ライフラインの設備の設置・使用権(私道掘削)について

はじめに

令和5年4月1日、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができるとする規定が明文化されました。その他これらに類する継続的給付には、電話・インターネット等の電気通信が含まれます。

他人の土地や設備(導管等)を使用しなければ各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者は、解釈上、改正前の相隣関係規定等の類推適用により、他人の土地への設備の設置や他人の設備の使用をすることができると解されていましたが、明文の規定がないために設備の設置・使用に応じてもらえない、不当な承諾料を求められるなどトラブルに発展するケースが散見されました。

改正前においては、掘削承諾書を私道所有者や私道に隣接する土地の所有者間で取り交わすことがなされ、ライフライン引き込み工事をする際の提示書面となっていた経緯があります。

場所・方法の限定

設備の設置・使用の場所・方法は、他の土地及び他人の設備のために損害が最も少ないものに限定されます。設備を設置する場合には、公道に通ずる私道や公道に至るための通行権の対象部分があれば、通常はその部分を選択します。

袋地所有者の囲繞地通行権と同様、これまでの相隣関係の趣旨を踏まえて明文化したことがよくわかります。

事前通知が必要

他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければなりません。他の土地を現に使用している者とは賃借人等が該当します。

通知の相手方が、その目的・場所・方法に鑑みて設備設置使用権の行使に対する準備をするに足りる合理的な期間を置く必要がありますが、概ね2週間~1か月程度が相当でしょう。通知の相手方が不特定又は所在不明である場合にも、例外なく通知が必要であり、簡易裁判所の公示による意思表示を行うこととなります。

償金・費用負担について

・設備設置権
設備の設置により土地が継続的に使用することができなくなることによって他の土地に生じた損害に対しては、償金を支払わなければなりません。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができます。

土地の分割又は一部譲渡に伴い、分割者又は譲渡者の所有地のみに設備の設置しなければならない場合には、償金を支払うことを要しません。

対して、設備設置工事のために一時的に他の土地を使用する際に、当該土地の所有者・使用者に生じた実損害に対する償金は一括払いとなります。

・設備使用権
土地の所有者は、その設備の使用開始の際に損害が生じた場合に、償金を支払う必要があります。また、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならないと規定されています。

まとめ

今回は民法の相隣関係に関する改正のうち、ライフラインの設備の設置・使用権に関する法規制の整備について触れました。

法改正がされたからといって、通行権・設備使用権などの権利を振りかざすのではなく、常日頃から近隣住民との関係を良好に保つことが重要だと思います。電気、ガス、水道などのライフラインは言うまでもなく、人が生活するのに欠かせないものですから、ご近所とのいざこざは極力避けるのが無難です。

 

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