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はじめに
以前の記事「民事訴訟における管轄について」では、管轄の基礎知識を解説しました。今回は、当事者間の合意によって生ずる、法定管轄とは異なる「合意管轄」について取り上げます。
意義
民事訴訟法上の「合意管轄」とは、当事者が契約等によって、どの裁判所に訴えを提起するかを事前に取り決める制度です。通常は法律で定められた管轄裁判所に訴えを起こしますが、当事者の合意によりその範囲を変更できる点に特徴があります。
法定管轄は当事者の便宜を考慮して定められていますが、当事者がそれとは異なる管轄を希望する場合には、これを認めても差し支えないと考えられています。合意管轄により、紛争解決の効率化や予測可能性の確保が期待されます。
性質
合意管轄は、当事者の意思に基づく「任意管轄」の一種です。法律で定められた強制的な管轄(専属管轄)とは異なり、柔軟に選択できる点が特徴です。ただし、専属管轄が定められている事件については合意管轄を設定できません。
すなわち、当事者の意思を尊重しつつも、司法制度の安定性を保つための制約が存在します。なお、管轄の合意は契約と同時に締結されることが多いですが、その効力は訴訟法上の規定に基づくため、私法上の契約が解除されても管轄合意には影響しません。
内容
合意管轄の典型的な内容は、特定の裁判所を指定することです。例えば「東京地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする」と契約書に明記するケースです。
指定できる裁判所は、第一審の管轄裁判所を定めるもの、一定の法律関係に基づく訴えに関するもの及び法定管轄と異なる定めをするものに限られます。つまり、当事者に合理的関連性のある裁判所でなければならず、全く無関係な裁判所を選ぶことは許されません。
方式・時期
合意管轄は、原則として書面による合意が必要です。契約書や覚書に条項として盛り込むのが一般的であり、口頭の合意は証明が困難なため実務上は認められません。
合意の時期については訴訟提起前が通常ですが、時期に制限はありません。もっとも、管轄は訴え提起時を基準として定まる点に留意が必要です。
効力
有効に成立した合意管轄は、当事者を拘束します。他の裁判所に訴えを提起した場合でも、裁判所は原則として直ちに却下せず、申立てや職権により管轄裁判所へ移送します。
裁判所は職権で管轄違いを判断するため、合意管轄が存在する場合にはその効力が尊重されます。
最後に
合意管轄は、民事訴訟法において当事者の意思を尊重しつつ、紛争解決の効率性を高める重要な制度です。
契約実務においては、特定の裁判所のみに管轄を認め、その他の裁判所の管轄を排除する「専属的合意管轄条項」を設けることで将来の紛争に備えることが可能です。ただし、その有効性や制約を十分に理解したうえで条項を設計することが不可欠です。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
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