このページの目次
はじめに
欠缺補正のためにする取下げは、補助者時代を含めた約30年にわたる司法書士業務に携わった期間中何度も経験をしています。この度、申請意思撤回による取下げをすることになりましたので、今回はそのことについて書いてみたいと思います。
却下と取下げの違い
不動産登記の却下は、法務局の登記官が申請を受理しない決定を下すことを指し、特定の理由に基づいて行われます。特定の理由は不動産登記法第25条に列挙されています。例えば、管轄違いの登記所に申請したとき、申請が登記事項(他の法令の規定により登記記録として登記すべき事項を含む)以外の事項の登記を目的とするとき等が該当します。
対して、登記の取下げとは、登記の申請者が自ら申請を撤回することをいいます。登記が完了するまで、または却下が決定する前までは、申請人はいつでも登記の取下げをすることができます。
却下事由に該当するからといって直ぐに却下されるものではありません。補正が可能であれば申請人またはその代理人に対し、補正をする機会を与えるのが実務上の取扱いです。また、法定の期間内に、事前通知に対する申出がない場合等、補正不可であっても取下げの機会が付与されます。
私自身、却下は経験したことがありませんし、大多数の司法書士が同様だと思います。補正可能であれば速やかに補正し、時間がかかるようなら取り下げてしまうことが通常だからです。
管轄違い
オンライン申請では管轄を間違えた経験はありません。おそらく、管轄違いの申請は申請用総合ソフトのチェック機能によってできないようになっているのではないでしょうか。全く無いわけではなく、補助者時代に遡れば管轄を間違えたことがあります。書面申請で出頭主義が採用されていた頃の話です。
世田谷区を管轄する登記所は現在では世田谷出張所ですが、当時は調布出張所が世田谷区の一部を管轄していました。そのことから、調布に出すべきものを世田谷に出してしまったというものです。申請直後、登記所からの電話連絡により管轄違いが判明し、すぐに世田谷出張所に戻って取下げます。取下げ書、再使用証明願等の書面を急いで書き上げなければなりません。
その登記申請には抵当権設定が含まれていましたのでその日のうちに申請しなければならなかったのですが、取下げが完了したときには午後4時をまわっていました。電車、タクシーを使って調布出張所に向かったのですが、午後5時には間に合いませんでした。登記所職員になんとか受け付けて貰えないかお願いをしてみたのですが、ダメでした。
申請意思撤回による取下げ
登記申請後、依頼者から登記を取下げてほしいとの連絡が入ります。理由については伏せておきますが、登記申請から2週間程経過していましたので、その連絡を受けてすぐに管轄法務局に電話をしました。この記事を執筆している時点での登記完了までの期間が長期化していることが幸いし、未だ調査もしていないということが分かり、同時に取下げる旨を伝えたのです。
開業後、初めての取下げとなりました。オンライン申請の場合には、取下げはオンラインでしなければなりませんし、取下げ書には取下げの理由を記載しなければならないことが判明します。理由はその他事項欄に記載すればいいですし、電子署名をしたうえで送信するのは登記申請と同様です。
申請意思撤回による取下げの委任状を申請人からいただき、還付通知請求・申出書と一緒にレターパックで法務局へ郵送しましたが、届いた翌日には取下げは完了していました。電子納付した登録免許税は、申請代理人である司法書士に還付されます。そのための委任状も必要となりますが、私の場合は登記申請用委任状の委任事項に含めていましたので、今回はそれを援用しました。
以前は、申請人に還付される取扱いでしたが、それが改善されて便利になりましたね。還付されるまでの期間を調べるためにネット検索してみたのですが、どうやら半年くらいかかるようです。
司法書士は、登録免許税を立て替えるのが日常茶飯事となっています。不動産、商業登記のどちらにも当てはまりますから、常に立て替えている状態のうえに、還付されるまで半年も待たされるのはいかがなものでしょうか。立替え貧乏と言われるのもわかる気がします。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
「誰にも相談できずに困っていたが、本当にお世話になりました」といったお言葉をいただくこともあり、迅速な対応とお客様の不安を和らげることを心掛けています。趣味はドライブと温泉旅行で、娘と一緒に車の話をするのが楽しみです。甘いものが好きで、飲んだ後の締めはラーメンではなくデザート派です。
三鷹市をはじめ、東京近郊で相続や借金問題でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
