家族信託の活用例-死後事務を確実に行う

死後事務とその委任

死後事務とは、死亡届・火葬許可申請書の提出、遺体の引取り、葬儀、法要、永代供養、医療費などの支払い、年金受給停止手続、家財道具・生活用品の処分などを指します。これらは通常なら、身近な親族である配偶者や子供が行いますが、高齢であることや、遠方に住んでいるなどの理由から困難な場合が多々あります。

そのような事態に備えて、生前に死後事務を他人に依頼(委任)する手段として、信頼のできる親族等(受任者)と死後事務委任契約を結ぶという方法があります。死後事務の処理には多額の費用が必要となりますので、生前に受任者に金銭を預託するか、受任者を受遺者及び遺言執行者とする旨の遺言書を作成しなければなりません。

他の方法として、負担付遺贈というものがあります。死後事務を依頼したい者(受遺者)に対して、金銭を遺贈するから、死後事務をしてください(負担)という旨の遺言書を作成する方法です。

死後事務委任契約、負担付遺贈の問題点

受任者(委任契約の場合)や受遺者(負担付遺贈の場合)が確実に死後事務を行い、預託または遺贈した金銭が死後事務の目的に使われるという保証が全くありません。

負担付遺贈は遺言者単独でできますので、事前に受遺者の承諾を得る必要があります。また、受遺者が死後事務を行わない場合には、相続人から遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法第1027条)が、手続きが煩雑となります。

Xからの相談

私には妻がおりましたが、2年前に亡くしました。東京で葬儀を行いましたが、お墓は東京から離れたY県にあり、私が高齢ということもあって妻の四十九日法要後にお寺に永代供養をお願いしました。

私には子供がおりませんので、死後の墓守を心配していたのですが、幸いなことに最近になって、甥Bが祭祀の主宰者になることを快諾してくれました。そうは言っても、Bも東京に住んでおり、年忌法要までお願いすることには気が引けます。

ですからBには、私の死後、一般的な事務と納骨後の永代供養を頼むつもりにしています。どのようにしたらよいですか?

家族信託の活用事例

委託者: X
受託者: B
第一次受益者: X
後継受託者: C
第二次受益者: A
帰属権利者: B

XとBの間で死後事務委任契約を締結し、併せてXがBに対し、金銭を信託財産として信託します。報酬が発生しますが、信託監督人として専門家(弁護士、税理士、司法書士など)を選任する選択肢もあります。

Bは、Xの死後事務や祭祀に関する事務を確実に執り行い、その費用を信託財産から支払うことになります。信託監督人は、それが適切になされているかを監視・監督します。同時に、Bを任意後見受任者として、XB間で任意後見契約を結ぶことも考えることができるでしょう。

最後に

自分の死後を任せることができる親族がいれば、死後事務委任は不要でしょう。しかしながら、そのような人ばかりではなく、むしろそういった人たちが少数派となっているからこそ、死後事務委任の需要があるのではないでしょうか。

最近では、専門家の集団と称して死後事務を受任する法人等が存在しているようです。専門家だから信用できるのでしょうか。残念ながら、専門家である成年後見人による横領が後を絶ちません。このようなことから、成年後見制度を信用あるものとして確立するために、後見制度支援信託が利用されています。こちらは家族信託とは違い、本人の日常生活に必要な金銭を除いた部分を信託銀行等が受託者となって管理する制度です。

対して、家族信託で受託者となるのはほとんどが親族です。血の繋がりほど強固なものはあるでしょうか?だからこそ、信じて託せるのです。

 

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