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不動産の付合とは

2025-03-24

添付制度

民法が規定する所有権の取得原因の一つに添付があります。添付とは、付合、混和、加工を総称したものです。

添付制度は所有者が異なる2つ以上の物が結合したり、加工を施した結果、元に戻すことが著しく困難であるか、損傷することなく分離することが不可能な状態になり、社会的、経済的に1つの物と見られる関係にあたる場合に、これを所有権の対象物と認め、各所有者に分離の請求を認めないこととするものです。

これによって、原状に戻すことによる不利益を避けることができます。添付によって当事者の一方は所有権を失う等の不公平が生じますが、償金請求を認めることによって均衡が図られています。

要は、所有権の取得を認めることで誰のものになるのか分からないといった事態を避け、その結果生じた当事者間の不公平はお金によって解決しようということです。なお、添付によって生じた物を誰の所有とするかについての規定や償金に関する規定は任意規定とされていますので、当事者の意思によって変更することができます。

条文

民法第242条

不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

 

「付合」とは、物(動産)が不動産に付着合体して独立性を失い、一般に不動産そのものと認められ、その分離復旧が社会経済的に不利益となる場合をいいます。付合した物には付着しても独立性を失わない従物はこれに含まれません。

弱い付合

不動産に動産を附属させた場合に、附属させた物が付合の要件を満たすときであっても、それが権原(地上権、賃借権等の不動産に附属させる動産の所有権を留保することができる権利)によってされたときには付合は生じません。この場合、附属された動産は独立性を有するいわゆる弱い付合でなければなりません。

例えば、権原のある者が土地に立木を植栽したときです。なお、同条ただし書きによって留保した立木の所有権を第三者に対抗するためには、明認方法、用益権の登記等の対抗要件を備える必要があります。

強い付合

附属させた動産が不動産の構成部分となり、独立の所有権の存在を認めることができないようないわゆる強い付合の場合には、同条ただし書きの適用はありません。

例えば、賃借人が賃貸人の承諾を得て、その権原により賃借建物を増築しても、増築部分が従前の建物と別個独立の存在を有せず、その構成部分となっているときは、増築部分は建物の所有者に帰属します。

同様に、権原のある者が他人の土地に農作物の種子をまいたときは、独立性がなく土地の構成部分となりますので、強い付合に該当します。ただし、農作物が成熟してある程度独立性を有するに至れば、同条ただし書きが適用されます。

権原のない者による付合

不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得します。例えば、権原のない者が他人の土地に種苗を植栽したときは、種苗の所有権は土地所有者が取得します。前述したように、それに伴う不公平は償金によって解決が図られます。

なお、動産の所有者はもはやその物の分離復旧を請求することができず、また、不動産の所有者はその動産の除去を動産の所有者に請求できなくなります。

介護保険負担限度額認定証について

2025-03-17

介護保険負担限度額認定とは

介護保険施設を利用した際にかかる食費と居住費は原則自己負担となりますが、低所得等の一定の要件を満たすことでそれらの費用が軽減される仕組みが負担限度額認定制度です。

介護費用を軽減するための同様の制度に高額介護サービス費がありますが、これとは全く異なりますので注意しましょう。高額介護サービス費制度とは、介護サービスの自己負担額の合計額が月額で一定額を超えた場合、超過分の返還を受けられる制度のことです。

軽減の対象者

次の要件全てに該当する方が対象となります。

1.住民税非課税世帯(本人と住民票上同一世帯であるかた全員が住民税非課税)であること。
老齢福祉年金受給権者、生活保護受給者も含まれます。本人の合計所得金額と課税年金及び非課税年金(遺族年金、障害年金等)の収入額の合計により、4つの利用者負担段階に分類されます。

2.配偶者(内縁関係を含む。)がいる場合は、別の世帯であっても配偶者の住民税が非課税であること。
婚姻届を提出していない事実婚であっても法律婚と同様に扱われますし、夫婦間で世帯分離をしている場合でも配偶者の所得は合算します。

3.預貯金、有価証券等の資産の額が一定額以下であること。
例えば、住民税非課税世帯(別世帯の配偶者も非課税)で合計所得金額+課税年金収入額+非課税年金収入額の合計が120万円超の方の場合は、500万円以下(夫婦の場合1,500万円以下)となります。

対象となるサービス

全ての介護保険施設が対象となるわけではありません。対象となるのは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、短期入所生活介護(ショートステイ)等です。

介護付き有料老人ホーム、サ高住等は対象となりませんので注意が必要です。

提出書類

介護保険負担限度額認定申請書は必ず提出する必要がありますが、具体的な提出書類は市町村によって異なる場合がありますので、お住まいの市区町村に確認しましょう。ここでは三鷹市の例を掲げます。

  • 同意書
    三鷹市が官公署、年金保険者または銀行、信託会社その他の関係機関へ住民税課税状況や資産等の照会をするために提出を求められます。
  • 資産状況を確認するための通帳類の写し(配偶者がいる場合は夫婦2人分の写しが必要です。)
    預貯金については、本人名義(配偶者がいる場合は配偶者名義を含みます。)の全ての口座の通帳のコピーが必要です。普通預金だけではなく定期預金のページを含みますし、別に定期預貯金通帳がある場合にはそれも提出します。

    株式、国債等の有価証券は、証券会社や銀行等の口座残高の写し(申請日直近2月間の取引金額、時価評価額がわかるもの)が、金、銀、プラチナ等時価評価額が安易に把握できる貴金属は、購入先の銀行等の口座残高の写し(申請日直近2月間の取引金額、時価評価額がわかるもの)がそれぞれ該当します。

    対して、生命保険(貯蓄型保険等)、不動産、自動車、時価評価額の把握が難しい貴金属等は、資産に該当しません。住宅ローン等の負債も資産に該当しますが、負債は資産額から控除します。

オルカンで含み損を抱える!マジか!?

2025-03-10

調整下げ?

この記事は2025年2月下旬に書いているのですが、株価ジリ安、ドル円下げによって2024年8月以来の含み損を抱えています。この程度の下げはベテラン投資家にとっては何も感じないのでしょうけど、投資アレルギーのある初心者にはなかなか辛いものがあります。

ネット上では、不安を感じる声、暴落煽りをするものなどが散見されます。今回は、オルカン等のインデックス投資を継続するための心得等について書いてみたいと思います。

ストレス

よく投資で資産を増やすことについて、SNS上に不労所得であることを理由にそれを妬む書き込み等が見られます。ただ、今まで投資をしてこなかった私がある程度の含み損を抱えて感じることは、投資を継続することは結構なストレスを伴うものだということです。

その代償としてリターンを得られるのではないかと思うのです。ですから、決して不労所得と言い切れるものではなく、リターンはリスクを受け入れた対価として得られるものではないでしょうか。

夜眠れないほどリスクをとることは絶対に避けるべきですが、下げ相場にも退場することなく付き合っていかなければならないですし、リーマン級の暴落がくればそのストレスたるや想像もつきません。

低コスト金融商品

NISA口座は野村證券で開設しました。口座を開設するならSBI証券か楽天証券が良いことはネット環境にいる人なら簡単に入手できる情報です。オルカンが買えるので総合証券を使っていますが、NISA口座の開設、商品選択、積立設定まで全てネットで完結する必要がありました。

どういうことか。オルカン、S&P500等の投信の手数料があまりにも安いために、総合証券においても窓口対応はしていないのです。したがって、パソコン、スマホを持っていないネット環境に無縁な方は低コストの金融商品を買うことすらできないわけです。

意図的な情報遮断

パソコンかスマホを持っていないと低コストの金融商品に投資できないことは前述したとおりです。それ故に情報過多に陥ることとなって、YouTubeの暴落煽り等のサムネに釣られて動画を視聴してしまうといった弊害をもたらすことになると考えています。

また、証券口座にログインしないようにすることも大事だなと最近は感じています。要は、意図的に見ないようにし、情報をシャットアウトすることが長期ホールドに繋がるのではないかと思うわけです。

名著を拠り所にする

自身の投資方針に疑問を感じるようになったり、ホールドし続けることに不安を感じるときに拠り所にすべきなのは名著と呼ばれる書籍だと思います。決して投資系のインフルエンサーではありません。

そうは言っても、私も視聴するYouTubeチャンネルがあるわけでして、その中でも握力を高めるためにお勧めするYouTubeチャンネルがあります。『S&P500最強伝説』さんです。配信者は個別株のスイングトレードを経て、インデックス投資が最も合理的だと判断するに至った方です。

私のようなオルカンホルダーではありませんが、米国株に投資をされていらっしゃいますし、書籍によるロジックを根拠に解説されている動画が多数ありますので、一度視聴されることをお勧めします。

明認方法と立木の物権変動

2025-03-03

明認方法とは

立木ニ関スル法律の適用を受けない立木、未分離果実、稲立毛等の土地と一体となっているものの権利関係を公示する方法で、対抗要件として慣習上認められているものです。

例えば、伐採のために植林した檜、杉等は不動産である土地の一部ですから、一般的には土地と共に取引の対象となりますが、植林した立木のみを伐採目的で売買することがあります。このように立木を土地から独立した取引の対象とする場合には、土地と分離した存在であることを公示して取引の安全に資することが求められます。

具体的方法

土地と分離して立木のみを譲り受けた場合等、その物権変動を対抗するための明認方法の具体的方法には以下のものがあります。

立木の皮を削って所有者であることを墨書する、山林内に炭焼小屋を作って製炭事業に従事する、現場に所有者を記した標識を立てるなどの方法が認められています。

立木の二重譲渡

事例:AがBに立木を譲渡した後、Cにも当該立木を譲渡した。
結論:先に明認方法を施した者が優先します。B・Cは明認方法を施さない限り、相互に立木の所有権を対抗することはできません。

土地と立木の譲渡

事例:AがBに立木とその地盤である甲土地を譲渡し、Bが立木について明認方法を施した後に、AがCに当該立木及びその地盤である甲土地を譲渡して所有権移転登記をした。
結論:甲土地の登記の先後によって決すべきであり、Bは立木及び甲土地の所有権をCに対抗できません。

Bは明認方法を施しているのになぜCに対抗できないのかと思われるかもしれません。前述したように立木は土地の一部に過ぎませんので、原則として土地の所有者がその土地上の立木の所有権を取得します。仮に所有者以外の他人が権原なく立木を植栽したとしても同様です。

取引関係に入ろうとするCは甲土地の登記簿をチェックするでしょうし、明認方法を施すより登記の方が公示方法として広く認識されているのですから、その負担をBに課したとしてもBに著しく酷であるとはいえないということです。

明認方法の消失

事例:AがBに立木を譲渡し、Bが明認方法を施したが、これが消失した後にAがCに当該立木を譲渡した。
結論:Bは、立木所有権をCに対抗することはできません。

明認方法は、立木の物件変動の公示方法として慣習上認められているものに過ぎません。それは、登記に代わるものとして第三者が容易に所有権を認識することができる手段で、しかも、第三者が利害関係を取得する当時にもそれだけの効果をもって存在するものでなければならないからです。

立木所有権の留保

事例:AがBに甲土地(地盤)を譲渡し、Bが登記をしないで立木を植栽した後、AがCに甲土地を立木を含むものとして譲渡し所有権移転登記をした。
結論:Bは明認方法を施していない限り、立木所有権をCに対抗することはできません。

Bは所有権によって立木を植栽していますので、民法第242条ただし書きが直接適用される場面ではありませんが、それを類推適用することによって立木所有権を留保することは認められています。それを第三者に対抗するためには明認方法などの公示を備えることが必要とされているのです。

アラカンがSCHDを買わない理由

2025-02-25

人気急上昇

2024年9月、楽天証券からSCHDを投資対象とする投資信託(楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型))の販売が開始され、2025年2月現在、純資産総額は約1250億円に到達しています。50代以降の分配金を定期的に受け取りたい人に人気のある商品となっているようです。

また、それに追従する形で2024年12月、SBI証券から同様の投資信託(SBI・S・米国高配当株式・ファンド(年4回決算型))の販売も開始されています。

以前の記事「アラカンがオルカン投資を始める理由」で、オルカンの積立投資をしていることを書いたのですが、私がSCHDに投資をしない理由を今回の記事にしたいと思います。

SCHDとは

シュワブ・米国配当株式ETFのことを指し、ダウ・ジョーンズUSディビデンド100インデックスへの連動を目指す米国籍のETFです。ダウ・ジョーンズUSディビデンド100インデックスは米Dow Jones社が提供する米国株価指数で、米国の配当利回りの高い100銘柄で構成されています。

同様のETFにFTSEハイディビデンド・イールド・インデックスをベンチマークとするVYMがあります。SCHDに直接投資することはできませんが、それに連動する投資信託が国内で販売されたということです。したがって、リアルタイムで売買することはできないですし、本家ETFよりコストはかかります。

資産形成の効率が悪い

資産形成を第一に考えるなら、オルカンかS&P500等のインデックスファンドで良いのではないかと思います。どちらも分配金が再投資されますので、複利の効果を享受できます。

分配金を受け取ることで現在の生活の足しになることがあるかもしれませんが、単利の効果しかありませんので、資産を最大限膨らますことを目的とするなら、SCHDは投資対象にはならないのではないかと考えています。

NISA枠で買うメリットがない

NISAは購入した金融商品から得られる利益が非課税になる制度ですから、その恩恵を最大限享受するには、分配金が再投資される投資信託の購入が最適解ではないでしょうか。したがって、成長投資枠で個別株や分配金受取型のSCHD等のETF、投資信託等を購入するつもりは、今のところありません。

また、分配金には日本での課税はされませんが、米国の10%の外国課税がなされます。特定口座で購入すれば、所得にもよりますが外国税額控除を受けることができますので、NISA枠で買うメリットはないと思います。

リスク分散にならない

既にオルカン、S&P500を購入している人にとっては、SCHDの投資対象は米国株100%ですから分散効果はほとんどないと言えます。ただし、これから投資を始める方にとっては該当しませんので、投資対象の選択肢の一つとなるでしょう。

オルカン、S&P500があまりにも売れすぎているので、今後も新たな金融商品が出てくると思いますが、目移りせずに一度決めた投資方針を貫くことも重要だと感じています。

定率取り崩しか不労所得か

オルカン、S&P500は売却しない限り手元にキャッシュは残りません。対して、SCHDは分配金という不労所得(インカムゲイン)が元本を取り崩さずに貰えます。ただし、元本を払い戻す特別分配金が支払われることがあります。

オルカン等の定率取り崩しを設定するのは結構面倒だと思います。NISA口座でそれができるのは、この記事を執筆している時点で楽天証券だけです。結局のところ、定率取り崩しかインカムゲインをその都度得るかの違いに過ぎないのです。

所有権移転登記申請に氏名ふりがな、メールアドレスが必要になります(令和7年4月21日以降)

2025-02-17

住所、氏名変更登記の義務化

令和8年4月1日から、不動産の登記名義人は氏名・住所の変更日から2年以内に変更登記をすることが義務付けられます。法人が不動産の登記名義人の場合は、商号変更、本店移転によって商号・本店に変更があったときは、同様にその変更登記をしなければなりません。

同日より前に住所氏名等に変更があった場合でも適用されます。正当な理由なくこの期限内に、不動産に係る住所氏名等の変更登記をしなかった場合、5万円以下の過料の対象となります。

職権による住所等変更登記

同日から、不動産の登記名義人の義務負担軽減のため、所有者が変更登記の申請をしなくても、登記官が住基ネット情報を検索し、これに基づいて職権で登記を行う仕組みが開始します。

具体的には、登記官が検索用情報(住所、氏名、生年月日等)を用いて住基ネット情報に定期的にアクセスをし、氏名・住所の変更を取得した場合に職権による変更登記をするというものです。これによって、登記名義人の住所等変更登記の義務は履行されたことになります。

登記名義人の意思確認

変更後の住所等を登記官の職権で登記されてしまうと困る人達も存在します。例えば、DV、ストーカー等の被害者です。不動産の登記事項証明書は誰でも取得することができますので、そのような人達に配慮する必要があるのです。また、住基ネット情報に許可なくアクセスされることを快く思わない方もいらっしゃると思います。

そのため、予め登記名義人になられる方または、既存の登記名義人にメールアドレスを提供していただき、職権で変更登記をすることについて当該メールアドレス宛に意思確認の連絡をします。所有権の登記名義人の了解を得た上で、登記官が職権で変更登記をすることとしています。

なお、登記名義人となる者のメールアドレスがない場合には、その旨を申し出ることとし、その場合、登記官が職権で住所等変更登記を行うことの可否を確認する際には、登記名義人の住所に書面を送付することを想定しています。

検索用情報の申出

令和7年4月21日から、所有権の保存・移転等の登記の申請の際には、所有者の検索用情報を併せて申し出る(申請書に記載する)ことが必要になります。同日時点で既に所有権の登記名義人である者は、別途、検索用情報の申出をすることができます。

なお、所有権の登記名義人となる者が法人、海外居住者、登記の申請人でない場合には、その者の検索用情報を申し出る必要はありません。

検索用情報とは

申出が必要となる検索用情報の具体的な内容は、次のとおりです。
(1) 氏名
(2) 氏名の振り仮名(日本の国籍を有しない者にあっては、氏名の表音をローマ字で表示したもの)
(3) 住所
(4) 生年月日
(5) メールアドレス

上記のうち、新たに必要なものは(2)、(4)及び(5)ですが、(4)については住民票の写し等の住所証明情報で確認することができますので、新たに登記名義人になられる方にご提供いただくのは氏名ふりがなとメールアドレスということになります。メールアドレスを手書きの書面でいただく場合には、文字の誤認・混同を防止するため、メールアドレスの振り仮名の記載をお願いいたします。

定期借地権付きマンションには手を出すな

2025-02-10

定期借地権付きマンションが首都圏で増加

「【2025年1月27日】
【NHK NEWS WEB】により
【定期借地権付きマンション供給数 首都圏で過去最大規模見通し】
 というニュースが掲載されました。」

借地権

借地権とは建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます。借地権の存続期間は30年ですが、当事者間の契約でこれより長い期間を定めた場合にはその期間となります。

借地権は原則として更新することができますし、借地権設定者(地主)が更新を拒絶するには、正当な事由がなければなりません。要は、借主の保護に重きを置く規定となっているのです。

定期借地権

上記の通常の借地権では、建物が存続する限りは借地権を消滅させることが困難となるために地主側は土地を貸すのを躊躇することになります。また、借主には建物買取請求権がありますので、数十年経過した古いマンションの買取請求をされたらたまったものではありません。

このようなことから、地主にもメリットがある定期借地権の制度が創設されたという経緯があります。定期借地権とは一定の存続期間を定め、その期間が満了しても契約の更新を保証せず、存続期間の満了によって借地関係を確定的に消滅させる制度のことをいいます。

購入者のメリットとは?

冒頭のニュース記事では、地主、デベロッパー及び購入者の三者全てにメリットがあると書かれていましたが、果たして本当にそうなのでしょうか。

購入者にとっては比較的、価格を抑えられる利点があるとのことです。具体的には、東京23区内の新築分譲マンションの平均売買価格は1億円を超えていますが、それが1割ほど安くなっているということのようです。1億のマンションが9000万円で買えることになりますが、特筆すべきメリットといえるかは疑問だと思います。

デベロッパーが利益を乗せすぎているのが現状ですから、お買い得感はほぼ無いと考えます。

デメリット

ランニングコストが高くなることが挙げられます。通常の管理費、修繕積立金に加えて解体積立金の負担があります。契約で定めた存続期間満了時にマンションを取壊し更地にして地主に土地を返さなければならないからです。

人手不足による解体費用の高騰、インフレ等によって購入時の積立金が増額されていくことは容易に想像できます。また地代の負担もありますし、途中で増額されることもあります。

固定資産税については建物のみ負担することになりますが、減価償却により建物評価額は下がっていきますので負担は減っていきます。

リセールバリューを考えて購入する

記事によれば、期限が近づくと住居として住みづらくなるため資産価値が下がるリスクがあるとの記載がありました。

私見にはなりますが、マイホームを購入する際にはリセールバリューを考えるべきだと思います。自分が住むだけだからといって、立地等の利便性の悪いマンションを購入すれば資産価値は間違いなく下がります。住宅ローンの返済が残っている際には売却しても残債を完済できずにローンだけが残ることにもなりかねません。

手を出すな

ここまで述べてきたように、メリットがあるのは地主とデベロッパーだけです。購入者にデメリットを上回るメリットはないと思います。定期借地権付きマンションを購入するくらいなら、賃貸マンションでいいんじゃないというのが私の考えです。

もちろん、価値観は人それぞれですから異論を排除するつもりはありません。

50代司法書士がiDeCoをやらない理由

2025-02-03

iDeCoとは

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。掛金とその運用益との合計額を給付として受け取ることができます。

掛金には上限(拠出限度額)があり、月々5,000円から始められます。掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となり、仮に毎月の掛金が1万円の場合、所得税(課税所得金額195万円以上~330万円未満のとき、10%)、住民税(10%)とすると年間24,000円、税金が軽減されます。

運用商品は自分で選ばなければならず、定期預金、保険商品、投資信託等で掛金を運用し、老後の資金を準備します。運用益に課税されることはなく、iDeCoなら非課税で再投資されます。受け取りについては、年金か一時金で方法を選択することができますし、金融機関によっては、年金と一時金を併用することもできます。

年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となります。要は、非課税になるのではなく、税金の優遇措置を受けられるということです。

掛金の所得控除がNISAとの大きな違い

私がiDeCoをやらないのは掛金の所得控除の恩恵をほとんど受けられないというのが主な理由です。事業所得は給与所得と異なり非常に不安定だということもあるのですが、高所得ではないことのほうが原因です。

会社員・公務員で安定した収入があるのならiDeCoをやるメリットがあるかもしれませんし、収入が高ければ高いほど所得控除の恩恵は大きくなります。そのような人はNISAよりiDeCoを優先するべきとも言えるでしょう。

また、iDeCoでは手数料がかかるうえ、金融機関によって額も異なりますので、慎重に選択することが求められます。加入期間が長くなるほど手数料の額は高くなります。SNS上ではSBI証券を勧める人が多いように感じますが、運用商品の選択肢を考慮しても個人的にはそれでよいのではないかと思います。

運用商品

運用商品は自分で決めなければなりませんので、どれにするかで頭を悩ませることが多いようです。NISAで運用している方でしたら、同様の商品を選ぶこととなってあまり悩むことはないのかなと思います。ただ、投資信託を選ぶ際は元本割れのリスクがありますので運用期間は15年以上の長期間とした方が良いでしょう。

リスクを一切負いたくないからといって、定期預金を選択するのはどうでしょうか。実質金利はマイナスなのですから、少なくともGPIF(年⾦積⽴⾦管理運⽤独⽴⾏政法⼈)のポートフォリオを参考にして運用するのがよいのではないかと考えます。

人によって異なる運用方法

iDeCoは原則として一度始めたら途中で止めることはできませんし、60歳になるまで積み立てた資産を引き出すことができません。にもかかわらず、2024年12月に確定拠出年金法の改正によってiDeCoは改悪されています。公的年金についても年金制度を破綻させないために今後も改悪されることが容易に想像できます。

また、退職金がある方は受給をどのようにするのかといった出口戦略を考えておくことが必須となります。企業型DC、iDeCo等の3階部分で老後に備えることも一つの方法ですし、NISAを使って自分年金を構築するやり方もあります。いずれにしても、豊かな老後生活のための資産運用が求められていると言えるでしょう。

投資後の変化・インフレは投資を促進させるのか?

2025-01-27

投資を始めて変わったこと

以前の記事「アラカンがオルカン投資を始める理由」で、オルカンへの投資を始めたことを書きました。私の場合、少額積立投資をしているのですが、明らかに投資後に変わったことがあります。それは、日々の株価や為替を気にかけるようになったのです。

具体的には、朝のニュース時の日経平均、TOPIX、ナスダック、金先物価格、ドル円等です。投資をしていない頃には全く興味がなかったのですが、それ以外に内外の経済動向にも関心を持つようになりました。

インデックス投資においては、日々の値動きに一喜一憂してはいけないと言われますし、それ自体が無意味だということも分かっているのですが、合理的な行動を取ることは難しいものだと感じます。

円高で仕込んで取り崩し時には円安になっているというのが理想なので、2025年1月時点のドル円は158円前後ですし、円高になって欲しいとの願いから株価よりも為替の方が気になるところです。

円の実質金利

実質金利とは、名目金利からインフレ率を引いた金利のことを指します。日銀は2024年7月、政策金利を0.25%に引き上げることを決めましたが、賃金上昇が物価上昇に追いついていないこと等を理由に同年内の追加利上げを見送りました。

一方、直近のインフレ率は2~3%で推移しており、長期間のデフレを脱却したとも言われています。以上のことから、円の実質金利はマイナス2%前後となっているようです。これは円を預けていても利息よりも物価上昇のスピードが上回るので、実質的には円の価値が目減りすることを意味します。

ちなみに、米国の実質金利はプラス2%台ですので、円が売られドルが買われることにより円安の一要因となるのです。

コストプッシュインフレ

現在の日本はインフレだと言われていますが、それはコストプッシュインフレであり、企業の生産コストの上昇が原因で物価が上昇するインフレを意味します。

日本は、生活に欠かせないエネルギー、食料等を輸入に頼っています。円安により原材料調達にコストがかかりますので、企業は価格に転嫁せざるを得ません。ただ、エネルギー、食料等の生産者は海外にいますので、価格上昇分の利益は海外に入ることになるのです。私たちの生活を苦しめる物価が上昇しても賃金が上昇しない状態を作出している原因だと説明されます。

インフレだから投資するは正しい選択なのか

過去の記事でも述べましたが、円の価値が目減りしているのですから円預金をするということは、穴の開いたバケツに水を貯めていく行為とも言えます。現役世代であれば労働所得により減るよりも増える量を多くすることもできるかもしれませんが、年金収入しかなくなる老後にそれをすることは叶わないでしょう。

だからといって短絡的に投資をすべきだと言えるのでしょうか。そのようなことを煽るSNSの発信が多く見受けられます。過去の実績はあくまでも過去のものであり、未来を保証するものではありません。投資は必ず元本割れのリスクを伴いますので、安易にそれをあてにすることは避けるべきでしょう。

かといって目減りする預金額をただ指をくわえて見ているだけよりも、何らかの対応策を講じる必要があるのではないでしょうか。

株主が死亡した場合の株主リストの記載について

2025-01-20

同族会社の場合

同族会社においては、会社が株主総会時(基準日)までに株主の死亡を知らないといったことは考えにくいので、今回は同族会社以外の場合も想定して主要な「株主A」が死亡した場合の株主リストの記載について解説する内容となります。

なお、同族会社においては、以前の記事「有限会社の代表取締役が死亡した場合の登記申請」をご参照ください。

株主総会時(基準日)までに株主Aの死亡を知らないとき

株主が頻繁に入れ替わるような場合には、議決権を行使することができる株主を固定する必要があります。そのために、基準日の制度が設けられています。上場会社等の多くの株式会社は、定時株主総会の議決権行使と剰余金配当の基準日を定款で定めています。

臨時株主総会の議決権行使等に係る基準日を定款で定めていない場合は、基準日と基準日株主が行使することができる権利の内容を基準日の2週間前までに公告しなければなりません。もっとも、非上場会社等においては基準日を定めない場合がありますので、その場合には株主総会時の株主名簿上の株主が議決権を行使することになります。

会社が株主総会時(基準日)までに株主Aの死亡を知らないとき、または、知っているが株主Aの相続人全員が誰であるか知らないときは、会社が登記申請時に株主Aの死亡を知っていたか否かにかかわらず「株主A」を記載します。

原則として、基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができます。

しかし、記載する株主について、株主総会(基準日)後にその変動が生じた場合や、会社がその変動を知った場合でも、株主総会時(基準日)を基準に記載することとされています。

株式の遺産分割

相続が発生して相続人が複数いる場合には、株式は相続人の共有となり法定相続分に応じて分割して相続するわけではありません。共有状態を解消するためには、遺産分割が必要となるのです。

また、株式が共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができません。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りではありません。

遺産未分割の場合には、当該通知を受けたか否かにかかわらず株主リストには「相続人全員」を記載します。

株主名簿の名義書換

遺産分割により株式の共有が解消され承継人が定まった場合には、承継人の氏名及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社に対抗することができないとされています。(会社法第130条第1項)よって、名義書換が完了している場合には「承継人」を記載します。

会社法第130条第1項の規定は、名義書換未了の場合は会社に譲渡を対抗できないとするにとどまることから、名義書換は単なる対抗要件にすぎないと解されています。したがって、会社の責任で名義書換未了の承継人に権利行使をさせることも許されると解されていますので、その場合も同様に「承継人」を記載します。

対して、名義書換未了の承継人に権利行使をさせなかった場合には、「株主A」を株主リストに記載することになります。

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