不動産を相続した時の名義変更を自分でする方法

はじめに

相続手続の主なものとして、不動産、株式等の名義変更、預貯金の名義変更や解約及び相続税の申告などがあります。相続人の方が全て自分ですることも可能ですが、最もハードルが高いのは相続税申告でしょう。

税申告が必要な方が自己判断で遺産分割をしてしまうと、予期しない高額な納税をしてしまうことがありますので注意が必要です。遺産分割によって納める相続税が異なってくることについては、2次相続を踏まえた相続税対策を参照して下さい。

相続税申告が不要な方であっても、不動産を相続によって取得される方は多くいらっしゃいますので、今回の記事はそのような方々が自分で名義変更(相続登記)をする方法についてご説明する内容となります。

準備するもの

戸籍謄本と戸籍の附票

相続人が配偶者と子供の場合には、被相続人の出生から死亡までの戸籍(原戸籍、除籍)謄本と相続人の現在戸籍謄本(被相続人の死亡日より後に発行されたもの)と戸籍の附票(住民票の写しでも可)を取得します。

郵送で請求もできますが、手数料は定額小為替証書(額面は1,000円までで、郵便局で購入できます。)で支払いますので、戸籍謄本請求書や返信用封筒と併せて同封します。

被相続人と登記名義人の同一性を証する書面

次の項目で取得する登記事項証明書には、登記名義人の住所と氏名が記録されています。死亡事項の記載ある戸籍(除籍)謄本を添付しただけでは、死亡した者の氏名しかわかりません。

したがって、被相続人の戸籍の附票や住民票の除票の写し(本籍の記載あるもの)を添付しなければなりません。戸籍の附票には本籍・筆頭者氏名の記載が原則省略されますので、申請書に本籍・筆頭者の記載を求める旨を記入するか、窓口で申し出る必要があります。

住所と氏名が一致することで、登記名義人と被相続人が同一人物であると証明することができるのです。

転居等で住所が一致しないことが実務上多く見られます。住民票または戸籍の附票の除票の保存期間が5年とされていたために、被相続人の過去の住所を遡って調べようとしても廃棄済みで入手不可となるのです。ちなみに、改正(令和元年6月20日施行)により保存期間は150年になりました。(住民基本台帳法施行令第34条第1項)

後にも述べますが、住民票の除票等で登記名義人の住所と氏名が一致しない場合には、法務局と事前相談をした方がよいと思います。権利証、不在住不在籍証明書、納税証明書、上申書などの添付を求められる場合があります。

不動産の登記事項証明書

固定資産税納税通知書を参照して法務局で登記事項証明書を取得します。民事法務協会の登記情報提供サービスを使って登記情報を取得しても構いません。

気を付けるべき点は、相続登記を漏らさないことです。納税通知書には、公衆用道路や保安林などの非課税不動産は載りません。その場合には市町村役場の資産税課(東京23区の場合は都税事務所)で名寄帳の写しの請求をします。戸建ての場合の私道部分やセットバックに注意しましょう。

評価証明書

登録免許税を算出するために市町村役場の資産税課(東京23区の場合は都税事務所)で評価証明書を取得します。名寄帳の写しが必要な場合は、一緒に請求すれば一回で用事が済みます。

所有者(納税義務者)の相続人から請求する場合には、戸籍謄本の添付を求められます。ただし、相続人代表者届出書を提出済みであるときは相続人代表者が請求することができます。市町村役場によって取扱いが異なることがありますので、事前に問い合わせをした方がよいでしょう。

収入印紙

登録免許税は収入印紙で納めます。計算方法については、登録免許税の計算を参照してください。

相続登記においては、免税措置が定められています。亡くなった方の名義にする土地の相続登記の登録免許税は課されません。例えば、お父様が亡くなられて登記名義人がご祖父様の場合に、いったんお父様名義にする相続登記には登録免許税はかかりません。注意すべきなのは、土地にのみ適用されて建物には適用されないことです。

他には、市街化区域外の土地で市町村の行政目的のため相続登記の促進を特に図る必要があるものとして法務大臣が指定する土地のうち、不動産の価額が10万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置が定められています。詳しくは、知らないと損をする!?相続登記の登録免許税の免税措置についてを参照してください。

令和4年度税制改正

免税措置の適用対象が全国の土地に拡充され、不動産の価額が100万円以下(10万円以下から引き上げ)の土地であれば、この免税措置が適用されることになりました。

上記2つの適用期限は、令和7年3月31日までとなっています。

登記申請書と添付書類

法務局の不動産の所有者が亡くなった場合の不動産登記申請手続を参考に作成していきます。色んなケースがあるとは思いますが、最も多いであろう遺産分割協議書を添付した登記申請書の作成方法について述べてみます。

・遺産分割協議書
記載例のように相続財産全てについて協議する必要はなく、不動産の記載だけで登記申請は可能です。もちろん、預貯金などの他の相続財産の記載があっても問題はありません。

氏名は自署ではなく、ワープロ打ち(記名)で構いません。実印で押印して、相続人全員の印鑑証明書(期限はありません。)を添付します。

・相続関係説明図
登記原因証明情報として、戸籍謄本等と遺産分割協議書(印鑑証明書を含みます。)を添付しますが、登記完了後にそれらの原本を返却してもらうためにコピーを付けなければなりません。

戸籍謄本等全てのコピーを付けるのは大変なので、相続関係説明図を添付することでコピーの添付が不要となります。あくまで不要となるのは戸籍謄本等だけであり、住民票や戸籍の附票のコピーは付けなければなりません。

併せて、遺産分割協議書、印鑑証明書及び評価証明書のコピーも付けるようにします。

・住所証明情報
不動産を相続することになった相続人全員の住民票の写しまたは戸籍の附票を添付します。 「準備するもの」の冒頭に記載しています。

法務局での事前相談

登記申請書と添付書類が揃ったら、申請する法務局で予約をして事前相談することをお勧めします。書類に不備がないかをチェックしてもらえます。

登録免許税分の現金を持参し、問題がなければ収入印紙を購入してその日に申請することもできます。

郵送による申請について

直接窓口に登記申請書を提出する以外に、郵送による申請もできます。申請書を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載の上、書留郵便により送付します。

登記識別情報を返送してもらう場合には、本人限定受取郵便等(レターパックプラスは使えません。)の方法によります(不動産登記規則第63条第4項第1号)ので、返信用封筒に必要な切手を貼るようにします。申請人が2人以上の場合には、それぞれの住所に登記識別情報を発送しますので、人数分の返信用封筒を用意します。

共有名義で登記申請をする場合には、申請人のそれぞれが登記申請書に押印します。相続人の1人から登記申請をすることもできますが、申請人とならなかった相続人には登記識別情報は交付されませんので、注意が必要です。

最後に

相続登記を含めた不動産登記申請(表示登記を除きます。)は義務ではありません。そのために相続登記がされずに放置され、所有者不明土地問題など社会問題となっています。

上記問題の発生予防の観点から、相続登記がされるようにするための不動産登記制度を見直す民法等の一部を改正する法律が令和6年4月1日に施行され、相続登記の申請が義務化されます。

この記事がご自身で相続登記をされる方の一助となれば幸いです。

 

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