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相続登記義務化スタート
以前の記事「相続登記が義務化されます!罰則規定もあります。」で、相続登記の義務化や相続人申告登記について説明しています。先ずは、その記事をご参照いただけますと幸いです。そのうえで今回は、所有権登記名義人が死亡し、その子が相続人申告登記を自分でする方法について解説したいと思います。
相続人申告登記の注意点
権利関係を公示するものではない
相続人申告登記は、所有権登記名義人の相続人からの申出に基づき、登記官が職権で、申出があった相続人の住所・氏名、相続開始年月日等を付記登記により行うものです。
したがって、所有権登記名義人は引き続き被相続人として扱われますので、不動産を売却するためには相続登記を申請する必要があります。
遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできない
以前の記事でも触れましたが、遺産分割により不動産の所有権を取得したとき(法定相続分による相続登記がされた後に遺産分割により所有権を取得したときを除きます。)は、遺産分割の日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。この場合に相続人申告登記をしても義務を履行したことにはなりません。
相続人申出書の記載例
申出手続は書面による他、「かんたん登記申請」の利用によってWebブラウザ上で手続することも可能です。その場合、他の手続と異なり電子署名は不要です。相続人申出書の記載例は法務省ホームページに掲載されていますが、そこに記載されている注意点のうち分かりにくいものをピックアップして解説します。
・申出人
住民票上の申出人の氏名のふりがな及び生年月日を記載した場合は、添付情報として住所証明情報(住民票の写し)の提出を省略することができます。ただし、住民票コードの提供による添付省略は認められません。
・申出人が登記名義人の相続人であることを証する情報
1通の戸籍証明書に被相続人の死亡した日が記載され、かつ、申出人が被相続人の子として記載されている場合(申出人につきその戸籍から除籍された旨の記載があるものを除く。)には、その証明書の添付で足ります。子が未婚、離婚により復籍した等の場合が該当します。
婚姻、養子縁組により除籍の記載があるときは、被相続人の死亡した日以後に発行された申出人についての戸籍の証明書が必要になります。被相続人の死亡日以後に戸籍の改製があったときは、死亡事項の記載がある改製原戸籍謄本を取得します。
相続登記申請に必要な戸籍謄本等と異なる点は、相続人全員を特定する必要がなく相続人であることを証明することで足りるということです。
第一順位である子及び常に相続人となる配偶者については、添付する戸籍謄本等は少なくてすみますが、直系尊属、兄弟姉妹が申出人となるときは、先順位の相続人がいないことを証明する必要がありますので、その分通数が多くなります。
戸籍謄本等は原本を返してもらうこと(原本還付)ができますが、その場合にはコピーを添付しなければなりません。通数が多くなりますとコピーを添付することも煩雑となりますので、相続関係説明図を提出することによって、当該相続関係説明図を戸籍謄本等のコピーとして取り扱うこととなります。
・被相続人と登記名義人の同一性を証する情報
被相続人(死亡した方)の最後の氏名及び住所が登記記録上の氏名及び住所と異なる場合や被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、被相続人が登記名義人(登記記録上の所有者)であることが分かる被相続人の本籍の記載のある住民票の除票又は戸籍の表示の記載のある戸籍の附票の写し等が必要となります。
保存期間の経過により前記公的書面等の取得ができないときは、登記済権利証、「所有権の登記名義人と戸籍謄本等に記載された被相続人とは同一である」旨の印鑑証明書付きの申出人の上申書等を添付します。
・不動産の表示
不動産所在事項の表示に関する登記の登記事項(土地の地目及び地積並びに建物の種類、構造、床面積等)は提供することを要しません。土地の所在・地番、建物の所在・家屋番号の記載で足ります。不動産番号を記載したときは、それらの記載も省略することができます。
※登記記録例