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明認方法と立木の物権変動

2025-03-03

明認方法とは

立木ニ関スル法律の適用を受けない立木、未分離果実、稲立毛等の土地と一体となっているものの権利関係を公示する方法で、対抗要件として慣習上認められているものです。

例えば、伐採のために植林した檜、杉等は不動産である土地の一部ですから、一般的には土地と共に取引の対象となりますが、植林した立木のみを伐採目的で売買することがあります。このように立木を土地から独立した取引の対象とする場合には、土地と分離した存在であることを公示して取引の安全に資することが求められます。

具体的方法

土地と分離して立木のみを譲り受けた場合等、その物権変動を対抗するための明認方法の具体的方法には以下のものがあります。

立木の皮を削って所有者であることを墨書する、山林内に炭焼小屋を作って製炭事業に従事する、現場に所有者を記した標識を立てるなどの方法が認められています。

立木の二重譲渡

事例:AがBに立木を譲渡した後、Cにも当該立木を譲渡した。
結論:先に明認方法を施した者が優先します。B・Cは明認方法を施さない限り、相互に立木の所有権を対抗することはできません。

土地と立木の譲渡

事例:AがBに立木とその地盤である甲土地を譲渡し、Bが立木について明認方法を施した後に、AがCに当該立木及びその地盤である甲土地を譲渡して所有権移転登記をした。
結論:甲土地の登記の先後によって決すべきであり、Bは立木及び甲土地の所有権をCに対抗できません。

Bは明認方法を施しているのになぜCに対抗できないのかと思われるかもしれません。前述したように立木は土地の一部に過ぎませんので、原則として土地の所有者がその土地上の立木の所有権を取得します。仮に所有者以外の他人が権原なく立木を植栽したとしても同様です。

取引関係に入ろうとするCは甲土地の登記簿をチェックするでしょうし、明認方法を施すより登記の方が公示方法として広く認識されているのですから、その負担をBに課したとしてもBに著しく酷であるとはいえないということです。

明認方法の消失

事例:AがBに立木を譲渡し、Bが明認方法を施したが、これが消失した後にAがCに当該立木を譲渡した。
結論:Bは、立木所有権をCに対抗することはできません。

明認方法は、立木の物件変動の公示方法として慣習上認められているものに過ぎません。それは、登記に代わるものとして第三者が容易に所有権を認識することができる手段で、しかも、第三者が利害関係を取得する当時にもそれだけの効果をもって存在するものでなければならないからです。

立木所有権の留保

事例:AがBに甲土地(地盤)を譲渡し、Bが登記をしないで立木を植栽した後、AがCに甲土地を立木を含むものとして譲渡し所有権移転登記をした。
結論:Bは明認方法を施していない限り、立木所有権をCに対抗することはできません。

Bは所有権によって立木を植栽していますので、民法第242条ただし書きが直接適用される場面ではありませんが、それを類推適用することによって立木所有権を留保することは認められています。それを第三者に対抗するためには明認方法などの公示を備えることが必要とされているのです。

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