胎児の名義とする相続登記

胎児の表示の変更

先例(令和5年3月28日法務省民二第538号)により、令和5年4月1日以後にされる登記の申請から、胎児を相続人とする相続による所有権の移転の登記の申請において、申請情報の内容とする申請人たる胎児の表示は 「何某(母の氏名)胎児」とすることになりました。

従前の取扱いでは、「亡甲某(被相続人)妻乙某胎児」と表示することとしていましたが、登記手続の見直しが行われたのです。

胎児の権利能力

人(自然人)は、出生と同時に権利能力を取得します。この原則を貫けば、胎児はまだ生まれていませんので、権利能力を有しているとは言えないことになります。ところで、胎児と生まれた子の間に相続することの可否について差異が生じるとなると両者に不公平が生じます。

そこで、民法は、「不法行為に基づく損害賠償請求権」、「相続」及び「遺贈」の3つの場合については、胎児は既に生まれたものとみなすという規定を設け、出生の前後によって不公平が生じることがないようになっています。

生まれたものとみなす

胎児は、相続については既に生まれたものとみなされますので、胎児を登記名義人とする相続の登記を申請することができます。判例は、胎児である間には権利能力はなく、生きて生まれた場合、遡って権利能力を取得する見解である停止条件説を採っています。この説では、父母は法定代理人として、出生前に胎児を代理することはできないことになります。

しかしながら、登記実務においては未成年者の法定代理の規定を準用して母が胎児の代理人として登記申請することが認められています。

相続登記申請

登記原因証明情報として、懐胎の事実を証する医師の診断書等を提供する必要はありません。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を添付することで足ります。

生きて生まれた場合

相続登記申請後に胎児が無事に生まれた場合には、登記名義人の住所、氏名の変更登記を申請します。その子の戸籍謄本、住民票の写しを登記原因証明情報として提供します。

死産であった場合

胎児が死産であったときは、民法第886条第2項によりはじめから相続人ではなかったことになりますので、錯誤を原因として所有権更正登記を申請します。

胎児のみを相続人として登記した場合にその者を被相続人の直系尊属とする更正登記は、登記の前後に同一性がないためにできません。その場合には、一旦相続登記を抹消し、改めて直系尊属、兄弟姉妹等の後順位相続人への所有権移転登記を申請することになります。

 

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