Author Archive

相続分がないことの証明書(特別受益証明書)とは?問題点は?

2023-06-12

Xからの相談(設例)

A→D→Bの順で亡くなり、A名義の不動産があります。相続登記を申請するに当たってCから、Dの相続分がないことの証明書が送られてきました。その書面に実印を押して印鑑証明書と一緒に返送してほしいと言われています。どのようにしたらよいでしょうか。

特別受益者がいる場合の登記手続

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受け、その価額が相続分の価額に等しいか又はこれを超える者がある場合には、その者は相続分を受けることができません。

そこで、登記原因証明情報として、相続を証する戸籍謄本等の他、その者が作成した相続分がないことの証明書を提供して、他の共同相続人から、相続による所有権移転登記を申請することができます。先例で認められています。

被相続人の相続について、特別受益者が相続登記前に死亡した場合には、相続分がないことの証明書は特別受益者の相続人全員が作成しなければなりません。

生前贈与がない場合に作成されるケースもある

設例においてCが相続不動産を単独取得する方法として、一般的なものは遺産分割協議です。Aの相続人はB、C及びDですから、CX間において遺産分割協議書を作成しなければなりませんが、数次相続(被相続人が死亡した後、遺産分割協議をしないうちに相続人が死亡してしまい、次の相続が開始した状況のことをいいます。)の場合には書面の内容が複雑になります。

一方で、相続分がないことの証明書には「相続する相続分がない」旨の記載があれば、数行の記載で足りてしまいますので、生前贈与等の事実がない場合にも作成され、相続登記申請に用いられることがあるようです。

分かれる裁判所の判断

生前贈与をうけた事実がないにもかかわらず、贈与をうけた旨の内容虚偽の「相続分がないことの証明書」に署名・押印したとしても、それにより相続分を失うことはなく、また、当該相続人に相続放棄の意思があったとしても、これを認めれば相続放棄制度(家庭裁判所への申述)に対する脱法行為となること、更に、当該書面は単なる事実証明に過ぎないから、贈与の意思表示と認めることができないとする裁判例があります。

対して、特別受益の事実がないのに相続分がないことの証明書が作成された場合においても、これを単純に無効とせず、当該証明書が本人の真意に基づくものかどうかを判断基準とし、相続人が自己の相続分について相続財産の分配をうけないという意思表示をしたものと認められるときは、これにより遺産分割協議の成立、贈与を肯定したものがあります。

結論

形式的な審査権しか有していない登記官としては、相続分がないことの証明書と印鑑証明書が提供された相続登記申請を受理せざるを得ません。

しかしながら、設問のような相談に対しては、安易にCの要求に応じてはいけないと考えます。Dが生前贈与を受けたことが確実であり、相続分がないことの証明書の記載に偽りが一切ないような場合を除き、遺産分割協議の方法を採るべきでしょう。

「みそきん」争奪戦!

2023-06-05

You Tuber ヒカキン

皆さんはYou Tuberヒカキンをご存じでしょうか?You TuberとはYou Tubeで生計を立てている人を指す言葉でしたが、最近では副業で動画配信をしている人も含めてYou Tuberと呼んでいるようです。

数多く存在するYou Tuberの中でも、「ブンブンハローYouTube! どうも HIKAKINです」の挨拶で始まるメインチャンネルの登録者数は1,000万人を超えていますし、テレビ番組、CMで目にする機会も増えてきましたので、ヒカキンは著名人と言っても過言ではないでしょう。

我が家では全員が動画視聴に割く時間が非常に多いので、ヒカキンのことは当然に知っていました。私自身は、彼のマインクラフトなどのゲーム配信動画をよく観ていた記憶があります。

みそきんとは

「みそきん」は、ヒカキンが立ち上げた自身のブランド「HIKAKIN PREMIUM」の第1弾商品で、「みそきん 濃厚味噌ラーメン」「みそきん 濃厚味噌メシ」の2種類があります。要するにカップ麺とカップめしですね。

ラーメンを作りたいという長年の夢の実現に向け、2022年の春から日清食品と共に作り始め、1年がかりで発売にこぎつけたようです。日清食品といえばカップヌードルの製造販売会社であり、誰もが一度は食べたことがあるのではないでしょうか。

販売価格は税込み約300円で、セブンイレブンでのみ販売されることになったようです。価格は一般的なものよりお高めな気がしますが、セブンイレブンは全国にありますので、お求めやすいのではないかと当初は感じました。

みそきんをゲットせよ

娘は誰に似たのか分かりませんが、カップ麺が大好物で休日の昼食は必ずと言っていいほどカップ麺です。私も若い頃は食べていましたが、最近は健康のことを気にするようになって食べなくなり、最後に食べたのがいつなのか覚えていないほどです。

そんな訳で娘のためにみそきんゲットに奔走することになったのです。発売初日の最寄りのセブンイレブンでは、みそきんの販売コーナーが設置されていましたが、既に両方が売り切れ。翌日、妻がカップ麺をようやくゲットすることができましたが、カップめしが手に入りません。

義兄に相談したところ、セブンイレブンの店長と顔見知りだから何とかお願いしてみるとのことでした。その後、2個ずつ購入することができたようで、送っていただきました。幸甚の至りです。ありがとうございます。

1日に1店舗あたり5~6個しか入荷しないようで、自分の分までは購入することを躊躇ったようです。肝心のお味のほうなのですが、私自身は食べていないのでわかりませんが、娘は完食していましたので可もなく不可もなくといったところでしょうか。

転売ヤー現る

予想を遥かに上回る反響により売り切れ続出で、欲しくても買えない人が多くいらっしゃったようです。メルカリなどでは、1個数千円から1万円を超えるような値段で転売する者が現れました。

ゲーム機器や観戦チケットなどを転売目的で購入する人がいなくなることはないのでしょうね。食品まで転売ですか・・・。

再販の予定があるようなので、それを待つのも良いのかもしれません。

後見制度支援信託とは?

2023-05-29

導入の目的

後見制度支援信託導入前当時の最高裁の実情調査結果によると、平成22年6月から平成24年3月までの22か月間における親族の成年後見人・保佐人・補助人・未成年後見人による不正行為により、被後見人等の財産の被害総額が約52億6,000万円であったことが判明しました。

経済的に困窮している後見人等が被後見人等の財産を私的流用していたのです。この場合、後見人等は業務上横領罪の刑事責任を問われますし、親族であっても親族相盗例の適用はありません。また、民事上の責任として、被害額等損害を賠償して被後見人等の財産を原状に復さなければなりません。

ただ、使い込みによってそれが実現できないことが非常に多く、成年後見制度に対する国民の信頼を失うことに繋がるおそれがあったのです。そこで、親族後見人の私的流用等の不正行為を防止するために、後見制度支援信託が導入されたと言えるのです。

具体的には

後見制度支援信託は、本人の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことで(成年後見と未成年後見において利用することができます。保佐、補助及び任意後見では利用できません。)、本人の財産を適切に保護するための方法の一つです。

信託財産は、元本が保証され、預金保険制度の保護対象にもなります。運用先として株式などの元本が保証されない運用先もありますが、運用に失敗して、元本に差損を生じた場合、受託者である信託銀行等は固有財産から差損分を補填しなければなりません。

後見制度支援信託を利用すると、信託財産を払い戻したり、信託契約を解約したりするにはあらかじめ家庭裁判所が発行する指示書を必要とします。

親族後見人への引継ぎ

専門職後見人の選任方法としては3通り考えられます。リレー方式、複数選任方式及び監督人方式です。リレー方式は、当初専門職のみを成年後見人に選任して、信託契約締結後に交代するために後日親族後見人を選任する方式です。対して、当初から専門職と親族を成年後見人に選任する方式が複数選任方式です。

専門職後見人は、信託契約締結後、原則として辞任して親族後見人へ引継ぎ、親族後見人は手元の現預金と収入を管理することになります。その他に、親族を後見人に選任するとともに専門職を後見監督人に選任し、親族後見人が専門職後見監督人の監督下で信託契約を締結した後、専門職後見監督人が辞任する監督人方式があります。

家庭裁判所がどの選任方式を選択するかは、事件の内容に応じて判断します。

多額の支出が必要となったとき

有料老人ホーム等の高齢者施設の入居一時金が必要になる等においては、家庭裁判所に必要な金額とその理由を記載した報告書を裏付け資料とともに提出しなければなりません。

家庭裁判所は、報告書の内容に問題がないと判断すれば指示書を発行しますので、それを信託銀行等に提出し、必要な金銭を信託財産から払い戻します。一時金の払戻し手続後、予定通りの用途に資金が使用されたことを確認するため、その直後に家庭裁判所は後見監督を行います。

また、本人の収支状況の変更により信託財産から定期的に送金される金額を変更したい場合や、事情により信託契約を解約する必要が生じた場合についても、家庭裁判所に報告書を提出して指示書の発行を受ける必要があります。

少額訴訟債権執行について

2023-05-22

はじめに

以前の記事「少額訴訟について解説します!」で少額訴訟手続の制度について解説しましたが、債権者が勝訴判決を得たとしても、債務者が観念して任意に支払いに応じるとは限りません。そのような場合には地方裁判所における強制執行手続に頼らなければならず、債権の実現を簡易迅速に図ることができないことになります。

そこで、少額訴訟において債務名義(債権の存在、範囲を公的に証明した文書)を取得した債権者が、簡易裁判所の裁判所書記官に対して、金銭債権の執行を求めることができる制度を設けることとし、それを少額訴訟債権執行といいます。

ちなみに、司法書士は強制執行手続について代理することはできませんが、少額訴訟債権執行の手続については、請求の価額が140万円までのものであれば代理人となることができます。

利用することができる債務名義

1.少額訴訟における確定判決
2.仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決
3.少額訴訟における訴訟費用又は和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分
4.少額訴訟における和解又は認諾の調書
5.少額訴訟における民事訴訟法第275条の2第1項の規定による和解に代わる決定

1または2により、これに表示された当事者に対し、またはその者のために少額訴訟債権執行を行う場合を除き、執行文(債務名義の執行力の存在と範囲を公証するため、執行文付与機関が債務名義の正本の末尾に付記した文言)の付与を受ける必要があります。

執行証書以外の執行文は事件の記録の存する裁判所の書記官が付与するものとされていますので、簡易裁判所に事件の記録がある場合には、簡易裁判所の書記官が執行文を付与することになりますが、前述したように、強制執行に関する手続になりますので司法書士が代理することはできません。

対して、少額訴訟に係る債務名義についての執行文の付与の申立については、少額訴訟債権執行の手続に含まれるものと解されますので、司法書士が代理することができるものと解されています。

換価

少額訴訟債権執行においては、原則として、金銭債権を差し押さえた債権者が、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときに、その債権を取り立てることにより行われます。転付命令(被差押債権を支払いに代えて券面額で債務者から差押債権者に移転させること)等は認められていません。

また、被差押債権について第三債務者が供託を行った場合に、配当手続不要のときには裁判所書記官による弁済金の交付手続が行われます。

地方裁判所への移行

転付命令等を求めようとする差押債権者は、執行裁判所に対し、転付命令等のいずれの命令を求めるかを明らかにして、債権執行の手続に事件を移行させることを求める旨の申立をしなければならないとされています。

この申立を司法書士が代理人としてすることは可能ですが、移行後の地方裁判所における債権執行の手続においては代理することは許されません。

他にも、配当手続が必要なとき、執行裁判所の裁量によって移行されることがあります。上記移行の決定に対しては、不服を申し立てることはできません。

共有者の持分のみを更正する所有権更正登記について

2023-05-15

はじめに

夫婦、親子等で不動産を購入した場合には、それぞれの共有持分を登記します。その持分は出資負担割合に応じたものでなければなりません。例えば、夫Aが4,000万円の借入れをし、妻Bが現金1,000万円を負担して5,000万円の不動産を購入した場合の持分は、A5分の4・B5分の1となります。

通常はその説明を不動産仲介会社がするのですが、それが不十分であったり、当事者である夫婦等の認識不足により間違った持分で登記されることがあります。

贈与税の問題

上記の設例でA2分の1、B2分の1で登記したとしましょう。登記申請がされますとその情報が税務署に流れるようになっています。所有権に関する登記だけでなく、同時に設定された抵当権についても内容を知られてしまうのです。

設例ではAだけが借入れをしていますので、抵当権の登記事項として「債務者A」と記録されますが、ABの共有で登記されていますと、AからBへの贈与があったのではないかと疑われてしまうおそれがあります。贈与であるなら、Bに対して贈与税が課されることになります。

税務署から購入資金の出所を尋ねる書面が送られてくることがあるのはこのような事情によるのです。書面発送は全ての登記申請について行われるものではなく、疑わしいものに限られます。

住宅ローン控除の問題

上記の設例では、Aの住宅ローン控除を受けられる額が減ってしまうことがあります。また、夫婦でローンを組むことによって控除の恩恵を多く受けることもできますが、ローンの負担額やそれぞれの収入によってベストな選択は異なってきます。

抵当権者の承諾は不要

共有者の持分のみを更正する登記は共有者が申請人となり、設例では登記権利者A及び登記義務者Bの共同で申請します。この場合抵当権者の承諾は不要です。共有者の持分のみが更正されても、所有権の全体を目的として抵当権者が抵当権を有している状態に変更はないからです。

対して、単独名義から共有名義とする(反対の場合も同様。)相続以外の登記原因による所有権移転登記の更正は、前の所有権の登記名義人も登記義務者として申請人に加わることになります。

金融機関への事前連絡

登記手続上は抵当権者である金融機関の承諾・同意なしに登記申請をすることができますし、ネット上にもそのような情報が溢れています。確かにその通りなのですが、持分のみの更正登記をする場合には金融機関に連絡、相談をした方がよいでしょう。

金融機関によっては、事前に更正後の持分や更正登記を申請する理由などを書面で提出させて審査を行うことがあります。抵当権の付いている不動産について、共有者や共有持分が変わる登記を申請する場合には、必ず事前連絡をするべきだと考えます。

株式会社の役員変更登記を忘れていませんか?

2023-05-08

非公開会社の取締役の任期

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています。公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)においては、定款によって、取締役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます。

非公開会社とは、定款において全ての株式について譲渡制限が付けられている株式会社のことをいいます。株式の譲渡制限に関する規定は登記事項とされていますので、履歴事項全部証明書には、「当会社の株式を譲渡により取得するには株主総会(当会社、取締役会となっている場合もあります。)の承認を受けなければならない。」と記載されています。

会社法施行日である平成18年5月1日以降に設立された上場会社を除く株式会社のほとんどは非公開会社であることから、取締役の任期を10年に伸長しているケースが多くなっています。

みなし解散のおそれ

毎年10月頃、12年以上登記がされていない株式会社及び5年以上登記がされていない一般社団法人又は一般財団法人に対して、法務大臣による官報公告をし、管轄登記所から通知書の発送を行います。

前記の株式会社や一般社団法人又は一般財団法人に該当する場合には、必要な登記申請又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があり、これらの手続がされなかったときは、対象の会社等について「みなし解散の登記」がされることになります。

取締役の任期を10年に伸長している場合であっても、少なくとも10年に1回は登記申請をしなければならないことが理由となっています。ですから、役員変更登記をせずに12年以上放置すると株式会社は解散したとみなされるおそれがあるのです。

今すぐチェック!

会社や法人の設立後、登記した事項に変更があったときは、2週間以内に変更の登記をする義務があります。登記をしないでいると会社や法人の代表者、外国会社の日本における代表者は、裁判所から100万円以下の過料に処せられると会社法に規定されています。

商業・法人登記記録(不動産も同様)の日付には西暦ではなく和暦が用いられます。平成25年に設立し、または、役員が就任する登記をした場合の役員10年の任期満了は平成35年となります。平成は31年が最後ですから、元号の変換をして令和5年になることが判明します。

このように和暦の使用が10年経過を分かりにくくしている側面もあるとは思いますが、10年後に登記申請をしなければならないことをずっと把握しておくことは非常に困難でしょう。何年も登記していないと思われる方は、今すぐ会社の登記記録を調べることをお勧めします。

任意後見と法定後見(後見・保佐・補助)の優劣について

2023-05-01

はじめに

任意後見においては、本人の自己決定権を最大限尊重して契約により本人が後見人を自由に選ぶことができます。一方で、法定後見においては裁判所が職権で後見人等を選任することになっています。

このように両者には違いがあるのですが、両者とも利用可能なときにはどちらの制度が優先されるのか、または併存することはできるかといった相互の関係について説明したいと思います。

任意後見が優先される(原則)

任意後見契約に関する法律第10条第1項

任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる。

後見開始の審判等とは、後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を総称したものです。契約は判断能力を有していなければ締結することはできません。法定後見制度を利用しなければならない状況においては、任意後見契約を締結することはできないわけです。

よって、任意後見契約が登記されている場合には、本人は任意後見制度による保護を選択したものといえますので、その意思を尊重して家庭裁判所は原則として後見開始の審判等をすることができないのです。

本人の利益のため特に必要があると認めるときとは?(例外)

任意後見契約が登記されている場合であっても、本人の保護に欠けるようなときには家庭裁判所は例外として後見開始の審判等をすることができます。具体的には以下のようなときに該当すると考えられます。

・任意後見人の権限が不十分な場合
任意後見人は代理権目録に記載されている行為の代理権を有しているに過ぎません。任意後見契約締結後に代理権の範囲を拡張する必要が生じたのに本人の判断能力が欠けているようなときには、後見開始または保佐開始・代理権付与の審判などの法定後見による保護を要することになります。

また、任意後見人は同意権・取消権を有していませんので、その権利行使をして本人保護を適切にしなければならないときも同様です。なお、以前の記事「任意後見契約のメリットとデメリット」にて、そのことについて触れていますのでご参照いただければ幸いです。

・受任者に不適格事由がある場合
任意後見受任者が、未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人、破産者、行方の知れない者、本人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族、不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者の場合となります。

任意後見と法定後見が併存することはありません

任意後見監督人が選任された後に、法定後見開始の審判がされたときには任意後見契約は終了するとされています。併存させることで後見人等の権限が抵触してしまい、本人保護に支障が生じるからです。条文の反対解釈として、任意後見監督人選任前の任意後見契約は、法定後見開始の審判があっても終了することなく存続します。

では、法定後見が開始された後に任意後見監督人が選任されたときにはどうなるのでしょうか。本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、当該本人に係る後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならないと定められています。結論として、両者が併存することはないのです。

相続土地国庫帰属制度がスタートします!(令和5年4月27日)

2023-04-24

はじめに

相続した土地について、遠方にあるために管理が困難であるなどの理由により土地を手放したいニーズが高まっています。相続または遺贈(相続人に遺贈する場合に限る。)によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設され、令和5年4月27日からスタートします。

申請できる人は?

相続によって土地の所有権を取得した人に限られます。相続人でない受遺者、売買・贈与により所有権を取得した人は含まれません。

また、共有の場合には共有者全員から申請する場合に限り認められます。共有持分の一部が相続により取得されたものであれば、相続以外の原因よって取得された共有持分が存在しても構いません。

申請先と申請方法

申請先は不動産所在地を管轄する(地方)法務局の本局の不動産登記部門となります。東京都なら東京法務局、神奈川県なら横浜地方法務局となり、都道府県により管轄が定まるのですが、北海道には4つの(地方)法務局が存在しますので管轄の確認が必要です。

(地方)法務局の支局・出張所では、申請の受付はできませんのでご注意ください。申請方法は(地方)法務局の窓口に申請書を直接提出することのほか、郵送で提出することも可能です。

申請書の作成を依頼する場合

申請書は原則として所有者本人が作成する必要がありますが、一定の資格者に書類作成を代行してもらうことが可能です。資格者は、弁護士、司法書士及び行政書士の3士業となります。

承認申請手続をすることができるのは、所有者本人または親権者や後見人などの法定代理人に限られますので、前記の3士業を含めた他の者が代理することはできません。資格者が行うのは、あくまでも書類作成代行業務ということです。

審査手数料

審査手数料は、土地一筆あたり14,000円です。筆数が多くても割り引かれるようなことはありませんし、申請取り下げ・却下・不承認の場合でも返還されません。申請する土地が要件を満たすか否かを十分に考慮しなければならないと言えます。

隣接する数十筆の土地について承認申請する場合、全ての土地が不承認や却下になると審査手数料が膨大になるため、一筆の土地を先行して承認申請することはできます。

相続未登記の場合など

相続未登記であっても申請は可能ですが、土地の所有者であることを証明するために戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書等の提出が必要です。

売買により所有権を取得した者からの相続によって取得した土地について、売買による所有権移転登記がされていない場合、相続人が所有権を取得したことを確認できないため、申請することはできません。

境界点を明らかにする写真が必要

境界標が目で確認できるのであれば、全て写真に撮らなければなりません。境界が明らかでない土地については申請ができませんので、隣地所有者と境界確定の作業が必要となることも考えられます。

負担金について

国庫帰属への承認がされますと、国が土地を管理するための10年分の費用の相当額として、20万円の負担金を納付しなければなりません。

ただし、市街化区域等の宅地・農地、森林については土地の面積に応じて、20万円以上の負担金が必要になります。

相続した建物が未登記だったときの対処法

2023-04-17

そのままで売れるのか

売ることができないわけではありませんが、実際には登記をしない限り売ることは非常に困難だと思われます。売ることができるとしても、買主を自ら見つけて仲介を入れずに個人間で売買するような極めて限定的なケースに限られるでしょう。

仲介の入った不動産取引においては、買主は売主に代金を支払い、それと引き換えに売主は買主に対して、登記に必要な権利証等を交付します。そのうえで、代金を支払った日に司法書士が双方の代理人として登記の申請をします。

未登記建物の場合にはその登記申請ができませんので、売主が二重売買をした場合には必ずトラブルに発展します。不動産会社が売買の仲介に入った場合にはそのトラブルの対処をしなければなりません。ですから、わざわざトラブルの種がある売買の仲介を不動産会社はしないでしょうということです。

建物の取壊し

建物を取壊して更地で売却することは可能です。ただ、相続の場合には建物が共有となることがありますので注意が必要です。遺産分割により家財を含めた建物を取得する相続人が定まっているときには問題ありませんが、遺産分割前の遺産は共同相続人の共有となります。

建物を取壊すに当たり、取壊し業者は所有者や他の共有者の同意等を確認しませんが、相続人間のトラブルを避けるために必ず相続人全員の同意を得たうえで取壊しに着手するのが望ましいです。

建物表題登記

ここからは必要な登記について解説していきます。登記記録には表題部と権利部が存在します。両方とも記録されているのが一般的な不動産となりますが、表題部しかないものもあります。未登記建物とは、その表題部も存在しないものを指します。

建物の表題部には、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが記録されており、どの建物かを特定できるように物理的な現況を示しているといえます。

表題登記とは、新たに建物の登記記録を作出する第一歩となるもので、通常は土地家屋調査士が行います。古い建物の場合には、建築確認書や工事完了引渡証明書が残っていないことが多いので、上申書の提出を求められることがあります。土地家屋調査士に依頼した場合の費用は概ね8~12万円となります。

所有権保存登記

所有権保存登記は権利部にされる登記で、こちらについては司法書士が代理人として登記申請することが多いです。表題登記をしても所有者の住所氏名は記録されますが、それだけでは売却はできませんので所有権保存登記まで済ませておく必要があります。ちなみに、この登記が完了すると登記識別情報(権利証)が交付されます。

司法書士に依頼した場合の費用は、報酬1~3万円及び登録免許税として建物の固定資産税評価額の0.4%となります。土地の相続登記の依頼を受けた場合に追加で申請することが多く、また評価額が低いことにより登録免許税も低額の負担になることがほとんどです。

相続した不動産がわからないときの対処法

2023-04-10

相談者が急増

親から不動産を相続したが詳細がわからない、親名義の自宅を相続後も名義変更せずに放置したために相続した不動産の詳細がわからないといったご相談が増えています。別居が原因でわからないということのほうが多いですが、今後相続登記が義務化されますし、相続人にとっては深刻な問題です。

固定資産税納税通知書

不動産の所有者、正確には登記名義人に対して、毎年5月頃に納税通知書が市町村から送付されます。登記名義人が亡くなっている場合には、市町村が相続人の調査をして相続人宛に送ることになっています。

先ずは、その納税通知書を探すことが手っ取り早い方法です。ただ、郵便物が全て保管されているとは限りませんし、保管されていたとしても場所がわからずにいくら探しても見つからないということもあります。見つかった場合でも、非課税の不動産は納税通知書(同封されている課税明細書)には記載がされませんので、注意が必要です。

権利証

権利証が見つかれば、納税通知書ではわからない非課税不動産(私道、セットバック等)の存在が判明することがあります。ただし、こちらにも注意点がありまして、被相続人(亡くなられた方)がどのような原因で取得したかに着目する必要があります。

売買により取得したケースにおいてはほぼ問題はないのですが、相続により取得した場合は名義変更を漏らしている可能性があります。例えば、祖父名義のまま残ってしまっているなどが挙げられます。

被相続人に貸金庫の契約がある場合には、相続人全員の立会がなければ中身を確認することができません。貸金庫に権利証を保管される方は非常に多いですので、最優先で中身を確認するべきだと思います。

名寄帳の写し

納税通知書、権利証とも見つからない場合でも手段はあります。市町村役場で名寄帳の写しを入手することです。名寄帳とは、土地と家屋の固定資産課税台帳について所有者ごとにまとめたものです。市町村によっては、名寄帳が固定資産課税台帳を兼ねていることもあります。

請求する際には、相続人であることを証する戸籍謄本等が必要になります。単身者の場合には1通で足りることもありますが、所有者の死亡事項の記載がされた戸籍謄本等と相続人の現在戸籍謄本の原本を提示しなければなりません。

名寄帳には非課税の不動産も載りますので、司法書士が相続登記の依頼を受けた場合には取得することが多いです。注意点として、市町村毎に名寄帳は作成されますので、どこに不動産をもっているかわからないような場合には使えないと言えます。

被相続人が投機目的で地方に土地を購入し、評価額が低いために固定資産税非課税ですと納税通知書も送られてきませんので、相続人がそのような事情を知らない場合には権利証が出てこない限り見つけることは非常に困難です。

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0422478677 問い合わせバナー