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はじめに
相続放棄は自分ですることも可能です。平日に仕事をされている方であっても、お昼休みに郵便局に行く時間が取れるのであれば、定額小為替証書、収入印紙、郵便切手を入手することができますし、戸籍謄本の取得及び相続放棄の申述も郵送ですることが可能です。この記事がそのような方の参考になれば幸いです。
必ず必要な書類
・被相続人(亡くなった方)の住民票の除票又は戸籍の附票
相続放棄の申述先は家庭裁判所になりますが、どこの家庭裁判所でもよいわけではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述しなければなりません。実際に住んでいた場所ではなく、住民登録されていたところがこの場合の住所地となります。家庭裁判所が管轄を確認するためにこの書類が必要になります。
・申述人(相続放棄する方)の戸籍謄本
相続人であること及び被相続人の死亡時点において現に存在する相続人であることを証するために必要になります。したがって、発行日が死亡日より後の戸籍謄本を取得しなければなりません。
その他必要な戸籍謄本等
(1)申述人が、被相続人の配偶者の場合
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
被相続人の死亡は戸籍で確認をします。死亡後に転籍をした場合には、転籍先の戸籍には死亡事項は記載されませんので、転籍前の除籍謄本を取らなければなりません。配偶者は相続人の順位に関わらず必ず相続人になりますので、他に相続人がいないことを証する必要がありません。
(2)申述人が、被相続人の子又はその代襲者(孫、ひ孫等)(第一順位相続人)の場合
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
被相続人の子又はその代襲者(孫、ひ孫等)は第一順位の相続人ですから、配偶者の場合と同様に他に相続人がいないことを証する必要がありません。相続人であることを証することで足りるのです。代襲相続人も同様で、被代襲者の死亡事項の記載のある戸籍を添付すればよいこととなります。
(3)申述人が、被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
(2)までとは違い、第二順位以下の相続人の場合には先順位の相続人がいない(相続放棄した場合も含みます。)ことを証する必要があります。所謂「ないこと証明」が求められるのです。出生時から死亡時までの戸籍により、被相続人の子の有無がわかります。子には認知した子などの婚外子、養子を含みます。
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
子(及びその代襲者)の代襲相続人が一人もいないことを証する必要があります。一般的に、ないことを証明するのは、あることを証明するより困難になりますから、添付する戸籍謄本も大幅に増えることになるのです。
・被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))がいらっしゃる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
こちらも「ないこと証明」になります。民法の規定によれば、「親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。」となっていますので、先順位の相続人がいないことを証する必要があるのです。
(4)申述人が、被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
第三順位の相続人の場合には、第一・第二順位の相続人がいないことを証する必要がありますから、最も戸籍集めが大変と言えるでしょう。
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
ここまでの戸籍謄本等は、第二順位の相続人に添付が求められるものと同様です。
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
第二順位の相続人がいないことを証する必要があります。被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本に、父母の死亡事項の記載がある戸籍が含まれていると思われます。祖父母については、生きていれば100歳を超えるようであれば死亡事項の記載のある戸籍謄本等の添付は不要でしょう。
・申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
上記3つとは違い、代襲相続人であることを証する「あること証明」を求めるものです。被相続人の兄弟姉妹が、相続の開始以前(同時死亡の推定がされる場合を含みます。)に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となることから、被代襲者の死亡事項の記載が必要となります。
まとめ
戸籍謄本等の添付が求められるのにはそれぞれ理由があり、大まかに「ないこと証明」と「あること証明」の2種類のためとなります。「ないこと証明」の方が添付する戸籍謄本等の通数が多くなることが両者の違いです。
理由を理解すれば、添付書面を見なくても必要な戸籍謄本等がわかるようになります。出生時からの戸籍を求める理由は子の有無を調べるためですから、例えば、5歳まで遡って戸籍を取得した場合に出生時から5歳までの戸籍の添付を求めるのは、既に目的を達成していると言えるわけですから無意味なことになります。