家族信託の用語解説-分別管理義務とは?

定義

受託者は、受託者として所有する信託財産を自身の固有財産と分別して管理しなければなりません。また、受託者を同じとする他の信託財産とも分別して管理しなければなりません。 このような受託者に課せられた義務のことを指します。

信託の登記または登録ができる財産

代表的なものが不動産です。不動産が信託された場合、受託者は不動産の名義を受託者に変更し、併せて信託の登記をしなければなりません。(信託法第34条第1項第1号)
信託行為(信託契約など)によってこの義務を免除することはできません。(信託法第34条第2項)

信託の登記または登録ができない財産

金銭を除く動産

信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法によって、分別して管理しなければなりません。(信託法第34条第1項第2号イ)

金銭その他上記に掲げる財産以外の財産

その計算を明らかにする方法によって、分別して管理しなければなりません。(信託法第34条第1項第2号ロ)

実務上問題となる金銭の管理

信託口口座での管理

上述のように、その計算を明らかにする方法として信託財産の帳簿等を作成して管理することも可能かもしれません。しかしながら、実務上は信託口口座を開設して、そこで金銭の管理をすることが望ましいとされています。

信託口口座とは、口座名義を「委託者A受託者B信託口」として開設され、預貯金が信託財産であることを外形上明らかにした口座のことを指します。通常の個人名義の口座であれば、名義人が死亡するとその口座は凍結されます。

信託口口座の場合、信託行為(信託契約など)に受託者が死亡した場合の後継の受託者の定めがあれば、凍結されることなく後継受託者へ口座の引継ぎをすることができます。残念ながら、信託口口座の開設に応じてくれる金融機関は少ないのが現状です。

また注意すべき点として、「委託者A受託者B信託口」の口座であっても受託者死亡により口座凍結してしまう名ばかりの信託口口座があります。両者の違いは金融機関によって生じますので、事前にしっかりと確認することが大切です。

受託者名義の口座での管理

受託者名義の口座を新規開設して、そこで管理する方法もあります。このような口座を実務上、「信託専用口座」と呼びます。こちらを選択する理由は、信託口口座の開設に応じてくれる金融機関が少ないこと以外にもう一つあります。

信託法上、受託者が信託財産である金銭を信託口口座で管理しなさいと規定されているわけではなく、あくまでも分別管理の義務を課されているに過ぎないということです。こちらを選択した場合のデメリットとして主に2つあります。

先ずは受託者死亡の場合の口座凍結です。後継受託者が前受託者の相続人であれば、口座解約は比較的容易にできます。相続人でない場合には、前受託者の相続人の協力を得て口座を解約し、後継受託者名義の口座を開設して預貯金を移す必要がでてきます。

もう一つは、口座の差押えです。受託者が債務(受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務(信託財産責任負担債務と言います。)を除きます。)を負担している場合に、債権者が債務名義(確定判決など債権の存在を公的に証明したもの)を取得して受託者名義の信託専用口座を差し押さえるおそれがあります。預貯金が信託財産なのか受託者の固有財産なのか、外形上明らかになっていないためです。

対応策として、受託者または受益者が第三者異議の訴えを提起します。(信託法第23条第5項)訴えを提起しただけでは強制執行を止めることはできません。異議のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点について疎明があつたとき、強制執行停止の申立てにより、裁判所は執行停止の決定をします。(民事執行法第38条第4項、第36条第1項)

以上を踏まえ、信託口口座を用意できずに信託専用口座を利用する場合には、当該口座の口座番号を載せて信託契約書を公正証書で作成することを推奨しています。上記の疎明資料となり得るだけでなく、外形上も信託財産であることを示すことができるからです。

したがって、信託専用口座の開設の後に公正証書の作成となり、信託口口座の場合とは順序が逆となります。信託口口座の開設には、公正証書の提出または提示を求められます。

 

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