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定年後に資格を取って独立開業することについて(行政書士編)

2025-04-14

定年後の過ごし方

あなたは定年後の過ごし方を決めていますか?

雇われは別ですが士業には定年がありませんので、私は今の仕事(司法書士)を体が動くうちはずっと続けていくつもりです。心身の健康を保つことも重要ですが、常に社会の一員として関わることが健康であり続けることに資すると考えているからです。

言うまでもなく、働くことだけが社会と関わる手段ではありません。ボランティア、趣味に興じる等によって積極的に人と関わることもできるでしょう。

資格取得

定年後に備えて資格取得の勉強を始められる方もいらっしゃるでしょう。あるいは、定年後に自身のキャリアを活かすために勉強を始めようと考えている方もいらっしゃるかもしれません。

決して遅すぎることはありませんし、私自身も50代で資格を取得しています。資格取得のための勉強は行政書士と司法書士しか経験がありませんが、今回は行政書士の資格取得、開業を目指す方に向けて私の経験談を交えながら記事にしたいと思います。

試験難易度

定年後に向けて資格を取得する際は、試験の難易度にも気を配る必要があります。難易度の高い試験に挑戦して、取得までに何年もかかってしまうようではその後の開業等にも影響が出るでしょう。

その点、行政書士は法律系の資格の中では比較的取得しやすいものとされていますし、時にはコスパのよい開業資格と言われたりすることもあるようです。

開業時の初期費用

他業種の起業と異なり、行政書士(司法書士もそうですが。)の場合は初期費用が高額となることはありません。パソコン、プリンター、スマホ等が必須といったところです。

ただ、開業後の経費で一番嵩むのは事務所家賃ですから、最初は自宅を事務所にするのが良いと思います。

事業所得

会社員、公務員等が得られる給与所得と違って事業所得で安定した黒字収支を出すことは想像以上に困難なことです。資格取得よりはるかに大変だということは断言できます。

会社なら営業、経理等は分業されていたでしょうが、個人事業の場合は全て一人でこなさなければならないのです。こればかりは実際に経験してみないとなかなか伝わらないのでしょうが、相当な覚悟が必要かと思います。

耳にしたことがあるかもしれませんが、最低でも3年分の生活費を用意しておかなければならないくらい仕事が来ないということです。

最後に

上述してきた建前ではなく本音を言うなら、老後資金に不安がなく、これまでに培った豊富な社会経験や人脈を活かして仕事を取ってこられる自信がある方以外にはお勧めできないです。

再雇用、再就職という手段もありますし、余程起業にチャレンジしたいという強い思いがあるのであれば話は違いますが。

最後に、ここまで読んでいただいた方に伝えたいことがあります。お金を稼ぐ手段は人に雇われるだけではないということです。資格にどのくらいの需要があるかを見極めることも大切ですし、事業所得を得てみようと挑戦する姿勢を否定するつもりはありません。

戸籍にフリガナが記載されるようになります

2025-04-07

2025(令和7)年5月26日施行

令和5年6月2日、戸籍法(昭和22年法律第224号)の一部改正を含む「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和5年法律第48号。以下「改正法」といいます。)が成立し、同月9日に公布されました。

従前、戸籍においては、氏名のフリガナは記載事項とされておらず、戸籍上公証されていませんでしたが、この改正法の施行により、戸籍の記載事項に氏名に加えて、新たにそのフリガナが追加されることになりました。改正法は、令和7年5月26日に施行されます。

従前の取扱い

出生届を提出する際には、子の氏名のフリガナを記載します。それが戸籍に記載されることはありませんでしたが、住民票と連携する際にフリガナをシステム(住民基本台帳ではありません。)上に記録していました。

また、転入届を提出する際にも世帯全員の氏名フリガナを記載する欄があったことから、同様に記録がされていたようです。市町村によってはフリガナの記載のある住民票の写しを交付していましたし、日本年金機構等と氏名フリガナの記録を連携していたようです。

フリガナの通知が届く

改正法の施行日(令和7年5月26日)以降、本籍地の市区町村長が戸籍に氏名のフリガナを記載する前提として、住民票において市区町村が事務処理の用に供するため便宜上保有する情報等(前述した「システム」)を参考に、本籍地の市区町村長から国民の皆様に、戸籍に記載される予定の氏名のフリガナを通知することとしています。

通知書は戸籍単位で送付される予定ですので、例えば、父・母・長男の3人家族で同じ住所にお住まいの場合には、家族3人分のフリガナが記載された通知書が住所地に届くことになります。同じ戸籍内で別の住所にお住まいの方がいらっしゃる場合は、住所地毎に届きます。

通知書の確認

皆様にしていただきたいのは、届いた通知書に記載されたフリガナを確認することです。間違いがなければ、届出をしなくても、制度開始から1年経過後に、当該通知のフリガナがそのまま戸籍に記載されます。なお、通知書に記載されたフリガナが正しい場合でも、早期に戸籍への記載を希望される方は、フリガナの届出をすることができます。

もし、フリガナが誤っている場合は必ず届出をしなければなりません。令和8年5月25日までにフリガナの届出をしなかったときには、通知書に記載されたフリガナがそのまま戸籍に記録されます。届出がなかった場合に戸籍に記載されたフリガナは、一度に限り、家庭裁判所の許可を得ずに届出のみで変更することができます。

届出の方法

氏名のフリガナの届出は、マイナポータルを利用してオンラインで行うことができます。その他、市区町村窓口での届出や郵送による届出も可能です。

氏のフリガナは戸籍の筆頭者が、名のフリガナは戸籍に記載されている者が届出をすることができます。未成年者の届出は、親権者からすることとなります。

マイナ免許証運用始まる!メリットは?

2025-03-31

運用スタート

マイナンバーカードと運転免許証の一体化が2025(令和7)年3月24日から開始されました。一体化を希望するときは、免許証に代わり免許情報の記録されたマイナンバーカード(マイナ免許証)を保有することが可能となっています。

ただ、運用初日にはマイナンバーカードに免許証の情報を登録することができない、利用者が免許証の情報を読み取る専用のアプリの一部に不具合が見つかるなどのトラブルが全国で相次いで発生したようです。

この記事では、マイナ免許証の概要、利用するメリット、注意点等について解説してみたいと思います。

一体化とは

マイナンバーカードのICチップに免許情報を記録することで、マイナンバーカードを運転免許証として利用することが可能になるものです。記録される免許情報は、免許情報記録番号、免許種別、有効期間末日、免許の条件、備考欄、顔写真等ですが、カード表・裏面には表示されません。

したがって、従来の免許証のように見た目で確認することはできません。免許情報を確認するには、マイナポータル(あらかじめ警察に署名用電子証明書を提出することが必要です。)又はマイナ免許証読み取りアプリの利用が必要となります。

免許証保有の選択肢

①マイナ免許証のみ、②マイナ免許証と従来の運転免許証の2枚持ち、③従来の運転免許証のみ、の3種類の中から保有状況を選択することができます。

一体化は義務ではありませんし、従来の運転免許証が廃止されるわけでもありません。運転の際には免許証またはマイナ免許証のいずれかを携帯する必要があります。

②を選択した場合の免許更新等の手続の際には、マイナ免許証と運転免許証の2枚とも必要になります。2枚持ちの方が双方とも更新を受けようとするときは、同時に申請しなければなりません。また、2枚持ちの方が、いずれか一方のみについて有効期間の更新を受けることも可能ですが、更新を受けなかった運転免許証又はマイナ免許証の有効期間が満了したときは、その運転免許証を返納し、又は免許情報記録の抹消を受ける義務が課されますので、注意が必要です。

一体化のメリット

更新時のオンライン講習受講と住所変更手続等のワンストップサービスを受けられる点等がメリットのようです。

マイナ免許証をお持ちで必要な手続をとった方は、運転免許証更新の際に受講する必要がある講習をオンラインで受講することができます。

警察で署名用電子証明書と免許情報を紐付けること及びマイナポータルとの連携手続を行うことで本籍・住所・氏名等に変更が生じた場合でも、警察への届出は不要となります。ただし、マイナ免許証と運転免許証の2枚持ちや、運転免許証のみの場合は、ワンストップサービスを受けることはできません。

その他注意点

マイナンバーカードの有効期限が運転免許証より先に到来する場合には、現行のシステムでは、マイナンバーカードを更新しても運転免許の情報は引き継がれません。このため、マイナ免許証を取得された方であっても、マイナンバーカードを更新すると、一体化の手続をやり直さなくてはならなくなります。

こうした不便なシステムが改善されるのは、2025年秋になる見通しだそうです。ですから、上記に該当するときはシステムの改善及びマイナンバーカードの更新手続後にマイナ免許証を取得することが推奨されているようです。

住民票を移さずに運転免許証の住所変更を行っているとき等、マイナンバーカードと運転免許証の住所が異なる場合には、マイナ免許証にすると住所の表記はマイナンバーカードの住所に統一されます。

マイナ免許証をお持ちの方にはマイナポータルで免許更新のお知らせ通知が届きますが、免許更新のお知らせはがきは、引き続き全ての免許更新対象者に送付されます。

不動産の付合とは

2025-03-24

添付制度

民法が規定する所有権の取得原因の一つに添付があります。添付とは、付合、混和、加工を総称したものです。

添付制度は所有者が異なる2つ以上の物が結合したり、加工を施した結果、元に戻すことが著しく困難であるか、損傷することなく分離することが不可能な状態になり、社会的、経済的に1つの物と見られる関係にあたる場合に、これを所有権の対象物と認め、各所有者に分離の請求を認めないこととするものです。

これによって、原状に戻すことによる不利益を避けることができます。添付によって当事者の一方は所有権を失う等の不公平が生じますが、償金請求を認めることによって均衡が図られています。

要は、所有権の取得を認めることで誰のものになるのか分からないといった事態を避け、その結果生じた当事者間の不公平はお金によって解決しようということです。なお、添付によって生じた物を誰の所有とするかについての規定や償金に関する規定は任意規定とされていますので、当事者の意思によって変更することができます。

条文

民法第242条

不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

 

「付合」とは、物(動産)が不動産に付着合体して独立性を失い、一般に不動産そのものと認められ、その分離復旧が社会経済的に不利益となる場合をいいます。付合した物には付着しても独立性を失わない従物はこれに含まれません。

弱い付合

不動産に動産を附属させた場合に、附属させた物が付合の要件を満たすときであっても、それが権原(地上権、賃借権等の不動産に附属させる動産の所有権を留保することができる権利)によってされたときには付合は生じません。この場合、附属された動産は独立性を有するいわゆる弱い付合でなければなりません。

例えば、権原のある者が土地に立木を植栽したときです。なお、同条ただし書きによって留保した立木の所有権を第三者に対抗するためには、明認方法、用益権の登記等の対抗要件を備える必要があります。

強い付合

附属させた動産が不動産の構成部分となり、独立の所有権の存在を認めることができないようないわゆる強い付合の場合には、同条ただし書きの適用はありません。

例えば、賃借人が賃貸人の承諾を得て、その権原により賃借建物を増築しても、増築部分が従前の建物と別個独立の存在を有せず、その構成部分となっているときは、増築部分は建物の所有者に帰属します。

同様に、権原のある者が他人の土地に農作物の種子をまいたときは、独立性がなく土地の構成部分となりますので、強い付合に該当します。ただし、農作物が成熟してある程度独立性を有するに至れば、同条ただし書きが適用されます。

権原のない者による付合

不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得します。例えば、権原のない者が他人の土地に種苗を植栽したときは、種苗の所有権は土地所有者が取得します。前述したように、それに伴う不公平は償金によって解決が図られます。

なお、動産の所有者はもはやその物の分離復旧を請求することができず、また、不動産の所有者はその動産の除去を動産の所有者に請求できなくなります。

介護保険負担限度額認定証について

2025-03-17

介護保険負担限度額認定とは

介護保険施設を利用した際にかかる食費と居住費は原則自己負担となりますが、低所得等の一定の要件を満たすことでそれらの費用が軽減される仕組みが負担限度額認定制度です。

介護費用を軽減するための同様の制度に高額介護サービス費がありますが、これとは全く異なりますので注意しましょう。高額介護サービス費制度とは、介護サービスの自己負担額の合計額が月額で一定額を超えた場合、超過分の返還を受けられる制度のことです。

軽減の対象者

次の要件全てに該当する方が対象となります。

1.住民税非課税世帯(本人と住民票上同一世帯であるかた全員が住民税非課税)であること。
老齢福祉年金受給権者、生活保護受給者も含まれます。本人の合計所得金額と課税年金及び非課税年金(遺族年金、障害年金等)の収入額の合計により、4つの利用者負担段階に分類されます。

2.配偶者(内縁関係を含む。)がいる場合は、別の世帯であっても配偶者の住民税が非課税であること。
婚姻届を提出していない事実婚であっても法律婚と同様に扱われますし、夫婦間で世帯分離をしている場合でも配偶者の所得は合算します。

3.預貯金、有価証券等の資産の額が一定額以下であること。
例えば、住民税非課税世帯(別世帯の配偶者も非課税)で合計所得金額+課税年金収入額+非課税年金収入額の合計が120万円超の方の場合は、500万円以下(夫婦の場合1,500万円以下)となります。

対象となるサービス

全ての介護保険施設が対象となるわけではありません。対象となるのは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院、短期入所生活介護(ショートステイ)等です。

介護付き有料老人ホーム、サ高住等は対象となりませんので注意が必要です。

提出書類

介護保険負担限度額認定申請書は必ず提出する必要がありますが、具体的な提出書類は市町村によって異なる場合がありますので、お住まいの市区町村に確認しましょう。ここでは三鷹市の例を掲げます。

  • 同意書
    三鷹市が官公署、年金保険者または銀行、信託会社その他の関係機関へ住民税課税状況や資産等の照会をするために提出を求められます。
  • 資産状況を確認するための通帳類の写し(配偶者がいる場合は夫婦2人分の写しが必要です。)
    預貯金については、本人名義(配偶者がいる場合は配偶者名義を含みます。)の全ての口座の通帳のコピーが必要です。普通預金だけではなく定期預金のページを含みますし、別に定期預貯金通帳がある場合にはそれも提出します。

    株式、国債等の有価証券は、証券会社や銀行等の口座残高の写し(申請日直近2月間の取引金額、時価評価額がわかるもの)が、金、銀、プラチナ等時価評価額が安易に把握できる貴金属は、購入先の銀行等の口座残高の写し(申請日直近2月間の取引金額、時価評価額がわかるもの)がそれぞれ該当します。

    対して、生命保険(貯蓄型保険等)、不動産、自動車、時価評価額の把握が難しい貴金属等は、資産に該当しません。住宅ローン等の負債も資産に該当しますが、負債は資産額から控除します。

オルカンで含み損を抱える!マジか!?

2025-03-10

調整下げ?

この記事は2025年2月下旬に書いているのですが、株価ジリ安、ドル円下げによって2024年8月以来の含み損を抱えています。この程度の下げはベテラン投資家にとっては何も感じないのでしょうけど、投資アレルギーのある初心者にはなかなか辛いものがあります。

ネット上では、不安を感じる声、暴落煽りをするものなどが散見されます。今回は、オルカン等のインデックス投資を継続するための心得等について書いてみたいと思います。

ストレス

よく投資で資産を増やすことについて、SNS上に不労所得であることを理由にそれを妬む書き込み等が見られます。ただ、今まで投資をしてこなかった私がある程度の含み損を抱えて感じることは、投資を継続することは結構なストレスを伴うものだということです。

その代償としてリターンを得られるのではないかと思うのです。ですから、決して不労所得と言い切れるものではなく、リターンはリスクを受け入れた対価として得られるものではないでしょうか。

夜眠れないほどリスクをとることは絶対に避けるべきですが、下げ相場にも退場することなく付き合っていかなければならないですし、リーマン級の暴落がくればそのストレスたるや想像もつきません。

低コスト金融商品

NISA口座は野村證券で開設しました。口座を開設するならSBI証券か楽天証券が良いことはネット環境にいる人なら簡単に入手できる情報です。オルカンが買えるので総合証券を使っていますが、NISA口座の開設、商品選択、積立設定まで全てネットで完結する必要がありました。

どういうことか。オルカン、S&P500等の投信の手数料があまりにも安いために、総合証券においても窓口対応はしていないのです。したがって、パソコン、スマホを持っていないネット環境に無縁な方は低コストの金融商品を買うことすらできないわけです。

意図的な情報遮断

パソコンかスマホを持っていないと低コストの金融商品に投資できないことは前述したとおりです。それ故に情報過多に陥ることとなって、YouTubeの暴落煽り等のサムネに釣られて動画を視聴してしまうといった弊害をもたらすことになると考えています。

また、証券口座にログインしないようにすることも大事だなと最近は感じています。要は、意図的に見ないようにし、情報をシャットアウトすることが長期ホールドに繋がるのではないかと思うわけです。

名著を拠り所にする

自身の投資方針に疑問を感じるようになったり、ホールドし続けることに不安を感じるときに拠り所にすべきなのは名著と呼ばれる書籍だと思います。決して投資系のインフルエンサーではありません。

そうは言っても、私も視聴するYouTubeチャンネルがあるわけでして、その中でも握力を高めるためにお勧めするYouTubeチャンネルがあります。『S&P500最強伝説』さんです。配信者は個別株のスイングトレードを経て、インデックス投資が最も合理的だと判断するに至った方です。

私のようなオルカンホルダーではありませんが、米国株に投資をされていらっしゃいますし、書籍によるロジックを根拠に解説されている動画が多数ありますので、一度視聴されることをお勧めします。

明認方法と立木の物権変動

2025-03-03

明認方法とは

立木ニ関スル法律の適用を受けない立木、未分離果実、稲立毛等の土地と一体となっているものの権利関係を公示する方法で、対抗要件として慣習上認められているものです。

例えば、伐採のために植林した檜、杉等は不動産である土地の一部ですから、一般的には土地と共に取引の対象となりますが、植林した立木のみを伐採目的で売買することがあります。このように立木を土地から独立した取引の対象とする場合には、土地と分離した存在であることを公示して取引の安全に資することが求められます。

具体的方法

土地と分離して立木のみを譲り受けた場合等、その物権変動を対抗するための明認方法の具体的方法には以下のものがあります。

立木の皮を削って所有者であることを墨書する、山林内に炭焼小屋を作って製炭事業に従事する、現場に所有者を記した標識を立てるなどの方法が認められています。

立木の二重譲渡

事例:AがBに立木を譲渡した後、Cにも当該立木を譲渡した。
結論:先に明認方法を施した者が優先します。B・Cは明認方法を施さない限り、相互に立木の所有権を対抗することはできません。

土地と立木の譲渡

事例:AがBに立木とその地盤である甲土地を譲渡し、Bが立木について明認方法を施した後に、AがCに当該立木及びその地盤である甲土地を譲渡して所有権移転登記をした。
結論:甲土地の登記の先後によって決すべきであり、Bは立木及び甲土地の所有権をCに対抗できません。

Bは明認方法を施しているのになぜCに対抗できないのかと思われるかもしれません。前述したように立木は土地の一部に過ぎませんので、原則として土地の所有者がその土地上の立木の所有権を取得します。仮に所有者以外の他人が権原なく立木を植栽したとしても同様です。

取引関係に入ろうとするCは甲土地の登記簿をチェックするでしょうし、明認方法を施すより登記の方が公示方法として広く認識されているのですから、その負担をBに課したとしてもBに著しく酷であるとはいえないということです。

明認方法の消失

事例:AがBに立木を譲渡し、Bが明認方法を施したが、これが消失した後にAがCに当該立木を譲渡した。
結論:Bは、立木所有権をCに対抗することはできません。

明認方法は、立木の物件変動の公示方法として慣習上認められているものに過ぎません。それは、登記に代わるものとして第三者が容易に所有権を認識することができる手段で、しかも、第三者が利害関係を取得する当時にもそれだけの効果をもって存在するものでなければならないからです。

立木所有権の留保

事例:AがBに甲土地(地盤)を譲渡し、Bが登記をしないで立木を植栽した後、AがCに甲土地を立木を含むものとして譲渡し所有権移転登記をした。
結論:Bは明認方法を施していない限り、立木所有権をCに対抗することはできません。

Bは所有権によって立木を植栽していますので、民法第242条ただし書きが直接適用される場面ではありませんが、それを類推適用することによって立木所有権を留保することは認められています。それを第三者に対抗するためには明認方法などの公示を備えることが必要とされているのです。

アラカンがSCHDを買わない理由

2025-02-25

人気急上昇

2024年9月、楽天証券からSCHDを投資対象とする投資信託(楽天・高配当株式・米国ファンド(四半期決算型))の販売が開始され、2025年2月現在、純資産総額は約1250億円に到達しています。50代以降の分配金を定期的に受け取りたい人に人気のある商品となっているようです。

また、それに追従する形で2024年12月、SBI証券から同様の投資信託(SBI・S・米国高配当株式・ファンド(年4回決算型))の販売も開始されています。

以前の記事「アラカンがオルカン投資を始める理由」で、オルカンの積立投資をしていることを書いたのですが、私がSCHDに投資をしない理由を今回の記事にしたいと思います。

SCHDとは

シュワブ・米国配当株式ETFのことを指し、ダウ・ジョーンズUSディビデンド100インデックスへの連動を目指す米国籍のETFです。ダウ・ジョーンズUSディビデンド100インデックスは米Dow Jones社が提供する米国株価指数で、米国の配当利回りの高い100銘柄で構成されています。

同様のETFにFTSEハイディビデンド・イールド・インデックスをベンチマークとするVYMがあります。SCHDに直接投資することはできませんが、それに連動する投資信託が国内で販売されたということです。したがって、リアルタイムで売買することはできないですし、本家ETFよりコストはかかります。

資産形成の効率が悪い

資産形成を第一に考えるなら、オルカンかS&P500等のインデックスファンドで良いのではないかと思います。どちらも分配金が再投資されますので、複利の効果を享受できます。

分配金を受け取ることで現在の生活の足しになることがあるかもしれませんが、単利の効果しかありませんので、資産を最大限膨らますことを目的とするなら、SCHDは投資対象にはならないのではないかと考えています。

NISA枠で買うメリットがない

NISAは購入した金融商品から得られる利益が非課税になる制度ですから、その恩恵を最大限享受するには、分配金が再投資される投資信託の購入が最適解ではないでしょうか。したがって、成長投資枠で個別株や分配金受取型のSCHD等のETF、投資信託等を購入するつもりは、今のところありません。

また、分配金には日本での課税はされませんが、米国の10%の外国課税がなされます。特定口座で購入すれば、所得にもよりますが外国税額控除を受けることができますので、NISA枠で買うメリットはないと思います。

リスク分散にならない

既にオルカン、S&P500を購入している人にとっては、SCHDの投資対象は米国株100%ですから分散効果はほとんどないと言えます。ただし、これから投資を始める方にとっては該当しませんので、投資対象の選択肢の一つとなるでしょう。

オルカン、S&P500があまりにも売れすぎているので、今後も新たな金融商品が出てくると思いますが、目移りせずに一度決めた投資方針を貫くことも重要だと感じています。

定率取り崩しか不労所得か

オルカン、S&P500は売却しない限り手元にキャッシュは残りません。対して、SCHDは分配金という不労所得(インカムゲイン)が元本を取り崩さずに貰えます。ただし、元本を払い戻す特別分配金が支払われることがあります。

オルカン等の定率取り崩しを設定するのは結構面倒だと思います。NISA口座でそれができるのは、この記事を執筆している時点で楽天証券だけです。結局のところ、定率取り崩しかインカムゲインをその都度得るかの違いに過ぎないのです。

所有権移転登記申請に氏名ふりがな、メールアドレスが必要になります(令和7年4月21日以降)

2025-02-17

住所、氏名変更登記の義務化

令和8年4月1日から、不動産の登記名義人は氏名・住所の変更日から2年以内に変更登記をすることが義務付けられます。法人が不動産の登記名義人の場合は、商号変更、本店移転によって商号・本店に変更があったときは、同様にその変更登記をしなければなりません。

同日より前に住所氏名等に変更があった場合でも適用されます。正当な理由なくこの期限内に、不動産に係る住所氏名等の変更登記をしなかった場合、5万円以下の過料の対象となります。

職権による住所等変更登記

同日から、不動産の登記名義人の義務負担軽減のため、所有者が変更登記の申請をしなくても、登記官が住基ネット情報を検索し、これに基づいて職権で登記を行う仕組みが開始します。

具体的には、登記官が検索用情報(住所、氏名、生年月日等)を用いて住基ネット情報に定期的にアクセスをし、氏名・住所の変更を取得した場合に職権による変更登記をするというものです。これによって、登記名義人の住所等変更登記の義務は履行されたことになります。

登記名義人の意思確認

変更後の住所等を登記官の職権で登記されてしまうと困る人達も存在します。例えば、DV、ストーカー等の被害者です。不動産の登記事項証明書は誰でも取得することができますので、そのような人達に配慮する必要があるのです。また、住基ネット情報に許可なくアクセスされることを快く思わない方もいらっしゃると思います。

そのため、予め登記名義人になられる方または、既存の登記名義人にメールアドレスを提供していただき、職権で変更登記をすることについて当該メールアドレス宛に意思確認の連絡をします。所有権の登記名義人の了解を得た上で、登記官が職権で変更登記をすることとしています。

なお、登記名義人となる者のメールアドレスがない場合には、その旨を申し出ることとし、その場合、登記官が職権で住所等変更登記を行うことの可否を確認する際には、登記名義人の住所に書面を送付することを想定しています。

検索用情報の申出

令和7年4月21日から、所有権の保存・移転等の登記の申請の際には、所有者の検索用情報を併せて申し出る(申請書に記載する)ことが必要になります。同日時点で既に所有権の登記名義人である者は、別途、検索用情報の申出をすることができます。

なお、所有権の登記名義人となる者が法人、海外居住者、登記の申請人でない場合には、その者の検索用情報を申し出る必要はありません。

検索用情報とは

申出が必要となる検索用情報の具体的な内容は、次のとおりです。
(1) 氏名
(2) 氏名の振り仮名(日本の国籍を有しない者にあっては、氏名の表音をローマ字で表示したもの)
(3) 住所
(4) 生年月日
(5) メールアドレス

上記のうち、新たに必要なものは(2)、(4)及び(5)ですが、(4)については住民票の写し等の住所証明情報で確認することができますので、新たに登記名義人になられる方にご提供いただくのは氏名ふりがなとメールアドレスということになります。メールアドレスを手書きの書面でいただく場合には、文字の誤認・混同を防止するため、メールアドレスの振り仮名の記載をお願いいたします。

定期借地権付きマンションには手を出すな

2025-02-10

定期借地権付きマンションが首都圏で増加

「【2025年1月27日】
【NHK NEWS WEB】により
【定期借地権付きマンション供給数 首都圏で過去最大規模見通し】
 というニュースが掲載されました。」

借地権

借地権とは建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます。借地権の存続期間は30年ですが、当事者間の契約でこれより長い期間を定めた場合にはその期間となります。

借地権は原則として更新することができますし、借地権設定者(地主)が更新を拒絶するには、正当な事由がなければなりません。要は、借主の保護に重きを置く規定となっているのです。

定期借地権

上記の通常の借地権では、建物が存続する限りは借地権を消滅させることが困難となるために地主側は土地を貸すのを躊躇することになります。また、借主には建物買取請求権がありますので、数十年経過した古いマンションの買取請求をされたらたまったものではありません。

このようなことから、地主にもメリットがある定期借地権の制度が創設されたという経緯があります。定期借地権とは一定の存続期間を定め、その期間が満了しても契約の更新を保証せず、存続期間の満了によって借地関係を確定的に消滅させる制度のことをいいます。

購入者のメリットとは?

冒頭のニュース記事では、地主、デベロッパー及び購入者の三者全てにメリットがあると書かれていましたが、果たして本当にそうなのでしょうか。

購入者にとっては比較的、価格を抑えられる利点があるとのことです。具体的には、東京23区内の新築分譲マンションの平均売買価格は1億円を超えていますが、それが1割ほど安くなっているということのようです。1億のマンションが9000万円で買えることになりますが、特筆すべきメリットといえるかは疑問だと思います。

デベロッパーが利益を乗せすぎているのが現状ですから、お買い得感はほぼ無いと考えます。

デメリット

ランニングコストが高くなることが挙げられます。通常の管理費、修繕積立金に加えて解体積立金の負担があります。契約で定めた存続期間満了時にマンションを取壊し更地にして地主に土地を返さなければならないからです。

人手不足による解体費用の高騰、インフレ等によって購入時の積立金が増額されていくことは容易に想像できます。また地代の負担もありますし、途中で増額されることもあります。

固定資産税については建物のみ負担することになりますが、減価償却により建物評価額は下がっていきますので負担は減っていきます。

リセールバリューを考えて購入する

記事によれば、期限が近づくと住居として住みづらくなるため資産価値が下がるリスクがあるとの記載がありました。

私見にはなりますが、マイホームを購入する際にはリセールバリューを考えるべきだと思います。自分が住むだけだからといって、立地等の利便性の悪いマンションを購入すれば資産価値は間違いなく下がります。住宅ローンの返済が残っている際には売却しても残債を完済できずにローンだけが残ることにもなりかねません。

手を出すな

ここまで述べてきたように、メリットがあるのは地主とデベロッパーだけです。購入者にデメリットを上回るメリットはないと思います。定期借地権付きマンションを購入するくらいなら、賃貸マンションでいいんじゃないというのが私の考えです。

もちろん、価値観は人それぞれですから異論を排除するつもりはありません。

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