連帯債務者の相続、債務引受による抵当権変更登記の記録例

はじめに

以前の記事「連帯債務者の相続、債務引受による抵当権変更登記について」にて、連帯債務者に相続が発生し、その後免責的債務引受契約がされた場合の登記申請手続について解説しました。言うまでもなく、登記申請完了後は登記事項証明書を取得したうえで正しく登記がなされたかのチェックをしなければなりません。

そこで、実際に私が申請した登記の記録例を掲載すると共に債務者の相続の場合との相違点を記事にしたいと思います。

債務者の相続、債務引受による記録例

ちなみに、被相続人である債務者の表示を抹消する記号(下線)は記録されません。相続ではなく第三者が免責的債務引受をした場合には、下線が引かれます。

交替的変更の場合には下線が引かれ、権利義務の承継に過ぎない(移転登記等)ときには下線が引かれないようです。要するに、引き続き公示しておくことにより混乱を招き、誤解を生じさせるおそれがある場合のみ積極的に下線を引くといったところでしょうか。

登記原因証明情報の作成

銀行等の金融機関は、差入形式の免責的債務引受契約書の原本を渡すことを避けたい傾向にあるようです。「契約書は必要ないですよね。」「なくても大丈夫です。委任状のみご用意ください。」このようなやり取りをして、登記原因証明情報を作成することになります。

三面契約によって免責的債務引受契約を締結し、民法第472条の4を忠実に反映した登記原因証明情報の登記の原因となる事実又は法律行為の記載例を以下に掲げます。

設定者と引受人が同一のときは(4)は不要です。旧法下において、設定者は登記申請人となるので承諾は必要だけれども承諾書の添付は不要であるとする論点がありましたが、改正後も同様です。

(1)令和○年○月○日、債権者A、債務者B及び債務者Cは、上記○の抵当権(以下「本件抵当権」という。)の被担保債権であるAに対する債務について、Bが免責的に引き受ける旨の免責的債務引受契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
(2)本件契約にかかる債務は、令和△年△月△日債務者○○から相続した債務である。
(3)本件契約締結の際、Aは引受人Bに対し、本件抵当権をBが引き受けた債務に移す旨の意思表示をした。
(4)設定者Cは、令和○年○月○日、本件抵当権をBが引き受けた債務に移すことにつき、承諾した。
(5)よって、令和○年○月○日、本件抵当権の債務者はBに変更された。

連帯債務者の相続、債務引受による記録例

このケースは「連帯債務者A・B」のAが死亡してB、C及びDが相続人となった後、Bが免責的に債務引受をしたものです。付記1号の連帯債務者Bに下線が引かれません。連帯債務者Aに下線が引かれないのは債務者の相続の場合と同様です。

これは、連帯債務者の一人が死亡した場合において、その相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを相続分に応じて承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解するのが相当であるとする判例を考慮したものです。

付記1号によって、「B、B(Aから相続した債務)」、「B、C」及び「B、D」間の3つの連帯債務を示していることになります。付記2号によって、「B、B(Aから相続した債務)」及び「B、B(C及びDから引き受けた債務)」間の2つの連帯債務を示しています。連帯債務はそれぞれ別個独立したものであることも、連帯債務者Bに下線を引かない理由となります。

 

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