このページの目次
置くことができる機関
株式会社が必ず置かなければならない機関は株主総会と取締役です。それ以外の機関については定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができます。
また、定款の定めにおいて、「取締役会を置くことができる」のように置くのか置かないのかわからないような定めは認められず、「取締役会を置く」のように定めなければなりません。
公開会社とは
機関の設置について理解するためには、公開会社とは何かを知ることが大前提となります。株式を譲渡することは原則として自由にできるのですが、株式会社は定款で定めることによって、株式の譲渡を制限することができます。
株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式を譲渡制限株式といいます。そのうえで、会社法は公開会社をその発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいうと定義しています。
要するに、全部の株式が譲渡制限株式である株式会社以外の株式会社は公開会社となります。これでも分かりにくいかもしれませんので、別の言い方をすれば譲渡制限株式ではない譲渡が自由にできる株式を発行することができる株式会社が公開会社です。
取締役会設置会社
取締役会設置会社とは、取締役会を置く株式会社又は会社法の規定により取締役会を置かなければならない株式会社をいいます。公開会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は取締役会を置かなければなりません。非公開会社は取締役会を置かなくてもよいのですが、監査役会設置会社である場合には取締役会の設置義務があります。
また、取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならないと規定されています。監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社では、監査役以外の機関が監査業務を行いますので、監査役を置くことはできません。
一方、取締役会設置会社である非公開会社では、会計参与を置けば監査役を置く必要はありません。つまり、監査役か会計参与のどちらかを置かなければならないのです。
監査役設置会社
監査役設置会社とは、監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又は会社法の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいいます。
監査役は業務及び会計の監査を行う機関ですが、非公開会社である株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができるとされています。
前述した監査役の設置義務に加えて、会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければなりません。
大会社における機関の設置義務
大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が五億円以上である、または、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上である株式会社をいいます。
大会社(非公開会社、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければなりません。一方、非公開会社である大会社は、会計監査人を置かなければならないと規定されています。
つまり、公開会社である大会社は、取締役会、監査役、監査役会及び会計監査人を置かなければならないということになります。そして、非公開会社である大会社は、監査役及び会計監査人の設置が義務となるのです。
実務では
今まで、私が司法書士として商業登記業務を行った株式会社は非公開会社だけです。上述したものは会社法の規定であり、司法書士なら誰もが持っている知識なのですが、実務で必要となるのはほんの一部といえるでしょう。
実務では、会社法施行前に設立した株式会社で監査役の監査の範囲に関する事項を登記すべき場合の知識などが要求されます。