自筆証書遺言の訂正はどう行う?方式違反で無効にならないためのポイントを解説

はじめに

遺言は、遺言者の最終意思を実現するための重要な法律行為です。しかし、遺言は要式行為とされており、民法に定められた方式に従わなければ効力を生じません。方式の不備があると、遺言が無効となる可能性があるため、作成時には細心の注意が必要です。

遺言の方式には普通方式と特別方式があり、普通方式には

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

の3種類があります。
今回は、このうち自筆証書遺言の訂正方法に焦点を当て、一般の方にも分かりやすく解説します。

自筆証書遺言の基本要件

2026年9月時点のものです。

令和8年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、同月24日に公布されました。

成年後見・遺言制度について根本的な見直しが行われており、自筆証書遺言の方式要件であった「押印」の廃止、電磁的記録等による新たな遺言制度(保管証書遺言)の創設等が遺言制度に関する主な改正点として挙げられます。施行日は未定ですが、判明次第、別の記事で解説する予定です。

 

自筆証書遺言は、遺言者が

  • 全文
  • 日付
  • 氏名

を自書し、押印することで成立します。

この4つの要件のいずれかが欠けると、遺言は無効となります。ただし、平成30年の民法改正により、例外として財産目録は自書でなくてもよいことになりました。

例えば、パソコンで作成した財産一覧や、通帳のコピーを添付することも可能です。その場合、遺言者は財産目録の各ページに署名押印をする必要があります。

訂正したいときはどうする?──民法968条3項の方式

自筆証書遺言を作成した後、「書き間違えた」「内容を修正したい」という場面は珍しくありません。しかし、訂正にも厳格な方式が定められています。民法968条3項(旧968条2項)によれば、自筆証書遺言の加除訂正は次の方式によらなければなりません。

訂正の方式(要件)

1.訂正する場所を指示すること
 例:文末等に「○行目」などと記載する
2.変更した旨を付記すること
 例:「○字削除○字追加」など
3.その付記部分に署名すること
4.訂正した箇所に押印すること

この方式を欠くと、原則として訂正は無効となり、訂正前の記載が有効と扱われます。

例外:明らかな誤記の訂正は方式違反でも無効にならない

訂正方式を厳格に守らなければならないとすると、遺言者の真意が明らかであるにもかかわらず、形式的な不備だけで遺言が無効になるという不合理が生じます。この点について、最高裁昭和56年12月18日判決は重要な判断を示しています。

判決のポイント

  • 明らかな誤記の訂正であれば、訂正方式に違反していても遺言の効力に影響しない
  • なぜなら、誤記の訂正は遺言者の意思を確認するうえで支障がないため

この判決では、遺言者が書き損じた文字を抹消し、同じ趣旨の文字を改めて記載した事案が扱われました。証書の記載から誤記であることが明らかであったため、訂正方式の不備があっても遺言は有効と判断されています。

判例の位置づけ──危急時遺言の訂正方式を参照した理由

この最高裁判決が興味深いのは、自筆証書遺言の訂正方式を論じるにあたり、危急時遺言の訂正に関する過去の判例(昭和47年3月17日判決)を引用している点です。危急時遺言は、病気や事故などで死が迫っている状況で行われる特別方式の遺言ですが、民法982条により、普通方式の遺言に関する規定が準用されます。

裁判所は当然この前提を理解したうえで、危急時遺言の判例を参照し、次のような共通原理を導いています。

  • 訂正方式の趣旨は、遺言者の真意を確保することにある
  • 明らかな誤記の訂正であれば、方式違反があっても遺言者の意思確認に支障がない

つまり、危急時遺言の判例は訂正方式の趣旨を示すものとして引用されており、そこから導かれる原理が自筆証書遺言にも妥当すると判断されたわけです。

まとめ:訂正方式は厳格、ただし誤記の訂正は柔軟に扱われる

自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、方式違反による無効リスクが高いという特徴があります。訂正を行う際には、民法968条3項の方式を確実に守ることが重要です。
しかし、最高裁判例が示すように、

  • 遺言者の意思が明らかであること
  • 訂正が単なる誤記の修正にすぎないこと

が認められる場合には、訂正方式の不備があっても遺言が無効になることはありません。形式的な不備によって遺言者の最終意思が実現できなくなることを避けるため、判例は柔軟な解釈を示しています。

とはいえ、訂正方式は一般の方には分かりづらく、誤りが生じやすい部分です。自筆証書遺言を作成・訂正する際には、専門家に相談することで、遺言の有効性を確実に担保することができます。

 

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