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はじめに
今回の記事はどちらかというと実務家向けの記事となります。しかも、2年前に取扱いが変更となったものですが、まだまだ疑問を持たれている方がいらっしゃるようなので、それを解消するべく書いてみたいと思います。
不動産登記規則等の一部を改正する省令
令和2年3月30日施行の省令により、不動産登記申請における法人の代表者の印鑑証明書が、会社法人等番号を提供することで全ての法務局において添付不要となりました。
それまでの取扱いは、印鑑証明書はその法人の本店(主たる事務所)の所在地を管轄する登記所の登記官が作成しますが、不動産の権利に関する登記を申請する登記所と、法人代表者の印鑑証明書を作成すべき登記所が同じであるときは、印鑑証明書の提供を省略することができるというものでした。これには例外があって、東京、横浜、大阪などの法務大臣が指定した登記所においては適用されないというものです。
改正後の条文には「法務大臣が指定した登記所以外」という文言は存在しません。(不動産登記令第18条第2項、不動産登記規則第49条第2項第1号)要するに、印鑑証明書の発行業務については商業登記を取り扱っていない登記所でも行っているのですから、全国全ての登記所に申請する場合において添付省略の取扱いが適用されます。
添付情報の表示として、「印鑑証明書(会社法人等番号何番)」の例により記載するものとされました。(令和2年3月30日法務省民二第318号通達)従来通り印鑑証明書を添付した場合でも登記申請の調査は行われることから、添付しようとしてし忘れたのか、添付を省略するのかが登記官にはわからないためだと思われます。
また、申請書と併せて提供しなければならない同意または承諾を証する書面に記名押印すべき者が会社法人等番号を有する法人の代表者または代理人である場合において、当該法人の会社法人等番号を申請情報の内容としたときは、当該者に係る印鑑証明書の提供を要しないこととされました。この場合の添付情報の表示は、上記と同様「承諾証明情報(会社法人等番号何番)」のように記載します。
実務における問題点
決済に立ち会う司法書士としては、登記義務者(売主や抵当権設定者)が委任状に押印した印鑑の印影を印鑑証明書の原本と照合しなければなりません。法人の代表者と面識がない場合は尚更のことです。照合をクリアしたとしても、決済日までに会社実印の改印がなされていた場合には登記申請が却下されてしまいます。
そこで、弊事務所では発行日より3か月以内の印鑑証明書の原本を決済時にお預かりして、登記完了後に返却するという取扱いをさせて頂いております。法人の印鑑証明書が添付省略できることになったからといって、司法書士の印鑑照合の手続きまで省略されるわけではないのです。
法人様の印鑑証明書取得に係る手間や費用を減らすための改正ではありますが、何卒ご理解、ご協力を頂ければ幸いです。