Archive for the ‘成年後見’ Category

認知症予防に効果的なコグニサイズとは?

2022-10-31

コグニサイズとは?

「【2022年9月25日】
【株式会社ベネッセスタイルケア】により
【コグニサイズ体験会】
というオンライン医療セミナーが開催されました。」

コグニサイズとは、国立長寿医療研究センターによる造語で、cognition(認知)とexercise (運動)を組み合わせたものです。認知課題(計算、しりとり等の頭を使う課題)と運動課題(体操等の体を使う課題)を同時に行うことによって、心身の機能を効率的に高め、認知症予防を目的としたプログラムのことを指します。

認知機能を色々な方法を使って向上させたり、低下を防ぐことが認知症の発症を遅らせることに有効であると考えられています。

脳トレとの違いは?

同じく認知症予防効果のある脳トレとの違いは何でしょうか。脳トレには、頭を使うパズルやクイズ、指の体操、手を使う手芸など様々なタイプのものがあります。いずれも脳の活性化を主たる目的としています。体操も脳トレの一種とされていますが、ジャンケンなどの手指を動かすことに重点を置いたものが多いです。

対して、コグニサイズでは、脈拍数が上昇するような身体負荷のかかる全身を使った運動を行います。脳トレ体操で息がはずむようなことはありませんから、そこが大きな違いと言えるでしょう。

運動機能の低下がもたらすもの

家に引きこもりがちであったりすると体を動かす機会がほとんどありません。運動機能の低下を招き、認知症発症リスクを高めてしまうことになりかねません。

日常生活の中に運動を取り入れることはなかなか難しいと思います。散歩などを習慣にできれば良いですが、外出を億劫に感じる方にとってはハードルが高いでしょう。

コグニサイズは1日30分(10分を3回でも可)から始められますし、家の中で気軽にできるのが特徴です。

認知課題に負荷をかける

認知課題が容易なコグニサイズを上手くできるようになることが目的ではありません。上手くできるような状態は脳への負担が少ないことを意味しますので、課題に慣れてきたら、次の課題にステップアップして、たまに間違う程度のものをこなすことが望ましいです。

また、認知課題に対して頭で迷ってしまっても、運動課題である体を動かすことは続けるようにしましょう。

継続することが一番重要

継続は力なりと言いますが、コグニサイズも同様です。1日30分を週3回することが推奨されていますが、短期間では効果は見られず、6か月以上継続することが求められるようです。

息がはずむ程度の運動をしますので、コグニサイズの前にはストレッチを十分に行ってケガの予防に気を配ること、こまめに水分補給をすること、体に痛みが起きたら休憩を取ること、トレーニング(椅子に座ってできる課題もあります。)中の転倒などにも注意しましょう。

作業療法士って何をする人?

2022-08-29

講座を受けてきました

以前の記事「認知症の人の支えとなる認知症サポーターとは?」に続き、認知症サポーター向け講座の事を書いてみたいと思います。今回の講義は、作業療法士が講師を務め、認知症になっても好きなことを続けるために、その人達に対して作業療法士がどのようなことを行っているかというものでした。

作業療法士の作業って何のこと?

作業療法士(occupational therapist、以下「OT」と記載します。)の作業って何のことでしょうか。作業療法士は日本固有の資格者ではなく、世界的な職能であり、世界作業療法士連盟(World Federation of Occupational Therapists:WFOT)が設立されています。

つまり、「occupation」という言葉が先にあって、それをどう和訳するかの問題だったようです。それは日本にはない概念であり、人の日常生活に関わる全ての諸活動を指します。

例えば、家事、仕事、遊び、日課、地域活動、休息などです。そこで、日本ではoccupationを「作業」と訳した経緯があるようですが、医療や介護の現場では「OT」の呼称が使われています。

何をするの?

一般的にはリハビリ専門の医療職と捉えられ、その活躍の場は病院、介護施設、訪問看護などの訪問サービス、市区町村役場など多岐にわたります。認知症の人に対しては、その人らしく生活を送ることができるように環境を整えたりし、家族や介護する側には介助方法をアドバイスします。

また、できないことに着目するのではなく、現状持っている能力をできる限り活かして、どのような援助が必要なのかといったことや可能な活動についての提案を行っています。

具体例を挙げてみましょう。手指の麻痺などが原因でお箸やスプーンなどが使えずに1人で食事ができない人がいるとします。短絡的に、食事全介助をしたらどうなるでしょう。食事を摂ることで、身体的な健康は維持できるのかもしれませんが、介助される側の幸福感や満足感は得られるでしょうか。

そんな時に、スプーンの柄を太くしたり、角度を変えたり、利き腕ではないほうで使えるようにしたりする自助具を使う方法があります。(下のイラスト参照)そういった自助具のデザインなどもOTの仕事です。最近では、3Dプリンタを自助具の製作に活用しているようです。

ちなみに、今回講師役を務めてくださったOTの方は、色んな自助具を目の当たりにして、OTという職業に魅了されたと話されていました。

認知症の人への作業療法

認知症の人は、その症状故に上述した作業をするにあたって危険を伴ったり、うまくできなかったり、時間がかかってしまいます。周りに気を遣うようになって自分ではやりにくくなり、最終的に他の人が代わりにするようになり、一切その活動をしなくなってしまいます。

自分が今までできていた作業が徐々に減っていき、その存在価値を低く感じるようになり、認知機能が更に低下していくという悪循環に陥ります。

そこで、OTは療法対象者の人となり(育った環境、仕事、趣味、性格)を先ず把握することに努めます。対象者にとってどんな作業(家事なのか、仕事なのか、余暇なのか)に意味があるのかを推測するために不可欠な要素だからです。

その後、作業遂行能力の理解、作業難易度の把握及び調整、認知症対象者への支援介入度の調節などをします。

「作業」が認知症の人にもたらす効果

・自分の価値を再確認できる
できなくなってしまった作業ができるようになるまたは新しいことに挑戦してできるようになることで、喜びや楽しさを感じることができます。また、達成感や社会とのかかわりをもつことで、前向きな人生を送ることができます。

・自己表現の機会を得ることができる
家族や介護者に危険、時間がかかるなどの理由から自分の好きなことややりたいことを制限されてしまうと、言いたいことを言えずに飲み込んでしまいがちです。それが解消されることにより、作業をするか否か、どのような作業をするかの意思表示が容易にできるようになります。

・今までの人生を肯定し、今後の人生も楽しく過ごせる
認知症になっても、人にはそれぞれできるだけ介助されずに独力でやりたい作業があります。それが人本来のニーズであり、普遍的な能力でもあるのです。

脳卒中は予防できる!~家族の負担を減らすために~

2022-06-13

なぜ予防が大切なのか

「【2022年5月22日】
【株式会社ベネッセスタイルケア】により
【脳卒中は予防できる】
 というオンライン医療セミナーが開催されました。」

脳卒中には、血管が詰まることによる脳梗塞と破れることによる脳出血の2つのタイプがあります。以前の記事「認知症の人の支えとなる認知症サポーターとは?」において、脳血管疾患が認知症の原因となることをご紹介しました。

脳卒中はガン、心疾患に次いで日本人の死因の上位を占めています。命を取り留めた場合、後遺症により体に麻痺が残って重度の要介護となっても、判断能力を有している限り、成年後見制度が機能することはありません。

判断能力が不十分な人を守る制度であって、身体的能力の有無とは無関係だからです。しかしながら、脳がダメージを受ける以上、その部位によっては判断能力が不十分になってしまうケースもあり得ます。

世の中には、ぽっくり死やピンピンコロリといった家族の介護や成年後見制度に頼らずに人生を終えたいと望む方がいらっしゃると思います。寝たきりになってしまう原因の約3割が脳卒中であり、認知症によるものと合わせると約6割となります。

脳卒中により寝たきりになってしまうと本人のみならず、家族の負担が非常に大きくなってしまいます。言うまでもなく負担とは介護だけではなく、成年後見制度を利用しなければならないことを含んでいます。

動脈硬化が脳梗塞の原因とは限らない

高血圧等により脳の血管が動脈硬化で狭くなって起きる脳梗塞があります。ラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞と呼ばれるものですが、それらが全てではありません。

心房細動等の心疾患を要因として、心臓や大動脈にできた血栓が脳に流れて血管に詰まって起きる心原性脳塞栓症も脳梗塞に分類されます。

一過性脳虚血発作を見過ごしてはいけない

一過性脳虚血発作(以下、「TIA」といいます。)とは、一時的に脳に血流が流れなくなり、神経脱落症状が現れる発作をいいます。本格的な脳梗塞の前触れとなるもので、TIAを起こすと48時間以内に脳梗塞を発症することもあります。脳梗塞と同様の症状が短時間続いて自然に消失するのが特徴です。

顔がゆがむ、片方の手足があがらない、ろれつが回らないなどの症状が現れますが、持続時間はほとんどの場合30分以内です。すぐに脳神経内科の専門医に受診するようにし、決して放置してはいけません。

定期健診が重要

高血圧は脳卒中の発症率を高め、最も重要な危険因子です。生活習慣の改善も大切なのでしょうが、薬物治療に頼らざるを得ないところもあると思います。患者を診察しているドクター自身が降圧剤を服用していることなどをよく耳にしますし、服薬している人の多いことがうかがえます。

不整脈が原因の心原性脳塞栓症は、他のタイプの脳梗塞よりも重篤な後遺症を残すことが多いようです。他には、糖尿病、高コレステロール、喫煙、過度な飲酒、運動不足、肥満等のメタボリックシンドロームが原因となります。

これらは、定期健診で心電図、血液検査等によって判明しますし、対策を講じることができます。それに基づいて生活習慣の改善・薬物治療を怠りなく実践していくことが脳卒中を予防することにつながるのではないでしょうか。

認知症の人の支えとなる認知症サポーターとは?

2022-06-06

認知症サポーターキャラバン

日本は、65歳以上の高齢者の総人口に対する割合が20%を超えている超高齢社会です。年金等の問題もありますが、最重要課題の1つとして認知症があげられると思います。老々介護ならぬ認々介護という言葉が生まれ、誰にでも起こりうる症状故に身の回りに認知症の方がいかに多いかと認識せざるを得ません。

認知症の人やその家族を見守り、支えとなるよう認知症サポーター養成講座の講師役を都道府県、市区町村などの自治体と民間企業、団体等が共催で養成して、全国規模で認知症サポーターを世に送り出す養成講座が開催されています。

このような仕組みが認知症サポーターキャラバンと呼ばれるもので、認知症サポーターを全国で育成し、認知症になっても安心して暮らせる町づくりを目指しています。認知症サポーターの数は、全国で約1200万人に達し、こうした活動は海外からも高い評価を受けているようです。

三鷹市においても地域包括支援センターの介護支援専門員(ケアマネ)等が講師役を務める認知症サポーター養成講座が開催されています。この記事の執筆時点では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、講座の開催が見合わせられています。

認知症とは?

「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言い、それが意識障害のないときにみられる。」というものです。要するに、認知症という病名があるのではなく、記憶障害などの特定の状態のことを指します。

似たような症状として、もの忘れがあります。例えば、昼食を食べたことは覚えているけれども何を食べたか覚えていない、そんな体験したことの一部だけを忘れるのがもの忘れです。それに対して、認知症の人は昼食を食べたこと自体を忘れてしまいます。

両者の明確な区別は困難なため、認知症と診断される程度には至らない状態の軽度認知障害(MCI)と呼ばれるものがあります。一度MCIと診断されるとその半数以上は認知症へと進行するようですが、脳の活性化を図ったり、運動習慣を身に付けることで正常な状態に戻る人もいます。

認知症の原因となる疾患

アルツハイマー病

脳の神経細胞が次第に脱落し、脳が萎縮していく病気で、MRIなどの画像検査では、脳の記憶に関連する海馬を中心とした脳萎縮が認められます。見当識障害(時間、季節、場所等の見当がつかない状態)が起こり、行動面での失敗が多くなり、ゆっくりと進行します。

治療薬の1つにイクセロンパッチ・リバスタッチパッチ(リバスチグミン)があり、皮膚に貼ることで薬剤が体内に吸収され、進行を遅らせるとともに病気そのものへの効果も期待されています。

脳血管疾患

脳梗塞や脳出血といった脳の一部への血行が途絶えたり、不十分だったりするために、神経細胞が破壊されることが原因で、高血圧などの全身疾患をもつ人に起こりやすいとされています。

アルツハイマー型と比べて、急激に発症することが多く、症状は固定または階段状に進行します。まだら認知症と呼ばれ、多くの場合、片まひや言語障害を伴います。

レビー小体病

脳の神経細胞の中にレビー小体という物質が出現したために認知症になることが判明していますが、詳しい原因などは未だ解明されていないようです。

幻視(実際にはないものが見える。)やパーキンソン症状(動作がゆっくりになったり、筋肉が硬直したりする。)が出現します。認知の変動(頭がはっきりしているときと、ボーっとしているときの変動)が大きいのが特徴です。

前頭側頭葉変性症

脳の一部(前頭葉と側頭葉)が萎縮していき、脳全体が徐々に萎縮していくアルツハイマー型とは異なる点です。「わが道を行く」といった、自分勝手、反社会的行動、無頓着など本能のおもむくままの行動をするようになるのが特徴です。

また、認知症の行動・心理症状(BPSD:病変によって記憶や認知機能に障害をもった人が、現実の生活に適応しようとしたときに引き起こされる症状)の1つとされている常同行動(不安やストレスなどから同じ動作をし続けること)が見られます。

その他

クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などがあります。

認知症の人とどう接するか

サポーター養成講座では、認知症の人への対応の心得として“3つの「ない」”を掲げています。

1.驚かせない

先ず、どのように声をかけたらいいのか。相手の目線の高さに合わせることが大切ですので、ベッドに横になっていたり、車椅子の方にはこちら側が屈んで相手の目線と同じかやや下から見上げるような姿勢が望ましいです。立ったまま相手を見下ろしてしまうと、そのようなつもりが無くても相手を威圧するようなことになると思います。

後ろから声をかけたりするのは論外です。注意力が低下し、平らな所でも転倒してしまうリスクを抱えているわけですから、必ず相手の視野に正面から入ってお声がけをしましょう。

2.急がせない

認知症の人とコミュニケーションを取るにあたっては「何を」話すかではなく、「どのように」話すかが大切です。甲高い声や早口ではなく、穏やかな声で、短くわかりやすくゆっくりと話すことです。一度にたくさんの事を伝えても理解するのが困難なわけですから、相手の様子を見ながら分かりやすい表現を使いましょう。

こちら側がせっかちであってはなりません。気持ちに余裕をもってリラックスしている状態でいることです。気持ちにゆとりがなかったり、緊張していると相手はそれを察してしまうものです。

3.自尊心を傷つけない

認知症の人の思いや立場を推測、想像することが大切です。過剰な親切心は、その人の残された能力を奪うことになりかねないのみならず、自尊心を傷つけるでしょう。

認知症の人は、よく同じことを繰り返し話されます。それを頭から否定するようなことはせず、その人の思いに寄り添う姿勢で共感的に接することです。認知症の人を「説得」するのではなく、話をよく聞いて「納得」する姿勢が重要だと考えます。

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