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事例
株式会社Xが所有する甲土地に抵当権者をY銀行、債務者をAとする抵当権が設定されたところ、Aが死亡し、B・Cが相続した。その後、Y銀行、B及びC間でBが免責的に債務を引き受ける契約が締結された。なお、Bは株式会社Xの代表取締役である。
抵当権変更登記
実際には、B所有の複数の不動産を共同担保とする共同抵当権だったわけですが、分かりやすくするために事例は簡略化しています。とにかく、上記事例による抵当権変更登記をすることになったのです。
民法第472条の4第1項、第2項によれば、Yは、あらかじめ又は同時にBに対する意思表示によってCが免れる債務の担保として設定された担保権をBが負担する債務に移すことができます。ただし、Xの承諾を得なければなりません。
間接取引
Xが承諾するということは、取締役Bの債務を物上保証するという間接取引に該当するのではないかと考えました。そうであるならば、株主総会議事録(Xは取締役会を置いていません。)を添付しなければなりません。
Yからは議事録の提出を求められましたので、私と同様の認識だったと思います。ところで、AはXの取締役ではないのにもかかわらず、抵当権設定時にもYはXに対し議事録の提出を求めたようです。
株主総会議事録の作成
間接取引を承認する株主総会議事録を作成することになりましたので、議案の記載例を以下に掲げます。補正なく登記が完了することを保証するものではありませんので、その点はご了承ください。
なお、株主総会議事録には議事録作成者の押印義務はありませんが、添付書類としては代表取締役が会社実印を押すことが求められます。そのうえで会社法人等番号を提供し、印鑑証明書を添付します。なお、印鑑証明書は会社法人等番号を提供することで添付を省略することができます。
債務引受実行日の登記申請が求められましたので、印鑑証明書の用意をお願いして、登記完了後に返却することとしました。商業登記なら最悪取下げてしまえば済むことですが、そうはいかなかったので念のため印影の確認をしたかったのがその理由です。
※記載例
第○号議案 取締役債務の物上保証の件
議長は、取締役Bより、Bが債権者Y銀行との間で、令和○年○月○日付免責的債務引受契約を締結するにあたり、当会社が民法第472条の4第1項ただし書きの承諾(以下、「本件承諾」という。)をしたい旨の提案がなされたことを述べた。議長から、本件承諾により下記の当会社が所有する不動産(以下、「本件土地」という。)をもって、取締役Bが債務者Cより引き受けた債務を物上保証することになる旨並びにCはBの長男で支払能力がないこと及び本件土地に設定されている抵当権(令和○年○月○日受付第○○号)の共同担保となっている本件土地以外の不動産はBが所有していること等の説明がなされた。審議の後、本件承諾の賛否を諮ったところ、満場異議なく可決承認された。
記
甲土地の表示
最後に
今回の事例は非常にレアなケースでしたので、初めて扱う案件となりました。補正の電話がかかってくるのではないかと内心ドキドキしていたのですが、あっさりと登記は完了しましたので本当によかったです。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
「誰にも相談できずに困っていたが、本当にお世話になりました」といったお言葉をいただくこともあり、迅速な対応とお客様の不安を和らげることを心掛けています。趣味はドライブと温泉旅行で、娘と一緒に車の話をするのが楽しみです。甘いものが好きで、飲んだ後の締めはラーメンではなくデザート派です。
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