家族信託の用語解説-受益者代理人とは?

はじめに

前回の記事では信託監督人について説明をしましたが、今回は、それと同様に委託者・受託者・受益者以外の信託関係人と呼ばれる者である受益者代理人について触れていきます。

どちらも、受益者を保護する観点から受益者の権利の実効性を確保することを目的として、家族信託において役割を果たす者といえますが、両者に違いはあるのでしょうか。

受益者代理人とは?

受益者代理人とは、受益者が適切な意思表示をすることができなかったり、受益者が頻繁に変動するために受益者の権利の行使が困難な場合に、受益者の代わりに信託に関する受益者の権利を行使するものです。

信託法の条文には、受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(第42条の規定による責任の免除に係るものを除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する、と定められています。(信託法第139条第1項)

第42条は、受託者の任務怠慢によって信託財産に損失が生じた場合に受託者が負担する責任を、受益者が免除することができる規定のことです。

信託監督人との違い

信託監督人が受益者の権利のうち受託者の監視・監督に関する権利の行使をするのに対し、受益者代理人はそのような制限なく包括的な権利の行使ができます。つまり、受益者代理人は信託監督人より広範な権限を有しているのです。

受益者が制限されずに行使できる権利について

受益者代理人が選任された場合には、代理される受益者は、信託行為の定めにより制限することができないと規定されている権利及び信託行為において定めた権利を除き、その権利を行使することができないので注意が必要です。(信託法第139条第4項)

※受益者が(制限されずに)行使できる主な権利
・信託財産の差し押さえ等に対する異議申立権(信託法第92条第3号)
・受託者の権限違反行為に対する取消請求権(同条第5号)
・信託事務の処理状況について受託者へ報告を求める権利(同条第7号)
・受託者が作成した信託財産に関する帳簿等の閲覧または謄写の請求権(同条第8号)
・受託者の任務怠慢によって信託財産に損失が生じた場合の、受託者へ損失補填を請求する権利(同条第9号)

家族信託における活用例

例えば、受益者が認知症により判断能力が低下して適切な意思表示ができなくなった場合に備えて、信託契約において受益者代理人を指定しておくといった活用ができます。受益者が知的障害、精神障害を有している場合においても、受益者代理人を選任しておくことが有益となるでしょう。

受益者代理人は、受益者の代わりに受益者の権利を行使する者であり、言わば受益者の利益を保護する役割を務めます。併せて、信託事務を円滑に処理することに寄与して、受益者及び受託者双方にとってアドバイザーの役割を果たすとも言えるでしょう。

受益者代理人になることができない者として、信託監督人と同様に、未成年者及び当該信託の受託者が規定されています。(信託法第144条、第124条)受託者が兼任することはできません。

家族信託においては、信託監督人についても言えることですが、受益者代理人を選任するか否か、選任するとしたら誰(親族または専門家)を選任するかを十分に検討する必要があります。

 

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