題です。心理的・経済的負担によって被害者が刑事手続など事件後の対応を十分に行えなければ、社会から孤立してしまう危険があります。犯罪被害者等支援弁護士制度が、必要な支援に確実につながる社会づくりに寄与することが期待されています。

新NISA3年目はどう立ち回るか

2026-01-05

株高円安

2025年12月現在、S&P500が最高値を更新するなど米国株価は高値で推移し、日本株も日経平均が50,000円を超えてこちらも好調です。この記事の執筆時点では日銀の利上げは決まっていませんが、市場では1段階の利上げを織込み済みと見られていることから、ドル円は155円前後で推移するのではないでしょうか。

以上を踏まえますと、私を含め新NISAから投資を始めた方は、余程変な金融商品に投資をしていない限り、皆含み益を抱えている状況かと思います。SNS上でも含み益が最高額に達したことを報告するものが散見されますし、投資をすれば誰でも儲かるような楽観的な風潮が高まっているように感じます。

金(ゴールド)の高騰

2025年の出来事で最も印象的だったのは、金の高騰でしょう。年始では14,000円/g台だったものが、同年12月には田中貴金属の店頭小売価格(税込)23,806円/gまで達しました。

たった1年間で60%上昇したわけです。個人投資家の金地金購入が増えたことによって、供給が追い付かず一部の金地金が販売停止される事態になりました。

非常に注目を浴びた金(プラチナ、銀等も同様です。)ですが、私の考えは金に投資する必要はなく、今後もスルーで大丈夫だということです。金からは果実は生じないというのが最大の理由です。

不動産からは賃料、株式からは配当金という法定果実が生じます。配当金については果実ではなく、株式の自益権によるものだという見解もありますが、本質的な差はないと考えています。

『敗者のゲーム』の著者であるチャールズ・エリス氏も「コモディティ取引は投機だ。経済的付加価値を生まない以上、投資とは言えない。」と述べています。

売るべきか

含み益のあるうちに売ったほうがよいのではないかと、私のような投資経験が浅い人ほど考えてしまうのではないでしょうか。実際、投資信託の保有期間は平均すると僅か数年間だとするデータもあるようですし、長期投資を前提とするインデックスファンドを保有している人が売却してしまうことはあると思います。

しかしながら、私自身は売るべきではないと考えています。私の積立額は微々たるものですし、今売却したとしても手にする利益はたかが知れています。それに、インデックス投資は期間が長期になればなるほど効果を発揮するものだからです。

長生きリスク

私は、60歳で年金の繰り上げ受給をするつもりです。自営業者の年金額は本当にごく僅かです。あまりにも少なすぎるので、体が動くうちは働かざるを得ないでしょう。

投資をしている理由の一つに、予想に反して長生きをしてしまった場合に備えることが挙げられます。したがって、インデックスファンドを取り崩すのはかなり先のこととなるでしょうから、2026年の新NISA3年目も積立を継続します。

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