後見制度支援信託とは?

導入の目的

後見制度支援信託導入前当時の最高裁の実情調査結果によると、平成22年6月から平成24年3月までの22か月間における親族の成年後見人・保佐人・補助人・未成年後見人による不正行為により、被後見人等の財産の被害総額が約52億6,000万円であったことが判明しました。

経済的に困窮している後見人等が被後見人等の財産を私的流用していたのです。この場合、後見人等は業務上横領罪の刑事責任を問われますし、親族であっても親族相盗例の適用はありません。また、民事上の責任として、被害額等損害を賠償して被後見人等の財産を原状に復さなければなりません。

ただ、使い込みによってそれが実現できないことが非常に多く、成年後見制度に対する国民の信頼を失うことに繋がるおそれがあったのです。そこで、親族後見人の私的流用等の不正行為を防止するために、後見制度支援信託が導入されたと言えるのです。

具体的には

後見制度支援信託は、本人の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことで(成年後見と未成年後見において利用することができます。保佐、補助及び任意後見では利用できません。)、本人の財産を適切に保護するための方法の一つです。

信託財産は、元本が保証され、預金保険制度の保護対象にもなります。運用先として株式などの元本が保証されない運用先もありますが、運用に失敗して、元本に差損を生じた場合、受託者である信託銀行等は固有財産から差損分を補填しなければなりません。

後見制度支援信託を利用すると、信託財産を払い戻したり、信託契約を解約したりするにはあらかじめ家庭裁判所が発行する指示書を必要とします。

親族後見人への引継ぎ

専門職後見人の選任方法としては3通り考えられます。リレー方式、複数選任方式及び監督人方式です。リレー方式は、当初専門職のみを成年後見人に選任して、信託契約締結後に交代するために後日親族後見人を選任する方式です。対して、当初から専門職と親族を成年後見人に選任する方式が複数選任方式です。

専門職後見人は、信託契約締結後、原則として辞任して親族後見人へ引継ぎ、親族後見人は手元の現預金と収入を管理することになります。その他に、親族を後見人に選任するとともに専門職を後見監督人に選任し、親族後見人が専門職後見監督人の監督下で信託契約を締結した後、専門職後見監督人が辞任する監督人方式があります。

家庭裁判所がどの選任方式を選択するかは、事件の内容に応じて判断します。

多額の支出が必要となったとき

有料老人ホーム等の高齢者施設の入居一時金が必要になる等においては、家庭裁判所に必要な金額とその理由を記載した報告書を裏付け資料とともに提出しなければなりません。

家庭裁判所は、報告書の内容に問題がないと判断すれば指示書を発行しますので、それを信託銀行等に提出し、必要な金銭を信託財産から払い戻します。一時金の払戻し手続後、予定通りの用途に資金が使用されたことを確認するため、その直後に家庭裁判所は後見監督を行います。

また、本人の収支状況の変更により信託財産から定期的に送金される金額を変更したい場合や、事情により信託契約を解約する必要が生じた場合についても、家庭裁判所に報告書を提出して指示書の発行を受ける必要があります。

 

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