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はじめに
増築をしたが登記をしていないというのはよくあることです。登記の有無にかかわらず、固定資産税は現況(床面積等)に対して課されます。
増築時に建築確認申請をしますと、市町村がそれを知ることができますし、航空写真や定期的な現地巡回によっても増築を把握することができます。市町村は建物所有者から増築前後の図面の提示を求めることなどによって、課税床面積を算出します。
登記後に登記床面積>課税床面積となる問題
未登記増築部分の登記は土地家屋調査士が申請することが多いと思います。20年以上未登記であったなんてことはざらにあるのですが、完了後の登記簿謄本を司法書士が見ると頭を抱えることがあります。登記床面積が課税床面積を上回っている場合には、評価証明書をそのまま使うことができないからです。
この記事では、2つのケースを紹介して実際の課税価格の算出方法について触れていきます。
平成年月日不詳種類変更、増築の登記がされたケース
建物表題変更登記がされる前の表題部
所在 千葉県
種類 店舗居宅
構造 鉄筋コンクリート造
床面積 160.64㎡
平成2年3月新築
変更登記後の表題部
種類 居宅
床面積 170.65㎡
課税価格の算出
以下の計算は、令和2年度のものに基づいています。
令和3年4月1日以降の価格とは異なりますので、ご注意ください。
新築の併用住宅の課税価格は、土地家屋調査士が作成した床面積の内訳書を参考にして算出します。
例えば、上記の建物の内訳が
居宅 150㎡
店舗 10.64㎡
だとします。
新築建物課税標準価格認定基準表にしたがって計算します。
133,000円×150㎡+120,000円×10.64㎡=21,226,800円
ここからが本題です。平成年月日不詳変更、増築という登記がされたわけですから、新築直後に居宅への変更、平成31年4月30日(平成最後の日)増築したものとして計算していきます。
考え方としては、評価額が下がらない(最も高額となる)方法で計算をするわけです。
増築前の建物の評価額+増築部分の評価額
上記の計算式を基に経年減価補正率表を参考にして計算していきます。
133,000円×160.64㎡×0.3059(非木造、経過年数30年)+133,000円×(170.65-160.64)㎡×0.9579(経過年数1年)=7,810,871円
昭和58年月日不詳変更、増築の登記がされたケース
建物表題変更登記がされる前の表題部
所在 東京都
種類 居宅
構造 木造
※課税床面積 210.58㎡(評価証明書による。)
変更登記後の表題部
種類 居宅・車庫
構造 木・鉄骨造
床面積 219.89㎡
課税価格の算出
登記床面積>課税床面積となっていますので、前述のとおり評価証明書の価格は採用できません。また、居宅と車庫及び木造と鉄骨造の内訳がわかりません。そのような場合には前記ケースと同様の考え方によって高い方を採用して経年減価補正をします。
新築建物等課税標準価額認定基準表によれば、車庫より居宅の方が高く、木造より鉄骨造の方が高いので㎡単価は124,000円となります。
計算式
評価証明書記載の価格+124,000円×(219.89-210.58)㎡×0.2191(非木造、経過年数38年)
まとめ
未登記の増築部分を登記することによって現況と登記上の床面積が一致しない場合の計算方法について一部ご紹介しました。
登記床面積>課税床面積となる場合であっても、評価証明書の価格をそのまま使うケースもありますので、管轄法務局への事前相談は必須でしょう。