買戻し特約の抹消登記に関する改正(令和5年4月1日施行)

買戻し特約とは

売主は、売買契約と同時に当該不動産の買戻しを特約することにより、買主が支払った売買代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。)及び契約費用を返還して売買契約を解除することができます。つまり、解除権を留保した売買契約であるということもできます。

最近ではあまりありませんが、かつては債権担保を目的として買戻し特約がなされていたことがあります。売主が賃借することによって占有を継続するような場合には、買戻し特約付の不動産売買契約は、特段の事情がない限り、債権担保の目的で締結されたものと推認され、その性質は譲渡担保契約と解されるとする判例があります。

買戻し特約の登記

買戻し特約の登記は、売買による所有権移転登記の申請と同時に、別個の申請情報をもって申請しなければなりません。

実務上、買戻し特約の登記を目にする機会はほとんどありません。私が今まで目にしたのは、独立行政法人都市再生機構の前身である住宅・都市整備公団を買戻権者とするものです。

現在では、住宅供給公社等が土地を分譲する際に、買主の転売、用法違反があった場合に買戻権を行使するために買戻し特約付売買契約を締結し、買戻し特約の登記がされるようです。登記をすることにより、第三者に転売されたとしても、その者に対して買戻権を行使することができます。

買戻し期間

買戻しの期間は、10年を超えることができません。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、10年とされ、買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することはできません。また、買戻しについて期間を定めなかったときは、5年以内に買戻しをしなければならないと定められています。

したがって、買戻し期間は最長で10年ということになります。

買戻し特約登記の抹消

ここからが本題になるのですが、改正により、買戻しの特約に関する登記がされている場合において、その買戻しの特約がされた売買契約の日から10年を経過したときは、不動産登記法第60条(共同申請の原則)の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができることとされました(令和5年4月1日施行)。

上述したように買戻し期間の最長は10年ですから、それを経過したものについては買戻権が消滅している可能性が高いといえますし、登記が残っていることにより不動産の円滑な取引、利用を阻害する要因となりますので、このような規定が設けられました。

申請手続

登記原因は、「不動産登記法第69条の2の規定による抹消」として、登記原因の日付を要しません。添付情報は、司法書士に委任した場合の委任状のみとなり、登記原因証明情報は不要です。

実務上、例えば、住宅・都市整備公団を買戻権者とする買戻し特約登記が残っている場合に、抹消する前提として独立行政法人都市再生機構への移転登記が必要になるのかが疑問です。抵当権の抹消登記については、移転登記の要否を抹消の登記原因日付で判断します。買戻し特約登記については、今のところどのような取扱いをするかについての通達等は存在しません。

私見にはなりますが、登記原因日付の提供を要しないこと、形骸化した登記の抹消手続を簡略化することを目的とした改正であることから、移転登記をしなくても抹消登記単独申請は可能だと考えます。

 

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