抵当権の付いた不動産を信託することはできるのか

消極財産(債務)を信託することはできない

信託する財産は積極財産に限られますが、信託行為(信託契約など)において、委託者の被担保債務(抵当権によって担保されている債務)を受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務(信託財産責任負担債務といいます。)とする旨を定める(信託法第21条第1項第3号)ことで、抵当権付き不動産の信託は可能です。

債務引受が必要となる

債務引受とは、債務者が負担している債務を新たな人が引き受けて債務を移転することをいいます。債務引受には、免責的債務引受と併存的債務引受があります。ここでは、家族信託のケースを想定して記載します。

・免責的債務引受
引受人(受託者)が債務を引き受けて、債務者(委託者)は以後債務の負担を免れることとなります。通常は、債権者(銀行など)、引受人及び債務者の三面契約で行います。

債権者と引受人となる者との契約によってすることもできますが、この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずるとされています。(民法第472条第2項)債務者と引受人間の契約でもできますが、債権者の承諾が必要となります。(同条第3項)

・併存的債務引受
引受人(受託者)が債務を引き受けますが、債務者(委託者)も引き続き債務を負担するというものです。引受人と債務者の債務は連帯債務となります。(民法第470条第1項)債権者は、引受人と債務者の両方に債務の弁済を請求できるということです。

原則として、三面契約で行うことは免責的債務引受と同様ですが、債権者と引受人となる者との契約によってすることもできます(同条第2項)し、債務者の意思に反しても有効です。引受人が債務者と併存して債務を負担する点において保証(民法第462条第2項)に類似しているからです。

債務者と引受人となる者との契約によってもすることができますが、第三者のためにする契約に関する規定に従うこととされています。(民法第470条第4項)したがって、債権者のためにすることの明示の約定と債権者の受益の意思表示が必要となります。このことから、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずるとされています。(同条第3項)

実務上、債務者を委託者のままにして抵当権付き不動産を信託することはできません。債務引受が必須ということになります。受託者が債務引受により負担した債務は、上述したように信託財産をもって支払うことになります。全てを支払うことができないときは、受託者固有の財産をもって支払いをしなければならない責任を負うことになりますので注意が必要です。

債務控除について

委託者兼受益者(親)が受託者(子供)に抵当権付き不動産を信託し、親が死亡して子供が受益者になったケースで考察してみます。

不動産は相続税評価額で評価して、借入金(抵当権の債権額のうち相続開始の際に現に存するもの)は子供が相続により取得した財産の総額から債務控除します。この場合において、債務控除できる金額は債務控除する者(子供)が債務を負担することが確実と認められるものに限るとされています。(相続税法第14条第1項)残債務が不動産評価額を上回っているような場合には、債務控除の対象にならないおそれが出てきます。

 

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