このページの目次
理由その1 争族を避けることができる
争族とは、遺産分割を巡って相続人間に争いが生じることです。一度対立が生じると、遺産分割調停、審判に発展して長期化したり、弁護士費用など金銭面の負担も大きくなります。
理由その2 相続手続きの煩雑さを避けることができる
遺言書に遺言執行者を定めておいた場合と比較して、遺産分割による相続手続きは非常に煩雑となります。相続人の相続手続きの負担を軽減することができます。
遺言書で定めることができる項目
遺言書で定めることができる項目の主なものは次のとおりとなります。
これら以外の項目を定めたとしても遺言としての法的な効力は生じませんので注意が必要です。
- 相続人の廃除または廃除の取消
- 相続分の指定または指定の委託
- 遺産分割方法の指定または指定の委託
- 遺産分割の禁止
- 特別受益の持ち戻しの免除
- 祭祀承継者の指定
- 遺贈(配偶者居住権の遺贈を含む。)
- 信託の設定
- 生命保険金受取人の指定または変更
- 認知
- 未成年後見人または未成年後見監督人の指定
- 遺言執行者の指定または指定の委託
付言事項について
遺言としての法的な効力が認められるのは、法律で定められた項目に限られますが、それ以外の項目について遺言事項とすることが禁止されているわけではありません。
例えば、遺言内容を決定するに至った動機、相続人に対する要望や感謝の言葉、葬式の規模や戒名に関する要望、法要や改葬に関する事項を遺言書の末尾に付記する形で記載されることが少なくありません。
相続人の遺言の趣旨の理解に資すると考えますし、遺言執行を円滑に行うためにも付言事項の記載は効果的といえるのではないでしょうか。
遺言書を作成した方が良いケース
お子さんのいないご夫婦
どちらかが亡くなって相続が発生した場合には、相続人は配偶者と兄弟となります。
兄弟が先に亡くなっているときには、その子(被相続人の甥姪)が相続人となります。残された配偶者は被相続人の兄弟・甥姪と疎遠であることが多いために相続手続きが非常に煩雑となります。
また配偶者に全財産を相続させる旨の遺言書を作成することが可能であり、相続開始後に兄弟・甥姪から遺言内容について異議を述べられることもありません。
推定相続人に認知症の人がいる場合
推定相続人とは、相続が開始する前において、その時点で相続人になると推定される人のことをいいます。
推定相続人が認知症や寝たきりなどで、相続開始後の遺産分割協議において正常な意思表示ができない場合には、遺産分割ができずに相続手続きが滞ってしまいます。成年後見人を選任して遺産分割をすることもできますが、特別代理人の選任が必要となったり、遺産分割方法が限定されたものとなり、相続税納税を踏まえた遺産分割が自由にできないなどの制約が出てきます。
また、10ヶ月以内に遺産分割ができないときには、一旦法定相続分で相続税を申告しなければなりません。その際には、配偶者控除、小規模宅地の特例などの措置を受けることができません。