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長期優良住宅、低炭素住宅の登録免許税の税率軽減措置

2024-02-26

はじめに

建物を新築、購入したときに所有権保存、移転登記を申請する際には登録免許税を納めなければなりません。その建物が住宅用家屋である場合には、新築住宅取得の際の負担を軽減するため、住宅用家屋の所有権の保存登記及び移転登記についての登録免許税の税率を軽減する制度が設けられています。さらに、長期優良住宅、低炭素住宅については一般住宅より低い税率が適用されます。

この特例制度の適用期限は令和6年3月31日となっていますが、3年間延長(令和9年3月31日まで)されることが予定されています。(令和6年度税制改正の大綱、令和5年12月22日閣議決定、二 資産課税、2 租税特別措置等(国税)〔延長・拡充等〕(5)~(8))

軽減税率 本則 一般住宅 長期優良住宅 低炭素住宅
戸建 マンション
所有権保存 0.4% 0.15% 0.1% 0.1% 0.1%
所有権移転 2.0% 0.3% 0.2% 0.1% 0.1%

長期優良住宅とは

長期優良住宅認定制度は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅の建築・維持保全に関する計画を「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき認定するものです。「長期優良住宅」とは、大きく分けて以下1~5の5つの措置が講じられている住宅を指します。
1.長期に使用するための構造及び設備を有していること
2.居住環境等への配慮を行っていること
3.一定面積以上の住戸面積を有していること
4.維持保全の期間、方法を定めていること
5.自然災害への配慮を行っていること

認定申請は着工前までに行う必要があり、先ずは登録住宅性能評価機関へ長期使用構造等であるかの確認を申請し、確認書等の交付を受けます。その後、所管行政庁に対し、認定申請をして認定通知書の交付を受けます。この認定通知書は、長期優良住宅として住宅用家屋証明書の交付を受けるために必要となります。

登録免許税の税率引き下げ以外のメリットとして、地域型住宅グリーン化事業の補助金受給、住宅ローンの金利引き下げ、住宅ローン減税の控除対象限度額の引き上げ、不動産取得税の課税標準からの控除額の増額、固定資産税の減税措置適用期間の延長、地震保険料の割引等があります。

低炭素住宅とは

都市機能の集約やそれと連携した公共交通機関の利用促進、建築物の低炭素化等の施策を講じることにより、地域における成功事例を蓄積し、その普及を図ることを目的として「都市の低炭素化の促進に関する法律」が制定され、平成24年12月に施行されました。その法律で定める低炭素住宅とは、建築物における生活や活動に伴って発生する二酸化炭素を抑制するための低炭素化に資する措置が講じられている、市街化区域等内に建築される住宅を指します。

以下の1~3のすべてを満たす建築物について、所管行政庁(都道府県、市または区)に認定申請を行うことにより、低炭素住宅としての認定を受けることが可能です。
1.省エネ基準を超える省エネ性能を持つこと。かつ低炭素化に資する措置を講じていること
2.都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針に照らし合わせて適切であること
3.資金計画が適切なものであること

認定申請は着工前に行う必要があり、先ずは審査機関に事前の技術的審査を依頼して適合証の交付を受けます。その後、所管行政庁に対し、適合証を添付のうえ認定申請書を提出して認定証の交付を受けます。

まとめ

長期優良住宅、低炭素住宅として登録免許税の税率引き下げを受けるためには、当該住宅が、認定住宅であることを証明した「住宅用家屋証明書」を当該住宅所在地の市町村役場に発行してもらうことが必要です。

司法書士が登記申請を代理人として行う場合には、建築主または売主に対して、登記申請を行う住宅が長期優良住宅または低炭素住宅に該当するかを確認させていただきます。ご理解、ご協力の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。

NHKと未契約のままだと3倍料金を請求される?!

2024-02-19

はじめに

日本放送協会(NHK)放送受信規約の改正によって、正当な理由なく期限までに受信契約の申込みをしなかった場合は受信機設置の月の翌月から受信契約を締結した月の前月までの受信料に加え、その受信料の2倍に相当する額の割増金の支払いを請求されるおそれがあることになりました。

なお、割増金の対象となるのは、2023年4月以降の期間分の受信料の2倍に相当する額となります。一部SNS等において、制限なく過去に遡って割増金を請求されると誤解するような情報を発信しているものが見られますが、そのようなことはありません。

平成29年12月6日最高裁判決について

受信契約締結義務を定めた放送法第64条第1項の合憲性等が争われた裁判ですが、受信料支払についてのポイントとなる判旨は以下の3点となります。

  • 放送法第64条第1項は、NHKの放送を受信することのできる受信設備を設置した者に対しその放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めた規定であり、NHKからの上記契約の申込みに対して上記の者が承諾をしない場合には、NHKがその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって上記契約が成立する。
  • 上記判決の確定により同契約が成立した場合、同契約に基づき、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する。
  • NHKの放送の受信についての契約に基づき発生する、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(上記契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は、上記契約成立時から進行する。

例えば、20年前に受信設備を設置したものの受信契約を締結しなかった場合に請求される受信料は過去20年分の合計額であり、契約成立(判決確定)時が消滅時効の起算日となるために、時効の援用ができないことになります。

NHKの民事訴訟提起

2023年11月6日、NHK広報局より、報道資料として東京都内の3世帯について、放送受信契約の締結と受信料及び割増金の支払いを求める民事訴訟を東京簡易裁判所に提起したことが公表されました。

証明責任について

証明責任とは、ある事実が真偽不明であるときに、その事実を要件に生じる自己に有利な法律上の効果が認められないことによる不利益をいいます。

民事訴訟においては、原告、被告それぞれの主張を聞き、証拠調べを行います。その結果、どちらが本当のことを言っているのか分からない(真偽不明)場合に裁判所は判決を下すことを拒絶することはできません。

NHKの提起した民事訴訟を例にしますと、判決によって受信契約を締結したものとするためには、原告側が特定受信設備(テレビ、ワンセグ携帯、カーナビ等)の設置を主張立証しなければなりません。被告側がその不設置を主張立証するわけではありません。また、過去に遡って受信料を請求するためには設置日を主張立証しなければなりません。

被告側が認否において原告の主張する事実を争わなければ、自白となり不要証事実になるのです。一方、被告が原告の主張する事実を争い、真偽不明の状態に持ち込めば原告敗訴となります。

最後に

この記事はNHKとの受信契約を締結していない方に対し、糾弾することを目的とするものではありません。放送法ができたのは昭和25年です。未だに私的自治の原則が適用されない特別法を拠り所にして、国民に対して受信料の負担をさせることはいかがなものでしょうか。

取締役会設置会社が取締役会を廃止する場合の登記について

2024-02-13

代表取締役の扱い

取締役会を置く旨の定款の定めを廃止した場合において、代表取締役の選定方法を特に定めなかった場合には、取締役全員が当然に代表取締役となります。取締役が各自会社を代表することとなるわけです。

一方、代表取締役の選定方法を定めて、引き続き現在の代表取締役のみを代表取締役とすることも可能です。この記事では、株主総会の決議によって取締役の中から代表取締役を定めることとしたうえで現在の代表取締役を選定する場合の登記について解説します。

株式の譲渡制限に関する規定

「当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を要する。」と登記されている場合には、承認機関を変更する登記申請が必要となります。例えば、「当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を要する。」のように変更しなければなりません。

ただし、「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を受けなければならない。」のように登記されている場合には、変更登記は不要です。

登記の事由

取締役会設置会社の定めの廃止
株式の譲渡制限に関する規定の変更

登記すべき事項

「取締役会設置会社に関する事項」
「原因年月日」令和○年○月○日廃止
「株式の譲渡制限に関する規定」
当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を要する。
「原因年月日」令和○年○月○日変更

登録免許税

取締役会設置会社の定めの廃止分が金3万円、株式の譲渡制限に関する規定の変更分が金3万円となり、合計で金6万円です。

株主総会議事録

以下に議案の記載例を掲げます。

第1号議案 取締役会設置会社の定めの廃止の件
議長は、当会社は定款に取締役会設置会社の定めを設けていたのであるが、諸般の事情から、その定めを廃止することとし、定款の第○条を削除したい旨を述べ、これを諮ったところ、満場一致でこれを承認可決した。

第2号議案 定款変更の件
議長は、株式譲渡の承認方法及び代表取締役の選定方法について、取締役会の決議から株主総会決議に変更することとし、それに伴い定款の第○条及び第○条を下記のとおり変更したい旨を説明し、議場に諮ったところ、満場一致でこれを承認可決した。

(株式の譲渡制限)
第○条 当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を要する。
(代表取締役)
第○条 当会社は、株主総会の決議により、取締役の中から、代表取締役1名を定めるものとする。

第3号議案 代表取締役改選の件
議長は、第2号議案が可決されたため、本総会で当会社の代表取締役を改めて選定したい旨を述べ、その選定方法を諮ったところ、出席株主中から、現在の代表取締役○○を選定するのが適当であるとの発言があり、議長は、○○につき可否を総会に諮ったところ、全員一致でこれを承認した。

添付書類

株主総会議事録
株主リスト
委任状(代理人に申請を委任した場合のみ必要です。)

最後に

株式会社の機関の変更は会社法の規定に従って行わなければなりません。取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならないと規定されていますので、取締役会設置会社の定めの廃止と同時に監査役設置会社の定めの廃止の登記をすることも可能です。

その際、監査役は退任することになりますので、監査役の変更登記も申請します。監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨が登記されている場合には、その廃止の登記も申請する必要があります。

支払督促の無視は厳禁!差押えのおそれもあります

2024-02-05

支払督促とは

金銭、有価証券、その他の代替物の給付に係る請求について、債権者の申立てにより、その主張から請求に理由があると認められる場合に、支払督促を発する手続であり、債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ、裁判所は、債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付さなければならず、債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。

要するに何なの?

例えば、お金を知人に貸したが、期限になっても返してくれないような場合、どうしたらよいでしょう。知人は給料債権、預貯金、不動産等を有しており、払おうと思えば払えるはずなのに一向に支払おうとしない。

このように借金の存否について争いがなく、債務者の怠慢等によって任意に支払いがされない場合に債権者に簡易迅速に債務名義を取得させる手続が支払督促です。最終的に債務者の財産を差押えることが目的となります。

実際には、貸金業者が債務者に対し貸金の返還を求める、NHKが受信契約に基づき視聴者に対し受信料の支払を求めるなどの場合に利用されています。

国外、公示送達は認められない

支払督促は債権者の言い分のみを聞いて債務名義を取得させ、強制執行を可能にする手続です。そのために、債務者の所在不明により公示送達を認めてしまうと、債務者から異議申立ての機会を奪うことになってしまいます。その機会を保障するため、支払督促においては、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限って利用できるものとされているのです。

債務者の受取拒否、不在、居留守等によって送達できない場合には付郵便送達も可能です。付郵便送達とは書留郵便を利用した送達であり、郵便を発送した時点で、有効な送達があったものと扱われます。

支払督促の申立て

請求の価額にかかわらず、相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して申し立てます。

仮執行宣言の申立て

債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立てをしないときは、債権者は支払督促に仮執行宣言を付するよう申し立てることができます。

仮執行の宣言を付した支払督促に対し督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有するとされています。これにより、債権者は強制執行手続に着手することが可能となるのです。

督促異議

支払督促に不服があれば、異議を申し立てることができます。その際に理由を提示する必要はありません。支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしないと、上述したように支払督促に仮執行宣言が付されることがあります。仮執行宣言が付されると、直ちに強制執行を受けることがあります。

仮執行宣言が付された後でも異議申立ては可能ですが、仮執行宣言付支払督促を受け取ってから2週間以内にしなければなりません。期限として定められている2週間とは、送達を受けた日の翌日から数えて2週間以内です。

なお、仮執行宣言後の督促異議によって支払督促の確定を妨げることはできますが、仮執行宣言の効力は当然には停止しません。したがって、強制執行を免れるためには、執行停止の手続をとらなければなりません。

通常訴訟への移行

適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます。

司法書士にできること

請求の目的の価額が140万円以下である場合の、支払督促の申立て、支払督促に対する仮執行宣言の申立て、督促異議の申立て、支払督促から移行した訴訟手続等を代理人として行うことができます。

株式会社の解散及び清算人選任登記

2024-01-29

解散の事由

株式会社は、次に掲げる事由によって解散するとされています。破産手続開始の決定と解散を命ずる裁判があった場合には、裁判所書記官の嘱託に基づく登記となりますので、当事者が解散の登記を申請することはありません。実務上、最も扱うのは株主総会の決議による解散ですので、それを中心に解説します。

  • 定款で定めた存続期間の満了
  • 定款で定めた解散の事由の発生
  • 株主総会の決議
  • 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
  • 破産手続開始の決定
  • 解散を命ずる裁判

解散の登記と清算人の登記

商業登記法の条文上、同時に申請すべき規定は存在しないことから、代表清算人の資格を証する書面を添付して解散の登記のみ申請することもできます。ただ、分けて申請する実益はありませんので、通常は解散の登記と清算人の登記は同時に申請します。

登記の事由

解散
令和○年○月○日清算人及び代表清算人の選任

解散の登記においては、登記の事由で「株主総会の決議により解散」等の解散の事由を記載する必要はありません。清算人会を設置した場合には、「清算人会設置会社の定め設定」も併せて記載します。

登記すべき事項

「解散」
令和○年○月○日株主総会の決議により解散
「役員に関する事項」
「資格」清算人
「氏名」○○○○
「役員に関する事項」
「資格」代表清算人
「住所」○県○市○町○丁目○番○号
「氏名」○○○○

存続期間の満了、解散事由の発生の場合には、「令和○年○月○日存続期間の満了により解散」、「令和○年○月○日定款所定の解散事由の発生により解散」と記載します。清算人会を設置した場合には、[「清算人会設置会社に関する事項」清算人会設置会社]と記載します。

登録免許税

解散の登記が金30,000円、清算人の登記が金9,000円となりますので、合計額の金39,000円を記載します。

添付書類

・定款
必ず必要となります。清算人会設置の有無を定款で確認するからです。ちなみに、特例有限会社においては清算人会を置くことができませんので、添付不要となる場合があります。

・株主総会議事録
株主総会の決議により解散する場合は、株主総会議事録を添付します。定款で定めた解散の事由の発生の場合は、解散の事由の発生を証する書面を添付します。存続期間の満了による解散の場合には、登記簿で存続期間が満了したことが明らかですから、この場合には、解散に係る添付書類は必要ありません。

・株主リスト

・就任承諾書
定款で定めた者と株主総会の決議で選任した者については、清算人の就任承諾書が必要です。定款の定めに基づく清算人の互選で定められた者と清算人会が選定した者については、代表清算人の就任承諾書が必要です。清算人が一人のとき、清算人会を置かない会社が特に代表清算人を定めなかったときは、清算人全員が当然に代表清算人となりますので、別途代表清算人の就任承諾書は不要です。

株主総会または清算人会の席上で被選任者が就任を承諾し、その旨の記載が議事録にある場合には、申請書に就任承諾書を添付することを要しません。この場合、申請書には、「就任承諾書については、株主総会(または清算人会)議事録の記載を援用する。」と記載します。

・委任状
司法書士等の代理人に登記申請を委任したときに必要となります。

・その他
裁判所が選任した者につき、選任決定書正本(又は認証ある謄本)、定款の定めに基づく清算人の互選、清算人会の決議により代表清算人を選定したときは、清算人の過半数の一致があったことを証する書面、清算人会議事録を添付します。

登記記録例

解散の登記申請後、登記官によって取締役、代表取締役、取締役会設置会社である旨の登記等に下線を引き、抹消する記号が記録されます。監査役、監査役会は解散後も置くことができますので、そのまま残されます。清算人の登記申請後、清算人、代表清算人の原因年月日欄は空欄となります。

遺贈による所有権移転登記と名変(住所変更等)登記について

2024-01-22

はじめに

以前の記事「遺贈による登記手続(令和5年4月1日改正)」において、遺贈による所有権移転登記手続を解説しましたが、今回は遺贈者の登記簿上と最後の住所が相違する場合の名変登記について解説する内容となります。氏名が相違する場合も同様ですが、以下、住所変更があったことを前提として話を進めます。

前提としての名変登記が必要

相続を原因として所有権移転登記を申請するときには、名変登記は不要だということは司法書士なら誰でも知っています。

遺言書に基づいて登記申請をする場合には、原因が「相続」であろうと、「遺贈」であろうと、一般の方は「相続登記」で一括りにすることが多いように感じます。相続登記をお願いしたいとのご相談を受け、よくよくお話を伺ってみると実は遺贈であったということがあるのです。

言うまでもなく、共同申請となる「遺贈」を原因とする所有権移転登記の前提として、名変登記が必要となります。ちなみに、改正による相続人に対する遺贈の登記を単独申請する場合には、名変登記は不要です。

登記申請書の記載例

遺言執行者が名変登記申請を代理人に委任する場合の申請書の記載例を以下に掲げます。

登記申請書
登記の目的  所有権登記名義人住所変更
原   因  令和○年○月○日住所移転
変更後の事項 住所 東京都三鷹市野崎一丁目1番1号
申 請 人     東京都三鷹市野崎一丁目1番1号(注1)
       亡法務太郎
添付情報   登記原因証明情報  代理権限証明情報(注2)
令和○年○月○日申請 東京法務局府中支局
代 理 人  東京都三鷹市下連雀三丁目44番13-403号
       司法書士 藤山晋三
       連絡先の電話番号 0422-47-8677
登録免許税  金1,000円
不動産の表示
 不動産番号 1234567890123
 所   在 三鷹市野崎一丁目 
 地   番 123番
 地   目 宅地
 地   積 123.45平方メートル
 対象登記の順位番号 ○番

(注1)遺贈者の最後の住所氏名を記載します。遺言執行者の住所氏名を記載する必要はありません。

(注2)遺言書、死亡事項の記載ある戸籍謄本等、委任状などを添付しますが、後件で申請する遺贈による所有権移転の添付情報を援用することが多いでしょう。

遺贈による登記申請増加の可能性

司法書士などの専門職が遺言書の作成に携わる場合には、「遺贈する」より「相続させる」の文言を使うことが多いと思います。

ただ、遺言者が甥姪に財産を遺したいときに、その親(遺言者の兄弟姉妹)がご存命でいらっしゃる場合には、「相続させる」を使うことはできません。このことから、「○○に遺贈する。(この遺言の効力発生時に受遺者が相続人の立場にあるときは、「遺贈する」を「相続させる」と読み替える。)」のような記載が多く用いられていました。

改正によって、相続人に遺贈する際の登記の単独申請ができるようになりましたが、税務面や特定遺贈、包括遺贈の差異等を考慮すると、今後も遺言書には同様な記載がされることになると考えられます。また、単身者及び子供のいない夫婦が増加傾向にありますので、甥姪や第三者等に遺贈する内容の遺言書の作成が増加するのではないでしょうか。

抵当権を共有者の持分の抵当権とする変更の登記について

2024-01-15

事例

Aが所有する甲土地について、X銀行を抵当権者とする抵当権が設定された。その後、Aが所有権の一部(2分の1)をBに売却して甲土地はA、Bの共有となった。

X銀行はBの持分を目的とした部分について抵当権を放棄し、以後Aの持分のみを目的とした抵当権にしたい場合、どのような登記を申請するべきなのか。

申請すべき登記

Aがハウスメーカーで、甲土地が私道部分である場合などに、実務上非常に多く申請する登記になります。移転をする前に抵当権を抹消すればよいのですが、金融機関は、被担保債権全額の弁済がされない限り抹消登記に応じることはありません。また、登記手続上の問題として、抵当権の一部抹消登記というような申請手続をすることができません。

ですから、売買代金を抵当権の被担保債権の一部の弁済に充てて、抵当権者は買主の取得した持分を目的とした部分について抵当権を放棄する流れとなります。

このような場合に申請すべき登記は、共有者の持分の抵当権とする変更の登記となります。名称が長いので、抵当権の縮減変更と呼んだりすることもあります。抵当権の効力の及ぶ範囲が縮減することになる変更登記だからです。

登記申請手続

上記事例の場合には、登記権利者をB、登記義務者をX銀行として申請します。Bが抵当権の負担の付いた所有権を取得することの無いように、所有権(持分)一部移転と共有者の持分の抵当権とする変更の登記は連件で同時に申請します。

申請情報の内容

・登記の目的
「○番抵当権をA持分の抵当権とする変更」

登記上の利害関係を有する第三者が存在する場合には、当該第三者の作成した承諾を証する情報またはその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を必ず提供しなければなりません。そのうえで、常に付記登記でなされますので、(付記)を追記することはありません。

・登記原因及び日付
「年月日B持分の放棄」

添付情報

・登記原因証明情報
「抵当権一部放棄証書」等を添付します。

・登記識別情報
登記義務者であるX銀行が抵当権を取得した際の、登記識別情報または登記済証を提供します。

・代理権限証明情報
司法書士が代理人として申請する場合等には、X銀行とBの委任状を添付します。

・登記上の利害関係を有する第三者が存在する場合の当該第三者の作成した承諾を証する情報またはその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報
形式的には変更登記ですが、実質的には一部抹消登記といえますので、添付しない場合には主登記で実行されるということにはなりません。(不動産登記令別表26添付情報欄ト)

利害関係を有する第三者は、当該抵当権を目的とした転抵当権者、当該抵当権から抵当権の順位譲渡を受けている抵当権者等が該当します。

登録免許税

通常の変更登記と同様に不動産1個につき金1,000円となります。

住宅ローンを利用した場合

Bが住宅ローンを利用した場合には、Bの持分を目的とした抵当権を設定します。登記完了後の登記事項証明書は、共有者が増えれば増えるほど煩雑となり、一般の方には分かりにくい内容になるかと思います。疑問、不明点等がございましたら、当事務所に遠慮なくお問い合わせください。

抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更の登記

2024-01-09

事例

A、Bが共有する甲土地について、X銀行がAの持分のみを目的として抵当権を設定した。その後、AがBの持分を取得して甲土地はAの単独所有となった。

A・X間でAが取得した持分につき抵当権の追加設定契約を締結し、甲土地全体を目的とした抵当権にしたい場合、どのような登記を申請するべきなのか。

申請すべき登記

同一名義人が数回に分けて各別の登記により持分を取得している場合には,その登記に係るそれぞれの持分につき抵当権設定の登記を申請することができるとする先例があります。

しかし、既に所有権の一部を目的として抵当権の設定の登記がされており、その追加担保として残余の部分を目的として抵当権を設定した場合には、抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更の登記を申請します。

登記申請手続

実質的には抵当権の追加設定ですが、申請する登記は変更登記となりますので、申請情報の内容は特殊なものとなります。上記事例の場合、申請情報の申請人として「抵当権者 X銀行、設定者 A」ではなく、「権利者 X銀行、義務者 A」のように提供します。

申請情報の内容

・登記の目的
「○番抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更」

登記上の利害関係を有する第三者が存在する場合に、当該第三者の作成した承諾を証する情報若しくはその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供したとき、または、登記上の利害関係を有する第三者が存在しないときには、及ぼす変更登記は付記登記でなされます。

確実に付記登記でしてもらうために、「○番抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更(付記)」と記載することもあります。主登記、付記登記のいずれかで登記がされるものについては、括弧書きは登記官に対するアピールのようなものに過ぎません。

・登記原因及び日付
「年月日金銭消費貸借年月日設定」等

形式的には変更登記ですが、追加設定と同様となります。「年月日変更」ではありません。

・その他
「債権額」、「利息」、「損害金」、「債務者」などを提供する必要はありません。主登記を見れば分かるからです。

添付情報

・登記原因証明情報
「抵当権追加設定契約証書」等を添付します。通常はコピーを添付して原本還付手続をします。

・登記識別情報
実質的に追加設定と同様であることから、新たに持分を取得した際の登記識別情報を提供します。

・登記義務者の印鑑証明書

・登記上の利害関係を有する第三者が存在する場合の当該第三者の作成した承諾を証する情報またはその者に対抗することができる裁判があったことを証する情報

提供しない場合には、及ぼす変更登記は主登記でなされます。利害関係を有する第三者は、新たに抵当権の効力が及ぶ持分についての後順位抵当権者等が該当します。

登録免許税

変更登記であれば不動産1個につき金1,000円となりますが、及ぼす変更登記は実質的には追加設定登記となりますので、不動産1個につき「金1,500円(登録免許税法第13条第2項)」となります。

登記識別情報の通知について

及ぼす変更登記が完了しても、登記識別情報は通知されません。その後、抵当権を抹消する際には、主登記の抵当権を設定した際の登記識別情報または登記済証を添付すれば足ります。

ただし、及ぼす変更登記を平成17~20年頃より前に申請した場合には、法務局の大判が押され、受付年月日と受付番号を印字する取扱いがされていましたので、抹消する際にはその登記済証も添付する必要があります。

合同会社から株式会社への組織変更について

2024-01-04

組織変更とは

組織変更とは、株式会社がその組織を変更することにより合名会社、合資会社又は合同会社となること、又は、合名会社、合資会社又は合同会社がその組織を変更することにより株式会社となることをいいます。

この記事では、実務上最も扱うことが多い合同会社が株式会社となる組織変更について説明します。

手続の流れ

組織変更計画の作成

合同会社が組織変更をする場合には、組織変更計画で次の事項を定めなければなりません。

・組織変更後の株式会社の目的、商号、本店の所在地及び発行可能株式総数及び定款で定めるその他の事項
・組織変更後株式会社の取締役の氏名
・組織変更後株式会社の機関設計に応じ、会計参与の氏名又は名称、監査役の氏名、会計監査人の氏名又は名称
・組織変更をする合同会社の社員が組織変更に際して取得する組織変更後株式会社の株式の数又はその数の算定方法、割当てに関する事項
・組織変更後株式会社が組織変更に際して組織変更をする合同会社の社員に対してその持分に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等について必要な事項
・組織変更の効力発生日

組織変更後の株式会社の定款の内容を定めなければなりませんが、この定款について公証人の認証は不要です。

代表取締役は、定款で定める事項として代表取締役の氏名を組織変更計画に記載する方法のほか、取締役会の決議、取締役による互選、株主総会の決議によって選定します。その場合、登記が組織変更の効力要件ではないので、効力発生日以降に取締役会等を開催しなければなりません。

債権者の異議手続

必ず、官報に掲載する方法により必要な事項を公告しなければなりません。公告期間は1か月となります。

知れている債権者に対しては各別の催告が必要ですが、官報のほかに定款で定めた公告方法に従って公告すれば、各別の催告の省略が可能です。ただし、合名会社、合資会社が株式会社に組織変更する場合には、催告の省略はできません。

※官報公告掲載例

組織変更公告
当社は、株式会社に組織変更することにいたしました。
この組織変更に異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
令和五年十二月十九日
東京都三鷹市野崎一丁目一番一号
法務商事合同会社
代表社員 法務太郎

組織変更計画の承認

組織変更をする合同会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について当該合同会社の総社員の同意を得なければなりません。ただし、定款に別段の定めを設けることができます。

効力発生

組織変更の効力は、組織変更計画で定めた効力発生日に生じます。債権者の異議手続が終わっていない場合には、組織変更の効力は生じません。

登記申請

組織変更による合同会社の解散の登記と組織変更による株式会社の設立登記を申請します。解散の登記と設立の登記は同時に申請しなければなりません。

添付書類(一例)
・定款
・組織変更計画書
・総社員の同意書
・代表取締役の選定に関する書面
・取締役、代表取締役及び監査役の就任承諾書
・取締役、監査役の本人確認証明書
・公告及び催告をしたことを証する書面
・異議を述べた債権者があるときは、異議を述べた債権者に対し弁済若しくは担保を供し若しくは信託したこと又は組織変更をしてもその者を害するおそれのないことを証する書面(異議を述べた債権者がいないときは、「異議を述べた債権者はいない」と記載します。)
・登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書
組織変更後の株式会社が当該組織変更に際して当該組織変更の直前の会社の株主に対して交付する財産(当該組織変更後の株式会社の株式を除く。)の価額等を記載した書面が該当します。登録免許税法施行規則に規定する額を超過する部分についての登録免許税の税率が異なりますので、添付する必要があります。

組織変更に際して合同会社の社員に交付する財産が株式のみであれば、組織変更による設立登記の登録免許税は、合同会社の資本金の額の1,000分の1.5(3万円未満のときは3万円です。)となります。

特例有限会社の登記事項

2023-12-25

特例有限会社とは

2006(平成18)年5月に会社法が施行されましたが、その会社法施行前に有限会社として設立され、会社法施行後も存続が認められている会社のことです。会社法施行により有限会社を規定していた有限会社法が廃止され、会社法には有限会社に関する規定は存在しません。

存続する特例有限会社については、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下、「整備法」と言います。)中に規定があります。

商号

特例有限会社は株式会社です。廃止前の有限会社法の規定による有限会社であって会社法の施行の際現に存するものは、会社法の施行の日以後は、会社法の規定による株式会社として存続するものとされました。つまり、会社法上、特例有限会社を株式会社として扱い、原則として株式会社の規定を適用しますが、適用を除外する例外については整備法にその旨が定められています。

商号には「有限会社」の文字をそのまま用いなければなりません。「株式会社」の文字を使用するためには、定款の変更によって通常の株式会社に移行する手続を経る必要があります。

株式の譲渡制限に関する規定

特例有限会社の定款には、その発行する全部の株式の内容として当該株式を譲渡により取得することについて当該特例有限会社の承認を要する旨及び当該特例有限会社の株主が当該株式を譲渡により取得する場合においては当該特例有限会社が譲渡の承認をしたものとみなす旨の定めがあるものとみなされます。

「当会社の株式を譲渡により取得することについて当会社の承認を要する。当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合においては当会社が承認したものとみなす。」のように登記されます。

この株式の譲渡制限に関する規定を定款変更して廃止することはできませんので、株式の譲渡制限に関する規定の廃止の登記もできないことになります。

機関の設置

特例有限会社は、株式会社と同様に株主総会と取締役を必ず置かなければなりません。それ以外に置くことができる機関は監査役のみとなります。取締役会、会計参与、会計監査人などを置くことはできません。また、監査役設置会社である旨、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨は、登記事項ではありません。

取締役と監査役の住所が登記されること、代表取締役でない取締役がいる場合のみ代表取締役の氏名を登記することが通常の株式会社と異なります。したがって、取締役の退任、代表取締役の就任等によって会社を代表しない取締役がいなくなった場合には、代表取締役の氏名を抹消する登記をしなければなりません。

役員の任期

特例有限会社には、役員の任期の規定がありません。したがって、役員の任期満了による変更登記が不要となりますので、12年以上登記がされないことは普通にあり得るわけです。このことから、休眠会社のみなし解散が適用されることはありません。

組織再編

言うまでもなく、新たに有限会社を設立することはできません。それを踏まえて、存続することとなる吸収合併、他の会社の権利義務の全部または一部を承継する吸収分割はできないことになっています。また、株式交換、株式移転及び株式交付をすることもできません。

上記以外の組織再編行為は可能です。例えば、吸収合併消滅会社、吸収分割会社になること、合同会社などの持分会社に組織変更することなどです。

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