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はじめに
本シリーズの最終回となる今回は、監査等委員会設置会社の取締役会に焦点を当てます。
監査等委員会設置会社は、監査役を置かず、監査等委員会が監査機能を担う点で特徴的ですが、取締役会の権限や運営は監査役設置会社と多くの点で共通しています。ただし、完全に同じではなく、制度固有の違いを理解しておくことが重要です。
監査等委員会設置会社の取締役会が行う職務
監査等委員会設置会社の取締役会は、会社法第362条の一般規定にかかわらず、次の職務を行います(会社法第399条の13第1項)。
業務執行の決定
取締役会は、会社の経営に関する重要事項を決定します。具体的には次のような内容です。
- 経営の基本方針
- 監査等委員会の職務執行に必要な法務省令事項
- 法令・定款適合性を確保するための体制整備(内部統制システム)
これらは監査役設置会社と共通する部分が多いものの、監査等委員会の職務執行に必要な事項を取締役会が決定する点は制度固有の特徴です。
取締役の職務執行の監督
監査等委員会が監査を行うとはいえ、取締役会自身も監督機能を持ちます。
代表取締役の選定・解職
監査等委員会設置会社では、代表取締役は取締役会が選定します。指名委員会等設置会社のように代表執行役を置く制度とは異なり、監査役設置会社に近い仕組みです。
取締役会の運営の特徴
取締役会の招集・決議方法は監査役設置会社とほぼ同じですが、監査等委員会設置会社には次のような固有のルールがあります。
監査等委員による取締役会の招集
監査等委員会が選定した監査等委員は、取締役会を招集できます。監査役設置会社でも監査役が招集できる場合がありますが、監査等委員は取締役であるため、より強い権限として位置づけられています。
特別取締役による取締役会の決議
監査等委員会設置会社は、一定の要件を満たす場合、特別取締役による取締役会の決議を利用できます(会社法第373条)。
特別取締役制度の正確な理解
会社法第373条第1項は、特別取締役による取締役会で決議できる事項を次の二つに限定しています。
- 重要な財産の処分及び譲受け
- 多額の借財
特別取締役制度を利用できる要件は次のとおりです。
- 取締役が6名以上
- 取締役のうち1名以上が社外取締役
監査等委員会設置会社でも、上記の要件を満たし、かつ第399条の13第5項・第6項の除外事由に該当しない場合に利用できます。
重要な業務執行の決定の委任
監査等委員会設置会社の取締役会は、一定の要件を満たす場合、重要な業務執行の決定を取締役に委任できます(会社法第399条の13第5項)。
委任できる要件
委任が可能となるのは次のいずれかの場合です。
- 取締役の過半数が社外取締役である場合
- 業務執行の決定を委任できる旨の定款の定めがある場合
つまり、取締役全体の過半数が社外取締役でなければ委任できないという理解は誤りであり、定款の定めがあれば社外取締役の割合にかかわらず委任可能です。
特別取締役制度と委任制度の関係
会社法第373条第1項により、監査等委員会設置会社は、
- 特別取締役による取締役会の決議
- 重要な業務執行の決定の委任
の両方を同時に利用することはできません。どちらか一方のみを選択するか、どちらも利用しないという選択も可能です。
まとめ
監査等委員会設置会社の取締役会は、監査役設置会社と多くの点で共通しつつ、監査等委員会との役割分担を前提とした独自の仕組みを備えています。特別取締役制度や業務執行の決定の委任制度など、柔軟な意思決定を可能にする制度も整備されていますが、利用にあたっては会社法の条文構造を正確に理解することが不可欠です。
本シリーズを通じて、監査等委員会設置会社の制度全体像を体系的に整理しました。企業統治の理解を深める一助となれば幸いです。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
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