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自分でする相続人申告登記・司法書士が解説!
相続登記義務化スタート
以前の記事「相続登記が義務化されます!罰則規定もあります。」で、相続登記の義務化や相続人申告登記について説明しています。先ずは、その記事をご参照いただけますと幸いです。そのうえで今回は、所有権登記名義人が死亡し、その子が相続人申告登記を自分でする方法について解説したいと思います。
相続人申告登記の注意点
権利関係を公示するものではない
相続人申告登記は、所有権登記名義人の相続人からの申出に基づき、登記官が職権で、申出があった相続人の住所・氏名、相続開始年月日等を付記登記により行うものです。
したがって、所有権登記名義人は引き続き被相続人として扱われますので、不動産を売却するためには相続登記を申請する必要があります。
遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできない
以前の記事でも触れましたが、遺産分割により不動産の所有権を取得したとき(法定相続分による相続登記がされた後に遺産分割により所有権を取得したときを除きます。)は、遺産分割の日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。この場合に相続人申告登記をしても義務を履行したことにはなりません。
相続人申出書の記載例
申出手続は書面による他、「かんたん登記申請」の利用によってWebブラウザ上で手続することも可能です。その場合、他の手続と異なり電子署名は不要です。相続人申出書の記載例は法務省ホームページに掲載されていますが、そこに記載されている注意点のうち分かりにくいものをピックアップして解説します。
・申出人
住民票上の申出人の氏名のふりがな及び生年月日を記載した場合は、添付情報として住所証明情報(住民票の写し)の提出を省略することができます。ただし、住民票コードの提供による添付省略は認められません。
・申出人が登記名義人の相続人であることを証する情報
1通の戸籍証明書に被相続人の死亡した日が記載され、かつ、申出人が被相続人の子として記載されている場合(申出人につきその戸籍から除籍された旨の記載があるものを除く。)には、その証明書の添付で足ります。子が未婚、離婚により復籍した等の場合が該当します。
婚姻、養子縁組により除籍の記載があるときは、被相続人の死亡した日以後に発行された申出人についての戸籍の証明書が必要になります。被相続人の死亡日以後に戸籍の改製があったときは、死亡事項の記載がある改製原戸籍謄本を取得します。
相続登記申請に必要な戸籍謄本等と異なる点は、相続人全員を特定する必要がなく相続人であることを証明することで足りるということです。
第一順位である子及び常に相続人となる配偶者については、添付する戸籍謄本等は少なくてすみますが、直系尊属、兄弟姉妹が申出人となるときは、先順位の相続人がいないことを証明する必要がありますので、その分通数が多くなります。
戸籍謄本等は原本を返してもらうこと(原本還付)ができますが、その場合にはコピーを添付しなければなりません。通数が多くなりますとコピーを添付することも煩雑となりますので、相続関係説明図を提出することによって、当該相続関係説明図を戸籍謄本等のコピーとして取り扱うこととなります。
・被相続人と登記名義人の同一性を証する情報
被相続人(死亡した方)の最後の氏名及び住所が登記記録上の氏名及び住所と異なる場合や被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、被相続人が登記名義人(登記記録上の所有者)であることが分かる被相続人の本籍の記載のある住民票の除票又は戸籍の表示の記載のある戸籍の附票の写し等が必要となります。
保存期間の経過により前記公的書面等の取得ができないときは、登記済権利証、「所有権の登記名義人と戸籍謄本等に記載された被相続人とは同一である」旨の印鑑証明書付きの申出人の上申書等を添付します。
・不動産の表示
不動産所在事項の表示に関する登記の登記事項(土地の地目及び地積並びに建物の種類、構造、床面積等)は提供することを要しません。土地の所在・地番、建物の所在・家屋番号の記載で足ります。不動産番号を記載したときは、それらの記載も省略することができます。
※登記記録例

海外居住者を所有権の登記名義人とする登記の申請に関する改正(令和6年4月1日施行)
はじめに
以前の記事「法人を所有権の登記名義人とする登記の申請に関する改正(令和6年4月1日施行)」で、所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるものが登記事項とされたことについて言及しました。この記事では、手続面における詳細を解説します。
申請情報に追加する事項
国内連絡先となる者は自然人でも法人でも構いませんが、複数を定めることはできません。親族、不動産関連業者、司法書士等が想定されます。
1.自然人の氏名及び住所を申請情報の内容とする場合
「国内連絡先 何市何町何番地【住所】
甲某【氏名】」
2.自然人の氏名並びに事務所の所在地及び名称を申請情報の内容とする場合
「国内連絡先 何市何町何番地【所在地】 (○○司法書士事務所)【名称】
甲某【氏名】」
3.法人の名称、営業所の所在地及び名称並びに会社法人等番号を申請情報の内容とする場合
「国内連絡先 何市何町何番地【所在地】 (○営業所)【名称】
甲株式会社【法人の名称】
会社法人等番号 1234-56-789012」
4.国内連絡先となる者がない旨を申請情報の内容とする場合
「国内連絡先 なし」
添付情報
添付情報として、国内連絡先事項証明情報及び国内連絡先承諾書を提供する必要があります。また、承諾書には作成者の実印(職印、会社実印等)を押さなければなりませんので、印鑑証明書(職印証明書も可)を添付します。
国内連絡先となる者が法人である場合には、法人の代表者の氏名を追記した上で、代表者の資格を証する法人の登記事項証明書を添付する必要がありますが、国内連絡先となる者が会社法人等番号を有する法人である場合には、法人の登記事項証明書及び印鑑証明書(登記官が作成可能な印鑑証明書に限ります。)の添付は不要です。
国内連絡先事項証明情報
国内連絡先となる者の氏名若しくは名称及び住所が記載された印鑑証明書、住民票の写し、戸籍の附票、法人の登記事項証明書及び国内連絡先となる者の氏名若しくは名称並びに営業所、事務所その他これらに準ずるものの所在地及び名称が記録されたホームページの内容を書面に出力したもの等が該当します。
なお、国内連絡先となる者が会社法人等番号を有する法人であって、当該法人について会社法人等番号等を申請情報の内容としたときは、当該会社法人等番号の提供をもって、国内連絡先事項証明情報の提供に代えることができる場合があります。
国内連絡先となる者がないときは、国内連絡先事項証明情報には、国内連絡先となる者がない旨の所有権の登記名義人となる者等の署名又は記名押印がされた上申書が該当します。なお、当該上申書には、印鑑証明書を添付することを要しません。代位による登記等、所有権の登記名義人となる者等が申請人とならない登記の申請の場合には当該上申書の提出は不要です。
国内連絡先承諾書
国内連絡先事項が登記される不動産の所有権登記名義人の国内における連絡先となることを承諾する旨を記載した書面等を提供する必要があります。当該書面には、原則として作成者が記名押印をし、押印は上述したように実印でしなければなりません。
法人を所有権の登記名義人とする登記の申請に関する改正(令和6年4月1日施行)
所有権の登記の登記事項
不動産登記法の改正により、新たに所有権の登記の登記事項となったものがあります。所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号が登記事項となりました。次に、所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるものが登記事項とされています。
この記事では、主に法人を所有権の登記名義人とする登記の申請に関する改正後の条文を掲載します。国内における連絡先に関する事項については、別の記事「海外居住者を所有権の登記名義人とする登記の申請に関する改正(令和6年4月1日施行)」をご参照ください。
所有権の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの
二 所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの
2 前項各号に掲げる登記事項についての登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。
登記の申請をする場合に登記所に提供しなければならない法第十八条の申請情報の内容は、次に掲げる事項とする。
一~十(略)
十一 権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる事項
イ~へ(略)
ト 所有権の保存若しくは移転の登記を申請するとき又は所有権の登記がない不動産について所有権の処分の制限の登記を嘱託するときは、次に掲げる事項
(1)所有権の登記名義人となる者が法人であるときは、法第七十三条の二第一項第一号に規定する特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの(別表において「法人識別事項」という。)
(2)所有権の登記名義人となる者が国内に住所を有しないときは、法第七十三条の二第一項第二号に規定する国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの(別表において「国内連絡先事項」という。)
第156条の2
法第七十三条の二第一項第一号の法務省令で定める事項は、次の各号に掲げる所有権の登記名義人の区分に応じ、当該各号に定める事項とする。
一 会社法人等番号を有する法人 当該法人の会社法人等番号
二 会社法人等番号を有しない法人であって、外国(本邦の域外にある国又は地域をいう。以下この号において同じ。)の法令に準拠して設立されたもの 当該外国の名称
三 前二号のいずれにも該当しない法人 当該法人の設立の根拠法の名称
第156条の3
前条第二号又は第三号に定める事項を申請情報の内容とする登記の申請をする場合には、当該事項を証する情報をその申請情報と併せて提供しなければならない。
会社法人等番号を有する法人の場合には、会社法人等番号を提供することで足り、別途添付情報を要しません。
対象となる登記
- 所有権保存登記
- 所有権移転登記
- 所有権の登記がない不動産に対する所有権の処分の制限の登記(裁判所等の嘱託により登記官の職権で、所有権の保存登記をするとき。)
- 所有権更正登記(所有権の登記名義人となる者があるとき。)
- 所有権登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記
特に、注意を要するのは最後に掲げた登記を申請するときです。商号変更、本店移転等による名変登記を申請する場合にも、法人識別事項の登記がされていないときは、上記の申請情報・添付情報が必要となります。
海外在住の相続人がいる場合の相続登記
設例
Aが死亡して相続人は子B・C(Cは海外在住、日本国籍)の2人の場合に、A名義の不動産をBの単独名義にしたいケースを想定します。
遺産分割協議書の作成
相続人が複数いる場合の不動産の名義変更を含んだ相続手続を進めるためには、遺産分割協議書の作成が必要となります。ただし、遺言書がある場合にはその必要はありませんが、実務上遺言書が作成されているケースは少ないです。
相続人全員が遺産分割協議に参加しなければなりませんし、相続人の印鑑証明書を取得することが求められます。相続人が海外に居住しているときは、日本における住民登録は抹消され、住民票の取得はできなくなります。また、印鑑登録は住民登録地でしかできませんので、印鑑証明書の取得もできません。
したがって、設例のCについては署名証明(サイン証明)を在外公館で取得することが必要となるのです。
署名証明(サイン証明)とは
日本に住民登録をしていない海外に在留している人に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして発行するもので、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。証明には以下の2種類があります。
形式1(貼付タイプ)は在外公館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した私文書(遺産分割協議書、委任状等)を綴り合せて割り印を行います。形式2(単独タイプ)は申請者の署名を単独で証明するものです。
形式2は使いまわしができますので便利なのですが、相続登記においては形式1を求められることが多いです。多いと書きましたが、今まで形式2の署名証明を添付して相続登記を申請したことがありませんので、必ず形式1の署名証明を取得していただくように相続人の方にお願いをしております。
相続人の同一性確認
上記設例においては、Bの戸籍謄本と印鑑証明書を登記申請の際に添付します。戸籍謄本には住所の記載がないために、両者に共通する記載事項は氏名と生年月日のみです。つまり、相続人の同一性確認は氏名及び生年月日によって行っているものと考えらえます。
署名証明は印鑑証明書に代わるものとして位置付けられていますが、身分事項等記載欄には氏名、生年月日、日本旅券番号の記載があるのみで住所の記載がありません。
在留証明添付の必要性
ネット上では、在留証明は相続財産を取得する場合のみ必要となるとの情報掲載が多く見られます。しかしながら、当事務所では遺産分割協議書に住所を記載することから、相続財産を取得しない相続人の在留証明も添付しています。
ところで、印鑑証明書は不動産登記手続上、住所を証する書面として使用することが可能です。住民票の代わりとなるのです。ですから、印鑑証明書は在外公館が発行する署名証明と在留証明を兼ねている書面といえるのです。
在留証明の要否については、登記官の立場になって考えてみましょう。印鑑証明書や署名証明は遺産分割協議書の真正を担保するために添付するものです。用意できる資料はできるだけ添付するに越したことはないのではないでしょうか。
署名証明と在留証明は同時に取得することができますので、特に大使館、領事館から遠方に居住してなかなか行くことが出来ない場合には、在留証明も併せて取得しておきましょう。
長期優良住宅、低炭素住宅の登録免許税の税率軽減措置
はじめに
建物を新築、購入したときに所有権保存、移転登記を申請する際には登録免許税を納めなければなりません。その建物が住宅用家屋である場合には、新築住宅取得の際の負担を軽減するため、住宅用家屋の所有権の保存登記及び移転登記についての登録免許税の税率を軽減する制度が設けられています。さらに、長期優良住宅、低炭素住宅については一般住宅より低い税率が適用されます。
この特例制度の適用期限は令和6年3月31日となっていますが、3年間延長(令和9年3月31日まで)されることが予定されています。(令和6年度税制改正の大綱、令和5年12月22日閣議決定、二 資産課税、2 租税特別措置等(国税)〔延長・拡充等〕(5)~(8))
軽減税率 | 本則 | 一般住宅 | 長期優良住宅 | 低炭素住宅 | |
戸建 | マンション | ||||
所有権保存 | 0.4% | 0.15% | 0.1% | 0.1% | 0.1% |
所有権移転 | 2.0% | 0.3% | 0.2% | 0.1% | 0.1% |
長期優良住宅とは
長期優良住宅認定制度は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅の建築・維持保全に関する計画を「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき認定するものです。「長期優良住宅」とは、大きく分けて以下1~5の5つの措置が講じられている住宅を指します。
1.長期に使用するための構造及び設備を有していること
2.居住環境等への配慮を行っていること
3.一定面積以上の住戸面積を有していること
4.維持保全の期間、方法を定めていること
5.自然災害への配慮を行っていること
認定申請は着工前までに行う必要があり、先ずは登録住宅性能評価機関へ長期使用構造等であるかの確認を申請し、確認書等の交付を受けます。その後、所管行政庁に対し、認定申請をして認定通知書の交付を受けます。この認定通知書は、長期優良住宅として住宅用家屋証明書の交付を受けるために必要となります。
登録免許税の税率引き下げ以外のメリットとして、地域型住宅グリーン化事業の補助金受給、住宅ローンの金利引き下げ、住宅ローン減税の控除対象限度額の引き上げ、不動産取得税の課税標準からの控除額の増額、固定資産税の減税措置適用期間の延長、地震保険料の割引等があります。
低炭素住宅とは
都市機能の集約やそれと連携した公共交通機関の利用促進、建築物の低炭素化等の施策を講じることにより、地域における成功事例を蓄積し、その普及を図ることを目的として「都市の低炭素化の促進に関する法律」が制定され、平成24年12月に施行されました。その法律で定める低炭素住宅とは、建築物における生活や活動に伴って発生する二酸化炭素を抑制するための低炭素化に資する措置が講じられている、市街化区域等内に建築される住宅を指します。
以下の1~3のすべてを満たす建築物について、所管行政庁(都道府県、市または区)に認定申請を行うことにより、低炭素住宅としての認定を受けることが可能です。
1.省エネ基準を超える省エネ性能を持つこと。かつ低炭素化に資する措置を講じていること
2.都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
3.資金計画が適切なものであること
認定申請は着工前に行う必要があり、先ずは審査機関に事前の技術的審査を依頼して適合証の交付を受けます。その後、所管行政庁に対し、適合証を添付のうえ認定申請書を提出して認定証の交付を受けます。
まとめ
長期優良住宅、低炭素住宅として登録免許税の税率引き下げを受けるためには、当該住宅が、認定住宅であることを証明した「住宅用家屋証明書」を当該住宅所在地の市町村役場に発行してもらうことが必要です。
司法書士が登記申請を代理人として行う場合には、建築主または売主に対して、登記申請を行う住宅が長期優良住宅または低炭素住宅に該当するかを確認させていただきます。ご理解、ご協力の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。
遺贈による所有権移転登記と名変(住所変更等)登記について
はじめに
以前の記事「遺贈による登記手続(令和5年4月1日改正)」において、遺贈による所有権移転登記手続を解説しましたが、今回は遺贈者の登記簿上と最後の住所が相違する場合の名変登記について解説する内容となります。氏名が相違する場合も同様ですが、以下、住所変更があったことを前提として話を進めます。
前提としての名変登記が必要
相続を原因として所有権移転登記を申請するときには、名変登記は不要だということは司法書士なら誰でも知っています。
遺言書に基づいて登記申請をする場合には、原因が「相続」であろうと、「遺贈」であろうと、一般の方は「相続登記」で一括りにすることが多いように感じます。相続登記をお願いしたいとのご相談を受け、よくよくお話を伺ってみると実は遺贈であったということがあるのです。
言うまでもなく、共同申請となる「遺贈」を原因とする所有権移転登記の前提として、名変登記が必要となります。ちなみに、改正による相続人に対する遺贈の登記を単独申請する場合には、名変登記は不要です。
登記申請書の記載例
遺言執行者が名変登記申請を代理人に委任する場合の申請書の記載例を以下に掲げます。
登記申請書
登記の目的 所有権登記名義人住所変更
原 因 令和○年○月○日住所移転
変更後の事項 住所 東京都三鷹市野崎一丁目1番1号
申 請 人 東京都三鷹市野崎一丁目1番1号(注1)
亡法務太郎
添付情報 登記原因証明情報 代理権限証明情報(注2)
令和○年○月○日申請 東京法務局府中支局
代 理 人 東京都三鷹市下連雀三丁目44番13-403号
司法書士 藤山晋三
連絡先の電話番号 0422-47-8677
登録免許税 金1,000円
不動産の表示
不動産番号 1234567890123
所 在 三鷹市野崎一丁目
地 番 123番
地 目 宅地
地 積 123.45平方メートル
対象登記の順位番号 ○番
(注1)遺贈者の最後の住所氏名を記載します。遺言執行者の住所氏名を記載する必要はありません。
(注2)遺言書、死亡事項の記載ある戸籍謄本等、委任状などを添付しますが、後件で申請する遺贈による所有権移転の添付情報を援用することが多いでしょう。
遺贈による登記申請増加の可能性
司法書士などの専門職が遺言書の作成に携わる場合には、「遺贈する」より「相続させる」の文言を使うことが多いと思います。
ただ、遺言者が甥姪に財産を遺したいときに、その親(遺言者の兄弟姉妹)がご存命でいらっしゃる場合には、「相続させる」を使うことはできません。このことから、「○○に遺贈する。(この遺言の効力発生時に受遺者が相続人の立場にあるときは、「遺贈する」を「相続させる」と読み替える。)」のような記載が多く用いられていました。
改正によって、相続人に遺贈する際の登記の単独申請ができるようになりましたが、税務面や特定遺贈、包括遺贈の差異等を考慮すると、今後も遺言書には同様な記載がされることになると考えられます。また、単身者及び子供のいない夫婦が増加傾向にありますので、甥姪や第三者等に遺贈する内容の遺言書の作成が増加するのではないでしょうか。
抵当権を共有者の持分の抵当権とする変更の登記について
事例
Aが所有する甲土地について、X銀行を抵当権者とする抵当権が設定された。その後、Aが所有権の一部(2分の1)をBに売却して甲土地はA、Bの共有となった。
X銀行はBの持分を目的とした部分について抵当権を放棄し、以後Aの持分のみを目的とした抵当権にしたい場合、どのような登記を申請するべきなのか。
申請すべき登記
Aがハウスメーカーで、甲土地が私道部分である場合などに、実務上非常に多く申請する登記になります。移転をする前に抵当権を抹消すればよいのですが、金融機関は、被担保債権全額の弁済がされない限り抹消登記に応じることはありません。また、登記手続上の問題として、抵当権の一部抹消登記というような申請手続をすることができません。
ですから、売買代金を抵当権の被担保債権の一部の弁済に充てて、抵当権者は買主の取得した持分を目的とした部分について抵当権を放棄する流れとなります。
このような場合に申請すべき登記は、共有者の持分の抵当権とする変更の登記となります。名称が長いので、抵当権の縮減変更と呼んだりすることもあります。抵当権の効力の及ぶ範囲が縮減することになる変更登記だからです。
登記申請手続
上記事例の場合には、登記権利者をB、登記義務者をX銀行として申請します。Bが抵当権の負担の付いた所有権を取得することの無いように、所有権(持分)一部移転と共有者の持分の抵当権とする変更の登記は連件で同時に申請します。
申請情報の内容
・登記の目的
「○番抵当権をA持分の抵当権とする変更」
登記上の利害関係を有する第三者が存在する場合には、当該第三者の作成した承諾を証する情報またはその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を必ず提供しなければなりません。そのうえで、常に付記登記でなされますので、(付記)を追記することはありません。
・登記原因及び日付
「年月日B持分の放棄」
添付情報
・登記原因証明情報
「抵当権一部放棄証書」等を添付します。
・登記識別情報
登記義務者であるX銀行が抵当権を取得した際の、登記識別情報または登記済証を提供します。
・代理権限証明情報
司法書士が代理人として申請する場合等には、X銀行とBの委任状を添付します。
・登記上の利害関係を有する第三者が存在する場合の当該第三者の作成した承諾を証する情報またはその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報
形式的には変更登記ですが、実質的には一部抹消登記といえますので、添付しない場合には主登記で実行されるということにはなりません。(不動産登記令別表26添付情報欄ト)
利害関係を有する第三者は、当該抵当権を目的とした転抵当権者、当該抵当権から抵当権の順位譲渡を受けている抵当権者等が該当します。
登録免許税
通常の変更登記と同様に不動産1個につき金1,000円となります。
住宅ローンを利用した場合
Bが住宅ローンを利用した場合には、Bの持分を目的とした抵当権を設定します。登記完了後の登記事項証明書は、共有者が増えれば増えるほど煩雑となり、一般の方には分かりにくい内容になるかと思います。疑問、不明点等がございましたら、当事務所に遠慮なくお問い合わせください。
抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更の登記
事例
A、Bが共有する甲土地について、X銀行がAの持分のみを目的として抵当権を設定した。その後、AがBの持分を取得して甲土地はAの単独所有となった。
A・X間でAが取得した持分につき抵当権の追加設定契約を締結し、甲土地全体を目的とした抵当権にしたい場合、どのような登記を申請するべきなのか。
申請すべき登記
同一名義人が数回に分けて各別の登記により持分を取得している場合には,その登記に係るそれぞれの持分につき抵当権設定の登記を申請することができるとする先例があります。
しかし、既に所有権の一部を目的として抵当権の設定の登記がされており、その追加担保として残余の部分を目的として抵当権を設定した場合には、抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更の登記を申請します。
登記申請手続
実質的には抵当権の追加設定ですが、申請する登記は変更登記となりますので、申請情報の内容は特殊なものとなります。上記事例の場合、申請情報の申請人として「抵当権者 X銀行、設定者 A」ではなく、「権利者 X銀行、義務者 A」のように提供します。
申請情報の内容
・登記の目的
「○番抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更」
登記上の利害関係を有する第三者が存在する場合に、当該第三者の作成した承諾を証する情報若しくはその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供したとき、または、登記上の利害関係を有する第三者が存在しないときには、及ぼす変更登記は付記登記でなされます。
確実に付記登記でしてもらうために、「○番抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更(付記)」と記載することもあります。主登記、付記登記のいずれかで登記がされるものについては、括弧書きは登記官に対するアピールのようなものに過ぎません。
・登記原因及び日付
「年月日金銭消費貸借年月日設定」等
形式的には変更登記ですが、追加設定と同様となります。「年月日変更」ではありません。
・その他
「債権額」、「利息」、「損害金」、「債務者」などを提供する必要はありません。主登記を見れば分かるからです。
添付情報
・登記原因証明情報
「抵当権追加設定契約証書」等を添付します。通常はコピーを添付して原本還付手続をします。
・登記識別情報
実質的に追加設定と同様であることから、新たに持分を取得した際の登記識別情報を提供します。
・登記義務者の印鑑証明書
・登記上の利害関係を有する第三者が存在する場合の当該第三者の作成した承諾を証する情報またはその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報
提供しない場合には、及ぼす変更登記は主登記でなされます。利害関係を有する第三者は、新たに抵当権の効力が及ぶ持分についての後順位抵当権者等が該当します。
登録免許税
変更登記であれば不動産1個につき金1,000円となりますが、及ぼす変更登記は実質的には追加設定登記となりますので、不動産1個につき「金1,500円(登録免許税法第13条第2項)」となります。
登記識別情報の通知について
及ぼす変更登記が完了しても、登記識別情報は通知されません。その後、抵当権を抹消する際には、主登記の抵当権を設定した際の登記識別情報または登記済証を添付すれば足ります。
ただし、及ぼす変更登記を平成17~20年頃より前に申請した場合には、法務局の大判が押され、受付年月日と受付番号を印字する取扱いがされていましたので、抹消する際にはその登記済証も添付する必要があります。
登記簿の附属書類の閲覧基準の改正について(令和5年4月1日施行)
登記簿の附属書類とは
登記簿の附属書類とは、登記申請書及び添付書面を指し、不動産登記(権利、表示)を申請する際に法務局に提出するものです。そのうち、土地所在図、地積測量図、地役権図面、建物図面及び各階平面図は、誰でも閲覧、写しの交付請求ができることとされています。
改正前においては、前記図面以外の登記簿の附属書類の閲覧請求をするには、利害関係があることの要件が付されていました。利害関係の有無については、登記官の判断、解釈に委ねられていたために統一した手続がなされないなどの問題点がありました。
そこで、登記申請書及び添付書面の閲覧の請求の基準を明確化、合理化する観点から、令和5年4月1日からは、登記申請人以外の第三者が閲覧の請求をする場合には、「正当な理由があること」が必要となりました。つまり、正当な理由があるときは、登記官に対し、登記簿の附属書類の全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができると改正されたのです。
なお、登記を申請した者は、「正当な理由」の有無にかかわらず、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができます。
正当な理由
登記申請人以外の第三者による閲覧の請求は、正当な理由がある場合に、正当な理由があると認められる部分に限って、することができます。
法務省の通達によれば、この「正当な理由がある」とは、請求人において登記簿の附属書類を閲覧することに理由があり、かつ、その理由に正当性があることをいう。具体的には、登記簿の附属書類中の個々の書類に含まれる情報の内容、重要度なども考慮しつつ、その閲覧が認められる程度の正当性があるかどうかを個別に判断することになる、とされています。
一般に正当な理由があると認められる場合
(1)登記簿の附属書類のうち請求人が作成した書類の閲覧を請求する場合には、「正当な理由がある」と認められます。ただし、同一文書について複数の作成名義人が存在する場合には、他の作成名義人の署名や押印等に係る部分については、別途「正当な理由がある」かどうかを判断する必要があるとされています。
(2)自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類を請求人が閲覧することを申請人が承諾した場合には、「正当な理由がある」と認められます。この場合の正当な理由を証する書面として、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類を請求人が閲覧することを承諾したことを内容とする当該申請人作成に係る承諾書の提示及びその原本又はその写しの提出を求められます。
一般に正当な理由があるとは認められない場合
(1)他の法令等により交付等に係る手続が規定されている場合には原則として認められません。例えば、相続人調査を目的として戸籍謄本等の閲覧請求をする場合が挙げられます。ただし、戸籍謄本等が保存期間経過により廃棄され、附属書類の閲覧請求以外の手段によって戸籍内容等の確認ができないとき、官公署が公益目的で相続人調査を行うために必要なときなどは、例外として正当な理由が認められます。
(2)被害者等の現住所の閲覧制限措置がされている場合には、当該現住所が記載された部分については、当該被害者等が請求人となる場合を除き、「正当な理由がある」とは認められません。被害者等とは、DV、ストーカー、虐待などによる被害者を指します。
解散した法人の担保権に関する登記の抹消(令和5年4月1日施行)
はじめに
形骸化した登記(休眠登記)の抹消手続の簡略化に関する改正のうち、今回は解散した法人の担保権に関する登記の抹消について触れていきます。
登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十九条に規定する公示催告の申立てをすることができると定められています。この適用対象となる所在が知れない者として、登記義務者である登記名義人のほか、その相続人その他の一般承継人が該当します。
そのうえで、非訟事件手続法第百六条第一項に規定する除権決定を得ることにより、登記権利者は、単独で登記の抹消を申請することができます。さらに、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したとき、被担保債権の弁済期から二十年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも同様に単独申請が可能です。
要件
登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第二項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から三十年を経過し、かつ、その法人の解散の日から三十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。
条文から要件を抜き出すと、①共同して登記(先取特権、質権又は抵当権に関する登記)の抹消の申請をすべき法人が解散していること。②不動産登記法第70条第2項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないこと。③被担保債権の弁済期から30年を経過したとき。④法人の解散の日から30年を経過したとき、となります。
なお、共同して登記の抹消の申請をすべき法人の清算人が死亡していることが判明した場合には、「法人の清算人の所在が判明しない」場合に該当します。
添付情報
(1)被担保債権の弁済期を証する情報
金銭消費貸借契約証書、弁済猶予証書、債権の弁済期の記載がある不動産の閉鎖登記簿謄本等が該当します。
(2)共同して登記の抹消の申請をすべき法人の解散の日を証する情報
共同して登記の抹消の申請をすべき法人の登記事項証明書等
(3)法第七十条第二項に規定する方法により調査を行ってもなお(2)の法人の清算人の所在が判明しないことを証する情報
ⅰ 登記義務者の登記事項証明書の交付請求をし、登記義務者が合併により解散していることが判明した場合には、登記義務者の合併後存続し、又は合併により設立された法人について登記事項証明書の交付請求をします。
ⅱ ⅰにより、法人の登記簿に共同して登記の抹消の申請をすべき者の代表者(共同して登記の抹消の申請をすべき者が合併以外の事由により解散した法人である場合には、その清算人又は破産管財人。以下同じです )として登記されている者が判明した場合には、当該代表者の調査として当該代表者の住民票の写し、戸籍の附票等の交付請求をします。それらが取得できない場合には、不在住証明書や不在籍証明書等を取得します。
ⅲ 共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在の調査として書留郵便その他配達を試みたことを証明することができる方法により、登記義務者の不動産の登記簿上の住所に宛てて書面を送付します。(ⅰの措置により登記義務者が合併により解散していること及び共同して登記の抹消の申請をすべき者が所在すると思料される場所が判明した場合を除きます )
ⅳ ⅰ及びⅱの措置により共同して登記の抹消の申請をすべき者の代表者が判明した場合には、当該代表者の所在の調査として書留郵便その他配達を試みたことを証明することができる方法により、共同して登記の抹消の申請をすべき者の法人の登記簿上の代表者の住所に宛てて書面を送付します。
上記ⅰ~ⅳの結果を記載した報告書の添付が求められます。