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相続対策と養子縁組
相続対策として祖父母と孫が養子縁組をすることがあります。孫が未成年者の場合は、祖父母双方と養子縁組をしなければならず、15歳未満であるときはその法定代理人である実父母が孫に代わって縁組の承諾をすることができるとされています。
また、原則として未成年者を養子とするには家庭裁判所の許可を得なければなりませんが、祖父母が孫を養子とする場合には、許可は不要となります。
養父母双方の死亡
孫が未成年のうちに養父母双方が死亡した場合はどうなるでしょう。子が養子であるときは養親の親権に服するとされていますので、養子縁組がされると孫の親権者は祖父母となり、実父母は親権者ではなくなります。
養父母の死亡により、実父母の親権が復活するのかという疑問が生じますが、結論から申し上げますと、復活することはなく親権者不在の状態となります。
実親の虐待等、子の利益を著しく害することを避けるために養子縁組がなされることもあり、一律に実親の親権を復活させることにすると問題が生じ得るからです。
未成年後見人の選任
上述した親権者不在の状態を解消するためには2つの方法があります。1つめは家庭裁判所に未成年後見人の選任を申立てるという方法です。
実親を後見人候補者として申立てることはできますが、孫が不動産等の多くの財産を所有しているときには、司法書士等の専門職後見人、後見監督人が選任される場合があります。専門職に対しては未成年者本人の財産から報酬を支払わなければなりません。
また、実親等の親族が後見人に就職した場合でも家庭裁判所に財産目録の提出、定期報告等をしなければなりません。親権者は未成年者の財産につき自己のためにするのと同一の注意義務を負うのに対し、未成年後見人は未成年者の財産の管理につき善管注意義務を負い、親権者より重い注意義務が課せられます。
養親である祖父母の遺言によって、実親を未成年後見人に指定することもできますが、親権者と異なる多くの負担を抱えることになるでしょう。
死後離縁
2つめの方法は死後離縁です。死後離縁とは、養子縁組をした当事者の一方が亡くなった後に、生存している他方が相手との血族関係を終了させる手続きです。死後離縁は家庭裁判所の許可を得る必要があり、養子が15歳未満であるときは離縁後に法定代理人となる実父母が申立人となります。
なお、離縁は養子縁組によって生じた権利義務などを将来に向かって消滅させるものですから、養子(孫)が養親(祖父母)の相続人の地位を失うわけではありません。
養方の財産を相続しておきながら扶養義務を免れるといった不純な目的がある場合には家庭裁判所の許可が得られないといったことが懸念されますが、今回の事例では該当しないと考えられます。