監査等委員会設置会社の監査等委員と監査等委員会

はじめに

前回の記事では、監査等委員会設置会社の機関構成と取締役の仕組みを整理しました。続編となる今回は、この制度の中核を担う監査等委員と監査等委員会について、制度の趣旨や監査役制度との違いを踏まえながら詳しく解説します。

監査等委員は取締役である

監査等委員会設置会社の最大の特徴は、監査を担う者が取締役であるという点です。監査等委員は取締役として選任されるため、取締役会の構成員となり、取締役会の議決に加わることができます。これは従来の監査役制度との根本的な違いです。

監査役は取締役ではないため、取締役会の議決に加わることはありません。監査役会設置会社では社外監査役の設置が義務づけられていますが、社外監査役は取締役会の議決に参加しないため、取締役会の議決に社外性が反映されないという批判がありました。

監査等委員会設置会社では、監査等委員の過半数を社外取締役とすることが義務であり、取締役会の議決に必ず社外性が含まれる仕組みとなっています。これが制度導入の大きな意義の一つです。

監査等委員会の職務

監査等委員会は、監査役会とは異なり、監査だけでなく取締役の選任・解任等に関する意見決定など、監督機能の一部も担います。主な職務は次のとおりです。

  • 取締役(会計参与設置会社では取締役及び会計参与)の職務執行の監査
  • 監査報告の作成
  • 会計監査人の選任・解任・再任しないことに関する議案内容の決定
  • 監査等委員でない取締役の選任・解任・辞任・報酬等に関する意見の決定

最後の項目は、指名委員会や報酬委員会を置かない監査等委員会設置会社に特有のもので、監査等委員会が経営陣の選任・報酬に関する監督機能の一部を担うことを意味します。

個人ではなく監査等委員会が監査機関

監査等委員会設置会社では、監査等委員個人が監査機関なのではなく、監査等委員会という合議体が監査機関です。そのため、監査等委員が行使する権限は、監査等委員会の決議に従う必要があります。監査等委員会が選定した監査等委員は、次のような強い調査権限を持ちます。

  • 取締役や使用人に対する職務執行状況の報告請求
  • 会社の業務・財産の調査
  • 子会社に対する事業報告請求・調査(正当な理由があれば拒否可能)

これらは監査役の権限と同様ですが、監査等委員会の決議があるときは、これに従わなければならない点が特徴です。

不正行為等に対する報告義務・差止請求権

監査等委員は、取締役に不正行為や法令違反の疑いがある場合、遅滞なく取締役会に報告しなければなりません。また、重大な損害が生じるおそれがある場合には、当該取締役に対し行為の差止めを請求することができます。

株主にも同様の差止請求権がありますが、監査等委員の差止請求は、会社内部の監督機能として重要な役割を果たします。

株主総会への報告義務

監査等委員は、取締役が株主総会に提出しようとする議案や書類に法令違反や著しく不当な事項があると認める場合、株主総会に報告しなければなりません。これは監査役制度と同様の義務であり、株主保護の観点から重要な役割です。

訴訟における会社の代表

監査等委員会設置会社と取締役との間の訴えにおいて、誰が会社を代表するかは次のように区分されます。

  • 監査等委員が当事者の場合:取締役会が定める者(株主総会が定めた場合はその者)
  • それ以外の場合:監査等委員会が選定する監査等委員

監査等委員会が会社の代表者を選定する点は、監査役制度にはない特徴です。

会計監査人に関する権限

監査等委員会は、次のような会計監査人に関する重要な権限も持ちます。

  • 会計監査人の解任
  • 一時会計監査人の選任
  • 会計監査人の報酬等の決定への同意

財務の透明性を確保するため、監査等委員会が会計監査人に関与する仕組みが整えられています。

監査等委員会の運営

監査等委員会の運営は取締役会と似ていますが、いくつか異なる点があります。

  • 招集権者は各監査等委員
  • 決議要件は過半数出席・過半数賛成(定款で加重不可)
  • 議事録は10年間本店備置
  • 株主は裁判所の許可を得て議事録の閲覧・謄写を請求可能

特に、決議要件を定款で加重できない点は取締役会との大きな違いです。

まとめ

監査等委員会設置会社の監査等委員と監査等委員会は、従来の監査役制度とは異なり、取締役会の内部に社外性を確保しつつ、監査と監督の機能を強化するために設計された制度です。

監査等委員が取締役として議決に加わることにより、取締役会の透明性と独立性が高まり、企業統治の実効性が向上します。制度の理解が深まることで、企業のガバナンスを評価する際の視点もより明確になるはずです。

 

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