Archive for the ‘相続手続’ Category

相続分の譲渡とその取戻し

2023-10-30

相続分の譲渡とは

相続分の譲渡とは、相続人が相続人としての地位、換言すれば相続財産に対する包括的持分を譲渡することです。相続財産を構成する個々の財産の持分を譲渡することは、それには該当しません。有償、無償のどちらでも譲渡することはできますが、遺産分割前に譲渡しなければなりません。

相続人の数が多い、相続人間でトラブルが発生しているなどの事情がある場合には遺産分割が成立するまでに多くの時間を要します。相続分の譲渡をすることで遺産分割協議に参加する必要がなくなりますので、相続手続におけるひとつの選択肢となり得ます。

また、他の相続人だけでなく第三者に対しても譲渡することができますので、その場合には第三者が遺産分割協議に参加することになります。それを避けるための相続分の取戻しについても言及します。

相続分の譲渡の効果

相続分の譲渡がなされると、譲受人は相続人としての地位を取得します。このことから、前述したように遺産分割協議の当事者となるのです。個々の財産の譲渡ではありませんから、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も譲受人に移転します。

ただし、相続分の譲渡をもって債権者に対抗することはできません。支払能力のない者に相続分の譲渡をしたことにより、債権回収ができないことになれば債権者の権利を害することになるからです。

相続放棄とはこの点で異なりますので、債務を一切負担したくないのであれば相続放棄を選択することになります。

譲渡の方法

口頭でも可能ですが、相続財産に不動産がある場合には登記手続に相続分譲渡証書等の書面と印鑑証明書が必要となります。ですから、書面を作成して譲渡人の実印押印をしておくことが求められます。後のトラブルを避けるためにも口頭で済ませるのではなく、書面の作成は必須だと考えます。

加えて、相続分の譲渡をしたことを他の相続人に通知しておくことが望ましいです。特に、第三者に譲渡する際には、相続分の取戻しに期間制限が設けられていますので、第三者が遺産分割協議に参加する事態にならないように他の相続人に対し取戻しの機会を与えることは重要となります。

課税について

他の相続人に無償譲渡をした場合には、譲渡人に相続税は課されません。有償譲渡をした場合には、その受け取った金銭に相続税が課されます。一方、第三者に無償譲渡した場合には、譲渡人に相続税、譲受人に贈与税が課されます。第三者に有償譲渡した場合には、譲渡人に譲渡所得税が課されるおそれがありますので注意が必要です。

登記手続について

共同相続の登記がされる前に、他の相続人に対して相続分の譲渡をしたときは、譲渡後の相続分をもって相続登記を申請することができます。

遺産分割によって相続人を定めた場合には、直接「相続」を原因として所有権移転登記が申請可能です。その際には、遺産分割協議書、相続分譲渡証書、印鑑証明書等の添付が求められます。

対して、第三者に相続分の譲渡をしたときは、共同相続の登記をしたうえで、無償譲渡・有償譲渡につき、それぞれ「相続分の贈与」・「相続分の売買」を原因として譲渡人の持分を譲受人に移転する登記を申請します。

相続分の取戻し

共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を取戻すことができます。その際には、譲受人の同意、承諾は不要であり、他の共同相続人の一方的な意思表示によって取戻しの効果が生じます。

相続分の取戻しは1か月以内にしなければなりません。いつからカウントするかについては、相続分の譲渡時、相続分の譲渡の通知時など複数の説が存在します。

相続分がないことの証明書(特別受益証明書)とは?問題点は?

2023-06-12

Xからの相談(設例)

A→D→Bの順で亡くなり、A名義の不動産があります。相続登記を申請するに当たってCから、Dの相続分がないことの証明書が送られてきました。その書面に実印を押して印鑑証明書と一緒に返送してほしいと言われています。どのようにしたらよいでしょうか。

特別受益者がいる場合の登記手続

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受け、その価額が相続分の価額に等しいか又はこれを超える者がある場合には、その者は相続分を受けることができません。

そこで、登記原因証明情報として、相続を証する戸籍謄本等の他、その者が作成した相続分がないことの証明書を提供して、他の共同相続人から、相続による所有権移転登記を申請することができます。先例で認められています。

被相続人の相続について、特別受益者が相続登記前に死亡した場合には、相続分がないことの証明書は特別受益者の相続人全員が作成しなければなりません。

生前贈与がない場合に作成されるケースもある

設例においてCが相続不動産を単独取得する方法として、一般的なものは遺産分割協議です。Aの相続人はB、C及びDですから、CX間において遺産分割協議書を作成しなければなりませんが、数次相続(被相続人が死亡した後、遺産分割協議をしないうちに相続人が死亡してしまい、次の相続が開始した状況のことをいいます。)の場合には書面の内容が複雑になります。

一方で、相続分がないことの証明書には「相続する相続分がない」旨の記載があれば、数行の記載で足りてしまいますので、生前贈与等の事実がない場合にも作成され、相続登記申請に用いられることがあるようです。

分かれる裁判所の判断

生前贈与をうけた事実がないにもかかわらず、贈与をうけた旨の内容虚偽の「相続分がないことの証明書」に署名・押印したとしても、それにより相続分を失うことはなく、また、当該相続人に相続放棄の意思があったとしても、これを認めれば相続放棄制度(家庭裁判所への申述)に対する脱法行為となること、更に、当該書面は単なる事実証明に過ぎないから、贈与の意思表示と認めることができないとする裁判例があります。

対して、特別受益の事実がないのに相続分がないことの証明書が作成された場合においても、これを単純に無効とせず、当該証明書が本人の真意に基づくものかどうかを判断基準とし、相続人が自己の相続分について相続財産の分配をうけないという意思表示をしたものと認められるときは、これにより遺産分割協議の成立、贈与を肯定したものがあります。

結論

形式的な審査権しか有していない登記官としては、相続分がないことの証明書と印鑑証明書が提供された相続登記申請を受理せざるを得ません。

しかしながら、設問のような相談に対しては、安易にCの要求に応じてはいけないと考えます。Dが生前贈与を受けたことが確実であり、相続分がないことの証明書の記載に偽りが一切ないような場合を除き、遺産分割協議の方法を採るべきでしょう。

相続した建物が未登記だったときの対処法

2023-04-17

そのままで売れるのか

売ることができないわけではありませんが、実際には登記をしない限り売ることは非常に困難だと思われます。売ることができるとしても、買主を自ら見つけて仲介を入れずに個人間で売買するような極めて限定的なケースに限られるでしょう。

仲介の入った不動産取引においては、買主は売主に代金を支払い、それと引き換えに売主は買主に対して、登記に必要な権利証等を交付します。そのうえで、代金を支払った日に司法書士が双方の代理人として登記の申請をします。

未登記建物の場合にはその登記申請ができませんので、売主が二重売買をした場合には必ずトラブルに発展します。不動産会社が売買の仲介に入った場合にはそのトラブルの対処をしなければなりません。ですから、わざわざトラブルの種がある売買の仲介を不動産会社はしないでしょうということです。

建物の取壊し

建物を取壊して更地で売却することは可能です。ただ、相続の場合には建物が共有となることがありますので注意が必要です。遺産分割により家財を含めた建物を取得する相続人が定まっているときには問題ありませんが、遺産分割前の遺産は共同相続人の共有となります。

建物を取壊すに当たり、取壊し業者は所有者や他の共有者の同意等を確認しませんが、相続人間のトラブルを避けるために必ず相続人全員の同意を得たうえで取壊しに着手するのが望ましいです。

建物表題登記

ここからは必要な登記について解説していきます。登記記録には表題部と権利部が存在します。両方とも記録されているのが一般的な不動産となりますが、表題部しかないものもあります。未登記建物とは、その表題部も存在しないものを指します。

建物の表題部には、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが記録されており、どの建物かを特定できるように物理的な現況を示しているといえます。

表題登記とは、新たに建物の登記記録を作出する第一歩となるもので、通常は土地家屋調査士が行います。古い建物の場合には、建築確認書や工事完了引渡証明書が残っていないことが多いので、上申書の提出を求められることがあります。土地家屋調査士に依頼した場合の費用は概ね8~12万円となります。

所有権保存登記

所有権保存登記は権利部にされる登記で、こちらについては司法書士が代理人として登記申請することが多いです。表題登記をしても所有者の住所氏名は記録されますが、それだけでは売却はできませんので所有権保存登記まで済ませておく必要があります。ちなみに、この登記が完了すると登記識別情報(権利証)が交付されます。

司法書士に依頼した場合の費用は、報酬1~3万円及び登録免許税として建物の固定資産税評価額の0.4%となります。土地の相続登記の依頼を受けた場合に追加で申請することが多く、また評価額が低いことにより登録免許税も低額の負担になることがほとんどです。

相続した不動産がわからないときの対処法

2023-04-10

相談者が急増

親から不動産を相続したが詳細がわからない、親名義の自宅を相続後も名義変更せずに放置したために相続した不動産の詳細がわからないといったご相談が増えています。別居が原因でわからないということのほうが多いですが、今後相続登記が義務化されますし、相続人にとっては深刻な問題です。

固定資産税納税通知書

不動産の所有者、正確には登記名義人に対して、毎年5月頃に納税通知書が市町村から送付されます。登記名義人が亡くなっている場合には、市町村が相続人の調査をして相続人宛に送ることになっています。

先ずは、その納税通知書を探すことが手っ取り早い方法です。ただ、郵便物が全て保管されているとは限りませんし、保管されていたとしても場所がわからずにいくら探しても見つからないということもあります。見つかった場合でも、非課税の不動産は納税通知書(同封されている課税明細書)には記載がされませんので、注意が必要です。

権利証

権利証が見つかれば、納税通知書ではわからない非課税不動産(私道、セットバック等)の存在が判明することがあります。ただし、こちらにも注意点がありまして、被相続人(亡くなられた方)がどのような原因で取得したかに着目する必要があります。

売買により取得したケースにおいてはほぼ問題はないのですが、相続により取得した場合は名義変更を漏らしている可能性があります。例えば、祖父名義のまま残ってしまっているなどが挙げられます。

被相続人に貸金庫の契約がある場合には、相続人全員の立会がなければ中身を確認することができません。貸金庫に権利証を保管される方は非常に多いですので、最優先で中身を確認するべきだと思います。

名寄帳の写し

納税通知書、権利証とも見つからない場合でも手段はあります。市町村役場で名寄帳の写しを入手することです。名寄帳とは、土地と家屋の固定資産課税台帳について所有者ごとにまとめたものです。市町村によっては、名寄帳が固定資産課税台帳を兼ねていることもあります。

請求する際には、相続人であることを証する戸籍謄本等が必要になります。単身者の場合には1通で足りることもありますが、所有者の死亡事項の記載がされた戸籍謄本等と相続人の現在戸籍謄本の原本を提示しなければなりません。

名寄帳には非課税の不動産も載りますので、司法書士が相続登記の依頼を受けた場合には取得することが多いです。注意点として、市町村毎に名寄帳は作成されますので、どこに不動産をもっているかわからないような場合には使えないと言えます。

被相続人が投機目的で地方に土地を購入し、評価額が低いために固定資産税非課税ですと納税通知書も送られてきませんので、相続人がそのような事情を知らない場合には権利証が出てこない限り見つけることは非常に困難です。

遺産分割は相続開始から10年以内にすることになります!(令和5年4月1日施行)

2023-03-27

遺産分割に期間制限が設けられます

改正法施行前においては遺産分割に時間の制限は設けられていませんので、相続開始から何年経過していたとしても遺産分割は可能です。これは協議だけにとどまらず、遺産分割調停、審判も同様です。

ただ、長期間経過することにより、特別受益、寄与分を考慮した各相続人の具体的相続分の算定が困難になり、円満迅速な遺産分割の支障となるおそれがありました。

民法第904条の3

前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 

前三条の規定とは、主に特別受益、寄与分があった場合の各相続人の具体的相続分の算定方法を定めたものを指します。特別受益、寄与分の主張は相続開始から10年以内にし、早期の遺産分割請求を促す効果を期待するものと言えるでしょう。

10年経過後に遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産の分割の請求はできなくなります。相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分(または指定相続分)によります。

指定相続分とは、被相続人が、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができるという規定により定められた相続分のことをいいます。

10年が経過し、法定相続分等による分割を求めることができるにもかかわらず、相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意したケースでは、具体的相続分による遺産分割をすることを妨げるものではありません。

改正法の施行日(令和5年4月1日)前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても、新法のルールが適用されますが、経過措置により、少なくとも施行時から5年の猶予期間が設けられます。遺産分割の期限は、相続開始時から10年経過時または改正法施行時から5年経過時のいずれか遅い時となります。

特別受益の主張

婚姻、養子縁組、生計の資本として生前贈与を受けた場合には特別受益に当たりますが、その判断は容易ではありません。遺産の前渡しといえるのかが判断のキーポイントになります。

また、主張された側が特別受益を認めないことも多いので、通帳の取引履歴や契約書等の書証を集めることも求められるでしょう。

まとめ

法定相続分(または指定相続分)による遺産分割を望まない場合には、共同相続人間の協議がまとまらないことが多いでしょう。そのまま10年経過すると法定相続分(または指定相続分)でバッサリ分けられてしまいます。

早期解決のための相談先は弁護士一択となります。司法書士を含めた他の士業は、遺産分割交渉を代理人として行うことはできません。

遺贈による登記手続(令和5年4月1日改正)

2023-01-23

共同申請の原則

不動産の権利に関する登記を申請する場合には、登記権利者(権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に利益を受ける者をいい、間接に利益を受ける者を除く。)と登記義務者(権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に不利益を受ける登記名義人をいい、間接に不利益を受ける登記名義人を除く。)が共同ですることになっています。

例えば、A名義の不動産をBに売却した場合の所有権移転登記申請においては、新たに所有権の登記名義を取得するという利益を受けるBが登記権利者、所有権の登記名義を失うことになるという不利益を受ける登記名義人であるAが登記義務者となります。

なぜ、Bが単独で登記を申請することができないかについてですが、上記の例の場合、所有権移転登記によって不利益を受けるAを登記の申請に関与させることによって、登記の正確性(真実性)を確保するためです。

遺贈による登記手続はこの共同申請の原則に従い、受遺者を登記権利者、遺贈者を登記義務者とする共同申請によるべきものとされています。

共同申請の原則には例外がありますが、一般の方に馴染みがあるものとして相続登記と住所変更登記を挙げることができます。これらは単独で申請することが可能です。公の機関が発行する戸籍謄本や住民票の写しを添付しますので、登記の正確性を担保することができますし、住所変更登記においては、そもそもその登記により不利益を受ける者は存在しないことになります。

令和5年4月1日から、相続人に対する遺贈登記の単独申請が可能になっています

令和5年4月1日から、遺贈により不動産を取得した相続人(受遺者=登記権利者)は、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになっています。(不動産登記法第63条第3項)なお、令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人(受遺者)についても同様に、令和5年4月1日からは、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになっています。

遺言執行者がいないとき

遺贈者を登記義務者とすると説明しましたが、言うまでもなく登記申請時点において遺贈者は既に亡くなっています。この場合には、遺贈者の相続人全員が登記申請義務を承継します。

登記申請義務は不可分であり、相続分に応じて承継するという相続の原則に馴染むものではありませんから、必ず相続人全員が登記申請に関与しなければなりません。相続人が登記申請の義務者となる場合には、共同相続人の一人を登記義務の承継人とする登記申請は認められません。

遺言執行者がいるとき

遺言執行者が登記義務者となって、登記権利者である受遺者と共同で申請します。遺言書は遺贈者が作成しますので、その遺言で定められた遺言執行者は遺贈者の代理人という性質を持っているといえます。委任契約と異なるのは、遺言は単独行為であってそこで定められた遺言執行者がその職に就くか否かの選択が可能であることです。

旧法においては、「遺言執行者は相続人の代理人とみなす」という規定がありましたが、現在では削除され、新法においては遺言執行者の権限が強化され、権限の範囲については明文化されました。ですから、遺言執行者という言わば独自の地位に基づいて登記申請人となると考えることもできるでしょう。

受遺者と遺言執行者が同一人であるとき

受遺者を遺言執行者に定めることもできます。その場合でも共同申請(上述した改正により単独申請可能な場合があります。)をしなければならないことに変わりはありません。ただ、登記権利者と登記義務者が同一人となりますので、実質的には単独申請のようになります。

添付情報は権利者、義務者それぞれに要求されますので、登記識別情報、印鑑証明書、住所証明情報など共同申請と同様のものが必要となります。なお、相続人である受遺者が単独申請する場合の添付情報は、登記原因証明情報と住所証明情報です。

相続した実家を貸すという選択肢について

2023-01-04

避けたいのは空き家の放置

実家を相続した場合、その後どのようにするかは、居住、売却、賃貸、放置の大まかに4種類になるかと思います。一番してはいけないのが空き家のまま放置することです。

他の記事でも放置してはいけない理由について触れていますので、ここでは賃貸する場合の注意点を中心に書いてみたいと思います。

相続等により取得した空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の特例をチェック

賃貸することを検討する前に、特別控除の要件を満たしているかを確認する必要があります。譲渡までに賃貸してしまいますと、特例は使えません。

もっとも築40年以上(昭和56年5月31日以前に建築された建物)の古い建物にしか適用されませんので、特例を使う場合には建物を取壊して更地で売却することが圧倒的に多くなるでしょう。

売却に比べてかかる労力は3倍以上

そのくらいの覚悟で臨まれた方がよろしいのかと思います。賃貸需要の調査、家財処分、リフォーム、管理会社の選定、不動産所得の申告、空室や家賃滞納リスクなど、売却する場合と比較すると大変なことが多いです。

売ってしまえばその後は楽ですが、不動産を売ることは非常に困難ですから、どちらが良いとも一概には言えないのかもしれません。

賃貸需要の調査

リフォームにお金をかけても物件が全く賃貸需要のないエリアに存在するのであれば意味がありません。エリアにもよりますが、アパートや賃貸マンション等の共同住宅は供給過剰の状態にあることが多く、その点戸建であれば数が少ないことからある程度の需要は見込めるのかと考えます。

ネット上の一括査定を利用して、どのくらいの賃料収入が見込めるのかを調べてみることが手っ取り早い方法ですし、ある程度需要を把握することもできると思います。

家財処分

言うまでもなく必須です。売却であれば残置物をそのままにして引き渡すことも可能です。家財処分については業者に依頼する一択だと思います。間違っても自分達だけでされることを考えるのは避けたほうがよろしいのかと。

また、複数の業者に相見積もりを取ることも必須です。業者によって料金が全く違いますし、できれば買取りも行っているところに依頼すると費用を抑えることができます。

リフォーム

一番難しい項目と言えるでしょう。重要なのはお金をかけ過ぎないことです。管理会社からは、和室を洋室に変えた方がいいとか、色々と提案されるかもしれませんが、一々そんなことを聞き入れていたらお金がいくらかかるかわかりませんし、そもそもリフォームはお金をかけようと思えばいくらでもかけられるものだと思います。

ですから、複数業者に相見積もりを取ることがこちらも必須と考えます。選定基準としては、貸主側の目線に立ってリフォームの提案をしているかどうかです。管理会社が紹介する業者に見積りを依頼することもよいでしょう。一般的なリフォーム業者より、貸主側の目線に立った提案をしてくれることが多いです。

管理手数料は5%以下

自主管理をすれば管理手数料はかかりませんが、不動産賃貸業を自ら営んでいるような特別な場合を除いて、管理委託をしたほうが良いと思います。入居後のトラブルは時間を選んでくれませんから、対応をお任せできることは大きなメリットになります。

上述したネット上の一括査定を利用すると複数の管理会社から連絡が来ることになりますが、管理手数料はまちまちです。これは私見になりますが、5%を超える管理手数料を要求するところは候補から除外した方がよいでしょう。

不動産所得の申告

固定資産税、修繕費、火災保険等の損害保険料、管理費、修繕積立金などが経費となるのは分かりやすいと思いますが、減価償却費が一番重要となります。減価償却を計算するのに必要となるのは、建物の取得費、耐用年数(構造により決まります。)、取得時期などになります。

相続した実家は居住用ですから、非業務用として耐用年数が1.5倍になります。経過年数による累積償却額を算出し、取得費からそれを控除したものが未償却残高となります。

まとめ

相続した実家は資産ですから、売却せずに残しておきたいと考えられるかたもいらっしゃると思います。また、不動産のまま保有することで相続税対策になることもありますので、売る以外の選択肢の貸す場合の注意点を私なりに列挙したつもりです。少しでも参考になることがあれば幸いです。

単独名義にする方法による換価分割の注意点を解説します

2022-12-26

単独名義にするメリット

実家などの不動産を相続した場合において、今後居住、賃貸等の利活用をする予定が全くないときにその不動産を売却して代金を相続人間で分ける遺産分割方法を換価分割といいます。他の分割方法が使えないときにも利用されます。

相続において不動産を売却するメリット・デメリット」にて解説していますので、ご参照いただければ幸いです。

売却する前提として、先ずは相続登記を申請して亡くなった方から相続人への名義変更手続をしなければなりません。手続には2通りあって、相続人全員の共有名義にする方法と相続人代表者の単独名義にする方法です。今回の記事は単独名義にする方法を選択した場合の注意点を解説する内容となります。

最大のメリットは、売却活動をスムーズに進められることです。相続人が離れて住んでいる、相続が複数発生していて相続人の中に高齢の伯叔父母がいるなどの場合には媒介・売買契約の際に全員が集まることが非常に困難となります。単独名義にすれば契約当時者は一人になりますので、契約書面への署名押印も一人がすることで足りるのです。

デメリットは?

贈与税が課されるリスクが挙げられるでしょう。単独名義にするには、登記申請手続及び税務面両方に配慮した遺産分割協議書を作成しなければなりません。

作成を誤りますと、贈与税が課されるリスクが高まります。また、相続登記後すぐに売却できなかった場合には、売却代金を贈与したとみなされるリスクもあります。

遺産分割協議書の記載例

父Xが亡くなって長男Aと二男Bが相続人である場合に、換価分割のためにA単独名義にする場合の記載例を掲げます。

記載例

1.相続財産のうち、次の不動産(以下「本件不動産」という。)については、A及びBが、本件不動産を売却・換価し、売却代金から仲介手数料、契約書作成費用、登記費用その他の売却に伴う費用を控除した残金をA2分の1、B2分の1の割合で取得する。なお、被相続人X名義の本件不動産は便宜上、Aが取得し、Aの単独名義とする。

2.Aは、共同相続人を代表して本件不動産の売却・換価手続を行うものとし、本件不動産を売却後、Bに対して、上記1に定める割合に応じた残金を支払う。

3.A及びBは、本件不動産を売却し買主に引き渡すまで、これを共同して管理することとし、その管理費用は、上記1に定める割合に従って負担する。


誰が不動産を取得するのかが明記されていなければ登記申請は受理されません。だからといってストレートに書いてしまいますと、贈与税が課されるリスクがありますので換価分割のために便宜上単独名義にして、相続人を代表して売却することを記しておくことが重要です。

また、固定資産税の納税通知書は登記名義人に送付されますので、費用負担をめぐって相続人間でトラブルにならないような条項を定めておくことも大事かと思います。管理費用には修繕費も含まれます。古い建物であれば修繕しなければならないことも想定されます。

譲渡所得税について

譲渡益が出れば譲渡所得税が課されます。相続した空き家を譲渡した場合には3,000万円の特別控除が使える可能性がありますので、要件に当てはまるかを十分にチェックする必要があるでしょう。

また、相続税を納めた場合には、納税額のうち売却した不動産の全遺産に占める割合に応じた額を取得費に含めることができます。

特別口座(信託銀行などの口座管理機関が管理しているもの)の相続手続

2022-09-05

株式の相続手続が漏れている!?

上場株式の相続手続は、一般的には証券会社に必要書類を提出して行います。相続人が証券会社に口座を持っていない場合には、新規に口座を開設する必要があります。

このように株式の相続手続を済ませたつもりでも、亡くなった方宛に配当金計算書などが信託銀行等の株主名簿管理人から届くことがあります。この場合、特別口座の相続手続が必要となることが考えられますので、郵便物に記載された株主名簿管理人に連絡を取りましょう。その際、被相続人(亡くなった方)が特別口座で保有する株式の銘柄、株式数、未受領配当金の有無を確認するようにします。

特別口座とは?

従来紙であった株券が、2009(平成21)年1月5日に電子化されました。株券電子化実施前に証券保管振替機構に預託されていない株式を、株主の権利を保護するため各上場会社の申出により、口座管理機関(信託銀行等の株主名簿管理人)に開設されたものが特別口座です。

証券会社に開設される特定口座に似ていますが、全く別のものとなりますので注意してください。

相続発生時により手続が異なる

相続発生時が株券電子化実施の前後により、相続手続が異なります。

・2009(平成21)年1月4日以前に亡くなった場合
相続人名義で特別口座を開設して、被相続人の特別口座から株式を振替える手続になります。

・2009(平成21)年1月5日以降に亡くなった場合
被相続人の特別口座から、相続人名義で開設されている証券会社の口座に振替える手続になります。

両者の差は、相続人名義での特別口座開設の要否となるのです。

特別口座の株式は売却できません

証券会社の特定口座と異なり、特別口座の株式は取引ができません。そうは言っても、配当金を受け取る権利や議決権(単元未満株式を除きます。)を有することには変わりはありませんので、相続手続を行わないと亡くなった方宛に株主名簿管理人からの郵便物が届くことになるのです。

例外として、単元未満株式の買取請求は可能です。その場合に譲渡益に対する所得税、住民税の源泉徴収がされませんので確定申告が必要となる場合があります。証券会社の口座に振替えた場合も同様となります。

特定口座では源泉徴収がされますが、特別口座から振替えた株式については特定口座内の株式とは分けて管理されます。証券会社によっては、一般口座と呼ばれる口座で管理することもあります。

単元株式数以上の株式を売却する方法

例えば、被相続人甲が特別口座でA株式会社の株式を198株保有していたとします。上述したとおり、98株の単元未満株式については買取請求ができますが、100株については証券会社の口座に振替えたうえで売却する手続を踏まなければなりません。

では、甲の相続人が乙・丙である場合に両者間の遺産分割協議でAの株式を99株ずつ取得することにしたらどうなるでしょう。乙・丙共に相続により取得したのは単元未満株式ですから、証券会社の口座に振替えることなく買取請求することができるのです。

遺産分割中の共有持分放棄は絶対にお勧めしません!(負動産限定)

2022-08-15

事の発端

以前の記事「どうする?実家の家と土地」で書いていますので、そちらを先にお読みいただくと話が分かりやすいと思います。要するに、相続によって自宅から遠く離れた不動産を取得したわけですが、とりわけ農地の処分ができずに非常に悪戦苦闘したわけです。

この記事は、私自身が経験した遺産分割協議での農地の押し付け合いと、要らないからといって安易に共有持分の放棄をしてはいけないことを忠告する内容となります。私と同様の遺産分割中の方の参考となれば幸いです。

非農家が農地を相続する問題

農地といっても厳密には色々な種類があるのですが、この記事においては売買や贈与によって所有権を移転する場合に農地法第3条の許可を得なければならない農地について触れていきます。

なぜ、許可が必要なのかですが、農地を農地としてちゃんと利活用するために農地を取得する人が他の用途に使ったり、放置したりしないような人であるかを農業委員会が審査する決まりになっているからです。土地を譲渡するにあたって、このような縛りがあるのは農地だけです。

つまり、農地を譲り受けることができる人は農業従事者または新規就農者だけということになるのです。ところが、相続によって農地を取得する場合には農地法の許可が不要と農地法に定められています。相続は包括承継だからと説明されます。

このようなことから、非農家であっても農地を取得することができてしまうわけで、当然のことながら農地は放置され、耕作放棄地となり雑草に覆いつくされることになるのです。

遺産分割での押し付け合い

冒頭で書いたように私自身も経験しているのですが、相続財産に管理が必要な農地がある場合には遺産分割で相続人間の押し付け合いとなります。雑草の刈取り費用に結構な費用がかかりますし、農地を所有している限り、自分の代だけでなく子孫の代までそれが続くのです。

誰だって要りませんよね。だからといって、共有持分の放棄をしてはいけないことをここで強調しておきたいと思います。遺産分割が成立するまでは遺産は相続人全員の共有となります。農地も共有となりますから、その共有持分を放棄することもできるのです。

持分放棄は単独ですることができ、相手の同意も不要のうえ農地法の許可も不要です。持分放棄がされますと、他の共有者にその持分が移転しますので農地を相続せずに済むのです。だからといって、押し付け合いの状態で持分放棄をすると、余程相手に有利な条件を提示しない限り遺産分割協議はまとまらないだけでなく、調停、審判の手続へ移行して争いが長期化する可能性が非常に高いです。

しかしながら、インターネット上には持分放棄は早い者勝ちだから、書面にして確定日付をとっておくことを勧めるような情報が見受けられます。

自分がされたらどう思うかを考えてみる

正直なところ、持分放棄することを思いついたこともありましたが、火に油を注ぐようなことになると考えて思いとどまりました。結局、私が農地を相続することにして、その代わりこちらに有利な条件を提示することで遺産分割協議を調えることができました。

この度、相続した農地を譲渡することができましたので、また別の記事で書いてみたいと思います。

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