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募集株式の発行(増資)の登記とは
登記申請書の登記の事由に募集株式の発行と記載しますが、登記簿に「募集株式の発行」と登記されるわけではありません。
では、募集株式の発行の登記とは何なのかというと、募集株式の発行の結果、発行済株式の総数と資本金の額が増加したことによる「発行済株式の総数並びに種類及び数」と「資本金の額」を変更する登記であると言えます。
したがって、それらの変更登記がされているときは、登記記録だけで募集株式の発行がされたのだろうと見当をつけることはできますが、そうではない可能性もあるのです。
登記すべき事項
「発行済株式の総数並びに種類及び数」
「発行済株式の総数」○○○株
「原因年月日」令和○年○月○日変更
「資本金の額」金○○○万円
「原因年月日」令和○年○月○日変更
募集株式の発行は払込みによって効力が生じますが、効力発生日を変更の日として登記するわけではありません。変更の年月日は、払込期日又は払込期間の末日となります。
登録免許税
資本金の額の増加分に1000分の7を乗じた額です。ただし、この額が3万円に満たない場合は、3万円になります。例えば、増加額1,000万円の場合は金7万円、300万円の場合は金3万円となります。
添付書面
全てのパターンを解説することはせずに、ここでは株式の譲渡制限を設けた取締役会を置かない非公開会社が第三者割当をし、募集事項の決定を取締役に委任していない、かつ、割当ての決定について定款に別段の定めがない場合について触れておきます。
- 株主総会議事録
募集事項を決定する株主総会議事録を添付します。通常は、募集事項の決定と同時に割当ての決定をした旨の記載がある議事録を作成します。
募集事項と割当ての決定機関が同じであれば、募集株式の引受けの申込みがあることを条件として募集事項の決定と同時に割当ての決定を行うことも可能だからです。 - 募集株式の引受けの申込みを証する書面
通常は、募集株式の引受人1名につき株式申込証を1通添付します。銀行又は信託会社等の株式申込取扱証明書を用いることもできます。
引受けの申込みの手続ではなく、募集株式の総数を引き受ける契約を締結した場合には、その契約を証する書面を添付します。なお、総数引受契約の承認が必要となりますので、その旨の記載がある株主総会議事録を添付する必要があります。 - 払込みがあったことを証する書面
具体的な書面として、払込取扱機関の作成した払込金受入証明書又は代表取締役が作成した払込みを受けたことを証明する旨を記載した書面に預金通帳の写しや取引明細書を合わせてとじたもの等が該当します。
実務上、通帳のコピーと代表取締役の証明書を合綴したものを添付することが多いです。 - 資本金の額の計上に関する証明書
増加する資本金の額は、会社法及び会社計算規則の規定に従って計上しなければなりませんので、それを証するために添付します。また、自己株式の処分を行った場合には、処分した自己株式数等を記載しなければならず、株式会社の代表者が証明書を作成します。