R5司法書士試験不登法記述問題の疑義について

解なしの記述問題!?

令和5年度の司法書士試験で出題された不動産登記法記述問題に不備があったため、厳密に解釈すれば解答が存在しないこととなり、受験生や予備校が混乱しているようです。早速、法務省のホームページから試験問題を入手して、私なりに検討してみました。

申請件数及び登録免許税の額が最も少なくなるように

この要領で登記を申請するように問題文の「事実関係に関する補足」に記載がされています。第1欄では、譲渡担保契約を合意解除したうえで、譲渡担保権設定者が非居住用不動産を売却した際の登記申請書の作成が求められました。なお、売却前に売主には後見人と後見監督人が選任されているという事案です。

所有権抹消を選択すれば登録免許税は安くなりますが、抹消→名変→移転の3件の申請となり、一方、所有権移転を選択すると登録免許税は高額となりますが、移転→移転の2件の申請となります。つまり、申請件数及び登録免許税の額が最も少なくなるような登記申請は存在しないのだから、どちらを書くべきか非常に悩ましかったようです。

問題文冒頭に司法書士が本人確認情報を作成した記載がありますので、移転→移転の登記申請は考えにくいとも言えます。また、後見人が登記申請人となる場合の本人確認は誰についてするべきなのかが問われています。売却不動産が居住用の場合だと、そもそも本人確認情報の作成は不要となりますので、当該不動産が居住用でないことも問題文に明記されています。

出題者の意図として、民法第864条の規定により後見監督人の同意を要する行為であること及び本人確認の対象は後見人であることを問うために「抹消」の方を書いて欲しかったことは推測できます。

順位変更と順位放棄

第3欄においては、2番抵当権と3番根抵当権の順位を同順位とする契約を締結した際の登記申請書の作成が求められました。根抵当権者は、元本の確定前は転抵当を除き、民法第376条の処分はできませんが、先順位の抵当権者から根抵当権者が376条の処分を受けることはできます。

つまり、順位変更と順位放棄の2通りの登記申請が可能となるのですが、登録免許税が安くなるのは順位放棄です。では、順位放棄が正解なのかと思えば、問題用紙の「添付情報一覧」の中に順位変更契約書(事実関係に基づき関係当事者全員が作成記名押印したもの)の記載が出てきます。

したがって、順位変更を書くべきだと判断せざるを得ないともいえます。ここでも、上記と同様に現場の受験生を悩ませたようです。

問題にケチをつけない

では、このような記述問題に対処するにはどうすればよいのでしょうか。先ず、法務省には受験者がどちらを書くべきか迷うことがないような問題の作成をしていただくのが一番良いのは言うまでもないですよね。その上で、問題に不備があったとしても受験者に公開されるのは得点のみであり、配点や問題の正解すら明らかにされません。

よく言われていることですが、出題者の意図を考えて解答することが最善の方法ではないかと考えます。予備校の記述式解答例をみてもそれを意識したものとなっているように思えます。また、問題の量が多いために解答時間を延長するべきだと言われる方がいらっしゃいますが、仮に午後4時間にしたとしても合格点が上がるだけで、相対評価の試験である以上合格者の顔ぶれはほとんど変わることはないでしょう。

司法書士試験受験者として、問題にケチをつけない、合格できないのを問題のせいにしない姿勢が重要なことではないでしょうか。

 

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