支店の所在地における登記の廃止と変遷

令和4年9月1日改正

令和4年9月1日、支店・従たる事務所の所在地における登記が廃止されました。したがって、同日から、支店の所在地における登記は不要となり、仮にこれを申請しても、商業登記法第24条第2号により却下されることとなります。

なお、本店の所在地における支店の設置、移転又は廃止等の登記は引き続き必要です。

旧商法時代

平成18年5月1日から会社法が施行されましたが、それ以前の旧商法においては支店の所在地における登記事項は本店の所在地と同様のものでした。また、支配人の登記が本店ではなく、支配人を置いた営業所(支店)の所在地における登記事項とされていました。

当時、登記事項証明書(登記簿謄本)、印鑑証明書は本店所在地を管轄する法務局でしか取得することができませんでしたので、会社の代表権を有する者の確認等のためには本店所在地と同様な登記簿を支店所在地においても公示する意味合いを有していたと思います。

また、不動産登記において法人が申請人となる場合には代表者の資格証明書の添付が求められていましたが、支店所在地において代表権を有する者の照合ができる場合には、添付省略ができたことも挙げることができるでしょう。

会社法施行

会社法の施行により、支店所在地の登記所には、索引的な登記事項である商号、本店の所在場所及び支店(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る。)の所在場所のみを登記することとされ、施行日に現にある支店の登記所の登記簿についても、登記事項は同様となったのです。

支店所在地の登記所に登記されている支店の登記事項を商号、本店及び支店所在地のみとする登記は、登記官が職権で行うこととされました。

また、支配人の登記はすべて本店の登記所の登記簿に記録することとされ、施行日に現にある支配人の登記についても、本店の登記所の登記簿に移されることとなりました。したがって、施行日後は、支配人を置いた支店の登記所でなく本店の登記所に対し当該支配人の登記事項証明書や印鑑証明書を請求する扱いになりました。

本支店一括申請

支店所在地においてする登記の申請は、本店所在地においてする登記の申請完了後に登記事項証明書(登記簿謄本)を添付する必要がありました。後に、コンピュータ化されている登記所間において、他の登記所管轄の登記記録の閲覧が可能となったことから、紙媒体の証明書の添付は不要となったのです。

このような手間がかかることから、商号変更、本店移転等の全ての支店所在地において登記申請が必要となるときには、申請人の大きな負担となっていました。

そこで、法務大臣の指定する登記所の管轄区域内に本店を有する会社による本店及び支店の所在地において登記すべき事項について支店の所在地においてする登記の申請は、その支店が法務大臣の指定する他の登記所の管轄区域内にあるときは、本店の所在地を管轄する登記所を経由してすることができるとする、本支店一括申請の制度が創設されました。

私自身、開業前の勤務時代にこの制度を1回だけ利用したことがあります。支店移転登記だったと記憶していますが、手数料(支店所在地の登記所1庁につき、300円)が安く、手間もかからないし便利だなあと感じました。しかし、その申請は取下げることになったのです。どうやら、過去に本店移転をした際に支店所在地にも登記申請をすべきところ、申請人がその申請を怠ったことが原因だったようです。

最後に

支店の所在地における登記の廃止に至るまでの変遷を記してきましたが、やはり時代の流れを強く感じます。ただ、支配人の登記など実務家として知っておかなければならない知識もあると思います。

それについては、過去の記事「40年以上放置された抵当権の抹消」で触れていますので、ご参照いただければ幸いです。

 

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