Archive for the ‘終活全般’ Category
身寄りのない高齢者の終活支援事業について
あんしんみたか支援事業
あんしんみたか支援事業とは、一人暮らしで身寄りのない高齢者が病気で入院する時や福祉施設に入所する時に、必要な契約手続きや費用の支払いなどを三鷹市社会福祉協議会(以下、「みたか社協」と言います。)が保証人に準じて行う事業です。また、お亡くなりになった時には、みたか社協で葬儀・埋葬等の手続きを行います。
保証人、身元引受人
病院、高齢者施設等に入院、入所する際には保証人、身元引受人(以下、「保証人等」と言います。)が必要となることが一般的です。保証人等の役割として、入院費、施設利用料の支払等の経済的な保証をすることが挙げられます。本人に十分な資産や収入があったとしも、病状悪化や認知症等によって支払ができなくなることが考えられますので、施設側はそれを担保しておきたいという事情があるのです。
その他にも、容体急変、死亡時の緊急連絡先、延命治療をするか否かといった治療方針に関することの決定、死亡時の身柄引き取り等の役割があります。
身寄りのない方の場合、保証人等を用意することができません。一般社団法人等の民間団体に保証人等を依頼することもできますが、最低でも数十万円といった多額の費用がかかります。
あんしんみたか支援事業においては、みたか社協が契約当事者として保証人等の地位に就くわけではないことに注意する必要があります。「保証人に準じて」という文言はそのことを意味しています。また、火葬(直葬)までを行い、納骨、改葬、永代供養等に関わることはありません。
支援事業の対象者
以下の全てを満たす必要があります。
- 三鷹市に住所を有し、かつ居住している方
- 契約時の年齢が満65歳以上の方
- 支援可能な親族がいない方
- 事業の契約内容を理解できる判断能力を有している方
- 契約時に預託金110万円を納付できる方
公正証書遺言作成
不動産を含む全財産を現金化し、被相続人(利用者)の債務を弁済して残った金額を、相続人が相続するか、特定の団体等に寄付する内容の遺言(清算型遺言)を公正証書で作成することが求められています。推定相続人がいない場合には、包括遺贈をしなければなりませんが、換価が難しいものが相続財産に含まれているときに問題が生じます。
換価困難な財産
- 古家
家の解体費用が底地の売却代金を上回る場合に換価不可となりますが、三鷹市内の不動産であればほぼその心配はないと思われます。地方の不動産で該当する際には、生前に解体、換価処分をしておくべきでしょう。 - 農地、山林、原野等
農地の換価処分に農地法の許可が必要な場合がありますので、その場合にはやはり生前に処分しておかなければなりません。また、原野商法等によって購入した地目が原野・山林となっているただでも売れない土地(先祖から相続していることが多いです。)も同様です。別荘地、バブル期に建設されたリゾートマンション等も該当することがあります。 - 非上場株式
上場株式と異なり、多くの場合譲渡制限が付された株式となります。要するに、会社が認めた相手にしか売却することができないのです。非上場株式については持株会に売却することができる場合がありますので、発行会社に問い合わせてみましょう。持株会は上場企業だけでなく、中小企業など未上場企業でも導入されているケースがあるからです。
持株会とは、 従業員から会員を募り、会員の毎月の給与や賞与などからの拠出金を原資として自社株を共同購入し、会員の拠出金額に応じて持分(配当金)を配分する制度です。
利用上の注意点
支援可能な親族がいない方の中には、推定相続人がいる場合といない場合があります。私たち士業が遺言書を作成する場合には最も気になる点となります。
あんしんみたか支援事業を利用するには、みたか社協との契約が必要です。契約に至るまでには、利用者の資産、収支状況、医療についての意向、死後事務の意向等非常に多くの状況、事情を把握しなければなりません。契約の可否は弁護士・司法書士・社会福祉士・行政・地域包括支援センター等で構成する「あんしんみたか支援事業審査会」に諮問し、みたか社協会長が決定することになっています。
みたか社協に問い合わせたところ、2024年6月現在の契約数はゼロとのことです。まだ始まったばかりの制度と言えますし、終活については任意後見契約等の他の制度、サービスの利用が本人の利益となることも十分に考えられます。終活について、ご心配な点があれば遠慮なく当事務所にお問い合わせください。
合葬墓が20年で4倍増の報道について
1都3県の公営墓地で増えている
「【2024年2月20日】
【NHK千葉放送局】により
【複数の遺骨納める「合葬墓」20年で4倍増 1都3県公営墓地】
というニュースが掲載されました。」
少子、高齢、核家族化
先祖代々の墓地を承継していくことが近年難しくなっています。少子、高齢化や核家族化の影響によって、墓地を承継するものがいない、子供へ負担をかけたくないために承継を希望しない、将来の不安があるといったことが原因となっているようです。
ニュースの概要
首都圏の1都3県の自治体が設置する公営墓地で、複数の遺骨を合同で納める合葬墓と呼ばれる墓の数がこの20年で4倍に増えたことが、わかりました。
墓や終活に詳しいシニア生活文化研究所の小谷みどり代表理事は「核家族化が進み、離れて住む子や孫に墓を守ってほしいと言いづらいと考える人たちが、費用が安く管理が簡単な合葬墓を選んでいるのではないか」と話しています。
今、各地の自治体では、合葬墓への申し込みが相次いでいます。千葉市は、2013年に初めて市営墓地に合葬墓を設置し、去年、樹木葬タイプのものを新たに整備しました。この新たな合葬墓に市が今年度、希望者を募ったところ、当初の募集数700件に対して5倍以上の3600件を超える申し込みがありました。生前に夫婦など2人分をまとめて申し込む枠が特に人気が高く、60人分の募集に対して2300人以上の応募があり、倍率は38倍余りでした。
この市営墓地で個別の墓石を建てる場合、永代使用料だけでも最低62万円余りかかり、管理料も毎年5020円が必要ですが、樹木葬タイプの合葬墓の場合は1体当たり4万円から6万円で、年間管理料などはかからないということです。
合葬墓とは
骨壺から焼骨を取り出して他の方のご遺骨と共にする埋葬方法のことを指します。合葬墓では遺骨を骨壺から出して一つにまとめ、そのまま埋葬されるため埋葬した後には遺骨を取り出して返還することはできません。
千葉市平和公園合葬式樹木葬墓地
千葉市は、先祖代々の墓地を承継していくことが困難である方の選択肢のひとつとして、平和公園に合葬式の樹木葬墓地を新たに整備しました。樹木を墓標の代わりとして、その下の共同カロートに多くの焼骨を埋蔵する合葬式の墓地です。樹木のそばには献花・線香台が設置されています。
埋蔵方法は、施設職員が焼骨をお預かりして自然素材の納骨袋に移し替えたうえで、後日、共同カロートに埋蔵します。墓地使用料は1体6万円で、粉状焼骨の場合は1体4万円です。粉状焼骨への加工は施設職員が行い、墓地管理料は不要となります。
民間墓地の樹木葬との違い
骨壺は関東と関西で大きさが異なっています。関東においては、7~8寸と大きめの骨壷を使用します。拾骨の際には、基本的には焼骨(火葬したお骨)をすべて骨壷に入れます。骨壺をそのまま納骨したのではスペースを取ってしまうために、樹木葬では多くの場合骨壺から焼骨を別の骨壺、骨袋等に移し替えます。その際に省スペース化のために粉骨処理を行うこともあります。
民間墓地においては、樹木葬のご契約者やご家族ごとの埋葬スペースが確保されたプランを用意している所が多いです。遺骨を納めた骨壺や骨袋などを、個別の区画に埋葬し、7回忌、13回忌、33回忌など、霊園や寺院が定める期間を超えた後は他の遺骨と合葬されます。
さらに、他人の骨壷と一緒に埋葬される方法である集合埋葬型と呼ばれるものも存在します。費用はまちまちですが、生前に夫婦二人が契約し、後に亡くなった方の7回忌に合祀するプランでは、70~80万円くらいかかるようです。実に公営墓地の10倍以上の費用がかかるのです。
ただ、遺骨が他人のものと混ざらないために後から取り出して改葬することができる場合があるため、選択肢のひとつとして捉えれば良いのではないでしょうか。
リバースモーゲージとは?注意点も解説!
どんな制度か
リバースモーゲージは、自宅に住み続けながら、自宅を担保に高齢者の老後生活資金等の融資を受けることができる制度です。自宅に住みながら、その自宅を担保にお金を借入れるという意味では住宅ローンと同じですが、住宅ローンの場合は最初にまとまった融資を受け、その元金と利息を毎月返済していきます。
それに対し、リバースモーゲージは自宅の評価額から算出された融資枠内で毎月もしくは一括で融資を受け、契約期間中は利息のみを返済し、契約終了後または契約者(債務者)の死亡後に元金をまとめて返済します。利息を返済せずに元金に上乗せしていくタイプの商品もあります。
元(利)金の返済方法としては「担保の自宅を売却する」「自己資金で返済する」「代物弁済をする」などがあります。この制度を逆(リバース)抵当融資、逆住宅ローンなどと呼んでいます。ちなみに、「モーゲージ(mortgage)」は「抵当・住宅ローン」の意味です。
これらの制度は各都道府県の社会福祉協議会等の公的機関、民間の金融機関が取り扱っていますが、それぞれの貸付条件は異なりますので、以下具体的に説明したいと思います。
社会福祉協議会の不動産担保型生活資金
「不動産担保型生活資金」は、持ち家と土地があっても現金収入が少ない高齢者が、将来にわたって住み続けることを前提に、その居住用不動産を担保に生活費を借り入れることにより、世帯の自立支援を図っていく貸付制度です。
高齢者の居住用不動産を担保に月額で貸付を受け、借り受けた高齢者の死亡時または融資期間終了時にその不動産を処分し返済することから「リバースモーゲージ」形式とも言われています。
この不動産担保型生活資金(リバースモーゲージ)制度の実施主体は都道府県社会福祉協議会です。そして、事業の実務は地域の市町村社会福祉協議会が行っています。
1.貸付対象世帯
・借入申込者が単独で所有している不動産に居住している世帯
※同居の配偶者が連帯借受人となる場合は、配偶者と共有している不動産も対象となります。
・世帯の構成員全員が原則として65歳以上であり、配偶者と親(配偶者の親を含む)以外の同居人がいない世帯
・世帯の収入が市町村民税非課税又は均等割課税程度の低所得世帯(生活保護受給世帯は対象外)
2.対象不動産
・マンションなどの集合住宅、更地、同じ敷地内に子供世帯の家が建っている場合や、2世帯住宅の場合は対象となりません。
・当該不動産に賃借権等の利用権や抵当権等の担保権の設定がされていないこと。
・土地の評価額が原則として1,000 万円以上であること(ただし、借入申込世帯の状況をふまえ、貸付適当と判断される場合は、800 万円以上でも可能)
※当該不動産が都市計画法上の「市街化調整区域」内にある場合は原則対象外
3.貸付限度額
・土地の評価額の70%程度(不動産鑑定士による評価に基づく。)
・月30万円以内
4.連帯保証人
推定相続人の中から連帯保証人1名を選任する必要があります。推定相続人がいない場合には選任不要です。
東京スター銀行の「充実人生」
上述した不動産担保型生活資金と異なり、借入金の使いみちは生活資金のみに制限されません。住宅購入資金、リフォーム資金、住宅ローン借換資金として使うことも可能ですが、事業・投資目的は除かれます。また、マンションでも利用可能です。
リバースモーゲージは自宅を担保に銀行から資金を借り入れる仕組みですが、最終的には自宅売却代金の一部で返済できると想定される金額を上限にするなど、契約者が安心して利用できる仕組みとなっているようです。
数ある民間の金融機関の中で、「充実人生」を紹介したのには理由があります。こちらの商品は推定相続人のいない方でも利用可能となっているからです。相続人不存在の場合には、返済手続が非常に煩雑となりますが、そのことが融資上限額に影響を及ぼすことはないそうです。
ただ、収入・契約時年齢により、上限額を審査して利払いあり型と利払いなし型のどちらになるかが決定されます。例えば、不動産評価額は高いけれども年金収入が低いときには上限額は抑えられてしまい、融資上限額が評価額の50%程度になることもあるようなので注意が必要です。