訴え提起前の和解について

訴え提起前の和解とは

訴え提起前の和解は、裁判上の和解の一種で、民事上の争いのある当事者が、判決を求める訴訟を提起する前に、簡易裁判所に和解の申立てをし、紛争を解決する手続です。

当事者間に合意があり、かつ、裁判所がその合意を相当と認めた場合に和解が成立し、合意内容が和解調書に記載されることにより、確定判決と同一の効力を有することになります。

設例

例えば、賃料の不払いにより賃貸借契約を解除したにもかかわらず、賃借人が建物に居座って退去しない場合には、賃貸人は賃借人に対し、建物明渡しと未払賃料の支払を求めることとなり当事者間に争いが生じます。

話し合いによって両者間で建物明渡しについて合意がされそれを書面にしても、明渡しがされるとは限りません。また、合意書に基づいて強制執行することもできません。

債務名義

強制執行するには債務名義が必要です。債務名義には、確定判決、仮執行宣言付判決、執行証書(強制執行受諾文言のある公正証書)、和解調書などがあります。

上記設例の場合、合意がされた際に訴え提起前の和解手続を利用することが考えられます。和解調書を作成しておけば強制執行が可能となるからです。つまり、訴え提起前の和解とは、訴訟提起をせずに債務名義を取得することを目的とする手続と言えます。

和解の申立て

和解の申立ては、請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して行います。管轄は、相手方の住所または主たる営業所の所在地を管轄する簡易裁判所です。請求金額が140万円を超えるものであっても同様です。

ちなみに、建物明渡しにおける請求金額は目的物の価額の2分の1となります。アパートの一室など建物の一部を目的とする場合、固定資産税評価額の平米単価に対象部分の床面積を乗じて算出します。140万円以下の場合のみ、司法書士が代理人として手続をすることができます。

和解期日

和解期日当日、当事者双方が和解条項について合意し、かつ、裁判所が相当と認めた場合に和解が成立し、和解調書が作成されることになります。和解調書正本は、原則、和解期日当日に双方に交付送達します。

申立人または相手方が和解の期日に出頭しないときは、裁判所は、和解が調わないものとみなすことができます。

訴訟への移行

和解が調わない場合において、和解の期日に出頭した当事者双方の申立てがあるときは、裁判所は、直ちに訴訟の弁論を命じます。この場合においては、和解の申立てをした者は、その申立てをした時に、訴えを提起したものとみなされます。

ちなみに、手形訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、和解手続から訴訟手続への移行の申立ての際にしなければなりません。

 

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