家族信託の用語解説-信託監督人とは?

はじめに

家族信託においては、委託者・受託者・受益者以外の信託関係人と呼ばれる者を選任することがあります。受益者を保護する観点から受益者の権利の実効性を確保することを目的としています。

信託監督人とは?

信託監督人とは、受益者を保護する立場の信託関係人であって、信託及び信託財産の保全に必要な権利行使の権限を有する者のことです。信託法の条文では、信託監督人は、受益者のために自己の名をもって一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する、と定められています。(信託法第132条第1項)

受益者が高齢者、知的障害者、未成年者などの場合には受託者を十分に監督することができない場合があります。そのような保護を要する受益者のために信託行為(信託契約など)において信託監督人を指定することができます。裁判所が、一定の場合において利害関係人(受益者など)の申立てにより、信託監督人を選任することもできます。(信託法第131条第4項)

受益者は、信託行為において制限することができない権利を多数有しています。(信託法第92条)これらは、受益者が信託の目的に沿った経済的価値を適切に受けることができるように受託者を監視、監督するための権利です。

例えば、信託財産である居住用不動産を受託者が勝手に売却すれば、受益者が住む場所がなくなってしまいます。そのような場合には、受益者は受託者に対し、売却の差止めを請求することができるのです。

信託監督人の資格

信託監督人の資格については、未成年者、成年被後見人、被保佐人、当該信託の受託者である者を除いて、特に制限されていませんでした。後に、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年6月14日法律第37号)が施行され、「成年被後見人」と「被保佐人」が削除されました。

したがって、資格制限は未成年者と当該信託の受託者である者に適用されます。(信託法第137条、第124条) このように、受託者と兼任することはできないことから、親族を信託監督人に選任することもできますが、多くは専門家(弁護士、税理士、司法書士など)が選ばれています。

理想と現実

信託事務を確実に執り行う受託者である(受託者の監視、監督が不要な場合)、受益者に後見人が就いている、受益者代理人がいるなどの場合には、選任は不要なことが多いでしょう。

そうは言っても、冒頭で述べたように受益者の権利の実効性を確保するためには、信託監督人を置いた方が望ましいです。理想はそうなのですが、核家族化が進んでいる現代においては、親族のなりてがないことが非常に多いです。

信託監督人を親族以外から選任することとなった場合には、支払う報酬を考えなければなりません。あくまでも家族だけで信託を形成することとした場合における、第三者の目が行き届かないことから生じるリスクを容認しなければならないことと比較検討することが求められるのです。信託財産の内容(多寡)も考慮して、選任するか否かを慎重に判断することが重要となります。

 

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