Archive for the ‘不動産登記’ Category

農地の売買と相続登記の要否

2025-08-25

農地の所有権移転の効力発生日

農地の所有権を移転するには、売買契約等の締結及び農地法所定の許可到達の両方が必要です。通常、両者の日付は一致しないことが多いので、契約締結日と許可到達日のうち後の日付が所有権移転の効力発生日となります。

以上のことから、契約締結後、許可が到達する前に当事者が死亡した場合に、相続登記の要否が問題となります。

許可到達前の売主死亡

売主について相続による所有権移転登記を申請した後、買主への売買による所有権移転登記を申請します。

相続登記を省略することはできません。許可到達前に売主が死亡していますので、農地の所有権は一旦売主の相続人に移転します。不動産登記制度における物権変動の過程を忠実に公示すべきであるという原則の存在がその理由です。

令和7年度司法書士試験

今年の試験の不動産登記記述式問題で上記の論点が出題されました。AB共有の甲土地に農地法第3条の許可を停止条件とする「条件付共有者全員持分全部移転仮登記」がされ、その仮登記の本登記を申請するにあたり、農地法所定の許可到達前にBが死亡した際の相続登記の要否を問う問題です。

法務省は模範解答例を公表しませんので、予備校のものを参照すると相続登記は省略しているようです。その根拠として、先例の存在を掲げています。Bの相続登記を申請しても、仮登記の本登記申請によってその登記が職権抹消されてしまうから省略可能という内容のものです。

あくまでも、申請人の負担を考慮して便宜的に省略を認めている趣旨だと考えます。登録免許税の負担もありますし、もっとも、農地なので租税特別措置法によって非課税になるとは思いますが、申請件数が増えるのは負担となります。

試験問題では「答案作成に当たっての注意事項」により、相続登記不要というのが出題者の意図ではないかと捉えられているようです。

では、実務上相続登記を申請すると却下されてしまうのかというと、そんなことはありません。寧ろ、物権変動の過程を忠実に公示すべきであるという要請に応えるべく相続登記は省略できないという見解を有する人達もいらっしゃるようです。

許可到達後の売主死亡

売主の相続人全員と買主の共同申請により所有権移転登記を申請します。

この場合、許可到達によって農地の所有権は買主に移転しますので、売主の相続人に所有権が帰属する余地はありません。

許可到達前の買主死亡

農地法第3条の許可申請は売主及び買主が共同で行います。実務上は、行政書士が双方の代理人として申請することが圧倒的に多いです。言うまでもなく、許可の時点で買主が亡くなっていますので、死者に対してその効力が生じることはありません。

したがって、売買による所有権移転登記の申請はできないことになります。

許可到達後の買主死亡

売主と買主の相続人の共同申請により、買主を登記名義人とする所有権移転登記を申請します。

買主は生前に許可を得ていますので、その時点で農地の所有権を取得しているからです。

相続登記をすると不動産業者からDMが大量に届く理由

2025-06-23

はじめに

相続登記等が完了すると、不動産業者等から相続不動産の所有者に対して、ダイレクトメールや電話、訪問等の手段で、売却等の勧誘がされている実態があることをご存知でしょうか。

登記申請を司法書士に依頼した場合には、司法書士が情報を漏洩しているのではないかと疑念を抱く方もいらっしゃるようです。決してそのようなことはないのですが、大量のダイレクトメールを不動産業者から送りつけられるのは非常に迷惑だと思います。

そこで、今回は何故そのようなことになるのかについて解説したいと思います。

不動産登記受付帳

不動産登記受付帳とは、登記が申請された際に受付年月日、受付番号、登記原因(相続、処分の制限に関する登記等)及び不動産の所在等が記録される帳簿のことです。

この受付帳は、行政機関情報公開法による開示の対象となっていて、その受付帳の写しを誰でも取得することが可能となっています。ただし、登記名義人の住所氏名は記載されていませんので、登記情報提供サービスを利用することによってそれらが判明します。

不動産の所在は一つしか記録されませんが、抹消済みを含めた共同担保目録を取得することで受付帳に載っていない不動産が判明することもあります。

名簿業者

受付帳の開示請求によって、地域別の最近相続登記が申請された不動産、差押え等の処分の制限に関する登記が申請された不動産等をリスト化してそれらを販売している名簿業者が存在しているようです。

相続登記であれば売却、リースバック等につき、処分の制限に関する登記であれば任意売却等の勧誘を目的とする営業活動が効率的に行えるというわけです。

抵当権設定登記であれば、最近は利上げ傾向の状態にありますので数は少ないと思いますが、金融機関にとっては抵当権設定者が借り換えの営業対象になり得るのです。

個人情報保護との関係

不動産登記簿は、DV被害者住所等の一部の例外を除いて公開されています。住所氏名だけでなく、離婚(財産分与)、破産、住宅ローンの有無まで知られてしまうのが現状です。

一方で、不動産登記制度には権利関係を公示する重要な役割を果たしている側面もありますので、個人情報保護との関係で両者の調和にも配慮していく必要がありそうです。

司法書士の見解

司法書士に対する直近のアンケート結果によると、不動産登記受付帳の情報公開については何らかの制限が必要であり、プライバシーに配慮する必要があるという意見が多く、情報公開はやむを得ない、プライバシーの名のもとに騒ぎ過ぎるという意見は少数でした。

所有権移転登記申請に氏名ふりがな、メールアドレスが必要になります(令和7年4月21日以降)

2025-02-17

住所、氏名変更登記の義務化

令和8年4月1日から、不動産の登記名義人は氏名・住所の変更日から2年以内に変更登記をすることが義務付けられます。法人が不動産の登記名義人の場合は、商号変更、本店移転によって商号・本店に変更があったときは、同様にその変更登記をしなければなりません。

同日より前に住所氏名等に変更があった場合でも適用されます。正当な理由なくこの期限内に、不動産に係る住所氏名等の変更登記をしなかった場合、5万円以下の過料の対象となります。

職権による住所等変更登記

同日から、不動産の登記名義人の義務負担軽減のため、所有者が変更登記の申請をしなくても、登記官が住基ネット情報を検索し、これに基づいて職権で登記を行う仕組みが開始します。

具体的には、登記官が検索用情報(住所、氏名、生年月日等)を用いて住基ネット情報に定期的にアクセスをし、氏名・住所の変更を取得した場合に職権による変更登記をするというものです。これによって、登記名義人の住所等変更登記の義務は履行されたことになります。

登記名義人の意思確認

変更後の住所等を登記官の職権で登記されてしまうと困る人達も存在します。例えば、DV、ストーカー等の被害者です。不動産の登記事項証明書は誰でも取得することができますので、そのような人達に配慮する必要があるのです。また、住基ネット情報に許可なくアクセスされることを快く思わない方もいらっしゃると思います。

そのため、予め登記名義人になられる方または、既存の登記名義人にメールアドレスを提供していただき、職権で変更登記をすることについて当該メールアドレス宛に意思確認の連絡をします。所有権の登記名義人の了解を得た上で、登記官が職権で変更登記をすることとしています。

なお、登記名義人となる者のメールアドレスがない場合には、その旨を申し出ることとし、その場合、登記官が職権で住所等変更登記を行うことの可否を確認する際には、登記名義人の住所に書面を送付することを想定しています。

検索用情報の申出

令和7年4月21日から、所有権の保存・移転等の登記の申請の際には、所有者の検索用情報を併せて申し出る(申請書に記載する)ことが必要になります。同日時点で既に所有権の登記名義人である者は、別途、検索用情報の申出をすることができます。

なお、所有権の登記名義人となる者が法人、海外居住者、登記の申請人でない場合には、その者の検索用情報を申し出る必要はありません。

検索用情報とは

申出が必要となる検索用情報の具体的な内容は、次のとおりです。
(1) 氏名
(2) 氏名の振り仮名(日本の国籍を有しない者にあっては、氏名の表音をローマ字で表示したもの)
(3) 住所
(4) 生年月日
(5) メールアドレス

上記のうち、新たに必要なものは(2)、(4)及び(5)ですが、(4)については住民票の写し等の住所証明情報で確認することができますので、新たに登記名義人になられる方にご提供いただくのは氏名ふりがなとメールアドレスということになります。メールアドレスを手書きの書面でいただく場合には、文字の誤認・混同を防止するため、メールアドレスの振り仮名の記載をお願いいたします。

免責的債務引受で生じる利益相反取引について

2025-01-06

事例

株式会社Xが所有する甲土地に抵当権者をY銀行、債務者をAとする抵当権が設定されたところ、Aが死亡し、B・Cが相続した。その後、Y銀行、B及びC間でBが免責的に債務を引き受ける契約が締結された。なお、Bは株式会社Xの代表取締役である。

抵当権変更登記

実際には、B所有の複数の不動産を共同担保とする共同抵当権だったわけですが、分かりやすくするために事例は簡略化しています。とにかく、上記事例による抵当権変更登記をすることになったのです。

民法第472条の4第1項、第2項によれば、Yは、あらかじめ又は同時にBに対する意思表示によってCが免れる債務の担保として設定された担保権をBが負担する債務に移すことができます。ただし、Xの承諾を得なければなりません。

間接取引

Xが承諾するということは、取締役Bの債務を物上保証するという間接取引に該当するのではないかと考えました。そうであるならば、株主総会議事録(Xは取締役会を置いていません。)を添付しなければなりません。

Yからは議事録の提出を求められましたので、私と同様の認識だったと思います。ところで、AはXの取締役ではないのにもかかわらず、抵当権設定時にもYはXに対し議事録の提出を求めたようです。

株主総会議事録の作成

間接取引を承認する株主総会議事録を作成することになりましたので、議案の記載例を以下に掲げます。補正なく登記が完了することを保証するものではありませんので、その点はご了承ください。

なお、株主総会議事録には議事録作成者の押印義務はありませんが、添付書類としては代表取締役が会社実印を押すことが求められます。そのうえで会社法人等番号を提供し、印鑑証明書を添付します。なお、印鑑証明書は会社法人等番号を提供することで添付を省略することができます。

債務引受実行日の登記申請が求められましたので、印鑑証明書の用意をお願いして、登記完了後に返却することとしました。商業登記なら最悪取下げてしまえば済むことですが、そうはいかなかったので念のため印影の確認をしたかったのがその理由です。

※記載例
第○号議案 取締役債務の物上保証の件
議長は、取締役Bより、Bが債権者Y銀行との間で、令和○年○月○日付免責的債務引受契約を締結するにあたり、当会社が民法第472条の4第1項ただし書きの承諾(以下、「本件承諾」という。)をしたい旨の提案がなされたことを述べた。議長から、本件承諾により下記の当会社が所有する不動産(以下、「本件土地」という。)をもって、取締役Bが債務者Cより引き受けた債務を物上保証することになる旨並びにCはBの長男で支払能力がないこと及び本件土地に設定されている抵当権(令和○年○月○日受付第○○号)の共同担保となっている本件土地以外の不動産はBが所有していること等の説明がなされた。審議の後、本件承諾の賛否を諮ったところ、満場異議なく可決承認された。

甲土地の表示

最後に

今回の事例は非常にレアなケースでしたので、初めて扱う案件となりました。補正の電話がかかってくるのではないかと内心ドキドキしていたのですが、あっさりと登記は完了しましたので本当によかったです。

競業・利益相反取引の制限(会社法第356条)とは?

2024-12-16

不動産登記法の論点

取締役と株式会社間における不動産の売買等、不動産登記において論点となる利益相反取引ですが、今回は会社法に規定されている利益相反取引の制限について解説する内容となります。

利益相反取引に該当する場合には、株主総会または取締役会の承認を受けていることを証するために株主総会議事録または取締役会議事録を添付しなければなりません。議事録を作成するにあたり、会社法の規定をよく理解しておく必要があります。

条文

会社法第356条第1項

取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

取締役会設置会社においては、「株主総会」の部分が「取締役会」となります。取締役会で承認を受ける取締役は、特別の利害関係を有する取締役となりますので、取締役会の議決に加わることができません。

また、競業・利益相反取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならないとされています。

直接取引

第1号に規定されているのは競業取引ですが、割愛させていただきます。第2号に規定されている取引は直接取引と呼ばれています。例えば、取締役が所有する不動産を株式会社に売却することは直接取引に該当します。取締役が自分自身で行う取引のほか、第三者のために行うものが含まれます。

第三者のためとは第三者を代表してという意味であり、A社(代表取締役甲)とB社(代表取締役甲)間の取引で、甲が2つの会社を代表して取引をすれば、両社で利益相反取引に該当します。

A社の立場から見ると甲は第三者であるB社のためにA社と取引をしていることになり、同様に、B社の立場から見ると甲は第三者であるA社のためにB社と取引をしていることになるのです。このように、原則を押さえておけばもっと複雑な事案においても応用することができます。

間接取引

第3号に規定されている取引は間接取引と呼ばれています。典型的な例として、株式会社が取締役の債務を保証する行為が挙げられています。保証契約は債権者と保証人間の契約ですから、取締役は契約の当事者ではありませんので直接取引には該当しません。

このように、株式会社が取締役以外の第三者と取引をする場合であっても、利益相反取引は制限の対象となるのです。

一人会社における利益相反取引

実務上、よく問題となるのが一人会社における利益相反取引です。

判例によれば、競業・利益相反取引の制限は、株主の利益を保護するための規定だから、株式全部を所有している株主が取締役となっている場合等、実質的な個人経営である場合には、株式会社と取締役間の利害の対立はなく、利益相反取引についての承認は必要ないとされています。

だとすれば、株主総会議事録の添付は不要となるのでしょうか。会社の登記記録からは株主が誰かは判明しませんので、登記申請データを調査する登記官には一人会社かどうかは分かりません。

過去の記事でも述べましたが、このようなケースに遭遇したときには登記官の立場になって考えてみることが重要です。私なら株主総会議事録を添付しますが、ネット上で調べると利益相反取引の承認不要であることを証するために株主名簿を添付することもあるようです。ただし、後者は法定の添付情報ではないため問題が生じる可能性があるように感じます。

登記識別情報のシールが剥がれない!

2024-11-18

ここまで剥がれないとは!

登記識別情報のシールが剥がれないことはよく耳にします。今回は今までで一番大変な思いをしたので記事にしてみます。

登記識別情報は平成17年の不動産登記法の改正によって新たに登場しました。その後、シールが剝がれにくいといった事象が多発したため、その対応策として、平成21年に証明書用紙(地紋紙)のデザインを変更(透かし部分を小さくしたようです。)しました。

しかし、シールで目隠しをする方法が改められることはなく、問題の解決には至りませんでした。そこで、平成27年頃から折込式といわれる現在の様式に変更されることになり、シールを剥がすのに苦戦するといったことから解放されたのです。

登記識別情報の再作成

シールが剥がれずに登記識別情報を読み取ることができなければ、登記申請はできません。この場合の対応策として、法務省は剥がれない登記識別情報通知書を添付して申出をし、登記識別情報を再作成する手続を設けています。

私が今回苦戦したのは抵当権抹消の登記識別情報です。もし、読み取り不可ということになれば、抵当権者である金融機関に再作成手続をしてもらうか、委任状を交付してもらうかのどちらかです。司法書士が金融機関に対して、シールが剥がれないからといってそれらを依頼するなんてことはできないですよね。

私はそう思いましたし、多くの司法書士が同様ではないでしょうか。本人申請なら、本人からの要請に応じることがあるかもしれませんが、今までそのような話を聞いたことがありません。

書面申請へ

オンライン申請では登記識別情報を暗号化しなければなりませんので、読み取り不可の場合使えません。書面申請に切り替えて登記識別情報通知書の原本を添付する方法がありますが、法務局でもやることは一緒です。剥がして読み取ることができなければ、再作成せざるを得ないでしょう。

対応策

今回は抵当権抹消だったので時間をかけることができましたが、決済などその日に登記申請をしなければならないものだと相当マズイことになりそうです。毎回、書面申請の準備をするわけにもいかないでしょうし、決済事務所の方々はどうされているのでしょう。

ネットで検索すると、アイロンを使うことで上手く剥がれることがあるようですが、さすがに事務所にアイロンを常備しておくことはできないです。

シールは2層構造になっています。登記識別情報が印字されている用紙にシールを貼りますが、用紙の上に透明のシール、その上に目隠しをする紙の部分となっています。剥がれないのは透明のシールと紙の間の接着剤が透明のシールにこびりついてしまうことが原因かと思います。

硬貨等で力任せに擦ってしまうと、印字されている用紙部分を損傷してしまうおそれがあり、そうなると再作成です。ちなみに、今回は爪を使って少しずつ剥がしていきました。かかった時間は30分。3日間爪の痛みが残りました。

最後に、悪戦苦闘した登記識別情報通知書の写真を載せて終わりたいと思います。登記は完了していますので隠す必要はないとは思うのですが、登記識別情報をネット上に晒すのにはさすがに抵抗を感じますのでそうさせていただきました。以後、貧乏くじを引かないように願うばかりです。

ウェブ会議による登記簿の附属書類の閲覧について

2024-07-16

はじめに

令和6年6月24日から、ウェブ会議サービスを利用した登記簿の附属書類の閲覧が可能となりました。

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和5年6月9日閣議決定)等の政府方針において、アナログ規制(目視、実地監査、定期検査・点検、常駐・専任、書面掲示、対面講習、往訪閲覧・縦覧、FD等記録媒体等の各規制をいう。)として掲げられている条項について、令和6年6月までを目途にこれらの規制の見直しを行うこととされましたが、今般、改正法が施行されたことになります。

なお、ウェブ会議による閲覧の不動産登記以外の事務の取扱いについては、商業登記規則、夫婦財産契約登記規則等において規定または準用する場合及び他の法令において適用する場合も同様となります。改正前においては登記簿の附属書類の閲覧をするためには、不動産所在地を管轄する法務局に赴き、登記官の面前で行う必要がありましたので、それがデジタル化されたのです。

ちなみに、登記簿の附属書類の閲覧基準については、以前の記事「登記簿の附属書類の閲覧基準の改正について(令和5年4月1日施行)」で解説しています。

ウェブ会議による閲覧の申出

ウェブ会議による閲覧を希望する場合には、登記簿の附属書類の閲覧請求書と併せて、「ウェブ会議による閲覧を希望する旨の申出書(不動産用)」を提出しなければなりません。

また、ウェブ会議による閲覧を実施するに当たり、閲覧者が補助者を用いることを希望する場合には、補助者の本人確認のため、申出書と併せて、補助者の本人確認書類の写しを提出します。

申出書の審査

登記官は、閲覧の請求や申出の内容から、ウェブ会議による閲覧を実施することについて支障がないと判断したときは、「申出を相当と認める」こととして、ウェブ会議による閲覧を実施します。

ただし、閲覧の対象となる登記簿の附属書類等が100枚を超えるなど閲覧に長時間を要すると見込まれる場合であって、閲覧を希望する時間帯に職員が対応することができないとき、登記所の繁忙状況や対応可能な職員等の状況を総合的に勘案して、ウェブ会議による閲覧を実施することが困難であると所属長が判断したとき等の場合には、ウェブ会議による閲覧を実施しないとして、従来通り登記官の面前で閲覧を実施することになります。

閲覧者の本人確認

登記官等は、ウェブ会議による閲覧を実施するに当たって、閲覧者及びその補助者の本人確認を行います。

ウェブ会議による閲覧の開始前に閲覧者及びその補助者に住所及び氏名等を申述させるとともに、閲覧者及び補助者の本人確認書類の原本を画面上に提示させ、予め提出があった本人確認書類の写し及び請求書等の内容と同一であることを確認する方法によります。

同意事項

「ウェブ会議による閲覧を希望する旨の申出書(不動産用)」の裏面には同意事項が記載されており、全て同意することができない場合は、ウェブ会議による閲覧は認められません。

同意事項として、ウェブ会議による閲覧は、閲覧申出書に記載された閲覧者及びその補助者のみに認められており、それ以外の第三者は認められないこと、ウェブ会議の録画等を希望する場合は、登記所職員の許可を得る必要があること及び録画等が認められる範囲は、登記簿の附属書類等に限られること等が掲げられています。

また、登記官等により、上述した本人確認と併せて同意事項を説明し、事前に同意を得ることによって同意事項の確認がなされます。

ウェブ会議による閲覧

ウェブ会議による閲覧は、登記官等が、登記簿の附属書類等のうち、請求書に記載した閲覧しようとする部分を、ウェブ会議用端末等の画面上に投影する方法又はPDF化して画面共有する方法のいずれかにより行います。

遺産分割前に法定相続分での相続登記を申請した場合の登記手続

2024-06-03

改正(令和5年4月1日施行)前の取扱い

法定相続分での相続登記後に遺産分割協議が成立した場合には、遺産分割を登記原因として、他の相続人の持分の移転の登記を申請する必要がありました。

例えば、甲土地の所有者であるAが死亡し、妻B・子Cが相続人であるとき、共同相続登記後にBC間の遺産分割協議によって、甲土地はCが単独で取得する合意がされたとしましょう。

この場合、登記権利者Cと登記義務者Bの共同申請により、「B持分全部移転」の登記を申請することになります。登録免許税の税率は、相続による所有権移転登記と同様0.4%です。

改正後の取扱い

法定相続分での相続登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記をいう。以下同じ。)がされている場合において、遺産分割協議による所有権の取得に関する登記をするときは、所有権の更正の登記によることができるものとした上で、登記権利者が単独で申請することができるものとされました。

上記設例では、Cが単独で所有権更正登記を申請することができますので、Bの登記識別情報、印鑑証明書の添付は不要となります。登録免許税は、不動産1個につき1,000円となります。

相続登記が義務化されることによる相続人等の負担軽減を図るため、登記手続を簡略化したものと言えます。また、以下に掲げる登記を申請する場合も同様となります。

①遺産の分割の審判又は調停による所有権の取得に関する登記
②他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記
③特定財産承継遺言(遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言)による所有権の取得に関する登記
④相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記

添付情報

上記設例の場合、登記原因証明情報として遺産分割協議書(当該遺産分割協議書に押印した申請人以外の相続人の印鑑に関する証明書を含む。)を添付しなければなりません。

登記手続上、Bのみが実印を押印することで足りますが、実務上、BC両名の実印を押印した遺産分割協議書とBCの印鑑証明書を添付します。

また、法定相続分での相続登記後に所有権全体またはB持分を目的として抵当権を設定した場合等、登記上の利害関係を有する第三者がいるときは、その者の承諾書を必ず添付します。住所移転があった場合、相続放棄によって更正前後に同一性がない場合等、別途登記を要することや、更正登記申請の可否に関わる問題が生じることがありますので注意が必要です。

登記申請書の記載例

上記設例における登記申請書の主要部分の記載例を掲げます。

登記申請書
登記の目的 ○番所有権更正
原因 令和○年○月○日遺産分割
更正後の事項 所有者 住所 C
権利者(申請人) 住所 C
義務者 住所 B
添付情報 登記原因証明情報 代理権限証明情報
登録免許税 金1,000円
不動産の表示 甲土地の表示

胎児の名義とする相続登記

2024-05-27

胎児の表示の変更

先例(令和5年3月28日法務省民二第538号)により、令和5年4月1日以後にされる登記の申請から、胎児を相続人とする相続による所有権の移転の登記の申請において、申請情報の内容とする申請人たる胎児の表示は 「何某(母の氏名)胎児」とすることになりました。

従前の取扱いでは、「亡甲某(被相続人)妻乙某胎児」と表示することとしていましたが、登記手続の見直しが行われたのです。

胎児の権利能力

人(自然人)は、出生と同時に権利能力を取得します。この原則を貫けば、胎児はまだ生まれていませんので、権利能力を有しているとは言えないことになります。ところで、胎児と生まれた子の間に相続することの可否について差異が生じるとなると両者に不公平が生じます。

そこで、民法は、「不法行為に基づく損害賠償請求権」、「相続」及び「遺贈」の3つの場合については、胎児は既に生まれたものとみなすという規定を設け、出生の前後によって不公平が生じることがないようになっています。

生まれたものとみなす

胎児は、相続については既に生まれたものとみなされますので、胎児を登記名義人とする相続の登記を申請することができます。判例は、胎児である間には権利能力はなく、生きて生まれた場合、遡って権利能力を取得する見解である停止条件説を採っています。この説では、父母は法定代理人として、出生前に胎児を代理することはできないことになります。

しかしながら、登記実務においては未成年者の法定代理の規定を準用して母が胎児の代理人として登記申請することが認められています。

相続登記申請

登記原因証明情報として、懐胎の事実を証する医師の診断書等を提供する必要はありません。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を添付することで足ります。

生きて生まれた場合

相続登記申請後に胎児が無事に生まれた場合には、登記名義人の住所、氏名の変更登記を申請します。その子の戸籍謄本、住民票の写しを登記原因証明情報として提供します。

死産であった場合

胎児が死産であったときは、民法第886条第2項によりはじめから相続人ではなかったことになりますので、錯誤を原因として所有権更正登記を申請します。

胎児のみを相続人として登記した場合にその者を被相続人の直系尊属とする更正登記は、登記の前後に同一性がないためにできません。その場合には、一旦相続登記を抹消し、改めて直系尊属、兄弟姉妹等の後順位相続人への所有権移転登記を申請することになります。

外国人である所有権登記名義人のローマ字氏名併記について

2024-05-20

令和6年4月1日施行

外国人(日本の国籍を有しない自然人をいう。 以下同じ。)を所有権の登記名義人とする登記及び外国人の氏名の変更又は更正登記を申請する際には、ローマ字氏名(氏名の表音をアルファベット表記したもの)を申請情報として提供しなければならないこととする改正がなされました。

申出をすべき場合

所有権の保存若しくは移転の登記、所有権の登記がない不動産について嘱託によりする所有権の処分の制限の登記、合体による登記等(不動産登記法(平成16年法律第123号)第49条第1項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る。)又は所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る。)及び所有権の登記名義人の氏名についての変更の登記又は更正の登記を申請する場合において、所有権の登記名義人となる者・所有権の登記名義人が外国人であるときは、当該登記の申請人は、登記官に対し、当該外国人のローマ字氏名を申請情報の内容として、当該ローマ字氏名を登記記録に記録するよう申し出るものとするとされました。

申出ができる場合

日本の国籍を有しない所有権の登記名義人は、登記官に対し、そのローマ字氏名を登記記録に記録するよう申し出ることができるとされました。つまり、登記申請を伴わない場合であってもローマ字氏名併記の申出は可能です。

ローマ字氏名証明情報

登記申請に伴うローマ字氏名併記の申出をする場合には、ローマ字氏名を証する情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければなりません。

  • 住民基本台帳に記録されている外国人の場合
    ローマ字氏名が記載されている住民票の写し。
  • 住民基本台帳に記録されていない外国人の場合
    パスポートを所持しているときは、ローマ字氏名が表記されたページが含まれているパスポートの写しであって、①登記申請の受付の日において有効なパスポートの写しであること、②ローマ字氏名並びに有効期間の記載及び写真の表示のあるページの写しが含まれていること及び③当該パスポートの写しに原本と相違がない旨の記載及び所有権の登記名義人となる者等の署名又は記名押印がされていることの3つの要件を満たすもの。

    パスポートを所持していないときは、所有権の登記名義人となる者等のローマ字氏名、当該ローマ字氏名が当該者のものであることに相違ない旨及びパスポートを所持していない旨が記載された当該者の作成に係る上申書であって、当該者の署名又は記名押印がされているもの。
  • 登記所に提出する住民票の写し以外の書面のうち、外国語で作成されたものについては、その訳文を添付しなければなりません。

登記記録例

併記するローマ字氏名は、ローマ字のみを使用して表示することになっており、それ以外の文字又は記号の使用は認められません。また、原則として全て大文字で表示、ローマ字氏名の氏と名の間にはスペースを付すこととし、「・(中点)」等の記号による区切りはできません。ローマ字氏名は登記記録に記録された氏と名の順に従って表示します。

母国語による所有権の登記名義人の氏名に「Ⅲ」、「Ⅳ」又は「Ⅸ」等のローマ数字が含まれる場合には当該ローマ数字について「Ⅰ」、「V」又は「X」等のローマ字を組み合わせて表示することができます。

※所有権移転登記と同時に併記する場合

※登記申請を伴わないローマ字氏名併記の申出をする場合

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