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事例
検認済の自筆証書遺言に基づく遺贈による所有権移転登記をするにあたり、遺言書には不動産(土地)が地番ではなく住居表示で指定されている。なお、遺言執行者は定められておらず、遺言者の法定相続人はAのみであった。
言うまでもなく、法務局が定める地番とは異なるために対象不動産の登記申請ができるのかが問題となった案件を今回は取り上げてみたいと思います。
住居表示制度と地番
住居表示制度は、市街化が進んでいる地域等において分かりにくくなっている町名地番を用いた住居の表示に代えて、街区符号及び住居番号等を用いた合理的な住居表示を実施することを目的とする制度です。
対して、地番は、明治時代以降の不動産登記制度によって法務局が付する番号であり、土地は一筆毎に地番によって特定されます。要するに、地番は従来から住所を表すためにも用いられていましたが、市街地においては分筆が繰り返されること等によって番号の並びが不規則となります。
そのために、地番から住所を特定することが非常に困難になったことから、郵便物の配達に支障をきたす等の問題を解消するために住居表示に関する法律が施行され、全国の市街地では新しい住居表示を実施することになったのです。
ちなみに、東京都調布市のように住居表示制度を実施せずに土地の地番をそのまま住所として使用している市町村も存在します。
謄本取得が仕事の一つだった
住居表示から地番を調べたうえで登記簿謄本等の取得がかつては司法書士の仕事でした。オンラインで登記簿謄本を交付請求することはできず、直接管轄法務局に出向くか郵送で取り寄せるしか手段がなかった頃の話です。
法務局備え付けの住宅地図(ブルーマップ)で地番を調べるのですが、簡単には判明しないことも多く、その場合には公図、登記簿謄本の閲覧申請をして所有者から対象不動産を探し当てることをしていました。
今では、電話による地番照会、登記情報提供サービスにおける地番検索サービスを利用することができますので、非常に便利になりました。
法務局Xの回答
今回の案件では、地番検索サービスの利用及びインターネットによる住宅地図の取得によって遺言書記載の不動産と遺言者所有のものが一致することを確認できました。念のために、遺言者の名寄帳、評価証明書、住宅地図及び公図等を添付して法務局に事前相談をすることにしました。
法務局Xの回答は、Aの委任状に遺贈する不動産の記載がされていれば特別な添付書類は要しないとのことでした。
換言すれば、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをし、遺言執行者が申請人となる、または、Aの成年後見人が申請人となる等、A以外の者が申請人となる場合に該当しないのであれば、上記の取扱いで構わないということです。
法務局Yの回答
住宅地図及びAの上申書を添付してくださいとのことでした。今回作成した上申書の内容は、遺言書記載の不動産と登記申請書に記載する不動産が同一であること及び今回の登記申請によって遺言者の相続人と受遺者間に紛争は一切生じないことを確約するものとしました。
法務局の回答から、遺言者の相続人の権利が侵害されること、または、それによって受遺者との間で争いが生じる事態を極力避けたいのだということが窺えました。遺言書がなければ、不動産はAが相続することになるわけですから当然かもしれません。
最後に
遺言者の意思表示を尊重し、できる限り遺言書を無効としないという運用が実務上なされていることは実感しています。仮にそうだとしても、遺言書に不動産を載せる際は地番または家屋番号によって特定するのが望ましいことは間違いありません。

司法書士の藤山晋三です。大阪府吹田市で生まれ育ち、現在は東京・三鷹市で司法書士事務所を開業しています。人生の大半を過ごした三鷹で、相続や借金問題など、個人のお客様の無料相談に対応しています。
「誰にも相談できずに困っていたが、本当にお世話になりました」といったお言葉をいただくこともあり、迅速な対応とお客様の不安を和らげることを心掛けています。趣味はドライブと温泉旅行で、娘と一緒に車の話をするのが楽しみです。甘いものが好きで、飲んだ後の締めはラーメンではなくデザート派です。
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