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少額訴訟債権執行について

2023-05-22

はじめに

以前の記事「少額訴訟について解説します!」で少額訴訟手続の制度について解説しましたが、債権者が勝訴判決を得たとしても、債務者が観念して任意に支払いに応じるとは限りません。そのような場合には地方裁判所における強制執行手続に頼らなければならず、債権の実現を簡易迅速に図ることができないことになります。

そこで、少額訴訟において債務名義(債権の存在、範囲を公的に証明した文書)を取得した債権者が、簡易裁判所の裁判所書記官に対して、金銭債権の執行を求めることができる制度を設けることとし、それを少額訴訟債権執行といいます。

ちなみに、司法書士は強制執行手続について代理することはできませんが、少額訴訟債権執行の手続については、請求の価額が140万円までのものであれば代理人となることができます。

利用することができる債務名義

1.少額訴訟における確定判決
2.仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決
3.少額訴訟における訴訟費用又は和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分
4.少額訴訟における和解又は認諾の調書
5.少額訴訟における民事訴訟法第275条の2第1項の規定による和解に代わる決定

1または2により、これに表示された当事者に対し、またはその者のために少額訴訟債権執行を行う場合を除き、執行文(債務名義の執行力の存在と範囲を公証するため、執行文付与機関が債務名義の正本の末尾に付記した文言)の付与を受ける必要があります。

執行証書以外の執行文は事件の記録の存する裁判所の書記官が付与するものとされていますので、簡易裁判所に事件の記録がある場合には、簡易裁判所の書記官が執行文を付与することになりますが、前述したように、強制執行に関する手続になりますので司法書士が代理することはできません。

対して、少額訴訟に係る債務名義についての執行文の付与の申立については、少額訴訟債権執行の手続に含まれるものと解されますので、司法書士が代理することができるものと解されています。

換価

少額訴訟債権執行においては、原則として、金銭債権を差し押さえた債権者が、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときに、その債権を取り立てることにより行われます。転付命令(被差押債権を支払いに代えて券面額で債務者から差押債権者に移転させること)等は認められていません。

また、被差押債権について第三債務者が供託を行った場合に、配当手続不要のときには裁判所書記官による弁済金の交付手続が行われます。

地方裁判所への移行

転付命令等を求めようとする差押債権者は、執行裁判所に対し、転付命令等のいずれの命令を求めるかを明らかにして、債権執行の手続に事件を移行させることを求める旨の申立をしなければならないとされています。

この申立を司法書士が代理人としてすることは可能ですが、移行後の地方裁判所における債権執行の手続においては代理することは許されません。

他にも、配当手続が必要なとき、執行裁判所の裁量によって移行されることがあります。上記移行の決定に対しては、不服を申し立てることはできません。

少額訴訟について解説します!

2023-02-06

少額訴訟とは?

原則1回の審理で行う迅速な手続で、60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り利用できる制度です。紛争の内容があまり複雑でなく、契約書等の証拠となる書類や証人をすぐに準備できる場合は、少額訴訟によることが考えられます。

このように、簡易裁判所の管轄に属する事件において、一般市民が訴額に見合った経済的負担で、迅速かつ効果的な解決を裁判所に求めることができる手続のことを指します。

60万円以下の金銭支払請求

民事訴訟法第368条

簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
2 少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
3 前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。

訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭支払請求を目的とする訴えに限り少額訴訟の対象となります。貸金、売買代金、家賃・地代の請求などが該当します。建物明渡し、登記手続請求などは認められません。

また、利用回数の制限が設けられており、同一の原告が、同一の簡易裁判所において、同一の年に10回を超えて少額訴訟手続を利用することはできません。一般の方には無関係な規定だと思いますが、貸金業者等の反復利用を許さないという趣旨で設けられています。

証拠調べの特則

証拠調べは、一期日審理の原則から、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができます。したがって、原告当事者本人や証人は口頭弁論期日に出廷する必要があります。

被告の移行申述権

被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができます。ちなみに、被告に司法書士、弁護士などの代理人が付いている場合には、ほぼその申述がなされます。移行後は、反訴の提起禁止、証拠調べの制限などの制約がなくなります。

また、裁判所は、少額訴訟手続による審理及び裁判をするのが相当でないと認めるときなどの場合には、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければならないとされています。

控訴の禁止

通常手続においては、終局判決に対して控訴等の上級審への不服申立が認められますが、少額訴訟では、その判決をした簡易裁判所に対する異議の申立だけが許されています。

少額訴訟制度が迅速な紛争解決を目的とするものですので、控訴を認めてしまうと解決までに多くの時間と費用を要することになってしまうからです。

手続利用上の注意点

迅速な紛争解決が期待できますが、手続利用のためには周到な準備が必要となります。

例えば、貸金返還請求をする場合に被告が消滅時効を主張して争ってくることが予想されるときには、被告が債務承認をしたこと(再抗弁)を立証する証拠を準備しておくなどです。書証や証人の在廷が該当します。

被告の欠席により、準備が空振りに終わることがあるかもしれませんが、少額訴訟手続を利用する際にはその点を心掛けることが重要だと考えています。

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