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時間のかかる戸籍謄本の取得
相続手続においては、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得しなければなりません。戸籍は、家制度の廃止により戸主とその家族毎に作成されていたものを夫婦とその子の単位で作成される改正がされ、その後コンピュータを使用して戸籍事務を取り扱うことが可能となって縦書きから横書きの戸籍記録になる等の改正がされています。
そのような複数の改正、転籍等によって集めなければならない戸籍謄本の通数が多くなることが一般的でした。本籍地でしか取得できないことから、複数の市町村に対して交付請求をしなければならず、特に本籍が遠方にあって郵送請求する場合には多くの時間を要することとなり相続人の大きな負担となっていたのです。
戸籍の本人請求
本題に入る前に、戸籍謄本の交付請求ができる者について触れておきます。戸籍法では、戸籍に記載されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍謄本等の交付の請求をすることができる、と規定されています。
本人、配偶者、親、祖父母、子、孫等の戸籍謄本等は請求目的を問わず交付請求することができます。対して、兄弟姉妹、伯叔父母及び甥姪等(傍系血族)、元夫(妻)等の戸籍謄本等の交付請求は後述する第三者請求となります。
今般の改正によって本籍地以外での戸籍謄本の発行(広域交付)が可能となるのは、本人請求のみとなります。第三者請求、職務上請求は対象とされていませんので、従来通り本籍地の市町村に対して交付請求をしなければなりません。
第三者請求
戸籍に記載されている者等には該当しない第三者であっても、次の場合における理由等を明らかにすれば、戸籍謄本等の交付を請求することができます。
- 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合には、権利又は義務の発生原因及び内容並びに権利行使又は義務履行のために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
- 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合には、戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
- 上記場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合には、戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
広域交付制度のポイント
本人請求の場合のみ利用できることは上述しましたが、その他のポイントについて解説します。
戸籍謄本等を請求する場合は市民課窓口等に直接出向く必要があります。郵送や代理人による請求はできません。
次に、請求する方の顔写真付きの公的身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、旅券等)を窓口にて提示する必要があります。健康保険証等の顔写真のない身分証明書では制度利用をすることができません。
また、コンピュータ化された戸籍謄本等のみ交付請求することができます。除籍、改製原戸籍謄本についても、戸籍事務をコンピュータシステムにより取り扱っていますので請求可能です。ただし、一部市町村におけるコンピュータ化されていないものや法務省の戸籍情報連携システムにアクセスできないものについては広域交付制度を利用した請求はできません。
最後に
司法書士などの士業が職務上請求する場合の取扱いは従来通りとなりますので、広域交付制度のメリットを感じることはありません。ただ、同制度の利用によって職務上請求より早く戸籍収集することが可能になったと言えると思います。
士業に相続手続を依頼される場合には、予め戸籍謄本等を取得していただくことで手続にスムーズに着手することができますし、報酬等の手続費用を抑えることも可能です。それだけ、戸籍集めには時間を要するということなのです。