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共有物の管理の範囲の拡大・明確化
現行法上は、「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」と規定されており、軽微な変更であっても変更行為として共有者全員の同意が必要と扱わざるを得ず、共有物の円滑な利用・管理を阻害しているという問題がありました。
共有物の「変更」とは、共有物の性質または形状を物理的または法律的に変更することをいうとされ、変更・管理行為の区分については解釈に委ねられていたのです。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の過半数で決定することができるようになります。
例えば、A、B及びCが各3分の1の持分で建物を共有している場合において、台風により屋根瓦が吹き飛ばされてしまい、屋根の葺き替え等の大規模修繕工事が必要となった場合には2名の決定(持分の過半数である3分の2)によりできるということです。
短期賃借権等の設定
以下の〔 〕内の期間を超えない短期の賃借権等の設定は、持分の過半数で決定することができます。
⑴ 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 〔10年〕
⑵ ⑴に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 〔5年〕
⑶ 建物の賃借権等 〔3年〕
⑷ 動産の賃借権等 〔6か月〕
借地借家法の適用のある賃借権の設定は、法定更新により契約で定めた期間内に終了するとは限りませんので、共有者全員の同意が必要となります。例えば、相続した実家を賃貸する場合などが挙げられます。ただし、存続期間が3年以内の定期建物賃貸借については、持分の過半数の決定により可能です。
定期建物賃貸借をしようとするときには、「建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」(借地借家法第38条第2項)と規定されていますので注意が必要です。
所在等不明共有者がいる場合
所在等不明共有者(必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明な共有者)がいる場合には、その所在等不明共有者の同意を得ることができず、共有物に変更を加えることについて、共有者全員の同意を得ることができません。また、管理に関する事項についても、所在等不明共有者以外の共有者の持分が過半数に及ばないケースなどでは、決定ができないという問題が生じます。
その場合には、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、共有物に変更を加えること(民法第251条第2項)、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定すること(民法第252第2項第1号)ができます。
ただし、所在等不明共有者が共有持分を失うことになる行為(共有物の売却、共有不動産全体に対する抵当権の設定等)には、利用することができません。