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R5司法書士試験不登法記述問題の疑義について

2023-09-04

解なしの記述問題!?

令和5年度の司法書士試験で出題された不動産登記法記述問題に不備があったため、厳密に解釈すれば解答が存在しないこととなり、受験生や予備校が混乱しているようです。早速、法務省のホームページから試験問題を入手して、私なりに検討してみました。

申請件数及び登録免許税の額が最も少なくなるように

この要領で登記を申請するように問題文の「事実関係に関する補足」に記載がされています。第1欄では、譲渡担保契約を合意解除したうえで、譲渡担保権設定者が非居住用不動産を売却した際の登記申請書の作成が求められました。なお、売却前に売主には後見人と後見監督人が選任されているという事案です。

所有権抹消を選択すれば登録免許税は安くなりますが、抹消→名変→移転の3件の申請となり、一方、所有権移転を選択すると登録免許税は高額となりますが、移転→移転の2件の申請となります。つまり、申請件数及び登録免許税の額が最も少なくなるような登記申請は存在しないのだから、どちらを書くべきか非常に悩ましかったようです。

問題文冒頭に司法書士が本人確認情報を作成した記載がありますので、移転→移転の登記申請は考えにくいとも言えます。また、後見人が登記申請人となる場合の本人確認は誰についてするべきなのかが問われています。売却不動産が居住用の場合だと、そもそも本人確認情報の作成は不要となりますので、当該不動産が居住用でないことも問題文に明記されています。

出題者の意図として、民法第864条の規定により後見監督人の同意を要する行為であること及び本人確認の対象は後見人であることを問うために「抹消」の方を書いて欲しかったことは推測できます。

順位変更と順位放棄

第3欄においては、2番抵当権と3番根抵当権の順位を同順位とする契約を締結した際の登記申請書の作成が求められました。根抵当権者は、元本の確定前は転抵当を除き、民法第376条の処分はできませんが、先順位の抵当権者から根抵当権者が376条の処分を受けることはできます。

つまり、順位変更と順位放棄の2通りの登記申請が可能となるのですが、登録免許税が安くなるのは順位放棄です。では、順位放棄が正解なのかと思えば、問題用紙の「添付情報一覧」の中に順位変更契約書(事実関係に基づき関係当事者全員が作成記名押印したもの)の記載が出てきます。

したがって、順位変更を書くべきだと判断せざるを得ないともいえます。ここでも、上記と同様に現場の受験生を悩ませたようです。

問題にケチをつけない

では、このような記述問題に対処するにはどうすればよいのでしょうか。先ず、法務省には受験者がどちらを書くべきか迷うことがないような問題の作成をしていただくのが一番良いのは言うまでもないですよね。その上で、問題に不備があったとしても受験者に公開されるのは得点のみであり、配点や問題の正解すら明らかにされません。

よく言われていることですが、出題者の意図を考えて解答することが最善の方法ではないかと考えます。予備校の記述式解答例をみてもそれを意識したものとなっているように思えます。また、問題の量が多いために解答時間を延長するべきだと言われる方がいらっしゃいますが、仮に午後4時間にしたとしても合格点が上がるだけで、相対評価の試験である以上合格者の顔ぶれはほとんど変わることはないでしょう。

司法書士試験受験者として、問題にケチをつけない、合格できないのを問題のせいにしない姿勢が重要なことではないでしょうか。

隣地使用権の改正について

2023-08-28

はじめに

民法の改正(令和5年4月1日施行)により、隣地使用権について定めた第209条が変更されています。変更前においては、「土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる」と規定され、あくまでも使用を請求することに止まる内容でした。

具体的意味は不明確であり、上記以外の目的での使用請求の可否も判然としないことが問題となっていました。また、請求に応じてもらえずに拒否された場合には、民事訴訟により承諾に代わる判決を得なければならず、費用・時間の消費を余儀なくされました。

改正後の規定(使用目的)

「土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。」
①境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
②境界標の調査又は境界に関する測量
③第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り

「使用を請求することができる」から、「使用することができる」に改められ、使用することが権利であることが明文化されました。これにより、隣人の承諾を得なくても隣地使用することができるようになったわけです。

ただ、隣人が使用を拒んでいるような場合に自力で使用権を行使することは許されませんので、そのような事態が生じたときは先ず話し合いによる解決を目指すべきでしょう。それができない場合には、隣人による妨害行為の差止め請求を裁判所に求めることになります。

加えて、隣地使用が認められる目的が拡充・明確化されました。③については、以前の記事「越境した木の枝は勝手に切ることができる!?改正点について解説!」をご参照ください。

隣人への配慮

隣地使用の際には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この記事において「隣地使用者」といいます。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならないとされています。現に使用している者とは、賃借人、地上権者等を指します。

事前通知

隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならないとされています。これには例外があり、あらかじめ通知することが困難なときは、隣地の使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足ります。

例えば、隣地の登記簿を調査しても隣地所有者が特定できない、所在不明である場合には、その所在が判明した後に遅滞なく通知することで足り、簡易裁判所の公示による意思表示によって通知をする必要はありません。

償金請求

隣地使用の際に、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときはその損害を賠償し、償金を支払う必要があります。例えば、建物の外壁を傷つけてしまった場合の補修費用が償金に該当します。

連帯債務者の相続、債務引受による抵当権変更登記の記録例

2023-08-21

はじめに

以前の記事「連帯債務者の相続、債務引受による抵当権変更登記について」にて、連帯債務者に相続が発生し、その後免責的債務引受契約がされた場合の登記申請手続について解説しました。言うまでもなく、登記申請完了後は登記事項証明書を取得したうえで正しく登記がなされたかのチェックをしなければなりません。

そこで、実際に私が申請した登記の記録例を掲載すると共に債務者の相続の場合との相違点を記事にしたいと思います。

債務者の相続、債務引受による記録例

ちなみに、被相続人である債務者の表示を抹消する記号(下線)は記録されません。相続ではなく第三者が免責的債務引受をした場合には、下線が引かれます。

交替的変更の場合には下線が引かれ、権利義務の承継に過ぎない(移転登記等)ときには下線が引かれないようです。要するに、引き続き公示しておくことにより混乱を招き、誤解を生じさせるおそれがある場合のみ積極的に下線を引くといったところでしょうか。

登記原因証明情報の作成

銀行等の金融機関は、差入形式の免責的債務引受契約書の原本を渡すことを避けたい傾向にあるようです。「契約書は必要ないですよね。」「なくても大丈夫です。委任状のみご用意ください。」このようなやり取りをして、登記原因証明情報を作成することになります。

三面契約によって免責的債務引受契約を締結し、民法第472条の4を忠実に反映した登記原因証明情報の登記の原因となる事実又は法律行為の記載例を以下に掲げます。

設定者と引受人が同一のときは(4)は不要です。旧法下において、設定者は登記申請人となるので承諾は必要だけれども承諾書の添付は不要であるとする論点がありましたが、改正後も同様です。

(1)令和○年○月○日、債権者A、債務者B及び債務者Cは、上記○の抵当権(以下「本件抵当権」という。)の被担保債権であるAに対する債務について、Bが免責的に引き受ける旨の免責的債務引受契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
(2)本件契約にかかる債務は、令和△年△月△日債務者○○から相続した債務である。
(3)本件契約締結の際、Aは引受人Bに対し、本件抵当権をBが引き受けた債務に移す旨の意思表示をした。
(4)設定者Cは、令和○年○月○日、本件抵当権をBが引き受けた債務に移すことにつき、承諾した。
(5)よって、令和○年○月○日、本件抵当権の債務者はBに変更された。

連帯債務者の相続、債務引受による記録例

このケースは「連帯債務者A・B」のAが死亡してB、C及びDが相続人となった後、Bが免責的に債務引受をしたものです。付記1号の連帯債務者Bに下線が引かれません。連帯債務者Aに下線が引かれないのは債務者の相続の場合と同様です。

これは、連帯債務者の一人が死亡した場合において、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを相続分に応じて承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解するのが相当であるとする判例を考慮したものです。

付記1号によって、「B、B(Aから相続した債務)」、「B、C」及び「B、D」間の3つの連帯債務を示していることになります。付記2号によって、「B、B(Aから相続した債務)」及び「B、B(C及びDから引き受けた債務)」間の2つの連帯債務を示しています。連帯債務はそれぞれ別個独立したものであることも、連帯債務者Bに下線を引かない理由となります。

セレナSハイブリッドはコスパ抜群!プロパイロットも体験!

2023-08-14

今年借りられた車

昨年までのように法要はなかったのですが、お墓参りのために東京・山口間を車で往復してきました。昨年のことは、「今年も行ってきました!セレナe-POWERで2,000㎞走行」の記事に書いていますので、参照していただければ幸いです。

今年も例年通りワゴンおまかせプランを申し込んだのですが、借りられたのはセレナSハイブリッドでした。ガソリンが高騰していますので、借りた直後はe-POWERのほうがよかったなあと感じたのですが、意外にもSハイブリッドの燃費がよかったことと、プロパイロットがついていましたので、使ってみた感想などを書いてみたいと思います。

Sハイブリッドとは

セレナSハイブリッドは、2.0Lガソリンエンジンを搭載し、ECOモーターと呼ばれる小さなモーターがエンジンの補助をするといったマイルドハイブリッド方式で一般的なガソリン車に近いものです。発進時等にエンジンのアシストをするそうですが、体感することはできませんでした。

また、バッテリーが2個搭載され、蓄容量、発電量がアップしており、それらを全てエンジンルーム内に収めることにより、広い室内空間を確保しています。

対して、e-POWERはエンジンで発電のみを行い、モーターで走行するシリーズ式ハイブリッドと呼ばれるものです。

燃費に大差はなかった

2,000㎞の9割が高速走行、猛暑のためにエアコンは常時使用の条件下だったのですが、燃費はe-POWERの方が若干良かった程度でSハイブリッドと大差はありませんでした。

ネットで調べてみたのですが、e-POWERは高速域よりも低中速域で低燃費を発揮することが原因だったのかもしれません。

プロパイロットの感想

プロパイロットとは、設定した速度で走行中に前車に追いついた場合には一定の車間距離を保って追従していく自動運転機能です。車線をカメラで認識してハンドル操作を補助する機能もあります。

今回はこの機能のおかげで高速走行が非常に楽に感じました。特に、渋滞時にも使えるのが画期的で、何度か事故渋滞にはまったのですが、アクセル・ブレーキ操作を一切することなく走行することが可能です。ただ、完全に停車した場合にはアクセルを踏まなければ発進しません。

速度を設定した状態で高速走行中に前車に追いつくことはよくあることで、追い越そうとするときに追い越し車線に車がいるためにブレーキを踏まなければならない場面に遭遇します。通常のクルーズコントロールでは、それが解除されて再設定する手間が生じます。

プロパイロットでは、それらの操作が一切不要となりますので、追い越し車が途切れるのを待って、余裕を持って追い越しをすることができました。

どちらを選ぶか

e-POWERのプロパイロットなしを2回、Sハイブリッドのプロパイロットありを今年初めて借りたわけです。e-POWERのワンペダル走行も魅力的でしたが、あくまでも下道限定です。高速走行中はほとんど恩恵を感じません。

また、エアコンをつけたまま車中泊をする場合には、Sハイブリッドの方がエンジン音の静かさを感じられて快適です。さらに、上述したように燃費に大差がなかったことから、来年借りられるとしたらSハイブリッドですね。

それにしても、プロパイロットは快適でした。唯一注文をつけるとしたら車間距離の設定でしょうか。3段階に距離の設定ができるのですが、設定の効果をあまり体感できないことと自分の基準より車間が短いことでしょうか。決して短すぎるわけではないのですが、いつでもブレーキを踏めるように準備をしておく必要があると感じました。

高速道路の走り方・もらい事故を防ぐ防衛運転とは?

2023-08-07

はじめに

もらい事故という言葉をご存じでしょうか。一般的には、被害者に全く過失がない事故のことを指すようですが、被害者の過失が著しく低い事故、例えば、走行中に信号無視の車にぶつけられた、交差点直進時に右折車と衝突したなどのような事故を含めてそのように呼ばれることがあります。

今回は、高速道路上で事故に遭わないための運転方法について書いてみたいと思います。

混雑時は左車線を走る

私は20代の頃に陸送の仕事をしていましたので、高速道路を非常によく走っていたことを記憶しています。先ず、同僚がおこした高速道路での事故について状況説明をします。

名神高速に大阪と京都の府境に位置する天王山トンネルがあります。同僚が同トンネル内の追い越し車線を走行中に前を走る4トン車が前方の大型バスに追突して停車、自車(日産サファリ)は急ブレーキをかけて何とか追突を免れましたが、停車直後にバックミラーを見て大型車が迫ってきていたのを確認したそうです。

追突されると直感し、ハンドルを両手で押さえつけて衝撃に備えたところ、案の定停まりきれずに大型に追突され自車の長さがおよそ半分になりました。事故処理に当たった警察官からは、車を見て運転手は死亡したものと思ったと言われたそうです。

現在では外側に2車線分のトンネルが掘られ、上下4車線ずつ確保されていますが、当時はよく渋滞する場所として知られ、また事故が多発しているトンネルでした。幸いなことに同僚は軽傷ですみましたが、この事故以降、同トンネルを通過するときは必ず左車線を走行するようにしたのを覚えています。

追い越し車線を走る車の方が車間距離を取らないことが多いことは何となく理解できると思います。つまり、80km/h で車が連なって走行しているような状況では、追い越し車線より走行車線を走るほうが追突されるリスクを減らすことになると考えていますので、混雑時は左車線を走ろうということです。ちなみに、私は事故や工事で渋滞の最後尾につくときも左車線に進路変更するようにしています。

追い越しは短時間ですます

定速走行が望ましいと言われることがあります。私も一時期そのように考えていました。追い越しの場面でも定速走行を維持すべきでしょうか。

制限速度100キロの道路をクルーズコントロールで100キロに設定して、98キロで走る車を追い越すときに加速せずにそのまま走ったらどうなるでしょう。追い越しに時間がかかることにより並走時間が長くなる、交通量が多いところでは後ろが詰まってしまうなどが想像できますね。

皆が制限速度を守って走っているわけではありませんし、速度違反をしているほうが悪いと言えるから追い越し車線を早く譲る必要などないと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、ここで問題にしているのは事故に遭わないための防衛運転です。

私の場合、制限速度より低めの90キロ位に設定し、追い越し時にはアクセルを踏み込んで加速しながら追い越しをします。ブレーキを踏まない限りクルーズコントロールは解除されませんし、走行車線に戻ってからアクセルから足を離すようにしています。このようにすることで、今問題となっている煽り運転の被害に遭うこともほぼ無いと思います。

追突されないためにすること

高速道路だけではなく一般道でも同じですが、停車時には必ずブレーキランプを点灯させておくことが重要です。

渋滞の最後尾につくときにはハザードを点灯することは皆がやっていますが、すぐに消してしまう人が多いと感じています。少なくとも自車の後ろの車がハザードを点けなければ意味がありませんので、ミラーで必ず確認します。後ろの車のハザードが確認できれば、渋滞を認識しているといえますのでその車から追突されることはないでしょう。

最後に

まだまだありますが、最後に優先意識を捨てて「かもしれない」運転を心掛けることについて記しておこうと思います。

直進車優先、左方車優先などの言葉がありますが、例え自車が優先であっても、右折を開始するかもしれない、見通しの悪い交差点では一時停止を守らない車が飛び出してくるかもしれないといった事態を想定して運転することも防衛運転に求められるでしょう。

ライフラインの設備の設置・使用権(私道掘削)について

2023-07-31

はじめに

令和5年4月1日、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができるとする規定が明文化されました。その他これらに類する継続的給付には、電話・インターネット等の電気通信が含まれます。

他人の土地や設備(導管等)を使用しなければ各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者は、解釈上、改正前の相隣関係規定等の類推適用により、他人の土地への設備の設置や他人の設備の使用をすることができると解されていましたが、明文の規定がないために設備の設置・使用に応じてもらえない、不当な承諾料を求められるなどトラブルに発展するケースが散見されました。

改正前においては、掘削承諾書を私道所有者や私道に隣接する土地の所有者間で取り交わすことがなされ、ライフライン引き込み工事をする際の提示書面となっていた経緯があります。

場所・方法の限定

設備の設置・使用の場所・方法は、他の土地及び他人の設備のために損害が最も少ないものに限定されます。設備を設置する場合には、公道に通ずる私道や公道に至るための通行権の対象部分があれば、通常はその部分を選択します。

袋地所有者の囲繞地通行権と同様、これまでの相隣関係の趣旨を踏まえて明文化したことがよくわかります。

事前通知が必要

他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければなりません。他の土地を現に使用している者とは賃借人等が該当します。

通知の相手方が、その目的・場所・方法に鑑みて設備設置使用権の行使に対する準備をするに足りる合理的な期間を置く必要がありますが、概ね2週間~1か月程度が相当でしょう。通知の相手方が不特定又は所在不明である場合にも、例外なく通知が必要であり、簡易裁判所の公示による意思表示を行うこととなります。

償金・費用負担について

・設備設置権
設備の設置により土地が継続的に使用することができなくなることによって他の土地に生じた損害に対しては、償金を支払わなければなりません。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができます。

土地の分割又は一部譲渡に伴い、分割者又は譲渡者の所有地のみに設備の設置しなければならない場合には、償金を支払うことを要しません。

対して、設備設置工事のために一時的に他の土地を使用する際に、当該土地の所有者・使用者に生じた実損害に対する償金は一括払いとなります。

・設備使用権
土地の所有者は、その設備の使用開始の際に損害が生じた場合に、償金を支払う必要があります。また、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならないと規定されています。

まとめ

今回は民法の相隣関係に関する改正のうち、ライフラインの設備の設置・使用権に関する法規制の整備について触れました。

法改正がされたからといって、通行権・設備使用権などの権利を振りかざすのではなく、常日頃から近隣住民との関係を良好に保つことが重要だと思います。電気、ガス、水道などのライフラインは言うまでもなく、人が生活するのに欠かせないものですから、ご近所とのいざこざは極力避けるのが無難です。

代表取締役の住所の非表示措置について

2023-07-24

はじめに

令和4年9月1日から、DV被害者等である会社代表者等からの申出により、登記事項証明書等におけるDV被害者等の住所を非表示とすることが可能になりました。

先ず、前提として会社の登記事項証明書は誰でも取得することができます。会社代表者(株式会社の代表取締役、有限会社の取締役、合同会社の代表社員など)の住所は登記事項とされていますから、配偶者に住所を知られることによりDV被害者は生命または身体に危害を受けるおそれがありました。改正によって、そのような被害の発生を防止する措置が講じられたといえます。

申出ができる被害者等とは

登記事項証明書に記載された自然人(個人)の住所の非表示の申出(以下「住所非表示措置申出」といいます。)の対象となる「被害者等」は、住所が登記記録に記録されている個人に限られます。法人は合同会社等の持分会社の社員になることはできますが、法人の住所(本店)は含まれません。

被害者等の範囲は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(「DV防止法」)に規定する配偶者からの暴力を受けた被害者、ストーカー行為等の規制等に関する法律(「ストーカー規制法」)に規定するストーカー行為等に係る被害を受けた者、その他これらに準ずる者とされています。

申出方法

被害者等又は登記の申請人は、申出書に必要事項を記載し、必要な書面を添付し、登記の申請人が申出をするときは申出書又は委任による代理人の権限を証する書面に当該申請人が登記所に提出している印鑑を押印しなければなりません。なお、登記の申請と同時に行う住所非表示措置申出は、オンラインにより行うことができます。

添付書面

①住所が明らかにされることにより被害を受けるおそれがあることを証する書面
市区町村が発行しているDV等支援措置決定通知書や、ストーカー規制法に基づく警告等実施書面、配偶者暴力相談支援センターのDV被害者相談証明といった公的書面がこれに該当します。

②申出書に記載されている被害者等の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書
被害者等の住民票の写し、戸籍の附票又は外国に居住する取締役等の氏名及び住所が記載されている日本国領事が作成した在留証明書のほか、運転免許証やマイナンバーカード等のコピーであって、被害者等が原本と相違ない旨を記載したものなどです。

③代理人によって住所非表示措置の申出をするときは、当該代理人の権限を証する書面
委任状などが該当します。

最後に

そもそも、代表取締役個人の住所を公示する必要があるのかといった問題があるかとも思いますが、商業登記法の条文には、「会社法(平成十七年法律第八十六号)その他の法律の規定により登記すべき事項を公示するための登記に関する制度について定めることにより、商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することを目的とする。」と定められています。

ところで、不動産登記においては現状、DV被害者等の登記名義人の住所の変更登記をすることを要しない、前住所を住所として登記をすることも認めたり、住所の閲覧を特別に制限する取扱いなどがされています。

こちらについては改正が決まっており、令和6年4月1日から、DV被害者等についても相続登記や住所変更登記等の申請義務化の対象となることに伴い、現在の取扱いについて必要な見直しをした上で、DV被害者等の保護のための措置が法制化されます。

具体的には、対象者が載っている登記事項証明書等を発行する際に現住所に代わる事項を記載することとされ、委任を受けた弁護士等の事務所や被害者支援団体等の住所、あるいは法務局の住所などを想定しています。詳細は、今後不動産登記規則等の省令で規定されることになるでしょう。

電子提供措置をとる旨の定めが登記事項となったことについて

2023-07-18

はじめに

令和4年9月1日(以下「施行日」といいます。)から、会社法第325条の2の規定による電子提供措置をとる旨の定めがあるときは、その定めが登記事項とされました。なお、施行日において振替株式を発行している会社(上場会社)は、施行日をその定款の変更が効力を生ずる日とする電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更の決議をしたものとみなすとされました。

株主総会資料

会社法の条文では「株主総会参考書類等」の文言を用いていますが、株主総会資料とは、株主総会参考書類、事業報告、監査報告、計算書類、連結計算書類等を指します。

電子提供措置

電子提供措置とは、定款の定めに基づき、株式会社(特例有限会社を含みます。)の取締役が株主総会資料(種類株主総会資料を含みます。)の内容である情報を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を株主総会の招集の通知に記載等して通知した場合には、株主の個別の承諾を得ていないときであっても、取締役は、株主に対して株主総会参考書類等を適法に提供したものとする制度のことを指します。

電子提供措置は、株主総会の日の3週間前または招集通知の発送日のいずれか早い日から開始し、株主総会の日後3か月を経過する日まで継続して行わなければなりません。

議決権行使書面について

取締役は、株主総会を招集する場合には、株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨を定めなければなりません。また、定めた場合には株主総会の招集の通知は書面でしなければならず、株主に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類及び議決権行使書面を交付しなければならないとされています。

議決権行使書面に記載すべき事項は電子提供措置をとらなければならない事項に含まれていますが、取締役が株主総会の招集の通知に際して株主に対し議決権行使書面を交付するときは、議決権行使書面に記載すべき事項に係る情報については、電子提供措置をとることを要しません。

登記記録例

「電子提供措置に関する規定」
「当会社は株主総会の招集に際し、株主総会参考書類等の内容である情報について、電子提供措置をとるものとする。」

設立の際の定款に電子提供措置をとる旨の定めがある場合は上記のとおりとなります。施行日において振替株式を発行している会社(上場会社)は、原因年月日を「令和4年9月1日設定」とし、電子提供措置をとる旨の定款の定めを設けた場合は、当該定款変更の効力が生じた日とします。

なお、電子提供措置をとる旨の定款の定めは、原則として当該株式会社の実際の定款の定めのとおり登記する(登記すべき事項となる)こととなり、上記記録例どおりに記載して登記申請する必要はありません。

支店の所在地における登記の廃止と変遷

2023-07-10

令和4年9月1日改正

令和4年9月1日、支店・従たる事務所の所在地における登記が廃止されました。したがって、同日から、支店の所在地における登記は不要となり、仮にこれを申請しても、商業登記法第24条第2号により却下されることとなります。

なお、本店の所在地における支店の設置、移転又は廃止等の登記は引き続き必要です。

旧商法時代

平成18年5月1日から会社法が施行されましたが、それ以前の旧商法においては支店の所在地における登記事項は本店の所在地と同様のものでした。また、支配人の登記が本店ではなく、支配人を置いた営業所(支店)の所在地における登記事項とされていました。

当時、登記事項証明書(登記簿謄本)、印鑑証明書は本店所在地を管轄する法務局でしか取得することができませんでしたので、会社の代表権を有する者の確認等のためには本店所在地と同様な登記簿を支店所在地においても公示する意味合いを有していたと思います。

また、不動産登記において法人が申請人となる場合には代表者の資格証明書の添付が求められていましたが、支店所在地において代表権を有する者の照合ができる場合には、添付省略ができたことも挙げることができるでしょう。

会社法施行

会社法の施行により、支店所在地の登記所には、索引的な登記事項である商号、本店の所在場所及び支店(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る。)の所在場所のみを登記することとされ、施行日に現にある支店の登記所の登記簿についても、登記事項は同様となったのです。

支店所在地の登記所に登記されている支店の登記事項を商号、本店及び支店所在地のみとする登記は、登記官が職権で行うこととされました。

また、支配人の登記はすべて本店の登記所の登記簿に記録することとされ、施行日に現にある支配人の登記についても、本店の登記所の登記簿に移されることとなりました。したがって、施行日後は、支配人を置いた支店の登記所でなく本店の登記所に対し当該支配人の登記事項証明書や印鑑証明書を請求する扱いになりました。

本支店一括申請

支店所在地においてする登記の申請は、本店所在地においてする登記の申請完了後に登記事項証明書(登記簿謄本)を添付する必要がありました。後に、コンピュータ化されている登記所間において、他の登記所管轄の登記記録の閲覧が可能となったことから、紙媒体の証明書の添付は不要となったのです。

このような手間がかかることから、商号変更、本店移転等の全ての支店所在地において登記申請が必要となるときには、申請人の大きな負担となっていました。

そこで、法務大臣の指定する登記所の管轄区域内に本店を有する会社による本店及び支店の所在地において登記すべき事項について支店の所在地においてする登記の申請は、その支店が法務大臣の指定する他の登記所の管轄区域内にあるときは、本店の所在地を管轄する登記所を経由してすることができるとする、本支店一括申請の制度が創設されました。

私自身、開業前の勤務時代にこの制度を1回だけ利用したことがあります。支店移転登記だったと記憶していますが、手数料(支店所在地の登記所1庁につき、300円)が安く、手間もかからないし便利だなあと感じました。しかし、その申請は取下げることになったのです。どうやら、過去に本店移転をした際に支店所在地にも登記申請をすべきところ、申請人がその申請を怠ったことが原因だったようです。

最後に

支店の所在地における登記の廃止に至るまでの変遷を記してきましたが、やはり時代の流れを強く感じます。ただ、支配人の登記など実務家として知っておかなければならない知識もあると思います。

それについては、過去の記事「40年以上放置された抵当権の抹消」で触れていますので、ご参照いただければ幸いです。

役員の氏名と旧姓の併記について

2023-07-03

平成27年の改正

役員の氏名に婚姻前の氏を記録することができるようになりました。(平成27年2月27日施行)例えば、取締役甲野花子さんが婚姻によって乙原花子さんとなった場合には、「取締役 乙原花子(甲野花子)」のように旧氏がかっこ書きで記録されます。

令和4年9月1日改正

令和4年9月1日から、併記可能な旧氏の範囲が拡大され、婚姻前の旧氏に限らず、養子縁組前の旧氏や、離婚後婚姻中の旧氏なども併記可能となりました。

また、登記簿(閉鎖した登記事項を除く。)にその役員等について旧氏の記録がされていたことがあるときは、最後に記録されていた旧氏より後に称していた旧氏に限り、登記簿に記録するよう申し出ることができます。

さらに、会社の代表者は、当該会社の登記簿に旧氏の記録がされている者について氏の変更の登記がされた場合には、登記簿に記録がされている旧氏を当該変更の登記の直前に称していた旧氏に変更するよう申し出ることができるとされました。

申出の方法

会社の代表者は、申出書に必要事項を記載し、必要な書面を添付し、申出書又は委任による代理人の権限を証する書面に当該会社の代表者が登記所に提出している印鑑を押印しなければなりません。

・申出書の記載事項
①申出に係る会社の商号及び本店の所在場所並びに当該会社の代表者の資格、氏名、住所及び連絡先
②旧氏を記録すべき役員又は清算人の氏名
③上記②の役員又は清算人について記録すべき旧氏
④代理人によって申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称、住所及び連絡先並びに代理人が法人であるときはその代表者の資格及び氏名
⑤申出の年月日

申出書の提出をする方法のほか、株式会社の設立の登記、役員等の就任による変更の登記、清算人の登記又は役員等の氏の変更の登記と同時に行う旧氏の記録の申出等については、申請書に申出事項を記載する方法で行うものであっても差し支えありません。

添付書面

併記しようとする旧氏の記載がある除籍抄本等から現在の氏の記載がある戸籍に至る全ての戸除籍抄本等が必要となります。

例えば、婚姻によって氏が変わった場合に現在の戸籍謄本を取りますと、従前戸籍の記載があります。従前戸籍には本籍と筆頭者が記載されていますので、その戸籍も必要となります。父親が筆頭者となっている戸籍で婚姻した方が除籍された旨の記載があるもの等が該当します。

なお、住民票やマイナンバーカード、運転免許証に既に併記されている旧氏と同じ旧氏の併記を希望する場合には、これらの写しを添付することでも足ります。

旧氏の記録を希望しない場合

会社の代表者は、当該会社の登記簿に記録がされている旧氏の記録を希望しない旨を申し出ることができます。登記記録にその氏名とともに旧氏をも記録された役員又は清算人について、旧氏の記録を希望しない旨の申出があったときは、その旧氏は記録しないこととなります。

また、当該申出書の添付書面については、記録を希望しない旧氏を証する書面を要しません。

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