成年後見制度が大きく変わります

「補助」へ一元化される新しい仕組みをわかりやすく解説します

令和8年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、同月24日に公布されました。成年後見制度の見直しに関する部分は、公布の日から2年6か月以内(令和10年12月24日まで)の政令で定める日が施行日となります。

今回の改正は、制度の使いにくさや、本人の権利が過度に制限されてしまうという課題を解消するため、後見・保佐・補助という三類型を廃止し、補助に一元化するという極めて大きな制度改革です。

現行制度の課題

成年後見制度は、判断能力が低下した方を保護するための仕組みですが、実務では次のような問題が指摘されてきました。

いつまででも問題

課題が解決し、周囲が「もう後見は不要では」と考えても、本人の判断能力が回復しない限り制度を終了できません。本人の状況が改善しても、制度の利用が続くことがありました。

何でも問題

成年後見人には包括的な代理権が与えられ、必要以上に本人の行為能力が制限される場面がありました。この広すぎる権限が、不正行為や権限濫用の温床となるおそれも指摘されています。

こうした課題を踏まえ、改正民法では制度の根本的な見直しが行われています。

改正後の制度構造:類型は補助のみ

改正民法では、旧法の後見・保佐・補助という三類型は廃止され、類型は補助のみとなります。ただし、補助制度の中で、本人の状況に応じて必要な支援を組み合わせられるよう、次の4つの審判が規定されています。

①補助開始の審判(改正民法7条)
精神上の理由により事理弁識能力が不十分な者(旧法の保佐・後見に該当する者を含む)について行われます。

②補助人の同意を要する旨の審判(改正民法9条)
一定の法律行為について、本人が行う際に補助人の同意を必要とするもの。

③特定補助人を付する旨の審判(改正民法10条)
取消権の行使、本人に対する意思表示の受領、本人の財産に関する保存行為を行う権限を補助人に与えるもの。旧法の成年後見人のような包括的代理権はありません。

④補助人に代理権を付与する旨の審判(改正民法11条)
特定の法律行為について代理権を与えるもの。

同意を要する旨の審判と特定補助人を付する旨の審判は併存しない

補助人の同意を要する旨の審判と、特定補助人を付する旨の審判は併存できません。どちらか一方がされている状態で他方の申立てがあれば、家庭裁判所は職権で先の審判を取り消します(改正民法9条6項・10条4項)。

これは、旧法の成年後見人(特定補助人も同様)には同意権がなかったことから導かれる当然の帰結です。

保護の必要性が要件に

改正民法では、補助人に権限を付与する審判(同意権・特定補助人・代理権)について、保護の必要性があるときが要件として明記されました。

これにより、課題が解決した場合には、判断能力が回復していなくても制度を終了できるようになります。現行制度のいつまででも問題を解消する重要な改正です。

施行後の選択肢

施行後、現在後見類型を利用している方は次の3つから選択できます。

①現行法の後見の制度を継続
附則2条1項により、現行法の内容で後見の制度を続けることができます。

②改正民法の補助の制度へ移行
附則2条4項により、補助開始の審判と、必要に応じて同時に

  • 補助人の同意を要する旨の審判または特定補助人を付する旨の審判
  • 補助人に代理権を付与する旨の審判

の申立てを行います。この場合、家庭裁判所は後見開始の審判を取り消します(附則2条6項)。

③後見の制度の利用を終了
附則2条7項により、後見開始の審判の取消しを申し立てることで制度の利用を終了できます。

おわりに

今回の改正は、本人の尊厳や自己決定をより重視する方向へ大きく舵を切るものです。「補助」へ一元化することで、必要な支援を必要な範囲だけ提供する仕組みへと進化します。

司法書士としても、制度の趣旨や新しい選択肢を丁寧に説明し、本人・家族が適切な判断をできるよう支援していくことが求められます。

 

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