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少額訴訟債権執行について
はじめに
以前の記事「少額訴訟について解説します!」で少額訴訟手続の制度について解説しましたが、債権者が勝訴判決を得たとしても、債務者が観念して任意に支払いに応じるとは限りません。そのような場合には地方裁判所における強制執行手続に頼らなければならず、債権の実現を簡易迅速に図ることができないことになります。
そこで、少額訴訟において債務名義(債権の存在、範囲を公的に証明した文書)を取得した債権者が、簡易裁判所の裁判所書記官に対して、金銭債権の執行を求めることができる制度を設けることとし、それを少額訴訟債権執行といいます。
ちなみに、司法書士は強制執行手続について代理することはできませんが、少額訴訟債権執行の手続については、請求の価額が140万円までのものであれば代理人となることができます。
利用することができる債務名義
1.少額訴訟における確定判決
2.仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決
3.少額訴訟における訴訟費用又は和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分
4.少額訴訟における和解又は認諾の調書
5.少額訴訟における民事訴訟法第275条の2第1項の規定による和解に代わる決定
1または2により、これに表示された当事者に対し、またはその者のために少額訴訟債権執行を行う場合を除き、執行文(債務名義の執行力の存在と範囲を公証するため、執行文付与機関が債務名義の正本の末尾に付記した文言)の付与を受ける必要があります。
執行証書以外の執行文は事件の記録の存する裁判所の書記官が付与するものとされていますので、簡易裁判所に事件の記録がある場合には、簡易裁判所の書記官が執行文を付与することになりますが、前述したように、強制執行に関する手続になりますので司法書士が代理することはできません。
対して、少額訴訟に係る債務名義についての執行文の付与の申立については、少額訴訟債権執行の手続に含まれるものと解されますので、司法書士が代理することができるものと解されています。
換価
少額訴訟債権執行においては、原則として、金銭債権を差し押さえた債権者が、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときに、その債権を取り立てることにより行われます。転付命令(被差押債権を支払いに代えて券面額で債務者から差押債権者に移転させること)等は認められていません。
また、被差押債権について第三債務者が供託を行った場合に、配当手続不要のときには裁判所書記官による弁済金の交付手続が行われます。
地方裁判所への移行
転付命令等を求めようとする差押債権者は、執行裁判所に対し、転付命令等のいずれの命令を求めるかを明らかにして、債権執行の手続に事件を移行させることを求める旨の申立をしなければならないとされています。
この申立を司法書士が代理人としてすることは可能ですが、移行後の地方裁判所における債権執行の手続においては代理することは許されません。
他にも、配当手続が必要なとき、執行裁判所の裁量によって移行されることがあります。上記移行の決定に対しては、不服を申し立てることはできません。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
「誰にも相談できずに困っていたが、本当にお世話になりました」といったお言葉をいただくこともあり、迅速な対応とお客様の不安を和らげることを心掛けています。趣味はドライブと温泉旅行で、娘と一緒に車の話をするのが楽しみです。甘いものが好きで、飲んだ後の締めはラーメンではなくデザート派です。
三鷹市をはじめ、東京近郊で相続や借金問題でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
共有者の持分のみを更正する所有権更正登記について
はじめに
夫婦、親子等で不動産を購入した場合には、それぞれの共有持分を登記します。その持分は出資負担割合に応じたものでなければなりません。例えば、夫Aが4,000万円の借入れをし、妻Bが現金1,000万円を負担して5,000万円の不動産を購入した場合の持分は、A5分の4・B5分の1となります。
通常はその説明を不動産仲介会社がするのですが、それが不十分であったり、当事者である夫婦等の認識不足により間違った持分で登記されることがあります。
贈与税の問題
上記の設例でA2分の1、B2分の1で登記したとしましょう。登記申請がされますとその情報が税務署に流れるようになっています。所有権に関する登記だけでなく、同時に設定された抵当権についても内容を知られてしまうのです。
設例ではAだけが借入れをしていますので、抵当権の登記事項として「債務者A」と記録されますが、ABの共有で登記されていますと、AからBへの贈与があったのではないかと疑われてしまうおそれがあります。贈与であるなら、Bに対して贈与税が課されることになります。
税務署から購入資金の出所を尋ねる書面が送られてくることがあるのはこのような事情によるのです。書面発送は全ての登記申請について行われるものではなく、疑わしいものに限られます。
住宅ローン控除の問題
上記の設例では、Aの住宅ローン控除を受けられる額が減ってしまうことがあります。また、夫婦でローンを組むことによって控除の恩恵を多く受けることもできますが、ローンの負担額やそれぞれの収入によってベストな選択は異なってきます。
抵当権者の承諾は不要
共有者の持分のみを更正する登記は共有者が申請人となり、設例では登記権利者A及び登記義務者Bの共同で申請します。この場合抵当権者の承諾は不要です。共有者の持分のみが更正されても、所有権の全体を目的として抵当権者が抵当権を有している状態に変更はないからです。
対して、単独名義から共有名義とする(反対の場合も同様。)相続以外の登記原因による所有権移転登記の更正は、前の所有権の登記名義人も登記義務者として申請人に加わることになります。
金融機関への事前連絡
登記手続上は抵当権者である金融機関の承諾・同意なしに登記申請をすることができますし、ネット上にもそのような情報が溢れています。確かにその通りなのですが、持分のみの更正登記をする場合には金融機関に連絡、相談をした方がよいでしょう。
金融機関によっては、事前に更正後の持分や更正登記を申請する理由などを書面で提出させて審査を行うことがあります。抵当権の付いている不動産について、共有者や共有持分が変わる登記を申請する場合には、必ず事前連絡をするべきだと考えます。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
「誰にも相談できずに困っていたが、本当にお世話になりました」といったお言葉をいただくこともあり、迅速な対応とお客様の不安を和らげることを心掛けています。趣味はドライブと温泉旅行で、娘と一緒に車の話をするのが楽しみです。甘いものが好きで、飲んだ後の締めはラーメンではなくデザート派です。
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株式会社の役員変更登記を忘れていませんか?
非公開会社の取締役の任期
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています。公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)においては、定款によって、取締役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます。
非公開会社とは、定款において全ての株式について譲渡制限が付けられている株式会社のことをいいます。株式の譲渡制限に関する規定は登記事項とされていますので、履歴事項全部証明書には、「当会社の株式を譲渡により取得するには株主総会(当会社、取締役会となっている場合もあります。)の承認を受けなければならない。」と記載されています。
会社法施行日である平成18年5月1日以降に設立された上場会社を除く株式会社のほとんどは非公開会社であることから、取締役の任期を10年に伸長しているケースが多くなっています。
みなし解散のおそれ
毎年10月頃、12年以上登記がされていない株式会社及び5年以上登記がされていない一般社団法人又は一般財団法人に対して、法務大臣による官報公告をし、管轄登記所から通知書の発送を行います。
前記の株式会社や一般社団法人又は一般財団法人に該当する場合には、必要な登記申請又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があり、これらの手続がされなかったときは、対象の会社等について「みなし解散の登記」がされることになります。
取締役の任期を10年に伸長している場合であっても、少なくとも10年に1回は登記申請をしなければならないことが理由となっています。ですから、役員変更登記をせずに12年以上放置すると株式会社は解散したとみなされるおそれがあるのです。
今すぐチェック!
会社や法人の設立後、登記した事項に変更があったときは、2週間以内に変更の登記をする義務があります。登記をしないでいると会社や法人の代表者、外国会社の日本における代表者は、裁判所から100万円以下の過料に処せられると会社法に規定されています。
商業・法人登記記録(不動産も同様)の日付には西暦ではなく和暦が用いられます。平成25年に設立し、または、役員が就任する登記をした場合の役員10年の任期満了は平成35年となります。平成は31年が最後ですから、元号の変換をして令和5年になることが判明します。
このように和暦の使用が10年経過を分かりにくくしている側面もあるとは思いますが、10年後に登記申請をしなければならないことをずっと把握しておくことは非常に困難でしょう。何年も登記していないと思われる方は、今すぐ会社の登記記録を調べることをお勧めします。

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任意後見と法定後見(後見・保佐・補助)の優劣について
はじめに
任意後見においては、本人の自己決定権を最大限尊重して契約により本人が後見人を自由に選ぶことができます。一方で、法定後見においては裁判所が職権で後見人等を選任することになっています。
このように両者には違いがあるのですが、両者とも利用可能なときにはどちらの制度が優先されるのか、または併存することはできるかといった相互の関係について説明したいと思います。
任意後見が優先される(原則)
任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる。
後見開始の審判等とは、後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を総称したものです。契約は判断能力を有していなければ締結することはできません。法定後見制度を利用しなければならない状況においては、任意後見契約を締結することはできないわけです。
よって、任意後見契約が登記されている場合には、本人は任意後見制度による保護を選択したものといえますので、その意思を尊重して家庭裁判所は原則として後見開始の審判等をすることができないのです。
本人の利益のため特に必要があると認めるときとは?(例外)
任意後見契約が登記されている場合であっても、本人の保護に欠けるようなときには家庭裁判所は例外として後見開始の審判等をすることができます。具体的には以下のようなときに該当すると考えられます。
・任意後見人の権限が不十分な場合
任意後見人は代理権目録に記載されている行為の代理権を有しているに過ぎません。任意後見契約締結後に代理権の範囲を拡張する必要が生じたのに本人の判断能力が欠けているようなときには、後見開始または保佐開始・代理権付与の審判などの法定後見による保護を要することになります。
また、任意後見人は同意権・取消権を有していませんので、その権利行使をして本人保護を適切にしなければならないときも同様です。なお、以前の記事「任意後見契約のメリットとデメリット」にて、そのことについて触れていますのでご参照いただければ幸いです。
・受任者に不適格事由がある場合
任意後見受任者が、未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人、破産者、行方の知れない者、本人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族、不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者の場合となります。
任意後見と法定後見が併存することはありません
任意後見監督人が選任された後に、法定後見開始の審判がされたときには任意後見契約は終了するとされています。併存させることで後見人等の権限が抵触してしまい、本人保護に支障が生じるからです。条文の反対解釈として、任意後見監督人選任前の任意後見契約は、法定後見開始の審判があっても終了することなく存続します。
では、法定後見が開始された後に任意後見監督人が選任されたときにはどうなるのでしょうか。本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、当該本人に係る後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならないと定められています。結論として、両者が併存することはないのです。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
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相続土地国庫帰属制度がスタートします!(令和5年4月27日)
はじめに
相続した土地について、遠方にあるために管理が困難であるなどの理由により土地を手放したいニーズが高まっています。相続または遺贈(相続人に遺贈する場合に限る。)によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設され、令和5年4月27日からスタートします。
申請できる人は?
相続によって土地の所有権を取得した人に限られます。相続人でない受遺者、売買・贈与により所有権を取得した人は含まれません。
また、共有の場合には共有者全員から申請する場合に限り認められます。共有持分の一部が相続により取得されたものであれば、相続以外の原因よって取得された共有持分が存在しても構いません。
申請先と申請方法
申請先は不動産所在地を管轄する(地方)法務局の本局の不動産登記部門となります。東京都なら東京法務局、神奈川県なら横浜地方法務局となり、都道府県により管轄が定まるのですが、北海道には4つの(地方)法務局が存在しますので管轄の確認が必要です。
(地方)法務局の支局・出張所では、申請の受付はできませんのでご注意ください。申請方法は(地方)法務局の窓口に申請書を直接提出することのほか、郵送で提出することも可能です。
申請書の作成を依頼する場合
申請書は原則として所有者本人が作成する必要がありますが、一定の資格者に書類作成を代行してもらうことが可能です。資格者は、弁護士、司法書士及び行政書士の3士業となります。
承認申請手続をすることができるのは、所有者本人または親権者や後見人などの法定代理人に限られますので、前記の3士業を含めた他の者が代理することはできません。資格者が行うのは、あくまでも書類作成代行業務ということです。
審査手数料
審査手数料は、土地一筆あたり14,000円です。筆数が多くても割り引かれるようなことはありませんし、申請取り下げ・却下・不承認の場合でも返還されません。申請する土地が要件を満たすか否かを十分に考慮しなければならないと言えます。
隣接する数十筆の土地について承認申請する場合、全ての土地が不承認や却下になると審査手数料が膨大になるため、一筆の土地を先行して承認申請することはできます。
相続未登記の場合など
相続未登記であっても申請は可能ですが、土地の所有者であることを証明するために戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書等の提出が必要です。
売買により所有権を取得した者からの相続によって取得した土地について、売買による所有権移転登記がされていない場合、相続人が所有権を取得したことを確認できないため、申請することはできません。
境界点を明らかにする写真が必要
境界標が目で確認できるのであれば、全て写真に撮らなければなりません。境界が明らかでない土地については申請ができませんので、隣地所有者と境界確定の作業が必要となることも考えられます。
負担金について
国庫帰属への承認がされますと、国が土地を管理するための10年分の費用の相当額として、20万円の負担金を納付しなければなりません。
ただし、市街化区域等の宅地・農地、森林については土地の面積に応じて、20万円以上の負担金が必要になります。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
「誰にも相談できずに困っていたが、本当にお世話になりました」といったお言葉をいただくこともあり、迅速な対応とお客様の不安を和らげることを心掛けています。趣味はドライブと温泉旅行で、娘と一緒に車の話をするのが楽しみです。甘いものが好きで、飲んだ後の締めはラーメンではなくデザート派です。
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相続した建物が未登記だったときの対処法
そのままで売れるのか
売ることができないわけではありませんが、実際には登記をしない限り売ることは非常に困難だと思われます。売ることができるとしても、買主を自ら見つけて仲介を入れずに個人間で売買するような極めて限定的なケースに限られるでしょう。
仲介の入った不動産取引においては、買主は売主に代金を支払い、それと引き換えに売主は買主に対して、登記に必要な権利証等を交付します。そのうえで、代金を支払った日に司法書士が双方の代理人として登記の申請をします。
未登記建物の場合にはその登記申請ができませんので、売主が二重売買をした場合には必ずトラブルに発展します。不動産会社が売買の仲介に入った場合にはそのトラブルの対処をしなければなりません。ですから、わざわざトラブルの種がある売買の仲介を不動産会社はしないでしょうということです。
建物の取壊し
建物を取壊して更地で売却することは可能です。ただ、相続の場合には建物が共有となることがありますので注意が必要です。遺産分割により家財を含めた建物を取得する相続人が定まっているときには問題ありませんが、遺産分割前の遺産は共同相続人の共有となります。
建物を取壊すに当たり、取壊し業者は所有者や他の共有者の同意等を確認しませんが、相続人間のトラブルを避けるために必ず相続人全員の同意を得たうえで取壊しに着手するのが望ましいです。
建物表題登記
ここからは必要な登記について解説していきます。登記記録には表題部と権利部が存在します。両方とも記録されているのが一般的な不動産となりますが、表題部しかないものもあります。未登記建物とは、その表題部も存在しないものを指します。
建物の表題部には、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが記録されており、どの建物かを特定できるように物理的な現況を示しているといえます。
表題登記とは、新たに建物の登記記録を作出する第一歩となるもので、通常は土地家屋調査士が行います。古い建物の場合には、建築確認書や工事完了引渡証明書が残っていないことが多いので、上申書の提出を求められることがあります。土地家屋調査士に依頼した場合の費用は概ね8~12万円となります。
所有権保存登記
所有権保存登記は権利部にされる登記で、こちらについては司法書士が代理人として登記申請することが多いです。表題登記をしても所有者の住所氏名は記録されますが、それだけでは売却はできませんので所有権保存登記まで済ませておく必要があります。ちなみに、この登記が完了すると登記識別情報(権利証)が交付されます。
司法書士に依頼した場合の費用は、報酬1~3万円及び登録免許税として建物の固定資産税評価額の0.4%となります。土地の相続登記の依頼を受けた場合に追加で申請することが多く、また評価額が低いことにより登録免許税も低額の負担になることがほとんどです。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
「誰にも相談できずに困っていたが、本当にお世話になりました」といったお言葉をいただくこともあり、迅速な対応とお客様の不安を和らげることを心掛けています。趣味はドライブと温泉旅行で、娘と一緒に車の話をするのが楽しみです。甘いものが好きで、飲んだ後の締めはラーメンではなくデザート派です。
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相続した不動産がわからないときの対処法
相談者が急増
親から不動産を相続したが詳細がわからない、親名義の自宅を相続後も名義変更せずに放置したために相続した不動産の詳細がわからないといったご相談が増えています。別居が原因でわからないということのほうが多いですが、今後相続登記が義務化されますし、相続人にとっては深刻な問題です。
固定資産税納税通知書
不動産の所有者、正確には登記名義人に対して、毎年5月頃に納税通知書が市町村から送付されます。登記名義人が亡くなっている場合には、市町村が相続人の調査をして相続人宛に送ることになっています。
先ずは、その納税通知書を探すことが手っ取り早い方法です。ただ、郵便物が全て保管されているとは限りませんし、保管されていたとしても場所がわからずにいくら探しても見つからないということもあります。見つかった場合でも、非課税の不動産は納税通知書(同封されている課税明細書)には記載がされませんので、注意が必要です。
権利証
権利証が見つかれば、納税通知書ではわからない非課税不動産(私道、セットバック等)の存在が判明することがあります。ただし、こちらにも注意点がありまして、被相続人(亡くなられた方)がどのような原因で取得したかに着目する必要があります。
売買により取得したケースにおいてはほぼ問題はないのですが、相続により取得した場合は名義変更を漏らしている可能性があります。例えば、祖父名義のまま残ってしまっているなどが挙げられます。
被相続人に貸金庫の契約がある場合には、相続人全員の立会がなければ中身を確認することができません。貸金庫に権利証を保管される方は非常に多いですので、最優先で中身を確認するべきだと思います。
名寄帳の写し
納税通知書、権利証とも見つからない場合でも手段はあります。市町村役場で名寄帳の写しを入手することです。名寄帳とは、土地と家屋の固定資産課税台帳について所有者ごとにまとめたものです。市町村によっては、名寄帳が固定資産課税台帳を兼ねていることもあります。
請求する際には、相続人であることを証する戸籍謄本等が必要になります。単身者の場合には1通で足りることもありますが、所有者の死亡事項の記載がされた戸籍謄本等と相続人の現在戸籍謄本の原本を提示しなければなりません。
名寄帳には非課税の不動産も載りますので、司法書士が相続登記の依頼を受けた場合には取得することが多いです。注意点として、市町村毎に名寄帳は作成されますので、どこに不動産をもっているかわからないような場合には使えないと言えます。
被相続人が投機目的で地方に土地を購入し、評価額が低いために固定資産税非課税ですと納税通知書も送られてきませんので、相続人がそのような事情を知らない場合には権利証が出てこない限り見つけることは非常に困難です。

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登記識別情報通知書の取扱いについて
登記識別情報について
登記識別情報通知の下部には12桁の英数字が記載されています。パスワードのようなものです。つまり、登記識別情報通知の書面そのものが重要なのではなく、あくまでもそこに記載されている登記識別情報(12桁の英数字)が重要となります。
したがって、書面を手元に保管していても、登記識別情報を第三者に見られたり、コピーされたりすると、従来の権利証が盗まれたのと同様の危険があります。
登記識別情報が通知される場合
登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。
申請人自らが登記名義人となる場合とは、売買、贈与、相続を原因とする所有権移転登記が代表的なものとして挙げられるでしょう。司法書士が申請人の代理人として登記申請をしたときには、代理人に通知されます。
対して、相続人の債権者が相続人に代位して相続登記を申請する場合には、登記識別情報は通知されません。この場合の申請人は債権者であって相続人ではありませんから、申請人自らが登記名義人となる場合に該当しません。
通知を希望しないことも可能ですが、登記識別情報の提供を要する登記を申請する際に、後述する事前通知や本人確認情報の提供等を利用することになります。
登記識別情報の失効の申出の制度
登記識別情報は、次の登記(売却や抵当権の設定等)をする際の申請人を確認するための資料として利用されるものですが、登記識別情報を紛失し、これが誰かに盗み見られた可能性がある場合などには、登記名義人又はその相続人その他の一般承継人の申出により、登記識別情報を失効させる制度が設けられていますので、必要があればこの制度を利用することもできます。
登記識別情報を提供することができない場合の代替措置
登記識別情報通知書の紛失等により、登記識別情報を提供することができない正当な理由があるときは、登記識別情報を提供することなく他の方法により申請ができることとされています。具体的には、登記識別情報による本人確認に代えて、登記所から登記名義人あてに、「事前通知」により本人であることの確認をすることになります。
この「事前通知」とは、登記識別情報を提供すべき登記名義人の住所地にあてて、本人限定受取郵便により、登記の申請があった旨及びその申請の内容が真実であるときは2週間以内にその旨の申出をすべき旨の通知をし、この通知に対して、2週間以内に申請に間違いがない旨の申出がされることをもって、本人からの申請であることを確認するというものです。
また、登記の申請を司法書士等の資格者に委任して行う場合には、「事前通知」の方法によらずに司法書士等の資格者が本人であることを確認した旨の書類 (「本人確認情報」)を提供する方法や公証人に同様の書類を作成してもらい、提供する方法もあります。
なお、事前通知の方法では手数料はかかりませんが、司法書士等に「本人確認情報」を作成してもらう場合には、そのための手数料がかかる場合もありますので、利用される場合は、あらかじめ確認をしておくのがよいでしょう。
最後に
登記識別情報は、不動産登記法の改正(平成17年3月7日施行)において設けられました。その後、平成20年7月頃までに全国の登記所のオンライン庁指定が完了しています。ですから、それ以降に作成された登記済証(権利証)は存在しないことになります。
私を含め、紙の権利証に馴染みがある方も多いと思いますが、登記識別情報通知書は従来の権利証に代わるものです。権利証と同様に厳重な管理をすることをお勧めして、本稿を終えます。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
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遺産分割は相続開始から10年以内にすることになります!(令和5年4月1日施行)
遺産分割に期間制限が設けられます
改正法施行前においては遺産分割に時間の制限は設けられていませんので、相続開始から何年経過していたとしても遺産分割は可能です。これは協議だけにとどまらず、遺産分割調停、審判も同様です。
ただ、長期間経過することにより、特別受益、寄与分を考慮した各相続人の具体的相続分の算定が困難になり、円満迅速な遺産分割の支障となるおそれがありました。
前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
前三条の規定とは、主に特別受益、寄与分があった場合の各相続人の具体的相続分の算定方法を定めたものを指します。特別受益、寄与分の主張は相続開始から10年以内にし、早期の遺産分割請求を促す効果を期待するものと言えるでしょう。
10年経過後に遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産の分割の請求はできなくなります。相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分(または指定相続分)によります。
指定相続分とは、被相続人が、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができるという規定により定められた相続分のことをいいます。
10年が経過し、法定相続分等による分割を求めることができるにもかかわらず、相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意したケースでは、具体的相続分による遺産分割をすることを妨げるものではありません。
改正法の施行日(令和5年4月1日)前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても、新法のルールが適用されますが、経過措置により、少なくとも施行時から5年の猶予期間が設けられます。遺産分割の期限は、相続開始時から10年経過時または改正法施行時から5年経過時のいずれか遅い時となります。
特別受益の主張
婚姻、養子縁組、生計の資本として生前贈与を受けた場合には特別受益に当たりますが、その判断は容易ではありません。遺産の前渡しといえるのかが判断のキーポイントになります。
また、主張された側が特別受益を認めないことも多いので、通帳の取引履歴や契約書等の書証を集めることも求められるでしょう。
まとめ
法定相続分(または指定相続分)による遺産分割を望まない場合には、共同相続人間の協議がまとまらないことが多いでしょう。そのまま10年経過すると法定相続分(または指定相続分)でバッサリ分けられてしまいます。
早期解決のための相談先は弁護士一択となります。司法書士を含めた他の士業は、遺産分割交渉を代理人として行うことはできません。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
「誰にも相談できずに困っていたが、本当にお世話になりました」といったお言葉をいただくこともあり、迅速な対応とお客様の不安を和らげることを心掛けています。趣味はドライブと温泉旅行で、娘と一緒に車の話をするのが楽しみです。甘いものが好きで、飲んだ後の締めはラーメンではなくデザート派です。
三鷹市をはじめ、東京近郊で相続や借金問題でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
不動産リースバック・利用上の注意点とは?
不動産リースバックとは?
不動産を売却した後、買主と賃貸借契約を結び継続して同じ不動産を利用し続けるというシステムです。老後資金の確保のために自宅を売却したいが、次に住む場所を探すのが大変な場合などに利用することが考えられます。
メリットばかりがネット上の情報で強調されているようですが、利用する場合の注意点を解説したいと思います。
修繕義務は借主が負う
原則として、賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負うことになっています。リースバックにおいては、賃貸借契約書に借主が修繕義務を負う特約条項を設けることが一般的です。
古い建物の場合には、修繕・メンテナンス費用が高額となりがちなので十分な資金を用意しておく必要があります。また、所有権は買主に移転しますので、外壁塗装、屋根の葺き替えといった大規模メンテナンスは、所有者の承諾なしに勝手に行うことはできません。
安く売って高く借りるおそれ
リースバックにおける不動産の買取価格は、市場価格(時価)の7~8割程度とされており、賃料についても相場より高くなることが多いようです。リースバックを扱う会社は、不動産投資と同様に利回りを重要視していることが原因となります。
(年間の家賃収入÷物件価格)×100=表面利回り
例えば、3,000万円で買い取って賃料を10万円とした場合の表面利回りは4%になります。
利回りは高ければ高いほど良いというわけではありませんが、利回りを重視することにより、売り手側に立ってみれば安く売って高く借りるということになりがちです。買い手の負担としては固定資産税くらいであり、修繕費負担もなければ空室リスクもありません。
買戻し特約の登記はできない
買戻しとは、売主が代金額および契約の費用を買主に返還することによって売買契約を解除し、目的物を取り戻すことを指します。メリットとして、買戻しができることを掲げている業者がいるようですが、その特約を登記することはできません。
登記がされていれば、買主が第三者に不動産を売却したとしても、売主はその第三者に対して買戻権を行使することができますし、後に設定された抵当権も消滅します。
これには融資をする銀行の事情(リスク)が関係しています。不動産購入の際、銀行融資を利用するときに買戻権者を公的機関以外の者とする登記がなされている不動産については、それを担保にした融資をしないことになっているのです。
私ならどうするか
自宅を売って現金化しなければならない状況になった時にはどうしたらよいのでしょうか。私ならリースバックではなく、一般の市場で売却して他の賃貸物件に引っ越すことを考えると思います。
最後に
上述した以外にも、賃料を年金などの収入でずっと払っていけるのか、譲渡所得税の課税、居住用不動産を売却した場合の3,000万円特別控除、賃貸借契約の吟味など注意すべき点がたくさんあります。
そのようなことを考慮しないまま、現金化を急ぐあまり安易にリースバックに飛びついてしまうのは避けた方がよいと考えています。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
「誰にも相談できずに困っていたが、本当にお世話になりました」といったお言葉をいただくこともあり、迅速な対応とお客様の不安を和らげることを心掛けています。趣味はドライブと温泉旅行で、娘と一緒に車の話をするのが楽しみです。甘いものが好きで、飲んだ後の締めはラーメンではなくデザート派です。
三鷹市をはじめ、東京近郊で相続や借金問題でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。