判決による抵当権抹消登記手続き

はじめに

抵当権が残っている場合に抵当権者が抹消登記申請に協力しない場合には、訴訟を提起したうえで勝訴判決を取得して抵当権設定者が単独で抹消登記申請をすることができます。

所有権に基づく妨害排除請求

例えば、他人の土地に無断駐車をすればその土地を自由に使用することができなくなり、所有権が侵害されます。同様に、自己所有の不動産に抵当権が残っている場合には、抹消しない限り売却することができませんので、所有権の内容の一つである自由に所有物を処分する権利が侵害されていると言えます。

どちらのケースにおいても物権内容の実現のため、所有権に基づく妨害排除請求として、前者では車の移動、後者では抵当権抹消登記手続を求めることが認められています。

請求原因

請求原因とは、裁判において請求を基礎づける法的根拠のことをいいます。抵当権設定登記抹消登記手続請求訴訟における請求原因は、原告が現在、不動産を所有していることとその不動産に抵当権設定登記が存在することになります。

これだけと思われるかもしれませんが、この2つを請求原因として原告は訴訟の提起ができるのです。

登記の権利推定力との関係

不動産登記の効力の一つに権利推定力というものがあります。登記があれば、その記録通りの実体法上の権利関係が存在するであろうという推定を生じさせる効力のことをいいます。法律上の推定・事実上の推定のいずれに当たるかについては解釈が分かれ、事実上の推定力を認めるに過ぎないとする判例もあります。

難しいことは割愛しますので、抵当権設定登記に理由があること(登記保持権原といいます。)の主張立証を被告側がしなければならず、原告側にその理由がないことの立証責任はないということを押さえておきましょう。

ちなみに、原告による弁済によって抵当権が消滅したことの主張立証は再抗弁(後述します。)となります。

登記保持権原の抗弁

被告側は、被担保債権の発生原因事実(金銭消費貸借契約等)、債権担保のために抵当権設定契約を締結したこと、設定契約時、抵当権設定者が担保不動産を所有していたこと及び原告の主張する抵当権設定登記が、抵当権設定契約に基づくことを主張立証しなければなりません。

登記識別情報ができる前には、差入形式の抵当権設定契約証書に登記済の判が押され、受付年月日と受付番号が記載されていましたので、その当時設定された抵当権については立証が容易であることが考えられます。

再抗弁

登記保持権原の抗弁に対して、原告は被担保債権の弁済等の再抗弁を主張立証することができます。

被担保債権・抵当権は、その成立・消滅において運命を共にします。つまり、被担保債権が存在しなければ抵当権も存在することができず、被担保債権が消滅すれば抵当権も当然に消滅します。このような担保物権の性質を「付従性」といいます。

ちなみに、確定前の根抵当権は付従性を有していませんので、被担保債権が消滅しても根抵当権は存続します。

 

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