根抵当権の被担保債権の範囲の変更登記

元本の確定前

根抵当権者と設定者は、元本の確定前において、根抵当権の被担保債権の範囲を変更することができます。

根抵当権の元本が確定すると、根抵当権は確定時に存在する債権のみを担保することになります。元本の確定後に債権範囲の変更ができるとすると、担保する債権が入れ替わってしまいますので、元本の確定前にのみ変更することができるのは当たり前のことだと言えます。

第三者の承諾は不要

債権範囲の変更をするにあたって、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることは不要です。

根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する抵当権とされていますので、後順位抵当権者等の関心事は極度額のみといっても過言ではありません。ですから、極度額の変更時のように利害関係人の有無を考慮する必要はないのです。

登記が効力要件

債権範囲の変更は登記が効力要件とされ、元本の確定前にその登記をしなければその変更をしなかったものとみなされます。

したがって、根抵当権者と設定者が元本の確定前に債権範囲の変更契約を締結したとしても、元本の確定後にその変更登記を申請することはできません。

根抵当権の共有者についての登記申請

2人以上が共有する根抵当権においては、共有者ごとに異なる債権範囲を定めることができます。この場合に共有者の1人の債権範囲の変更をすることもできますが、変更契約を締結する当事者は根抵当権の共有者全員及び設定者となります。

変更登記も同様に、根抵当権の共有者全員及び設定者が共同申請しなければなりません。変更に関与しない根抵当権の共有者も変更契約締結の当事者・登記申請人となるわけです。

登記手続き

原則として、根抵当権者を登記権利者、設定者を登記義務者として共同申請をします。ただし、変更によって債権範囲が縮減することが形式的に明らかな場合は、設定者が登記権利者、根抵当権者が登記義務者となります。

例えば、実務上あまり考えらませんが、「銀行取引、手形債権、小切手債権」を「銀行取引」に変更する場合を挙げることができます。明らかな場合に限られますので、変更の前後を通じて縮減することが判然としないときには原則通り申請することになります。

添付書類として、登記義務者の登記識別情報(登記済権利証)と印鑑証明書を提供しなければなりませんので、権利者・義務者の正確な判断が求められるのです。

登記の実行

前述したように登記上の利害関係を有する第三者は存在しませんので、債権範囲の変更登記は必ず付記登記でなされます。また、変更後の債権範囲の全てが登記され、従前の債権範囲には下線が引かれます。

したがって、登記申請書には変更後の事項として、変更がなかったものを含めて、変更後の債権範囲の全てを記載(提供)する必要があります。このような取扱いをすることで、登記事項証明書が見やすくなります。

もし、変更したものだけに下線を引き、その変更後のものだけを付記登記したとすると、非常に見づらくなります。商業登記においても、目的変更登記の場合に同様の取扱いがされています。

 

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