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金融庁が検討へ
2025年4月、日本経済新聞の記事によると、金融庁は高齢者向けの少額投資非課税制度(NISA)を創設する検討に入り、2026年度の税制改正要望に盛り込む方向だとのことです。運用益などを分配金として毎月払い出す「毎月分配型」の投資信託を高齢者に限定して対象に加える案が浮上しています。プラチナNISAと銘打ち、高齢者が運用資産を計画的に活用できるようにすることを目指します。
その後、自民党の資産運用立国議員連盟の会長である岸田前総理大臣は、高齢者に限定して対象となる金融商品を拡大できる制度(プラチナNISA)の導入などを石破総理大臣に提言しました。
つまり、プラチナNISAは未だ検討段階の制度であり、今後実施されることが予定されているに過ぎません。この記事では、プラチナNISAの概要、デメリット等を解説したうえで私自身の見解を述べたいと思います。
概要
対象年齢が65歳以上に限定されること、毎月分配型投資信託など分配金を受け取りやすい商品が投資対象に追加されることが主なものとなります。
現行NISAでは、毎月分配型投資信託を購入することができません。運用益を再投資し、長期積立を前提として資産形成をより効率的にすることを目的としているためです。一方で、年金だけでは生活できない高齢者は長期投資をする時間がないことから、分配金を毎月受け取って生活費に充てたいといったニーズがありました。
投資信託はゴミ商品
信託という言葉について考えてみたことはあるでしょうか。文字通り自分の財産を信じて託すものです。つまり、投資信託は運用益を得ることを目的として自分の財産を信用できる運用会社(ファンドマネージャー)に託すことを意味します。
もちろんタダではありませんから、信託報酬等のコストがかかります。運用会社等の金融機関側は運用益を出せずに託された財産が元本割れをおこしても報酬は受取ります。要するに投資家が得をしようが損をしようが、純資産総額に応じた一定割合の報酬を得ることができるわけです。
このことから、私は投資信託とは人の褌で相撲を取るものだと考えています。それでは、何故お前はオルカンに投資をしているのだと思われるでしょう。一番の理由は低コストであること、次に世界中の株式を個人が購入することはできないので投資信託に頼るしかないということです。
投資信託で一番に考えなければならないのはコストです。残念ながら毎月分配型投資信託のコストは、オルカン、S&P500等インデックスファンドと比べると著しく高い傾向にあります。
タコ足分配
毎月分配金が受け取れることは確かに魅力的かもしれません。ただ、うまい話には裏があることにも注意する必要があると思います。分配金を出す投資信託は、利益が出ていないときでも無理に分配金を出すことがあり、これを元本払戻金(特別分配金)といいます。
2025年4月時点、トランプ関税等によって株価は暴落し、多くの投資信託が元本割れしています。その上で元本を払い戻すわけですから、預貯金の取り崩しより事態は悪化することが容易に想定されるのです。
個別株の配当利回りを考えてみればわかるでしょう。大体3~4%程度のものが多いでしょうから、例えば1000万の株式を保有していたとして、年間の配当金は30~40万円となります。このことからも、毎月多額の分配金を受け取るには投資元本を多額にしなければなりません。
言うまでもなく、ボラティリティが激しいのが株式ですから高齢者が負うには余りにも大きなリスクだと考えます。
取り崩しながら運用する
上述したように、プラチナNISAのデメリットは高コストとタコ足分配です。金融機関側が儲かる制度であり、高齢者にはデメリットを上回るメリットはないと考えます。
株式投資は時間を味方につけてこそ効果を発揮するものです。その時間がないからといって毎月分配型投資信託を勧めるのは、あまりにも短絡的過ぎます。私のお勧めは、1年でも早く低コストのインデックス投資を始めて、仕事を辞める等のタイミングでそれを定期売却し、取り崩しながら運用することです。